意味を「設計」するロゴ制作を依頼するならsynchlogo(シンクロゴ)
COLUMN
「ロゴ」というと、多くの人は様々な図形やイラストがマークになった「シンボルマーク」のことを思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、ロゴとは実はそういったマークのことだけではありません。
文字だけで作られたロゴ、というのを見かけたことはないでしょうか。たとえば、インターネット検索のGoogleのトップページに表示されている「Google」の6文字も、ただの文字列ではなく実は「ロゴ」なのです。

こうした文字だけで構成されているロゴのことを「ロゴタイプ」と言います。
文字だけで作られたものなので印象に残りにくいかもしれませんが、このロゴタイプ型のロゴは意外と身の回りにたくさんあります。本編でも解説いたしますが、むしろ著名な企業においては、ロゴタイプ型のロゴをコーポレートロゴとして採用するケースが近年は増えているくらいです。
そんな普段あまりデザイン的に注目されていない「ロゴタイプ」型のロゴについて、そのデザインの難しさや奥深さについて知って頂きたいと思い、このコラムを書きました。
これからロゴを作ろうと考えている人や企業の方、またロゴをデザインするデザイナーの方にも是非ご一読頂きたい内容となっています。
まず、「ロゴ」における「ロゴタイプ」とはどういうものかを今一度整理してみましょう。
下の図をご覧ください。

ロゴは、図形やイラストなどによって描かれた「シンボルマーク」と、社名やブランド名などの文字列部分の「ロゴタイプ」によって構成されます。なお「ロゴマーク」は、シンボルマークとロゴタイプを組み合わせたもののことです。
そして、シンボルマークとロゴタイプは、それぞれ単独でロゴとして使われることもあります。
つまり、「ロゴ」とはシンボルマーク、ロゴタイプ、ロゴマークの総称のことなのです。
【3分類できる「ロゴ」】
①シンボルマークのみ
②ロゴタイプのみ
③ロゴマーク(シンボルマーク+ロゴタイプ)
ただし、中には見た目だけですぐに分類できないロゴもあります。たとえばユニクロのロゴはその代表例として挙げることができるでしょう。

ユニクロのロゴは、「ユニクロ」「UNIQLO」の文字列を主体としたデザインですので、一見ロゴタイプのように見えます。しかしよく見ると、カタカナ表記・アルファベット表記のいずれも、文字列を同じ赤い正方形の枠内に収めており、マークとしてのシンボル性を確立するためにこのデザインが施されていることがうかがえます。

また実際の使い方を見ても、上記写真のように、空間へと大胆に組み込むなど、ロゴを完全にブランドシンボルとして使っていることから、このユニクロのロゴは「シンボルマーク」に分類するのが自然だと考えることができます。
このように、シンボルマーク、ロゴタイプ、ロゴマークの分類は、見た目と、実際の使い方を総合して判別する必要があるのです。

では、このユニクロのような例は除き、「デザインされた文字」はすべてロゴタイプに分類されるのでしょうか?
その答えはNOです。
実は、中にはロゴタイプに分類されないものもあります。
「タイポグラフィ」や「レタリング(作字)」という言葉を聞いたことはないでしょうか?
デザイン系の職業の方であれば、耳にしたことくらいはあるのではないかと思いますが、ロゴタイプの定義をきちんと説明するには、これらとの関係についても触れておかなければなりません。
まず、「ロゴタイプ」と「レタリング」の関係ついてですが、これらは「可読性(文字としての読みやすさ)」と「作り方(文字をどのように作るか)」の2軸で説明ができるようになります。下記は、Y軸を可読性の高低、X軸を文字のオリジナリティとし、それを分類表的に表したものですです。

◆レタリングとは
レタリングは、既存のフォントを使わず、独自に文字の形を描くことに特化した領域の文字デザインのことです。アニメや映画、楽曲のタイトルロゴ、期間限定のキャンペーンコピー、SNS上のビジュアル作品などで使われることが多くあります。レタリングは、「文字をデザインしている」という点ではロゴタイプと共通する部分もありますが、必ずしもブランドの象徴として長期的に使われることを前提としていないものが多く、その点でロゴタイプとは異なる文字デザインであると言えるでしょう。
◆ロゴタイプとは
一方ロゴタイプは、「ブランドの象徴としての文字デザイン」に特化している点がレタリングとは決定的に異なります。企業名やサービス名を識別し、継続的で広範な使用が前提であることが多く、そのため可読性や汎用性が強く求められがちで、「ワードマーク」と呼ばれることもあります。
作成方法は、既存のフォントをそのまま使う場合もあれば、一から文字を描いたり、大きく調整したりする場合もあります。文字を一から描き起こして作る際は、レタリング技術を用いることも少なくありません。
そして最後に「タイポグラフィ」ですが、
◆タイポグラフィとは
タイポグラフィとは、文字のレイアウトや、文字そのものの作成によって、デザインされた文字および文字組みの総称を指します。つまり、「ロゴタイプ」も「レタリング」も「タイポグラフィ」という大枠の中の1ジャンルというわけです。
既存のフォントを組み合わせて書籍やWebページを組むこともタイポグラフィの一部ですし、自分で文字を書く・描く行為もここに含まれます。つまり「文字をどう扱うか」という大きな枠組みがタイポグラフィだと考えると分かりやすいでしょう。
ここで興味深いのが、レタリングとロゴタイプとが重ならない、純粋なレタリング・純粋なロゴタイプに位置するデザインの特徴です。

