ロゴ制作・ロゴデザインを依頼するならsynchlogo(シンクロゴ)
COLUMN
synchlogoにロゴ制作をご依頼くださるお客様の中で特に多いのは、「新しく作る会社にロゴが欲しい」「企業のロゴを作り直したい」といった、会社や企業のロゴ(コーポレート・ロゴ)を求める方々ですが、ご依頼の動機や理由を伺うと、ほとんどの場合「会社をかっこよく見せたいから」という答えが返ってきます。
世間に自社を良く見せたいのは当然のことです。しかし会社の事業内容やアピールポイントを世の中に広めるには膨大な時間や労力がかかります。そこで手っ取り早くイメージアップを図るために「見た目」を良くしようとどの会社も考えるようになります。
近年、「企業にもブランディングが必要」という考える会社が増え、様々な会社がCI(コーポレート・アイデンティティ)やVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)を取り入れ、会社のヴィジュアルに関わる部分をしっかりと整えるようになってきました。大きい会社ほどその傾向は強く、WebサイトやCM、ポスターやパンフレットなど、企業PRの手段として使われるありとあらゆるものが、その企業ならではの世界観でトータルにデザインされています。
皆様が考える通り、ロゴは会社をかっこよく見せるために有効なツールです。ではその期待に応えられる「かっこいい会社ロゴ」とは、一体どのように作っていけばよいのでしょうか。このコラムではsynchlogoの会社ロゴ制作事例や、その他著名な企業のロゴ事例などを俯瞰しながら、起業時に必要となる会社ロゴの作り方や使い方などを解説していきたいと思います。
【目次】
「ブランディングといえばロゴ」と言われるほど、会社がブランディングを行う時にはまず最初にロゴを作ろうとします。たしかにロゴがない会社はサマになりませんし、社会的信用も得られにくいかもしれません。
下の名刺の例を見てみてください。
ロゴがない名刺とロゴがある名刺ですが、これを見比べてどう感じるでしょうか。多くの人は左のロゴがないものより、右のロゴがあるものの方が会社として安心や信頼を感じるのではないかと思います。
このようにロゴがあるだけで「サマになる」ことは、誰しも感覚的に理解していると思います。これが会社がブランディングを行う際、まずはじめにロゴを作ろうとする理由なのです。
それでは会社は実際どのようなところにロゴを活用しているのか、ここではその一般的な使い方を挙げていってみたいと思います。
会社ロゴは、会社で使用するビジネスツールのほとんどに使われています。ビジネスツールとは名刺や会社案内など、会社を紹介、宣伝するためのもののことで、仕事をする上で必要不可欠なものもたくさんあると思います。ここではまず、ビジネスツールおける会社ロゴの活用方法についてご紹介していきたいと思います。
◆名刺
ビジネスシーンで最も身近なツールが名刺です。synchlogoでもお客様の半数近くが「名刺も合わせて作って欲しい」とご依頼くださいます。今の時代、名刺は持っていないと恥ずかしいとされるほど必須なもので、営業などではまず名刺を相手に出すことがマナーにもなっているかと思います。
名刺における会社ロゴのはたらきとして重要なのは、名刺に個性を与えることです。ロゴの入っていない名刺をたまに見かけると思いますが、文字だけが並ぶ名刺には特徴がなく、受け取った人に何の印象も残さないでしょう。また名刺のほとんどは「白地に黒文字」であることから、たくさん名刺を受け取る人は似たようなたくさんの名刺がデスクに保管されているはずで、いざ目当ての名刺を探そうとしても、どれが誰の名刺か分からなくなってしまうと思います。名刺は自己紹介で使うツールであると同紙に、渡した相手に自分のことを覚えてもらう、思い出してもらうためのツールでもあるのです。そのためには名刺に個性を与え、相手に印象付けを行う会社ロゴが必要となるでしょう。
また会社ロゴは、名刺に風格を与え、サマになる見栄えにしてくれます。「白地に黒文字」だけの素っ気ない名刺は、スーツを着ていないビジネスマンと同じで、相手に不安を覚えさせてしまうかもしれません。ビジネスツールの見栄えは、その会社がちゃんとしているかどうかを測るバロメーターにもなっているのです。
しかし、中には名刺にそこまでお金をかけてデザインできない、きちんとデザインしたところで本当に画期的な効果が得られるのか疑問だと考える方もいると思います。そんな方にこそ会社ロゴは必要で、「白地に黒文字」だけの名刺に会社ロゴだけ入れれば、紙面上の良いアクセントになり、最低限見栄えのするものに仕上げることができるでしょう。
◆封筒
封筒は、書類や資料を郵送・発送する際や、同じく書類や資料を持ち歩いたり、人に渡したりする際の包装として使われます。郵送の仕様に合わせて様々な規格サイズが展開されていますが、ビジネスシーンでよく使わるのは「長3」「角2」と呼ばれるサイズで、synchlogoへロゴ制作と一緒に封筒デザインをご依頼頂く際もほとんどがこの2サイズです。近年はデジタル化によって様々な書類や資料がメールやチャットで送受信されるようになり、郵送・発送を行うこと自体がだんだん少なくなっています。しかしビジネスシーンでは機密情報などを扱うこともあることから、中身の書類や資料は見えないようにして包装して送る・持ち運ぶことがマナーです。よって機会は少なくとも、今後も必須ツールのひとつではあり続けると考えられます。
そんな封筒ですが、人に書類や資料が入った状態で渡すと、その封筒ごと保管されることが多くあります。先述した通り、封筒は「長3」「角2」の2つの規格サイズを使っていることが多く、そのため受け取った方も同じサイズの封筒が並んだ状態で保管することもしばしばある訳です。そこでその封筒に会社ロゴが印刷されていれば、そのロゴが目印となり、それがどの会社から渡されたものであるかが分かるようになります。何も印刷されていない無地の封筒だと、きっと後から探しづらくなることでしょう。
また封筒を外で持ち歩くこともあるため、その封筒に会社ロゴを印刷しておけば会社の宣伝にもなります。無地の封筒ではまわりの人から何も気にしてもらえませんが、目がいくような位置やサイズで会社ロゴが印刷されていれば、何気に見られることもきっとあるでしょう。
◆会社案内
会社案内は、パンフレットやリーフレットといった形で作られますが、いずれも会社の概要や事業の内容、理念やヴィジョンなどの情報をまとめたものです。会社の自己紹介をするためのツールですので、限られたページ数で分かりやすく要点をまとめて作ることが大切になります。
そして渡された人がストレスなく読めるよう、情報の優先順位や主従関係を整理し、情報量が多い時は情報の取捨選択なども行いながら、紙面に美しくレイアウトいくことも重要です。これはDTP(Desktop Publishing=パソコン上で印刷物のデータを制作すること)と呼ばれるデザインの範疇で、その専門のデザイナーもいます。
そんな会社案内で、会社ロゴがどのように活用されるかというと、ロゴがデザインの構成要素のひとつになることは言うまでもありませんが、一番重要なのは会社ロゴが紙面デザインのトンマナになるということです。トンマナとはトーン&マナーの略で、「トーン(tone=色や色調)」と「マナー(manner=様式や作風)」という意味から成っています。
つまり、会社ロゴの色や作風が会社案内紙面のデザインに大きく影響を与えるということです。ロゴで使っている色をベースカラーやアクセントカラーに使ったり、ロゴの意匠を紙面にも取り入れたりなどします。これは、ロゴと会社案内紙面が一体感あるデザインとなるようにすることが目的で、トータルデザインとも呼ばれる手法です。ロゴの制作時に議論したコンセプトやデザインの方向性を踏襲し、ロゴデザインを拡張したような仕上がりにした会社案内とすると、会社のブランディングとしても非常に高い効果が得られるでしょう。
◆資料
紙に印刷して配布する資料、プレゼンテーションやデータ送付用にパワーポイントやPDFなどパソコンで作った資料など、仕事を進める上でこういった各種資料は不可欠なものです。資料は客先などに内容を説明する際に使われ、時にはその資料は客先に保管してもらうこともあります。