純粋なレタリングに多く見られる表現は、たとえば一度きりのイベントロゴとして効果が発揮されるよう、可読性よりもインパクトを優先した、大きく文字を崩した表現です。これらはあえて可読性を落とし、その分視覚的な訴求力を上げているものと考えられます。
一方、純粋なロゴタイプは、既存のフォントをベースに、文字間隔(カーニング)や文字プロポーション、ディテールなどを徹底的に調整することで成立させたデザインです。文字を一から描き起こさずとも、ブランド名を象徴する「ロゴ」として機能するものを作るというアプローチは、純粋なレタリングとは真逆のデザインであると言えるでしょう。
このように、1-1で解説した「見た目」と「使い方」による整理に、1-2で紹介したレタリングとの対比、つまり「可読性」と「作り方」の視点を加えることで、ロゴとしてのロゴタイプの定義が明確になったと思います。
最後にこの章のまとめとして、ロゴタイプの定義について改めて確認しておくべき点を記しておきたいと思います。それは、ロゴタイプとは社名・ブランド名・サービス名などの文字を、「ロゴとして使えるようにデザインする」のが大前提である、ということです。
ただ単に文字をデザインしたからと言って、それがすべてロゴタイプになるわけではありません。
どんなに美しく字体を整えたり、個性的な字体となるように文字を作ったりしたとしても、ロゴとして機能するための、適切な可読性や作り方を考慮した「設計」のプロセスが含まれていなければ、それらはタイポグラフィやレタリングにはなっても、「ロゴタイプ」にはならないのです。つまり、既存のフォントをそのまま使ったデザインでも、「設計」の考え方を踏まえて作られていれば、ロゴとして機能する「ロゴタイプ」を作り出すことは可能ということになります。
では、具体的にどう文字をデザインすれば「ロゴタイプ」を作ることができるのか。ロゴ作成における「設計」のプロセスとは何なのか。
その点については非常に奥深く、ここでそのすべてを解説し始めると本コラムが冗長な内容なってしまいそうなため、そのあたりの解説を行っている下記別のコラムも参照して頂ければと思います。
ロゴタイプのことを、「普段あまりデザイン的に注目されていない」と冒頭では書きましたが、では実際、ロゴマークとロゴタイプではどちらの方が多く使われているのでしょうか?
もちろん統計資料などがあるわけではないため、本当に正確なところは分かりません。ただ、何らかの条件設定をすればその比較をすることは可能になります。
たとえば、「街なかで使われるロゴ」を条件にすれば、圧倒的にロゴタイプの方が多くなります。なぜなら、店舗などへの「目印」になることが、ロゴに求める最も重要な機能であり、そのためシンボルマークよりも識別力の高い「名称」をそのままデザインしたロゴタイプの方が適していると考えられるからです。一方、「スマートフォンのアイコンにもする」という条件であれば、表示できる領域が数十ピクセルの正方形内しかなく、なおかつサムネイルのように画面内にそれらのアイコンが並ぶことを考えれば、画面上での印象の残りやすさを優先し、シンボルマークを有するロゴマークの方が採用されやすくなることは間違いないでしょう。
このように、使用環境を条件にすると、結果に偏りが出てしまいそうです。そこで環境ではなく、「何のロゴか」というところに目を向け、ここでは「コーポレートロゴ(企業ロゴ・会社ロゴ)」という条件で検証していきたいと思います。
頭の中で思い浮かべても、ロゴマーク型のロゴ、ロゴタイプ型のロゴ、いずれもたくさんあるような気がするのではないでしょうか。
この章では、ロゴマークとロゴタイプについて、コーポレートロゴ(企業ロゴ・会社ロゴ)というカテゴリーを対象に、はたしてどちらが多く使われているのか、またその理由についてを分析・解説していきたいと思います。

さっそく調査した結果から言ってしまうと、有名企業においては、近年、ロゴマークではなくロゴタイプを採用するところが増えつつあることが分かりました。調査データとして注目したのは、Best Japan Brands 2026 Rankingsですが、ここに挙げられているコーポレートロゴの半数以上がロゴタイプであることが確認できるのです。

一昔前はシンボルマークを有したロゴマークの方が多かったような気がします。まずはその例として、「あの企業はこのシンボルマークだった!」という懐かしいものをいくつかご紹介したいと思います。
◆富士フイルム
1つめは富士フイルムです。「FUJI」4文字が中に入った特徴的な赤い六角形のシンボルマークに見覚えある人も多いでしょう。少しづつ形がマイナーチェンジされながらも、1986年から現在のロゴに変わる2006年まで使われていました。2006年に発表された新しいロゴは、フィルム・写真事業以外の新分野に挑戦する姿勢を表したもので、「富士フイルムホールディングス株式会社」に商号変更し、持株会社体制へと移行したタイミングで変更されたものです。

◆コナミ
次はコナミです。赤と黄色の波型のシンボルマークはファミコン世代には馴染み深いのではないかと思います。そのシンボルマークは、創立30周年(創業は1973年、コナミ工業株式会社を設立)の節目で行われたCI変更でなくなりました。現在のロゴは、「Contemporary Quality(コンテンポラリー・クオリティ)」をテーマにデザインされており、革新性と創造性を基本に置きつつ、ハイクオリティライフを実現する企業に相応しい品格・信頼感、躍動感を表現しているそうです。

その逆の、ロゴタイプからシンボルマーク有するロゴマークにコーポレートロゴを変更した例も、少ないながらあります。
最近の例ですが、2022年に、東急ハンズが株式会社ハンズへの商号変更に伴い新しいロゴを発表しました。このロゴ変更も、東急不動産ホールディングスとの資本関係を解消し、ベイシアグループの主要事業会社であるカインズが子会社化したという、やはり大きな「変化」がきっかけとなっています。
その変化の象徴となるロゴは、これまでのロゴタイプ型のロゴから、「手」がモチーフになった明確なシンボルマークを有するロゴマークへと刷新されています。1976年の創業時に付けられた「ハンズ」の名前には、生活者が自らの「手」でライフスタイルを創造するという想いが込められていました。その後時代は変わり、役割が変わってしまった「手」の再定義を行う、ということがブランドメッセージには書かれています。
ハンズの新ロゴの例は、明確なシンボルマークを新たに作ることで、新ブランドへ「変わる」ことを一目で示しつつ、ブランドの姿勢や考えをそのシンボルマークのデザインによって強烈に発信することにも成功した例だと言えるでしょう。

ここまでの事例などを見て、ロゴマークからロゴタイプへ変更も、その逆のロゴマークからロゴタイプへの変更も、いずれも企業としての「変化」を分かりやすく発信するための手段であることが分かってきたのではないでしょうか。
しかし、なぜロゴマークではなく、ロゴタイプのへの変更が多いのでしょうか。
ハンズの例などシンボルマークを有するロゴマークは、モチーフや図案などの何らかの「形」によって、見る人に様々なメッセージやイメージが伝えやすいロゴだと言えます。
一方ロゴタイプは文字が主体ですので、書かれてある文字列以上の意味やメッセージを込めるのが難しいものです。富士フイルムやコナミの例もそうですが、公式サイトなどに書いてある、テーマやコンセプトなどデザインに対する「説明」がなければ、意味やメッセージをロゴから感じ取るのは困難なはずです。それなのに、なぜロゴタイプを選択している事例が多いのでしょうか。
その疑問を解くカギは、起業の成熟度にあると筆者は分析しております。
なぜなら先ほど調査データとして注目した「Best Japan Brands 2026 Rankings」に挙げられている企業は、すべて既に世に知られている成熟した企業だからです。
そのことを裏付けるデータとして紹介したいのが、当サービスsynchlogoにご依頼頂いた制作事例の数です。「Best Japan Brands 2026 Rankings」と同時期である2020年前後に制作したロゴ制作実績100点を調べてみたところ、ロゴタイプ型のロゴはわずか7点ほどしかなく、残りの93点の事例はすべてシンボルマークを有するロゴマーク型のロゴという逆の結果が出たのです。さらにそのデータを深掘りすると、その93点のうち70点は、起業前後のタイミングでご依頼頂いています。

つまり、起業して間もなくのタイミングや、ハンズのように「変化の内容」を強く伝えるタイミングにおいては、ロゴを見る人に様々なメッセージやイメージが伝えられるロゴマーク型の採用を優先する傾向があるのだと考えられます。
そして、その必要がなくなった企業から順に、シンボルマークをなくし、
・ブランドが定着したことをアピール
・名前だけで十分戦える余裕を感じさせる
といった、ある種の「潔さ」を伴うデザインとして、ロゴタイプ型を選択し、デザインを刷新するようになっているのだと考えられるのです。
また、この成熟した企業における「潔さ」あるロゴデザインは、「ロゴタイプ型の選択」ではない別の例にもあります。それは、NIKEやスターバックスのように、ロゴから社名(ブランド名)ロゴタイプをなくし、シンボルマークだけを表に出すという例です。


上記はその2社のWebサイトトップページですが、いずれもロゴ部分はシンボルマークだけで、「NIKE」「STARBUCKS」の文字は見当たりません。これは、「既に名前は知られているから書かなくて良い」ことを表現した、逆説的なアピール方法だと考えられます。
こういったロゴタイプのみ、シンボルマークのみを、あえてロゴという企業の「顔」に据える「色々語らない」という戦略があることを踏まえると、企業各々のタイミングに合ったロゴの型を選択することが大切だということが見えてきたのではないでしょうか。
なお、起業時に最適な会社ロゴのデザインについては下記のコラムも参考になると思いますので、興味がある方は是非ご一読ください。
前章では、ロゴタイプ型のロゴを選ぶ理由が企業の成熟度に関係し、またその場合はデザインに「潔さ」を求めていそうなことも考察できましたが、次はいよいよ本丸であるその「デザイン」について深掘りしていきたいと思います。
誤解している方が多そうなのでまずお伝えしておきます。ロゴタイプは、いい感じに文字を並べれば割と簡単に出来上がりそうに見えますが、実はロゴマークよりもデザインするのがはるかに難しいものです。
これは、デザイナー界隈では暗黙の了解なことではありますが、ここではその理由をきちんと説明しておきたいと思います。
ロゴはブランドを象徴するものですので、どんなものであれ多かれ少なかれ「オリジナリティ(独創性)」が求められます。しかし、そもそもロゴタイプには「ロゴを文字だけでデザインしなければならない」という大きな制約条件があります。これは、「シンボルマーク」という自由に図形で表現できる要素を持ったロゴマークに比べると、デザインの自由度的にはかなり大きな縛りです。つまり「文字しか使えない」という強い制約の中、オリジナリティあるデザインができるかどうかという観点でロゴタイプを見つめ直すと、その見方は「たしかにデザインするのは難しそう」というものに変わるのではないでしょうか。
では、実際文字だけでオリジナリティを表現するのは、デザインする上で具体的にどのような点がハードルとなるのでしょうか。先に結論として、その3つのハードルを示しておきます。
・「可読性」を担保しなければいけない
・「既成感」が出ないようにしなければならない
・正式名称の「文字数」を攻略しなければならない
それでは、以下それぞれのハードルについて解説してまいります。
1章の、ロゴタイプとレタリングとの関係でも解説した通り、ロゴタイプがロゴとしての機能を果たすためには、一定の「可読性」が必要となります。レタリングは「読めなくても良い」ことをある程度前提にした上で作られるものですが、ロゴタイプは「ある程度は読める」ことが条件となります。
しかし、基本的にロゴタイプは、出来上がった文字列がロゴとしてなんらかの図形的表現もしていなければならない場合が多くあります。なぜならこの章の冒頭でも説明した通りロゴには「オリジナリティ」が必要となるからです。


たとえば上記synchlogoが以前制作した「丸栄情報システム」の事例では、IT企業であることが一目で分かるよう、「デジタル」の表現として幾何学に基づいた図形的な作字を漢字とカタカナの社名に施しています。また、「do-CREA」の事例では不動産業であることが分かるよう「家」の形をした図形を「A」の文字部分に取り入れています。
これらの事例では、社名の可読性にさほど問題は感じられないと思います。しかし、単なるフォントのベタ打ちと比べてしまうと、やはり可読性は低下していると言わざるを得ず、見る人によっては「ちゃんと名称が読み取れない」というケースも出てくるでしょう。
ここで、デザインよって実際可読性に問題が出てしまった事例をご紹介いたします。
韓国の自動車メーカー「KIA(起亜・キア)」のロゴタイプです。