資料は、端的に内容を伝えられるよう作られるため、ヴィジュアルとしては無機質な雰囲気になりがちです。内容はもちろん大切ですが、相手に良い印象を抱いてもらうためには、この資料自体のデザインというのも大切になります。見栄えがする資料はそれだけで相手に好印象を与えるでしょう。
しかし文字やグラフ・表、写真や画像など、資料に収めなければならない情報量は少なくなく、それをまとめるだけでもかなり労力はかかります。仮に1度の会議資料のためだけに、会社案内並みのデザインをしたとしても、かけた労力だけの結果を得られることは少ないでしょう。
そこで活躍するのが会社ロゴです。名刺同様、資料の隅にロゴを添えておくだけで、それなりに見栄えのする資料に仕上がるでしょう。また色なども会社ロゴで使用しているものと同じにすると、グッと会社らしい資料に仕上げることができると思います。資料はある程度デザインされたテンプレートから作られることが多いため、一度ロゴやロゴの色を使ったフォーマットを整えておくと、何かと便利に使うことができるでしょう。
前節で紹介したビジネスツールにおける会社ロゴの使い方は、あくまでツールの持つ機能や役割を手伝ったり後押ししたりするものでした。ここでは他の使われ方として、会社ロゴが単体ではたらく「アイキャッチ」として機能する活用方法について紹介していきたいと思います。
◆看板・サイン・表札
建物や店舗に設置する看板・サイン・表札は、その会社がそこにあることを示すもので、会社ロゴが最も活躍する設置箇所のひとつと言っても過言ではないでしょう。会社ロゴは会社の「顔」とよく言われますが、まさに「顔」としての使われ方がこれらだと思います。
看板・サイン・表札はアイキャッチを目的にしていることから、どのくらいの距離からどれくらいの大きさで見えるかといった視認性を検討することが重要となります。見え方によってその会社の風格や威厳など、感じさせるイメージが異なってくるため、設置検討には特に気を使います。
設置検討の際は、実物の大きさにロゴを印刷したモックアップと呼ばれるものなどを準備し、実際現場でどのように見えるかなどを確認します。また使う素材や印刷方法によって見え方もかなり変わるため、そのあたりへの注意も必要になってきます。
◆ホームページ
ホームページは、今や会社にはなくてはならないものになりました。その機能は、会社や会社が行っている事業の紹介、規模や仕組みなどの組織情報の掲示、ブログやお知らせなど広報を目的とした発信機能、Q&A、問い合わせフォームなど、実に多岐にわたります。会社だけでなく個人も持っているホームページは、もはや現代ビジネス社会におけるインフラのひとつになりつつあります。
そのホームページにおいて、会社ロゴはほぼ必ずトップページに掲げられています。そして多くのホームページのデザインは、会社案内同様、ロゴのトンマナを踏襲したデザインとなっているところが多く見られます。しかし会社案内と異なるのは、会社案内の場合会社ロゴは、表紙でも控えめなところにあったり、裏表紙など目立たない場所に配置されていたりすることが多いですが、ホームページではほぼ必ずトップページ一番上の、最も目立つ場所に掲げられていると思います。
これは、この説の冒頭でも説明した通り、会社ロゴをホームページの中におけるアイキャッチとして使っているからに他なりません。また、最も目立つ場所にロゴがある訳ですから、先にそのロゴのデザインが決まっていないと、ロゴがホームページに自然と馴染んだデザインとすることができない、といったこともしばしば見られます。
なお名刺同様、ホームページもデザインにさほどお金がかけられないという方もいると思いますが、実はそんな方にも会社ロゴは有効に活用できます。ホームページ本体にはさほどお金のかからないシンプルなデザインの既成テンプレートを用い、そこにしっかりデザインされた会社ロゴを入れれば、同じく名刺の時同様、最低限見栄えのするものができると思います。
◆SNS
ビジネスシーンにおいて、ホームページの次にインターネットを利用した発信ツールとして頻繁に使われているのがSNSです。X(旧Twitter)やFacebookをはじめ、近年ではInstagramやTikTok、YouTubeまで活用している会社も増えてきました。
それら各SNSに共通しているのは、いずれも好きなプロフィール画像が掲げられるという点です。個人であれば顔写真やイラストですが、会社や企業のSNSでは自社のロゴを掲げてしているところがほとんどです。synchlogoにご依頼頂くお客様でも、「SNSのプロフィール画像にも使うので、円形に上手く収まるようなプロポーションでデザインしてください」と言われることが増えてきました。
SNSにおけるプロフィール画像がシンボリックに扱われていることは言うまでもないと思います。タイムラインなどに流れる投稿には、必ず投稿者のプロフィール画像が添えられています。前述した2つのアイキャッチとしての使い方とはまた別の、現代ならではの会社ロゴの活用方法だといえるでしょう。
次に、最近の会社ロゴはどのようなものが好まれているか、その傾向を見ていきたいと思います。
会社のロゴには2つの種類があります。ひとつはシンボルマークを有する「ロゴマーク」、もうひとつはマークのない、企業名の文字だけをロゴ化した「ロゴタイプ」です。
これまで会社のロゴといえばシンボルマークを有するロゴマークのものが多かったですが、こちらのコラムにもあるように、近年はロゴタイプのものも増えてきました。街なかにあるサインやWebサイトを見ても、文字だけの会社ロゴを多く目にするようになったと思います。
しかしsynchlogoへご依頼くださるお客様、特に中小企業の方々は、現在でもそのほとんどがシンボルマークありのロゴマークの制作を希望なされます。それは、会社名そのもののロゴタイプよりも、マークありのロゴの方が会社の「顔」となりやすく、またアイコンやファビコンなど、シンボルマーク単体で使うシーンも多くあるから、というのが理由のようです。
そこでここでは、主にシンボルマークを有する「ロゴマーク」の作り方について解説いきたいと思いますが、その前にまずは現在の会社のロゴマークはどのようなデザインの傾向があるかについて見ていきたいと思います。
ロゴは、制作を担当するグラフィックデザイナー達のセンスやテクニックにより、個性的でバラエティ豊かなデザインが生み出されるものです。しかし会社のロゴマークにおいてはデザインにある傾向を見つけることができます。それは、会社のロゴマークは会社名とリンクしたデザインが多いということです。上記のBest Japan Brands 2020 Rankingsに挙げられている100社の会社ロゴを見ても、シンボルマークを有する39社のロゴのうち、実にその約半分ほどが会社名とリンクしたデザインとなっているのです。
それではそのBest Japan Brands 2020 Rankingsに挙げられている中から何社かのロゴマークをピックアップし、会社名とリンクしたデザインとは具体的にどういうものなのかを解説していきたいと思います。なおその作られ方は大きく5種類に分類することができますので、以下1つずつご覧くださいませ。
会社名が何らかの事物を由来としたネーミングがなされており、その事物をモチーフにシンボルマークをデザインしたのがこのパターンです。先ほど挙げた39社の中では、日本の財閥系企業である三菱グループの3つの菱形をモチーフにしたロゴマークがそうであるほか、海外ではiPhoneやMacで有名なアップル社のリンゴのロゴマークも代表的な例として挙げられます。
このシンボルマークは、会社名の由来となっている事物をそのままモチーフにすれば良いだけですので、デザイナーのひらめきや発想力はさほど必要とせず、そのモチーフをいかに洗練させた形にデザインできるかがデザインクオリティに繋がってくるのです。
こちらは、①のように会社名=モチーフというパターンではなく、会社名を連想させる事物をモチーフに用いてデザインしたパターンです。先ほど挙げた39社ではワークマンのロゴマークが最もその特徴を表しています。
「ワークマン」は建設現場などで働く作業者向けの衣類やツールを取り扱っていることから、作業者=WORKMANがそのままネーミングされています。シンボルマークを建設現場で使われる縞鋼板のモチーフにしたのは、そのネーミングがストレートに連想できることを狙っていると考えられます。
このシンボルマークの作り方はモチーフ選びがとても重要で、的確に連想しやすい事物がいかに見つけられるか、会社のイメージにぴったな事物が見つけられるかがデザインのクオリティに繋がってくるのです。