こちら、「KIA」という綴りを知った上で見れば違和感を感じることはないのかもしれません。しかしそれを知らずにこのロゴタイプを見た人は「KN」と誤読してしまうことがあるというのです。実際、検索データ分析ツールAhrefsの調査結果として、アメリカ国内だけで「KN car」という検索が月間約3万回行われていることが確認されています↗。なお検索数の急増は2021年春頃から始まっており、KIAの新ロゴが車両に搭載されて街中で見られるようになった時期と一致しています。また別の記事↗では、調査会社Rerevが実施したアンケートで、回答者1,062人のうち44%がKIAのロゴを正しく読めず、26%は「KN」と認識したとの報告があることも発表されています。

これらの事例からも分かるように、オリジナリティあるロゴタイプを作り上げるには、「可読性の低下」と向き合いながらデザインをしなければならない難しさがあることを、しっかりと認識しておく必要があります。
特にロゴタイプを制作するデザイナーは、自分では読めているつもりでも、他の人にとっては読めない・誤読される可能性を考える客観的視点を常に持ちながらデザインしなけれならないのです。
ロゴタイプの作り方を大まかに分類すると、以下3つの方法となります。
①既成フォントをそのまま使い、文字サイズやレイアウト編集で「ロゴタイプ化」する方法
②既成フォントをベースに、ブランドらしさが感じられる字体へとカスタマイズする方法
③ブランドイメージを体現する、ゼロから新しい字体の文字を作り出す方法(=レタリング)

実は、世の中にある多くのロゴタイプは①もしくは②で作られており、有名なところでは、LOUIS VUITTONのロゴタイプも「Futura」という既成フォントがベースになっていると言われています。それならば、自分が立ち上げたブランドも同じ「Futura」を使って作れば、それなりに見えるのでは?と思う方もいるかもしれませんが、それは違います。

LOUIS VUITTONは、既に十分認知された成熟したブランドであることから、2章の最後で考察した「潔さ」の観点同様、字体で特別なことをする必要がない段階に既にあります。ですから、Futuraフォントだと分かる書体のロゴタイプを掲げてもさして問題はないのです。
一方、立ち上げたばかりの認知度のないブランドが、仮にFuturaフォントで書いただけのロゴタイプを掲げたとしても、さほどブランディング効果を得ることはできないでしょう。むしろ、デザインに手を抜いたと思われたり、LOUIS VUITTONの真似をしたように感じられたりするなど、マイナスブランディングになる可能性すらあるかもしれません。
つまり、オリジナリティあるロゴタイプとするには、既成フォントを使っているという雰囲気、すなわち「既成感」からの脱却と向き合わなければならないということなのです。
もちろん、既成フォントを使わない③の方法であれば、あまり深く考えずともオリジナリティあるデザインを手に入れることができそうに見えます。しかし、ゼロから文字を作ること自体かなり難易度が高く、豊富な経験あるデザイナーでなければ、そもそも文字として不自然に見えないものを作る程度ですら難しいのです。その上ブランドイメージを体現したタイポグラフィとなると、さらに高度なデザイン力が必要となるでしょう。

ここで既成感が全くない、③の方法にて作られた完成形ともいえる事例として、PRADAのロゴタイプの例を紹介しましょう。
PRADAのロゴタイプデザインは、1913年の創業時から基本構造を変えておらず、伝統的なモダンセリフ体を参照しつつ作成された、レタリングによるものです。その最初のロゴタイプが作成されてから約100年後の2012年、ブランドの世界観をより一貫して表現するために、PRADAは自社ブランドの専用書体である「PRADA CANDY」を開発しました。これは既存フォントを改変したものではなく、創業時から使われ続けてきたロゴタイプのデザインを書体化し、PRADAのためだけに設計されたオリジナルの字体です。高級感や洗練性、ファッションブランドとしての独自性を表現するために、文字の太細のコントラストやセリフの形状など、創業時から使い続けている「PRADA」の文字デザイン思想を強く反映させた、「ロゴ」という枠組みを超えたロゴタイプの発展形だと言えるでしょう。

このレベルに到達すると、ロゴタイプは単なる文字ではなく、ブランドそのものを象徴する資産へと昇華します。しかし、その実現には高度なタイポグラフィの知識と豊富な経験が求められるため、多くのブランドにとって現実的な選択肢とは言い難いでしょう。
まとめると、③の方法が現実的でない場合、つまり①・②の方法でロゴタイプをデザインする場合、次の章からご紹介するsynchlogo制作のロゴタイプ事例のような、何かしらの工夫・アイデアを加えて「既成感」を薄めていかなければ、オリジナリティあるデザインには辿り着かない、ということなのです。
ロゴタイプは、社名・サービス名・ブランド名をロゴとなるようデザインしたものですが、必ず正式名称で作らなければいけないというわけではありません。たとえばアルファベット3文字でお馴染みのNECのロゴタイプは、和名の正式会社名「日本電気株式会社」は採用せず、英名の「NEC Corporation」を名称を採用して作られています。また清水建設の英語ロゴタイプにいたっては、古くからその表記は「SHIMIZU」ではなく「SHIMZ」という綴りが採用され続けています。