会社名にはその名前にした由来が必ずありますが、その由来を何らかの形でヴィジュアル化し、ロゴマークへとデザインしたのがこのパターンです。先ほど挙げた39社にある大和ハウスのロゴマークは「輪」の形が象徴的なデザインですが、これは企業名の「大和」を「ヤマト」ではなく「ダイワ」と読ませた理由である「大いなる和をもって経営に当たりたい」という理念がデザインのソースだと言われています。
このシンボルマークの作り方は、会社名の由来をどのようにヴィジュアル化するかがデザインの方向を大きく左右します。ですからデザイナーがその舵取りをしっかり行い、会社のイメージと上手く一致させることが重要になってくるでしょう。
会社名の文字列を組み合わせてロゴマークを作るパターンです。先ほど挙げた39社では「UNIQLO」の6文字をロゴマーク化したユニクロが代表的な例として挙げられます。
このシンボルマークの作り方は、文字列をいかにロゴらしくロゴ化できるか、また文字をどのようにマークに相応しいデザインにするかが重要で、デザイナーのデザイン力がそのまま出来上がりの質を左右する作り方です。
会社名のイニシャルを用いてロゴマークを作るパターンです。先ほど挙げた39社だと、BRIDGESTONEの「B」をモチーフにしたブリジストンのロゴマークが代表的な例として挙げられます。
このシンボルマークの作り方は、会社名のイニシャルをそのまま形にすれば良く、ハイクオリティなデザインにするにはいかにそのイニシャルの形を洗練させるか、また他のモチーフなどをいかに上手く組み合わせられるかが重要になってきます。
次に、会社名とリンクしたデザインのロゴマークは実際どのようにして作られるのかを解説していきたいと思います。これを読むことで企業の「顔」となるロゴの作り方が理解でき、会社ロゴを求めている方は自社のロゴが作りやすくなるのではないかと思います。
ここでは先述した①~⑤のロゴ作り方について、過去にsynchlogoで制作した実例の制作過程を紹介しながら解説してまいります。
【会社名とリンクしたロゴマーク】
①会社名にある事物のモチーフで作られたロゴマーク
②会社名を連想させる事物のモチーフで作られロゴマーク
③会社名のネーミング由来から作られたロゴマーク
④会社名文字列のモチーフを使って作られロゴマーク
⑤会社名イニシャルのモチーフで作られたロゴマーク
■会社概要
クライアントは、新たな学校教材・サービスを開発し、日本中の学校へと届ける事業を行われているEDUSHIP(エデュシップ)株式会社さまです。日本の学校教育現場と向き合う企業として2020年10月に設立されました。
近年の日本の教育現場では、「子どもの自己肯定感の低下」が課題として浮き彫りになっていました。子ども達の平均的な学力自体は高いものの、生徒が同じことを同じタイミングでやるという画一的教育によって、1人1人の個性が尊重されづらくなっているというのが原因と考えられています。
その課題に対しサービスで未来を切り拓いていこうと「子どもたち一人一人が『新しい可能性!』を発見できる社会へ」のスローガンと共に、学校教材企業として90年の歴史を誇る教育同人社との”共創”により同社はスタートしました。
■会社名をそのままロゴマークにする理由と問題点
「EDUSHIP」は、“EDU”CATION(=教育)とSHIP(=船)、そして“SHIP”MENT(=発送)を組み合わせたもので、特に「SHIP」については「これからの時代に必要なあらゆる教育を届け、子どもたちが未来へ進んでいくための『船』のような存在でありたい」という想いが込められていました。
その想いを分かりやすく端的に表したロゴマークとするためには、「船」を連想させるモチーフを用いることは必須だろうとすぐに感じました。しかし、例えば船そのものをモチーフにするなどストレート過ぎる表現でデザインすると、同社が船舶や海運会社のように見え、誤解を招くことも懸念されました。
そこで「船」のモチーフだけを用いるのではなく、「教育」を「船」とうまく結びつけることで、EDUSHIPらしいロゴマークを作り上げていこうという目標をクライアントと共有し、検討を進めていきました。
■完成したロゴマーク
無限の可能性を秘めた大海原(=未来)へと、学校という名の船が力強く前進するさまを表現したロゴマークです。「!」にも見えるモチーフの集合にて花や花火を象った形を船上に作ることで、 「最高の教材サービスによって、子供たちが新たな可能性に気付き花開く」という意味も込めております。「船=学校」「海=教材」「花火=発見」のモチーフのどれもが主張し過ぎないように、またどれ一つが欠けても成り立たないデザインとしています。
■振り返り
企業名にある事物をモチーフにすると、その事物にデザインが引っ張られるおそれがあるため、それを払拭するデザインの工夫が必要になります。EDUSHIPでは、船舶や海運会社のロゴマークにも見えそうだという懸念がありましたが、もし船だけをモチーフにしたロゴマークにしていたら、その懸念通りのデザインになっていたかもしれません。
このように、会社名にある事物だけをモチーフにしてデザインするのではなく、その会社にまつわる何かを加えることで、ロゴマークにオリジナリティを与えることができるのです。
■会社概要
クライアントは、脱「転職のための転職」を掲げ、キャリア支援業とし転職を支援する事業を行う株式会社Ignite(イグナイト)さまです。転職をさせるための求人紹介業者としてではなく、「ありたい姿実現のための転職」を全力でお手伝いするアドバイザーとして事業を行っています。
近年の転職支援はエージェント都合によって進められることが非常に多く、転職希望者の本当に大切にしたいこと、価値観、人生の優先順位がはっきりしないまま、エージェントが求人を薦めるような状況は本来あってはならないことだと考えていました。そんな業界を変えたいという想いが起業する動機となり、2023年1月に同社は設立。キャリアを「複利」と捉え、たった一回の転職であっても絶対に妥協してはいけないという考えのもと、事業に取り組んでいる会社です。
■現象をモノで連想させる
Igniteは「発火する」「着火する」という意味の英語で、「キャリアを真剣に考えている本気の心に火を灯す」という想いからネーミングされました。このネーミング由来を伺い、転職希望者に対する向き合い方、転職に関する考え方が会社名に詰まっていると感じ、作成するロゴマークも会社名を連想させるものが相応しいと考えました。
しかし「発火」「着火」は現象であり事物でないため、そのままロゴのモチーフに使うことはできません。そこで「発火」「着火」という現象が直感的に連想できる事物を見つけ、それをモチーフにしてロゴをデザインしなければならないということになりました。
その結果、選んだモチーフは「火が付いたマッチ」でした。
マッチはそのものが発火するもので、何かに着火するものでもあります。また発火・着火するためには火薬部分を擦るというアクションが必要であり、Ignite社が行う事業がまさにこのアクションに当てはまる行為だという意味付けもすることができると考えました。
■完成したロゴマーク
迷っているが、キャリアを真剣に考えている本気の心に火を灯すさまを「マッチの火」で表現した新保rマークにしました。 生々しくない「火」の形としており、また円2つをベースに作った図形によってシンプルにデザインしています。分かりやすい表現で、印象に残りやすく覚えやすいデザインに仕上げました。
■振り返り
企業名自体は「発火」「着火」という意味ですが、分かりやすくキャッチ―なモチーフによって、「心に火を灯す」という本来の意味をロゴマークによって表現することができました。また、「火」といえば「怖い」「危ない」というイメージにも繋がりそうですが、シンプルなデザインによって、そういったネガティブなイメージを軽減させ、本当に伝えたいポジティブな意味だけが前面に出るヴィジュアルを作ることができたと思います。
このように会社名を連想させる事物を用いてシンボルマークをデザインすると、ロゴマーク全体で(シンボルマーク+社名で)、伝えたい意味がよりクリアに、より鮮明に伝えられるようになるのです。
■会社概要
クライアントは、商店を対象に、売場や商品のあり方、商品企画などの事業を行うinterval studio(インターバルスタジオ)さまです。個人のお店から、商店街、商業施設、大型店まで、どんな規模に対しても提案が行える“小売業の企画・デザイン集団”として始まりました。
なお、intervalは「間」という意味で、代表的な訳語としては、演劇など舞台における「幕間」が挙げられます。幕間には、「次はどんな展開になるだろう」といった期待感、ワクワク感を湧き上がらせる演出効果がありますが、同社も、お客様から「次はどんなクリエイティビティを発揮してくれるのだろう」などの期待を持ってもらいたいという願いがあり、「間」を英語にした「interval」を会社名に採用したそうです。
■状態をモノで連想させる
そんな想いが込められたい企業名でしたので、「間」を表現したデザインを同社のシンボルとすることが、今回のロゴマークデザインの最適解だと考えました。しかし「間」とは、空白という状態を表す言葉ですので、それ自体をデザインのモチーフにすることはできません。さらにその空白は、単に「何もない」という状態ではなく、「意味ある空白」という状態であることを感じさせる必要がありました。
この課題をクリアすべく検討を重ねた結果、「間」のネーミングの由来からその答えを得ることができました。演劇における「間」とは、出演しているどの役者さんが誰も喋ったり歌ったりしない状態、すなわち台詞がない状態ということです。演劇の台本では、台詞は「」(鉤括弧)の中に書かれていますが、そこから着想し、中に何も書かれていない鉤括弧で台詞がない状態=「間」が表現できるのではないかと考えました。
■完成したロゴマーク
「」(鉤括弧)をモチーフに用いたロゴマークで、クリエイティブによって「空白に新たな価値や物語を創る」という意味を込めました。 空白部分は、平面(六角形)・立体(キューブ)の形も意識しており、「空間づくり」という意味も込められております。
■振り返り
完成したロゴマークは、直接的に「間」を表すものではありませんが、用いたモチーフおよびそのヴィジュアルによって、間接的に社名とリンクさせることができました。
このように、会社名を考えることもクリエイティブな作業で、ロゴ同様の手順で作られていることから、会社名の中にモチーフにできそうな事物がなくとも、会社名の由来を見ればかなり高い確率でロゴを作るヒントが得られることができるのです。
■会社概要
Ekuippという社名は「equipment(機器・装置)」からきており、その由来からも分かるように、同社は主に製造業で使用されている計測器や測定器といった精密機器類を扱った事業を行っています。また、行っているのは製造や販売、リースといった事業ではなく、使われなくなった中古機器のシェアリングサービスという、これまであまり見られなかった事業でした。
使われなくなった中古機器を売りたい・手放したいと思っている企業と、一時的に利用したいと考えている企業をマッチングをさせれば、中古機器を事業者間で直接売買できるオンラインマーケットプレイスを作ることができるという着想から事業はスタート。それが上手く成立すれば、倉庫に眠っていた機器類に再び日の目を見る機会を与えることができ、良好な循環作用を持続的に起こすことができるではないかと考えたのでした。
■会社名に注目して欲しいからこそロゴマークに使う
同社の社名は、ブランディングを意識し、記憶に残りやすい特徴的な名称となるように、あえてequipmentのスペルにある「q」を「k」に変更して名付けられました。あえて正しくないスペルを企業名にしているのは、会社名の意味に注目して欲しいからです。
前節で代表例として挙げたユニクロも実は同様で、「ユニクロ」は最初に始めた時の店の名前、「unique clothing warehouse」(ユニークな衣料品の倉庫)の略語から作った造語で、正しいスペルは「UNICLO」なのです。それが「UNIQLO」になったのは、海外で社名を登記する際に、現地の担当者が間違って「UNIQLO」と書いてしまったからだそうなのですが、結果、「Q」のほうがデザインとしても格好いいのではないかと判断し、そのまま「UNIQLO」の表記を使い続けているそうです。(引用:ユニクロプレスリリース)
このユニクロの例と同様、会社名に注目して欲しいというEkuippの想いをさらに際立たせるため、ロゴマークにもあえて変更したスペルを使用した、「E」と「p」からなるデザインとすることにしたのです。
■完成したロゴマーク
Ekuippの名前を活かし、その図形は名前の最初の文字と最後の文字である「E」と「p」で作られています。2つの円が重なるような「シェア」を表す図形、ぐるっと回転したような「循環」を表す図形にも見えるよう構成しており、さらに全体が精密機器の回路を彷彿とさせるような形でデザインしています。さらに、マークの白抜き部分を注視すると「Sharing」のイニシャルである「S」が見えるようにもなっています。
■振り返り
会社のロゴマークは、シンボルマークと会社名のロゴタイプで構成されていますが、ロゴで企業のイメージを表したいのであれば、それを表す事物などをモチーフに用いてデザインすればよいでしょう。しかし、あえて会社名の文字列をモチーフに用いるのは、会社のイメージ以上にロゴで伝えたいこと、知ってもらいたいことがあるからなのです。
このように、会社名の文字列を用いてロゴマークをデザインするのは、会社をイメージさせるモチーフが見つからないからという消極的な理由によるものではなく、会社名がより注目されるようにしたいからという積極的な理由によるものなのです。
■会社概要
若松海運有限会社は、福岡県北九州市若松区にある船舶の管理と船員の求人を主に行う海運会社で、海運事業は資格や免状、コンプライアンス・ガバナンス管理が大変厳しく、対外的にクリアな会社イメージづくりが重視されます。また船員の就業は1隻にとどまらず、船舶を乗り換えることでハクが付くという特殊な業界文化があるため、船員にできるだけ長く働いてもらう環境づくりや社内イメージアップにも取り組もうとしていました。
今回のロゴ制作の目的はその2つのイメージアップで、社内・社外の両方を意識したデザインとする必要がありました。
■会社そのものを表すようなロゴにしたい
船舶を操り、物流の中核をなす事業であることから、風格ある会社のロゴにすると同時に、ファンネルマーク(船舶の煙突に描かれる海運会社ごとのマーク)として使われるのにも相応しい、海運会社らしい雰囲気を作る必要がありました。またそこに若松海運ならではの理念や仕事に対する姿勢などをどう盛り込んでいくかがデザインの方向性における課題でした。
社長さまに直接そのあたりをヒアリングしたところ、「一番大切にしているのは、会社と船員、また船員同士の信頼関係です」と仰っておられました。冒頭でも紹介しましたが、船員が船舶を乗り換える続けるため共に過ごす時間が短いのに加え、時には過酷で危険な労働環境となることも考えられることから、信頼関係以上に大切なものはないのかもしれません。
対外的にアピールでき、なおかつ社内の結束を高めるのに必要なことは何か。
ひとつの方向性として導き出されたのは、皆が若松海運を誇りに思うロゴ、すなわち会社そのものを表すようなロゴをつくる、ということでした。
■完成したロゴマーク
イニシャルである「W」をモチーフに、ロゴマークが会社そのものをを表すデザインです。 海を表す波形の抽象図形と組み合わせ、「W」を表す図形が海上を航行する船舶にも見えるようにデザインしました。
■振り返り
イニシャルは、会社そのものを表すモチーフとして用いられることが多く、若松海運では会社そのものを「船」に見立ることで、海運会社であることを表現しました。
このように会社の状態や特徴、これからの展望など、会社そのものをロゴマークで表したい時は、会社名のイニシャルをモチーフに用いてデザインする作り方が有効なのです。
5種類の企業ロゴマークの作り方実践例を紹介してきましたが、では一体どの作り方で作るのが一番よいのでしょうか?ここではその疑問に応えるべく、その5種類の作り方の客観的特徴を比較していきたいと思います。
①~⑤はいずれも企業名とリンクさせたデザインではありますが、実は「リンクの度合い」は作り方によって少しずつ異なるというのが注目すべき特徴です。