こうした略称・通称をロゴタイプ化し、ブランドシンボルとして掲げるのは、認知されやすくするため、グローバル対応のためなど様々ですが、正式名称は知られなくてもよい、あるいは正式名称は既に知られているからロゴで表現する必要はない、という姿勢が見て取れます。これもやはり2章の最後で考察した、成熟した企業でこそ成せる「潔さ」というスタンスによるものと考えられるでしょう。
しかし、起業前後のタイミングでロゴタイプを作る場合、正式名称あるいは正式名称の主たる部分(「株式会社」「事務所」などを外した部分)で当然作りたくなると思います。synchlogoにご依頼くださった例でも、これまでに略称・通称をロゴタイプ化する例はほとんどありませんでした。
そうなると、ロゴタイプをデザインする上で大きな制約条件として出てくるのが「文字数」です。
略称・通称表記が使えるのであれば、出来上がりを見越して、ある種デザインにとって都合の文字数で略称・通称を考えればよいのですが、正式名称を使うということであればそうはいきません。
たとえば横長のデザインにしたくても、文字数が少なければ文字自体を左右に伸ばした形する、もしくは不自然に文字間隔を開けるなどしなければならない。ユニクロのような正方形型にしたくても、文字数が多すぎればレイアウトに困る、といったことは、デザインの現場では実際にしばしば起きていることです。
オリジナリティあるデザインを目指す上で、ロゴタイプの外形プロポーションは大切な要素です。
公式発表されてる事例がほぼ見つからないため推測となりますが、成熟した企業が掲げる略称・通称表記のロゴタイプも、もしかしたらこの文字数による制約条件を外した上で考えられた(デザイン上都合のよい文字数で略称・通称が考案された)のかもしれません。
前章ではロゴタイプのデザインを難しくしている3つのハードル(「可読性」「既成感」「文字数」)を明らかにしました。しかし、これらをすべて高い水準でクリアするデザインを作り出すのはそう簡単ではなく、またいきなりそこを目指して制作を始めるのは現実的ではありません。
そこでこの章では、ロゴタイプを作る上でプロのデザイナーも活用している、「デザインの第一歩目」となる、実践的な定番デザインテクニックをご紹介したいと思います。
世の中の著名なロゴタイプの事例をよく見ると、デザインの中に様々な共通点があるのに気付くことができます。そしてその多くは、既に確立された定番デザインテクニックを用いて作られた「痕跡」だったりします。またそれらのテクニックは、教本化され体系的に広まったのではなく、どこかの誰かが始めたものを参照して(真似して)広まったなど、デザイナーの間で自然と「暗黙知」として定番化したものばかりなのです。
つまりここでは、プロのデザイナーであれば知っているその「暗黙知」のデザインテクニックを共有していこうというわけです。ちなみにどのテクニックも、知ってさえいれば、比較的簡単に文字をロゴタイプらしく変身させてしまうことができる便利なものばかりので、デザイナーであるかどうかに関わらず、ロゴを作りたいと考えている人にとって、知っておいて損のない内容だと思います。
「文字の画数省略」とは、その名前の通り、文字の画数を省略する(減らす)ことで、文字の形を単純にするデザインテクニックのことです。
分かりやすい事例として、東京電力が2016年に変更し、現在もなおコーポレートロゴとして掲げている「TEPCO」のロゴタイプをご紹介いたします。

見た瞬間、縦の線が省略され3本の横線のみになった「E」の文字に目がいくと思います。またさらによく見ると「P」の文字も縦線が一部省略され、一筆書きで書いたような文字になっているのが分かるでしょうか。
このデザインは、ロゴ変更時に公式に発表されていますが、「先進的でグローバルな企業イメージを伝えていく」という目的のために施されたものだと思われます。画数を省略していることから可読性は犠牲にしていますが、文字を記号のような形へと単純化することで、その目的は達することが出来ています。なお、この「E」の文字の形は、TESLAやRAZERのロゴタイプでも見られ、既にパターン化されたデザインだと言っても過言ではなさそうです。

ちなみに、アルファベット大文字においては、画数省略がパターン化された文字は上記の「E」の文字以外にもたくさんあります。たとえば上記RAZERの「A」の文字ですが、横線を省略し「Λ」の形にした事例は下記のようにたくさん存在します。アルファベットはAからZまでの26文字しかなく、また大文字は縦・横・斜めの線および円のみで構成されている記号的な形であるため、こうした画数省略のパターン化が確立しやすかったのだと考えられます。

そう考えると、この先今以上にパターン化が進んだ場合、この画数省略テクニック自体がコモディティ化(同質化)し、「この文字、どこかで見たことがある」という「既視感」が出始めるかもしれません。すると、独創性あるデザインとは逆の方向へと向かうことから、この画数省略とは違うアプローチも必要になるかもしれないのです。
一方、流れるように文字を書くひらがなや、画数が多い漢字については、画数省略が難しかったり、画数省略のパターン化が難しいことから、コモディティ化は起きにくいと言えるでしょう。つまり、日本語のブランドネームをロゴタイプ化する場合は、その点は心配せずに、このテクニックで安心してデザインしてよいと思います(ただしデザインの難易度はかなり上がります)。

「近接文字の一体化」とは、隣り合う文字を一体化し、個性的な文字表現を行うデザインテクニックのことです。
Best Japan Brands 2026 Rankingsに挙げられている企業では、みずほ銀行と野村総合研究所のロゴタイプがこのテクニックを用いてデザインされています。

このテクニックで注意が必要なのは、文字の組み合わせによっては可読性が著しく落ちてしまったり、不自然な雰囲気になってしまったりする点です。上記、みずほ銀行・野村総合研究所の例は、いずれも可読性に問題はなく、また人によっては一体化していることに気付かないほど自然な仕上がりのように感じるかと思います。これは、隣り合う文字が、お互いの「つくり」を共有できているからです(みずほ銀行の例は「U」の右側部分と「H」の左側部分にある縦方向のつくりを共有し、野村総合研究所の例は「N」の右側部分と「R」の左側部分にある縦方向のつくりの共有している)。
一方、イオンのロゴタイプの例のように、「つくり」を変形させ、可読性を犠牲にしてまで文字の一体化図ろうとした事例も少なくありません。正式には「AEON」という綴りですが、ネット上では「IEON」や「/EON」に見えるという指摘もあります。

しかし、実はこのイオンのロゴタイプがこのような文字一体化を行っているのには理由があります。「イオン(AEON)」の名前は、ラテン語および古典ギリシャ語で「永遠」を意味する言葉に由来しているのですが、そのラテン語および古典ギリシャ語では、「A」と「E」は結合した文字(合字)である「Æ」を用いた「ÆON」とするのが正式な表記なのです。つまりこのデザインは、「AEON」の綴りからすると可読性を犠牲にしたデザインと解釈できますが、由来に基づく表記「ÆON」からすると、オリジナリティを守ったデザインだと言えるでしょう。
つまり、ロゴタイプデザインにおいて、近接する文字の一体化が問題なく行えるかどうかは、文字の並びにかなり左右されるということです。一体化がし易い名称、しにくい名称があるため、このテクニックは適用可能なケースが限定的な手法だと言えるでしょう。
“簡単な”定番デザインテクニックとして最後にご紹介するのは、1文字だけイレギュラーにさせるというテクニックです。「イレギュラーにさせる」ことが具体的にどういうことを指すのか理解してもらうために、まずは実際の例として、村田製作所、BRAUN、DELL、Mobilのロゴタイプをご覧ください。