最もリンクの度合いが強いのは「①会社名にある事物のモチーフで作る」と「④会社名文字列のモチーフを使って作る」で、いずれも会社名そのものをロゴマーク化しているため、マークを見て企業名を思い浮かべやすいのが特徴です。ただし、デザインの洗練具合が甘いと、会社名をただロゴマークにしただけの、発想が安直なロゴと評価されてしまうため注意が必要です。
次にリンクの度合いが高いのは「②会社名を連想させる事物のモチーフで作る」と「⑤会社名イニシャルのモチーフで作る」で、いずれも間接的に会社名と関係してはいますが、①と⑤には劣るという位置付けです。なお、②は適切なモチーフを選定しないと、想定とは異なるものを連想させてしまうおそれがあり、⑤は他社の事例を調査しないと、用いるイニシャルが被ってしまうおそれがあるので注意が必要です。
最後に、「③会社名のネーミング由来から作る」ですが、リンクの度合いは5種の中で最も低く、作り方によっては、ロゴを見た人が企業名との関係に気付けないということもあるかもしれません。
このように、5種のロゴマークにおける会社名とのリンクの度合いは、①・④>②・⑤>③という順番になります。では、会社名とリンクしたロゴマークを作りたい場合、すべて①か④の作り方が良いかと言うと、そうとは限りません。
①や④はロゴマークに、会社名に入っている事物もしくは企業名の文字列をメインのモチーフに使う必要があるため、デザインの自由度が極めて小さく、会社のイメージに合ったデザインを作るのが非常に難しいのです。一方③は、会社名とのリンク度合いが最も低いですが、デザインの自由度は比較的高く、会社のイメージに合ったデザインにしやすい作り方でしょう。
つまり、会社名とのリンクの度合いは、デザインの自由度(会社のイメージ合ったデザインの作りやすさ)に反比例するため、ケースバイケースでどの作り方が適切か、バランスを考えながら決定することが重要なのです。
ここまでは会社名とリンクしたロゴマークの作り方を解説してきました。Best Japan Brands 2020 Rankingsに挙げられている、シンボルマークを有する39社の約半分の会社ロゴはその作り方でしたが、では残りの半分はどのような作り方がなされているのでしょうか。
実は、会社ロゴの王道の作り方としてもう一つ挙げられるのは、会社の経営理念とリンクさせて作るというやり方です。その証拠に、既にある程度の社会的ステータスを得た会社のロゴ制作エピソードを調べてみると、ロゴのデザインコンセプトが会社の経営理念から作られている記述が非常に多く見られるのです。
そこでここではそのもう一つの会社ロゴの作り方である「会社の経営理念とリンクさせたロゴマークの作り方」について解説していきたいと思います。
まず、そもそも会社の経営理念とはどんなものなのかについて解説していきたいと思います。
経営理念の多くは「Mission(ミッション)」「Vision(ヴィジョン)」「Value(バリュー)」の3つによって言語化されており、多くの企業が起業時に定めています。なおこの3つを日本語にすると、「果たすべき使命」「目指す将来像」「価値基準・行動指針」となります。
Mission(ミッション)
会社が社会に対してなすべきことを言語化したもので、「企業の使命」や「会社の目標」、あるいは「存在意義」と言った方が分かりやすいかもしれません。なぜ自社が世の中に存在するのか、社会に対してどのような価値を提供できるのかなど、会社が目指す社会について表しています。
Vision(ヴィジョン)
会社が目指す自社のあるべき姿について言語化したもので、「企業の理想像」「会社の方向性」と言った方が分かりやすいかもしれません。ミッションを実現するためにどんな会社ならなければならないのか、あるいは、ミッションを果たした結果、社会がどのような姿になることが理想なのかについて表しています。
Value(バリュー)
会社が行うべきことについて言語化したもので、「企業の価値観」「会社の価値基準」と言った方が分かりやすいかもしれません。ミッションを遂行するにあたって、どのような信念に基づき、どのように行動するか、未来を実現するための具体的な手段・方法について表しています。
結論から言うと、会社の経営理念とリンクさせてロゴマークを作るのは、その会社らしいロゴが手っ取り早く作れるからです。
会社ロゴを作る際、まずはじめに考えなければならないのは、まず「誰に、どんな印象を感じてもらいたいか」ということです。会社ロゴは会社の「顔」となるものですので、その顔を、誰に、どのような表情で見せるかというのはとても大切になります。またロゴは、会社を知った時最初に目にするものですので、ロゴデザインの印象がそのまま会社のイメージにつながることもしばしばあります。ですからロゴを見た人に誤解を与えないよう、また会社の良い印象を正確に伝えられるよう慎重にデザインする必要があります。そのためには、その会社がどういう会社で、どういう考えを持っているかなど、その会社らしさをロゴデザインで表現しなければなりません。
そこで登場するのが経営理念です。経営理念は会社ごとに必ずあり、さらにその会社らしさが凝縮されています。通常だとロゴ制作者は、クライアント会社のことをゼロから調査しなければならないのですが、異なる業界のこと、慣れない業種のことを理解するにはとても時間と労力がかかります。しかし経営理念は会社のことを一言で表しているものですので、ロゴマークデザインの由来とするにはうってつけな材料だという訳です。
それでは会社のロゴにおける、経営理念を由来としたロゴマークデザインとは実際どのようなものなのか、いくつか事例をご紹介したいと思います。
会社のロゴマークは、差別化したいがために他社と被らないようオリジナリティを追求してデザインしようとしますが、なぜか経営理念は他社と似てしまっていることが多々あります。なぜそのようなことが起きるかというと、経営理念は古来から共有されてきた倫理的価値観や、時代背景から導き出されたものを起源として定められていることが多いからです。
しかし経営理念が被ることは決してネガティブなことではなく、むしろ会社のスケールを大きく感じさせるブランディング戦略の一環であるとも考えられます。ここではまず、そんな定番の経営理念を由来とした会社ロゴの例を見ていきたいと思います。
「三方良し」
「三方良し」は、日本の伝統的な価値観の一つで、行動や決定が関係するすべての者にとって良い結果をもたらすようにするという意味を持ちます。この概念は日本の倫理や道徳の基礎となる思想であり、様々な社会的および人間関係において重要な役割を果たしてきました。
「三方良し」で有名なのは、「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」という、その昔近江商人のあいだで使われていた商売の理念ですが、これは、売り手の都合だけで商売を行うのではなく、買い手も満足でき、さらにはその商売によって地域社会の発展や福利の増進に貢献できるのがよい商売である、というものです。
現代でもこれを経営理念に掲げている会社は多く、有名なところでは伊藤忠グループは経営理念をそのまま「三方良し」としており、「自社の利益だけでなく、取引先、株主、社員をはじめ周囲の様々なステークホルダーの期待と信頼に応え、その結果、社会課題の解決に貢献したいという願い。『三方よし』は、世の中に善き循環を生み出し、持続可能な社会に貢献する伊藤忠の目指す商いの心です。」と説明しています。
また自社向けにアレンジしたもので有名なのは、本田技研工業株式会社が掲げている「創る喜び」「売る喜び」「買う喜び」という理念で、同社の創業者である本田宗一郎が残した言葉だと言われています。
それでは「三方良し」を由来とした会社ロゴの事例を紹介していきましょう。
◆株式会社D2C R
「三方良し」(買手良し、売手良し、世間良し)という考え方を基に、D2C Rでは、「For You&I For Industry For Society」の4つの「for」に貢献することを企業理念としており、それらを4つの三角形で表現しております。
引用:コーポレートロゴ変更のお知らせ(株式会社D2C R)
◆武蔵コーポレーション株式会社
すべての人が、幸せに丸くおさまる「三方よし」
引用:ロゴマークへの想い(武蔵コーポレーション株式会社)
日本が古くから大切にしている日本的経営の理念に基づいています。
お客様と武蔵コーポレーションと社員・お取引先様が、手を取って結ばれて、1つの円をつくる。
円は輪であり、和でもある。
武蔵コーポレーションの事業を通して、すべての人たちが幸せに丸くおさまることを意味しています。
◆店舗情報サービス株式会社
店舗は【地域】【貸主】【テナント企業】の三者に支えられていることを表現しており、
引用:ロゴマークの由来(店舗情報サービス株式会社)
当社は「地域、貸主、テナント企業、三方よし」の実現を目指しております。
「イノベーション」
「イノベーション」とは「革新」という意味だけではなく、革新的な物事をすべてを指します。ビジネスの世界では、技術の変革、市場の開拓、資源の発見、製品・技術の開発などのことを表します。また世の中を変えるという意味で、産業構造の刷新や新しい流行や文化形成などのこともイノベーションと呼ばれることがあります。たとえばスマートフォンの普及やSNSの流行などがそれにあたるでしょう。
また、イノベーションは社会や業界といった外側に対してだけでなく、内側、すなわち自社のあるべき姿勢、自社に対する考え方として使われることもあります。「常に変革の意識を」や「働き方改革」などがそれに該当するでしょう。
近年、イノベーションを経営理念に掲げるところは多く、有名なところでは楽天グループ株式会社では「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」を、Sansan株式会社では「出会いからイノベーションを生み出す」をミッションに掲げています。
それでは「イノベーション」を由来とした会社ロゴの事例を紹介していきましょう。
◆テルモ株式会社
左から右に向けて伸びるラインは、医療現場に新しい価値を提供するための「イノベーションへの挑戦」を象徴しています。
引用:コーポレートロゴを一新(テルモ株式会社)
赤い色は、患者さんの生命と、テルモアソシエイトの熱意を意味します。
ラインのフォルム(形)は、地球の弧のように描き、スピードをもってグローバルな展開を進めていくことを示しています。
緑のTERUMOの文字は、これまでテルモが築き上げ、今後も引き継いでいく価値を表します。
◆株式会社AskAt
AskAtの頭文字のAを形どった赤いロゴは、情熱を持って空に向かって飛躍するという意味を表しています。つまり、「社会に貢献する医療イノベーションを実現する」という我々の使命を表現しています。
引用:社名について(株式会社AskAt)
◆吉積情報株式会社
心理的安全性と多様性が生み出す環境で、イノベーションが生まれる。
引用:吉積情報の新しいロゴに込められた想いとは(吉積情報株式会社)
そのイノベーションで「働き方改革を追求」し、「関係するすべての人と幸せになる」ことを意味しています。
シンボルマークのデザインは、吉積情報自身の姿であると同時に、私たちが関係するお客様、パートナーの皆様の未来の姿でもあります。
「新たな価値の創造」
「新たな価値の創造」とは、新たな価値あるモノやサービスを提供することや、会社が行う事業によって新たな価値観を作り出すことを指します。これには、そのジャンルにおけるリーディングカンパニーとして、業界や社会のトップに立つという意味も込められており、時代の状況や社会の変化を察知し、先取りして事業を行うという気持ちの表れだと考えてよいでしょう。
また新たな価値の創造とは、単なるモノやサービスの提供に留まらず、社会の期待に応じて進化し、継続的な改善を追求するプロセスでもあります。このプロセスには、創造的な発想、効果的なリーダーシップ、そしてリスクを冒す決断力が欠かせません。新たな価値を生み出すためには、その業界や社会の状況を正確に分析し、持続可能なビジネスモデルを生み出すことが不可欠です。さらに、顧客の声に耳を傾け、社会のニーズにも敏感に対応する姿勢も欠かせないでしょう。そのような努力が実を結び、新たな価値を生み出すことで、企業は続的な成功を収めることができるのだと思います。
経営理念に新たな価値創造を掲げる会社を紹介すると、住友商事株式会社では「私たちは、常に変化を先取りして新たな価値を創造し、広く社会に貢献するグローバルな企業グループを目指します。」を目指すべき企業像として、コニカミノルタ株式会社では「『新しい価値の創造』 は、2003年のコニカミノルタ発足から不変の、そしてこれからもずっと変わることのない経営理念です。お客さまのために、そして、その先にいるあらゆる人々のために、私たちはさまざまなカタチで『新しい価値』を創り出し、届けていくことで、人と社会をいつまでも支えていきます。」を経営理念としています。
それでは「新たな価値の創造」を由来とした会社ロゴの事例を紹介していきましょう。
◆都築電気株式会社
経営理念にあわせて、「TSUZUKI」のロゴマークも刷新し、従来よりもシャープな書体と明るい色に、より軽やかに先進的なチャレンジを楽しみたいという思いを込めております。3つの四角形は、お客さま、ビジネスパートナーさま、TSUZUKIを表しています。この関係をこれからも大切にし、様々なパートナーの皆さまと協働し、お客さまの新たな価値創造にむけて挑戦していきます。
引用:新経営理念と新タグライン・新ロゴマークを発表(都築電気株式会社)
◆株式会社カナエ
新たな企業理念をベースに、企業ロゴについても刷新することに致しました。企業ロゴについては、下記3つの意味合いを持たせることにしました。
引用:企業ロゴ刷新及び企業理念改定について(株式会社カナエ)
・カナエが『包装』の企業であること
・「社員」「ステークホルダー」「社会すべて」の『幸せ』
・新たな価値の『創造』
新しい企業理念と、企業ロゴのもと、カナエは「包むで、未来を創る」をコーポレートメッセージとし、社員一丸となって、より良い会社にしていきます。
◆ネクサスグループ
ネクサスのロゴマークは「NEXUS(絆)」のNをモチーフとして、人と人が重なり合っています。私たちは皆様を支える存在であり、その皆様に支えられている存在でもあります。重なりあうことで完成し、新たな価値を創造していく。ロゴマークにはそんな想いが込められています。
引用:ロゴマークについて(ネクサスグループ)
経営理念は、会社ロゴデザインの大まかな方向性を定め、ロゴに個性を与えるのに重要な役割を果たしていることが上記事例で分かったかと思います。しかし経営理念だけでロゴがデザインができる訳ではなく、それをロゴで表現するための最適な形や図形が与えられていることにも気付かれたのではないでしょうか。
その形や図形が「モチーフ」と呼ばれるものです。
モチーフを用いると、経営理念を具体的な「モノ」によって連想させることができるようになります。経営理念を表すのに最適な「モノ」をデフォルメ・抽象化して図形化したものをデザインに加えることで、意味やメッセージを帯びたロゴが出来上がるのです。また、ロゴに与えるそのモチーフの選び方によってデザインの個性も変わってきます。
そこでここでは、会社ロゴではどのようなモチーフがどのように経営理念とリンクしているか、著名な会社ロゴの例を見ながら紹介していきたいと思います。ここで紹介したモチーフの使い方を参考にすれば、しっかりと経営理念とリンクした個性的な会社ロゴを作り出すことができるようになるでしょう。
円や輪のモチーフは、その形のシンプルさから様々な会社のロゴに使われています。その形は、地球などの惑星や月といった星、また水滴を落とした時の波紋や樹木の年輪など、形にはじまりも終わりもない、自然界にある完全な形が元になっていると考えられています。
使い方についてですが、「一体感」「安定」「安心」「永遠」「和」などのコンセプトを連想させたい時有効に働きます。また複数の円を重ねる・つなげるなど組み合わせて使うことで、「融合」「調和」といったコンセプトを連想させることもできるようになります。なお、「円満」「(友達の)輪」、「丸く収める」など、ビジネスシーンで使われやすいコンセプトも連想させやすいモチーフです。
◆三菱UFJフィナンシャル・グループ
MUFGグループのシンボルマークは、円形をモチーフに、それらを重ね合わせることで、私たちがめざしている「グループの総力を結集して生み出す新しい総合金融サービス」と「お客さまと一体感のある親しみやすいサービス」の二つの意味を表現しています。また中央の円は「新しいグループ」を、外側の交差する国内外への広がりをイメージしており、「あらゆる場所、あらゆる分野で、最高のサービスをご提供する、『世界屈指の総合金融グループ』を創造していく」という、MUFGの想いを表現しています。