【上記4例の強調した部分の解説】
村田製作所:「R」の文字だけ大文字にしている。
DELL:「E」の文字だけ変形した形にしている。
BRAUN:「A」の文字だけ大きく(縦長に)している。
Mobil:「o」の文字だけ色を赤にしている。
このほかにもイレギュラーにさせる方法はたくさんあると思いますが、いずれロゴタイプも、他の文字は同じ字体・トーン・色なのに、1文字だけ分かりやすく変化を付けることで、ただの文字列がロゴタイプ化していることが分かるかと思います。
では、なぜ1文字だけイレギュラーな存在にすればロゴらしく見えるのでしょうか。実はそれは、以下2つの理由で説明することができます。
◆人間の脳が持つ「違和感を察知するクセ」を利用している
1点目は、人間の脳が持つ「違和感を察知するクセ」を利用できる点です。心理学には「フォン・レストルフ効果(孤立効果)」という法則があり、同じようなものがきれいに整列している中に1つだけルールの異なるものが混ざっていると、人間の脳はそれを猛烈に意識し、記憶に刻み込もうとします。均一に並んだ文字列は、脳にとってはただの「テキスト(読み飛ばす情報)」に過ぎませんが、そこに意図的な“エラー”を1箇所だけ生み出すことで、文字列は一瞬にして「視線を引きつけるデザイン」へと変わるのです。
◆不完全さが「物語(ストーリー)」を生み出している
2点目は、その不完全さが「物語(ストーリー)」を生み出すという点です。完璧に整った文字並びは美しい反面、無機質で何も語ってはくれません。しかし、1文字だけが変化していると、人は無意識のうちに「なぜ、ここだけ違うのだろう?」とその理由を探そうとします。 先に上げた4つの事例の1文字だけ違う部分にはすべて、企業のイノベーションへの野心や、事業のアイデンティティ、視覚的フック(引っかかり)の追求といった明確な背景(ストーリー)が存在します。この問いと答えがユーザーの脳内でつながった瞬間、ただの文字は「ブランドのビジョンを雄弁に語るメディア=ロゴタイプ」へと変化するのです。
【参考】
村田製作所の「R」
R&Dや、新技術、イノベーションにかける熱い想いを表現するため、「Research(研究)」の頭文字 “R” が大文字になっている。(参考文献:経営理念(社是)
村田製作所)
DELLの「E」
傾いた「E」には、「turn the world on its ear=世界をあっと言わせる」というマイケル・デル会長の願いが表現されている。(参考文献:Dell Logo & Brand Kit - SVG, PNG, Vector - Logo.dev)
BRAUNの「A」
全体のデザインにリズム(調和)を加えるために、中央の「A」が高くされている。(参考文献:Braun Logo and symbol, meaning, history, PNG, brand)
Mobilの「o」
当時進んでいた円形のキャノピーやポンプといった建築計画のデザインコンセプトを補強するためであり、また人々が「モーバイル」ではなく「モービル」と正しく発音するのを助けるために、「o」の文字だけが赤になっている。(参考文献:Mobil logo, designed by Tom Geismar, 1964
Logo Design Love)
このように、1文字だけイレギュラーにするテクニックは、非常に簡単ではありますが、実行する上では注意が必要です。
それは、「なぜ、その文字を選んで、その方法であえてイレギュラーにしたのか」という明確なロジックが不可欠であるという点です。ただ単に「なんとなく目立つから」という理由だけで特定の文字を変形・着色してしまうと、それは意味のあるフックではなく、ただの視覚的なノイズとなり、ブランドのメッセージを濁らせてしまいかねません。
一見すると簡単で、すぐにでも真似できそうなテクニックだからこそ、その1文字にどんな「意味」を背負わせるかという、コンセプト設計の深さが試されるテクニックだと言えるでしょう。
それではここからは、実際のロゴタイプの作り方を見ていきましょう。まずはsynchlogoで実際に制作した事例の中から、既存のフォントをベースに作り上げていった例を紹介したいと思います。
今回ロゴタイプの制作事例として紹介する「株式会社リプカ」さまは、主にSNSマーケティング、インサイドセールス代行、Web広告事業を行っている会社です。
社名の「ripuca」はスワヒリ語で「燃え上がる」という意味で、“松明(たいまつ)を受け継いでいく”ように、愛ある炎・温かさを灯していない人達に、それを届ける」という意味が込められています。そしてロゴによって発信したいメッセージは「繋がりによって幸せが運ばれる」というもので、そのリクエストより、文字が繋がりながらひとつのデザインとして形作られた現在の社名ロゴタイプが完成したのです。

最初の「r」の文字のみ繋がっていないのは、rには”我々”という意味、それ以降の文字は”次に受け継がれる人”を意味しているためでもありますが、その他に、アイコン・ファビコン用の対応策として、rの文字のみ独立して使えるようにした、という理由もあります。詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
次に、どのようにしてその「繋がり」をコンセプトにしたロゴが作られていったのか、その過程を見ていきたいと思います。ロゴタイプの文字はゼロから作る場合もありますが、ここでは「繋がり」というはっきりしたテーマがあったので、文字の形にも繋がりが作りやすそうな既存のフォントを探した結果、「Bell MT」というフォントをベースとすることにしました。