引用:Our Brand(三菱UFJフィナンシャル・グループのサイトより)
◆コニカミノルタ株式会社
地球をモチーフにしたこのマークは世界中のお客様に対する新しい価値の提供を表現し、「グローブマーク」と呼びます。この楕円のフォルムはお客様に対する信頼感・安心感の提供と広範な技術力の調和を表現しています。光をモチーフにした5本のラインは、画像情報分野における広範な技術力(光学・化学・電気・機械・ソフトウェア)を表現しています。シンボルマークの青いカラーは、独創的なイノベーションを表現し、「コニカミノルタブルー」と呼びます。
引用:シンボルロゴ(コニカミノルタ株式会社のサイトより)
◆損保ジャパン
絶対的な安定と調和を感じさせる赤の正円は、日本の象徴。明日の方向を指し示し牽引するプラチナの環は、SOMPOグループが未来に向かって世界中の人々と取り結んでいく“新しい信頼”の象徴です。この正円と環をダイナミックに組み合わせることで、日本を代表するブランドとして「世界で伍していくグループ」を目指すという私たちのビジョンを表現しています。
引用:グループブランド(損害保険ジャパン株式会社)
橋のモチーフは、「架け橋」として会社ロゴに使われていることが多く、二つの異なる事物を繋ぐという比喩的表現がその由来だと考えられます。人と人を繋ぐ、人と物事を繋ぐ、物事同士を繋ぐ行為はどのビジネスシーンでも見られることから、様々な業種・業態のロゴで汎用的に使われています。
使い方についてですが、「繋がり」のコンセプトを連想させたい時有効に働きます。形の性質上、二次元的に使ったり、陰影や遠近感などをつけて立体的に使ったりなど、コンセプトの内容に応じて表現方法が多彩に変えられるのが特徴です。特に立体的に使う場合は、スケール感を感じさせられるデザインにすることも可能でしょう。
◆株式会社リクルート
リクルートロゴのデザインモチーフ、それは架け橋(Opportunity Bridge)です。私たちは、"人"と"機会"をつなぐ架け橋となる。"いま"と"未来"をつなぐ架け橋となる。"ここ"と"世界"をつなぐ架け橋となる。そんなメッセージを込めています。
引用:リクルートロゴ(株式会社リクルート)
◆ディアゴスティーニ
新しいブランドロゴのデザインは、それぞれのシリーズやマガジンが架け橋となり、コレクションが完成する過程で出会う新しい発見や、豊かな体験を表現しています。
引用:ブランドロゴ刷新のご案内(株式会社デアゴスティーニ・ジャパン)
ハートは、「いのち」「こころ」「愛」「思いやり」などのコンセプトを連想させるモチーフとして使われます。由来は言うまでもなく心臓の形で、絵文字や記号として日常的に慣れ親しんだ図形であるため、前述のコンセプトが連想しやすいモチーフだといえるでしょう。
連想させるコンセプトから、医療系や福祉系の会社、また日常生活に近い場面の多い会社のロゴに多く使われています。そのままダイレクトにハートの形を使うこともあれば、個性的な形に変形させたり、他のモチーフと組み合わせたりしてデザインしていることもあります。
◆ピジョン株式会社
ピジョンのブランドロゴは、「お母さんとおなかの赤ちゃんを表した2つのハート」と「Pigeonの頭文字“P”」を組み合わせた形です。「お母さん、お父さんには代われないけれど、たくさんの人へ、愛をかたちにして届けたい」という想いが詰まっています。
引用:ピジョンの名前由来・ロゴについて(株式会社ピジョン)
◆株式会社ダイエー
ロゴデザインは、ダイエーの文字と、ハートをあしらったマークで構成されます。このマークは、daieiの「d」と、発見やよろこびをあらわす「!」が組み合わさって、こころ(ハート)をこめて、お客様をおもてなししていこうというわたしたちの気持ちを表現したものです。
引用:ロゴデザイン(株式会社ダイエー)
◆東京メトロ(東京地下鉄株式会社)
ハートを模したM(「ハートM」)は、メトロ(Metro フランス語で「地下鉄」の意)のほか、東京の中心にあるという存在感やお客様の心に響くサービス、心のこもったサービスを提供し続けるという意志を表します。背景色にはコーポレートカラーである「ブライトブルー」を採用。活き活きとした元気なイメージで、東京メトログループの理念「東京を走らせる力」を表現しています。
引用:コーポレートアイデンティティ(東京地下鉄株式会社)
顔や表情は、「喜び」など人の感情を連想させるモチーフとして使われます。顔全体をモチーフにしたものもあれば、口元だけのデザインなど、そのバリエーションは様々です。その会社の行動によって、顧客や社会をどういう感情にしたいかというコンセプトを連想させたい時に使うことが多いようです。
このモチーフを使うのは自社の商品やサービスで直接顧客の満足を得るような会社で、食品系やサービス業でその例が多く見られます。ユニークな印象の会社ロゴを作ることができるモチーフです。
◆株式会社ソラシドエア
ロゴは、「人と人が向き合う時、笑顔が生まれる」というコンセプトになっています。ロゴマークは、異なる2色を使うことによって、人と人が向かい合いつながって姿、笑顔の種が跳ね上がり上昇していく様子、大空に浮かぶ大きな笑顔を表現しています。
引用:ブランドコンセプト(株式会社ソラシドエア)
◆エバラ食品工業株式会社
常に他に先駆け、新しいおいしさにチャレンジし続ける企業姿勢を、動きをもった書体で表しました。新しいおいしさにより、そこに人が集い、笑顔が生まれす。その笑顔や、はずむこころを、ロゴ全体で表現しています。
引用:ニュースリリース(エバラ食品工業株式会社)
◆株式会社Spinner
シンボルマークは笑顔をモチーフに用い、ロゴタイプとともに棒状の要素を組み合わせたデザイン。社名の由来である「紡ぐ」というイメージが感じられるよう、糸を一定のリズムで巻く(紡績)ような規則的でリズミカルな雰囲気を作りました。「i」にはワンポイントのカラーを入れ、「人=紡ぐ人」を表すようにしています。
synchlogoロゴ制作実績「株式会社Spinner」より引用
人や人の姿は、「生き方」や「生活感」のほか、「人と人の間にある関係性」「人材」などのコンセプトを連想させるモチーフとして使われます。単体の人がモチーフになることもあれば、複数の人によって構成されることもあり、伝えたいコンセプトによってその人数は変わってきます。またその人のポーズやシルエットも様々で、具体的な人の姿の時もあれば、抽象化された場合もあります。
このモチーフを使うのはやはり「人」や「生活」に深く関わる事業を行っている会社で、ライフスタイルや趣味、教育といったジャンルで多く見られるほか、「会社と顧客」の関係性を表す際にもよく使われます。
◆株式会社ベネッセコーポレーション
人型キャラクターと「Benesse」という文字を組み合わせたコーポレートロゴです。キャラクターは、人間と、そのエネルギッシュな生き方を表現しています。「Benesse」という独自の造語にキャラクターを組み合わせることで、「人の生き方を表すブランド」としてひと目で伝わることを目的としています。
引用:Our Philosophy(株式会社ベネッセコーポレーション)
◆株式会社タカラレーベン
タカラレーベングループのシンボルマーク「ハーモニックサークル」は、「お客さま」「パートナー」「従業員」を表す3つの輪が、お互いに結びつき、支え合いながらハーモニーを奏でるように有機的に広がっていく様子を示しています。3つの輪が共鳴し合い、「幸せを考える。幸せをつくる。」というビジョンを実現したいという想いの表れでもあります。鮮やかなブルーと深いネイビーのグラデーションは、グループ全員で目指す聡明さと誠実さを表現しています。
引用:タカラレーベンのご紹介(株式会社タカラレーベン)
◆井村屋グループ株式会社
井村屋グループのコーポレートマーク・通称アイアイマークは「母と子のきずな」を表現しています。「i」を人に見立て、「母と子」の楽しいひとときを表現し、人と人とのつながりを大切にする井村屋グループの姿勢を表しています。母と子の愛情と慈しみの心を持ち、独創的な楽しい商品とすぐれたサービスを提供し続け、お客様や社会に貢献できる井村屋グループを目指します。
引用:コーポレートマーク(井村屋グループ株式会社)
◆株式会社不動産パートナーズ
ロゴは、「パートナーズ」の社名に相応しく、人と人とが寄り添うさまを表したデザインです。成長を感じさせるような右肩上がりのフォルムで、まるで人が未来へと羽ばたいていくような上昇感ある雰囲気といたしました。また、「人」の文字が隠されているという工夫もしております。