最初から文字が繋がっている筆記体のフォントも探したのですが、文字としての視認性(きちんと「ripuca」と読めること)に乏しく、また筆記体独特の華やかな雰囲気がripucaには合わないと感じたため却下しました。「Bell MT」は一文字ずつの視認性もしっかりありつつ、うまく手を加えれば文字同士をうまく繋ぐことができ、全体が一体となったシームレスなロゴタイプが作れそうな可能性を感じたため採用となりました。
既存フォントを使ってロゴタイプを作る時のポイントは2つあります。1つはコンセプトに合った形にしていくこと。もう1つは既存フォントがベースだと分からないよう「既視感」をなくしていくことです。この2つのポイントを中心に、下の図のように既存フォントに手を加えていきました。ちなみにこの一連の作業だけで20時間近くがかかっています。
仕上がりの形を見ると、元の「Bell MT」の字体の雰囲気はどこにもなく、かつ「繋がり」のデザインもしっかりできていることが分かると思います。
既存フォントをベースにしても、きちんと検討を重ねれば既視感をなくすことができ、オリジナリティのあるロゴタイプを作ることができるのです。

また既視感のない、オリジナリティのあるロゴタイプにしたいがために、ユニークな形の文字を作ろうと試みるデザイナーも多くいます。ですが、オリジナリティがあれば良いデザインという訳ではなく、そこに「文字としても整った印象」が加わってはじめて良いデザインになるのです。文字のデザインを専門とする方であれば、長年の経験や勘でどうすれば整った印象が作れるかが分かると思います。しかしそうでないデザイナーでもできるテクニックが一つあります。それは「デザインコード」を使って文字を作るやり方です。
文字には「とめ・はね・はらい」など、筆運びに共通するポイントがあります。そのポイントごとに「デザインコード」を作り、当てはめられるところ全てにそれを用いて作っていくのです。そうすることで文字列全体に整った印象が生まれ、オリジナリティがありつつも「王道感」のある文字が出来上がるのです。

前節では、既存のフォントからロゴタイプを作った例を紹介しましたが、ここではゼロから文字を作り上げた例を紹介したいと思います。文字を作るのには様々な方法がありますが、同じくsynchlogoで制作した、グリッドをベースにした作り方の例をご紹介したいと思います。
この制作事例のクライアントである「丸栄情報システム株式会社」さまは、システム受託開発等を行うIT企業です。
同社は、本社がある地域の過疎化が止まらない様子などを見て、それをITを活用することで少しでも状況変えていきたいという想いから創業されました。地方創生を旗印に、関係者と共に手を取り繁栄していく地域密着型の会社づくりをヴィジョンに事業は進められていきました。

そのヴィジョンに呼応すべく、IT会社特有の無機質なイメージを払拭した、親しみある雰囲気とすることがコンセプトに据えられました。
同じ太さのラインを使い、基本的にはグリッドに則った構成にてIT企業らしいデジタル感あるデザインを基本にしつつも、部分的に丸みを帯びさせたり、あえて線を省略したりすることで、無機質な形に有機的な印象を同居させた、「やさしさのあるデジタル感」を獲得したロゴに仕上げることができました。

またこちらのロゴでもアイコン・ファビコン用の対応策を行っています。それは、「丸栄情報」の4文字のみを組み合わせたシンボルマークを、ロゴタイプとは別に作成したのです。グリッドの構成を活かし、マークとして独立した形として使える正方形の形に仕上げているのが特徴です。
親しみがありつつも、ベースはデジタルなイメージであるため、いくつもの四角いブロック(ドット)によって描いた、ピクセルフォントのような字体で、文字の大まかなフォルムを作っていくことにしました。
最も画数が多い文字を基準に、縦・横に配列するブロック数を決め、そのブロックをドット絵のようにひとつひとつ塗りつぶしながら「丸栄情報システム」の文字を描いていくと、デジタル感ある社名のロゴタイプが出来上がります。

ちなみに今回のロゴタイプは、画数の多い漢字と少ないカタカナが入り混じっているため、文字の密度感に差が出ないよう、漢字の方は画数の間引きを行っています。どうしても画数が多い漢字は密度の高い図形になりやすく、隙間のないつぶれた印象になりがちなのです。小さなサイズでロゴを使った時、カタカナは読めても漢字が読めない、といった状況にならないよう配慮することが大切になります。
ここまでのデザイン作業では当然親しみある雰囲気は湧いてこず、ただのデジタル感あるロゴタイプでしかない状態です。そこで、ところどころ文字の角を丸める処理を行い、再度全体を確認してみたところ、文字にやさしい印象が加わり、親しみある雰囲気がにじみ出てくるようになりました。しかし理想の雰囲気にはもう少しといったところで、この状態からさらにもうひと手間加える必要があるように感じていました。

そこで、文字の線をあえてところどころ途切れさせるような処理を施してみました。するとこれが効果的で、それまでよりもグッと親しみある雰囲気に近づけることができ、デザインの基本形を完成させることができました。

ここまで行った「画数を間引く」「丸みをつける」「文字の線をところどころ途切れさせる」という手の加え方は、文字の正確性を低下させるような処理ではあるのですが、逆に可読性(文字の読みやすさ)を上げることを狙っており、今回もその効果はしっかり得られました。
このように、正確性よりも可読性という機能面を重視した工夫が、同時に理想とするデザインにも貢献できたのが、このロゴタイプデザインにおける一番の特徴であった言えるでしょう。
ロゴマークでは、意味やメッセージをモチーフに込め、それをシンボルマークとしてデザインすることができます。しかしロゴタイプの場合は、文字自体をデザインするため意味やメッセージを表現するのがなかなか難しく、ブランディング上はロゴタイプにしたいのに、満足できるデザインがなかなかできないといったことがしばしば起こります。
そこでここでは、その課題をクリアする方法をご紹介したいと思います。synchlogoで制作した「GoStopマネジメントシステム」のサービスロゴで、文字本体にモチーフを組み合わせてロゴタイプを作り上げた例です。それではその詳細をご覧ください。
「GoStopマネジメントシステム」は、一般財団法人日本気象協会が提供する物流向けのサービスで、ロゴはトラックなどを彷彿とさせる車両のモチーフと「GoStop」の文字を組み合わせたロゴタイプです。

このサービスは、平成の終わりから令和初めにかけて激甚化が顕著だった気象災害を背景に、気象の影響を特に受けやすい「物流」というインフラ支援を目的としています。安定した供給、被災リスクを最小化、ドライバーの安全確保のために活用できるサービスとしてはじまりました。

「気象」「物流」は身近かつ生活に直結した公共性の高いテーマであることから、ロゴデザインに求められているのはカッコよさでも意味深い意匠性でもなく、誰もが理解できる「分かりやすさ」というコンセプトでした。そしてその答えが車両のモチーフにサービス名を組み合わせるというデザインだったのです。
(より詳しい制作エピソードはこちらをご覧ください)
車両とサービス名をロゴで示したければ、車両をモチーフに用いたシンボルマークと、シンプルな「GoStop」のロゴタイプで、普通のロゴマークを作れば良いのではないか?という意見もあると思います。
何故わざわざ文字にモチーフを組み合わせるかというと、モチーフと文字の両方を「主役」にしたかったからです。
ロゴマークは、シンボルマークとロゴタイプに分かれているため、デザイン上、どちらかが主役、どちらかが主役を引き立てる脇役というふうに、役割分担せざるを得ないのです。GoStopのロゴデザインコンセプトは「分かりやすさ」であったため、車両のモチーフも、「GoStop」のサービス名も、どちらも前面に出したかった。そのため、サービス名にモチーフを組み合わせてデザインする方法を選んだのです。
しかし残念ながら、文字に対してどんなモチーフでも組み合わせられるという訳ではありません。文字にモチーフを組み合わせてロゴタイプを作る時、文字の形に対してモチーフの形が上手く合うかどうかがポイントになるのです。

この事例では、「GoStop」の文字列の中にある2つの「o」の文字を車両のタイヤに見立てることができそうだったため、上手く文字にモチーフが組み合わせてデザインを進めることができました。では実際どのようなことを考えてモチーフ選びを行ったかというと、
①GoStopのサービス内容に合いそうなモチーフをとにかくたくさん思い浮かべる
②その中から「GoStop」の文字の形に合いそうなものを選出する
③選んだモチーフが文字と上手く組み合わせることができそうかスケッチで試してみる
このような手順で進めていきました。

また実は、車両のほかにも「道路(路線)」をモチーフに用いた案も作っており、これも上記の手順で生み出すことができたデザインでした。
文字にモチーフを組み合わせるには、文字の形がモチーフの形「にも」見えるように変形していかなければなりません。そうすると嫌でも文字の形は崩れるため、文字としての可読性は低下していってしまいます。

▲アウトライン化・モノクロ化で可読性を確認
社名や店舗名、サービス名など、文字列が読めるものであることを前提とするのであれば、文字の形の崩し方には注意が必要です。崩す程度を変えながら、最適なバランスが得られるまで何度もトライ&エラーを繰り返すようにしましょう。
オリジナルの文字を作るロゴタイプですが、2章の解説で紹介したように、既存のフォントをベースにデザインしていくのはさほど難しいことではありません。
しかしクライアントの要望などにより、ゼロから文字を作り出すことになった場合そうはいきません。プロのデザイナーでもそれは簡単なことではなく、特に難しいのは、全ての文字が同じ字体でできていて、全体にまとまりが感じられるようにデザインすることです。
ここではそんなまとまりあるロゴタイプの作り方のポイントを、synchlogoで制作した事例を通して解説していきたいと思います。
ご紹介する事例は「ミツクル」というサービスサイトのロゴで、同サービスは、Webサイト・ECサイトなどを対象に、それらの見積もりから制作依頼までをワンストップで行うことを提供しています。

誰でも相談できそうな気軽さ、どんな相談内容にも対応できそうな柔軟さが感じられるようなロゴタイプにしたい、というのがデザインへのリクエストでした。それに応えられるように、ワンポイントカラーを複数色入れることで、色々なお客様に対応できそうな印象を醸し出しつつ、またできるだけ形を単純にした文字形状によって、どんなお客様にもフラットに対応できそうな雰囲気も感じられるロゴを作成しました。
パソコンにインストールされているフォントを見ると、異なる文字でも同じ字体だと一目で認識できるようにしていると思います。それは、「とめ・はね・はらい」などのディテールに共通した規則性を持たせているからです。ですので、異なる文字でも同じ雰囲気が感じられ、文字列全体にまとまりを得ることが可能になるのです。
しかしその規則性をロゴタイプでいざ作ろうとしても、そう簡単に開発できるわけではありません。また複雑な文字であればあるほどそれはより難しくなるでしょう。
そこで割と簡単なテクニックとしてご紹介するのは、ひとつひとつの文字の輪郭、つまり文字の外形を似せるという手法です。
これはタイポグラフィと呼ばれる分野における古典的な手法で、下記のような事例が昔から多く作られており、有名企業ではナイキの昔のロゴの「NIKE」の4文字のデザインも実はそうなっています。

文字の外形が似ていれば、文字の種類や画数も関係なく、文字の形を共通させたい外形に変形させれば、全体のまとまりある文字列を作ることができるのです。

ただし、全ての文字にそれが適用できる訳ではなく、例えばナイキの事例でもそうですが、そもそもの文字の形が長細かったり横長だったりする場合はちょっとした工夫が必要です。ミツクルもその工夫は行っており、この場合は、外形の特徴はそのままに、文字ごとに幅だけを変えることで、似たような外形である印象を損なうことなく作り上げることに成功しています。
さらに、アルファベットやカタカナなど、文字の形が複雑でなければ、共通の図形を文字のデザインに取り入れて、さらに文字列全体にまとまりを与えることもできます。同じ図形が文字列全体に散りばめられると、一定の法則に従ってデザインされた印象となるため、ひとつひとつの文字がより同じ字体のように見えてくる効果があるのです。

ミツクルのロゴでもその工夫を行っており、下図のように共通の図形で文字をデザインしています。その結果全体のデザインによりまとまりが与えられ、ロゴタイプとして質の高いものに仕上げることができました。
いかがでしたでしょうか。
ロゴマークにはないロゴタイプの特徴、そしてロゴタイプのデザインの難しさと奥深さを感じることができたのではないかと思います。
これからロゴタイプを作ってみようと考えている方の参考になれば幸いです。
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