synchlogoロゴ制作実績「株式会社不動産パートナーズ」より引用
顧客や社員など特定の「人」ではなく、社会全体の人や、世界中の人など、存在としての「人」を何らかのコンセプトとする時、人の形をしたシルエットではなく「人」という字をモチーフに用いることがあります。また、人の字の成り立ちである「支える」「支え合う」という意味やメッセージのモチーフとしても使われることがあります。
漢字をモチーフにするというのはユニークなデザイン方法ですが、「人」という字は2画で書かれたシンプルな形ですので、デザインに組み込むことはさほど難しくなく、他のモチーフとも組み合わせやすく、また様々なテイストで描くことのできるモチーフです。
◆株式会社インフォマート
新しいコーポレートロゴは、インフォマートが大切にしている「人」と社名の頭文字「i」をモチーフにデザインしています。ピクセルはデジタルを表しており、それらが集まり一つの帯(スマートライン)となって螺旋を描いている形は、デジタルを介して人や企業をつなぎ、働き方を変化させ、新たな価値を生み出していくことを象徴的に表現しています。
引用:ブランドについて(株式会社インフォマート)
◆株式会社 奥村組
奥村組のシンボルマークは「人」を象徴したものです。これは“人と自然を大切にし、未来づくりに貢献するヒューマン・コンストラクター”を目指すという私たちのこころを表現しています。
引用:コーポレートレポート2021(株式会社 奥村組)
数学記号である無限大(∞)の本来の意味はさておき、一般的には「有限がない状態・状況」として使われていることがほとんどで、そのためロゴにおいても「無限」「永遠」のコンセプトを連想させるモチーフとして用いられます。このコンセプトは会社の成長や飛躍、可能性・探求心などをイメージさせるものと設定されることが多いため、様々な会社ロゴで見ることができます。
「∞」はシンプル形で、かつ左右対称な造形をしていることから、他の図形とはもちろん相性がよく、また会社名の文字にも組み込みやすいのが特徴です。
◆株式会社コラボス
声をあげる
引用:ロゴに込めた想い(株式会社コラボス)
声をとらえる声をブルーとピンクの吹き出しマークで表現しており、社員の自主性、自主性を受け止める風土を「声をあげる」と表現し、社会の声を読み、お客様の声に応えていく姿勢を「声をとらえる」と表現しております、また各方面とのコミュニケーションを大切にする意味合いも込めております。
コラボス×企業×顧客=無限大
社内、社外、エンドユーザーを含むすべてのステークホルダーの方々を交えて、広義での“声”、“コミュニケーション”を活発的に行うことで、未来への可能性は無限大になる。そういった信条を「infinity(∞)」の形状で表現しております。
技術と情熱を併せ持つ
従来コーポレートカラーとして利用していたブルーのカラーを引き継ぎ、培ってきた“技術”を表す色として用いたほか、未来への情熱を表す赤色のツートーンカラーを採用しました。多色にし、多彩な社員・発想・柔軟性の意味合いも込めております。
光をつくる喜びを分かち合う
企業名のフォントには、光・喜びを伝えたいという思いからつくられた「フィラサンズ」を採用しました。また、黒を基調とし、視認性を保ちつつ、吹き出しでインパクトを加え、力強さと親しみやすさを共存させました。
◆富士通株式会社
国際化に伴い、現在の英字表記のシンボルマークとなる。「FUJITSU」の中央に位置する「j」「i」の上部のマーク(インフィニティマーク )は、「地球」と「太陽」をシンボライズし、宇宙への広がりと無限の可能性を表現。FUJITSUレッド(赤色)による、チャレンジ、人間的、エキサイティングな企業を象徴。
引用:富士通データブック2020(富士通株式会社)
◆共創エンジニアリング株式会社
お客様との共創、すなわち信頼関係がイメージできるよう紐状のものが結われたような形を採用。 またその形を無限大(∞)のモチーフをベースに作ることで、「共創によって得られる価値・社会の可能性は無限大である」というスケールの大きさも感じさせます。 さらにマーク全体を構成的に見ると、道路や橋梁が連続した姿(線状の図形)と、構造物・建築(カタマリ状の図形)の組み合わせでできており、都市全体を意識したデザインとなっております。
synchlogoロゴ制作実績「共創エンジニアリング株式会社」より引用
会社が創業者の家系と何らかの縁がある場合や、企業がある地域を過去に統治していた家系とその会社と間に何らかの関係がある場合において、会社ロゴに家紋のモチーフが使われます。家紋自体がロゴのようなものですので、その家紋自体をロゴとして使っている例もあれば、家紋をモチーフとしてデザインに取り入れている例もあります。
家紋=昔から受け継がれてきたシンボルですので、「歴史」「伝統」「継承」などのコンセプトを連想させるモチーフとして使われます。またその図案は左右対称で整った形をしており、すでに図形として完成していることから、モチーフとしてロゴに使う際は、デザインの骨格として取り入れられる例が多く見られます。
◆ミツカングループ
中埜家の家紋は、三本線を○で囲んだものです。この三本の線を「ミツ」、○を「カン(環)」とよんで、合わせて「ミツカン(三ツ環)」となったそうです。なお、現在のミツカンマークの上の三本の線は、お酢の命と言われる「味」「きき(酸っぱさ)」「香り」を表わし、下の「まる」はそれらを「まるくおさめる」という意味も込められています。
引用:ミツカンの社名とマークの由来を教えてください(ミツカングループ)
◆株式会社 島津製作所
"丸に十の字"の社章は、当社の創業者である初代島津源蔵が、島津家の家紋を商標として定めたことに由来します。(中略)この家紋が社章としていつから使用され始めたのか正式な記録は残っていませんが、明治27年(1894年)頃の木屋町本店の外観写真には丸に十字と島津製作所の社名文字が見えます。現在の社章が商標として登録されたのは大正元年(1912年)で、当社が株式会社となる大正6年(1917年)よりも前です。
引用:会社案内(島津製作所)
地球は、「世界」「国際化・国際的」といったグローバルなコンセプトを連想させるモチーフです。海外展開を標榜している会社や、環境や宇宙開発など、事業の対象が世界全体である会社でよく用いられます。
単なる球体を地球に見立てて用いることもあれば、様々なテクスチャをつけた球体を用いることもあるほか、球体の一部だけを用いた表現など、デザインのバリエーションは多岐にわたります。しかし共通しているのはほぼ必ず立体的な表現をしているという点で、そのため地球をモチーフにしたロゴは手の込んだものが多いという特徴があります。
◆東京海上日動火災保険株式会社
ダイナミックな螺旋形が、時代を先取りする創造性と発展性を表し、同時に地球とお客様をやさしく包みサポートするイメージを表しています。お客様と共に地球規模で発展、繁栄していきたいという願いと決意をシンボリックに表現したマークです。 球体には、人と地球の貴さを表すゴールド、螺旋形には、知性・スマートさ・親しみやすさ・未来などのイメージを表すブルーを配しました。
引用:コーポレートシンボル(東京海上日動火災保険株式会社)
◆オリックス株式会社
シグネチャーの斜めに走る複数のラインはグループ会社を表現し、一つの目標に向かって結束して未来へ躍進する姿勢を表しています。また、線上にある球体は「地球」をイメージし国際的なグループ展開を表現しています。
引用:社名・ロゴの由来(オリックス株式会社)
◆株式会社ラック
聡明なブルーの弧が重なるエレメントは、「地球・グローバル」を表します。上昇していく弧には、 Little eArth Corporationの思いも込められており、ITインフラの安心・安全を「LAC」が支えている様子を表現しています。また、3本の弧は、ブランドパーソナリティである「先見」「熱意」「誠実」の象徴であるほか、「顧客」「社会」「世界」等ステークホルダーとの親密な関係性を表現しています。
引用:ブランドマーク(株式会社ラック)
火や炎は、火を扱う商品やサービスの事業を行っている会社ロゴに用いられるほか、「情熱」「熱量」「着火」「(気持ちや状況が)燃え上がる」といったコンセプトを連想させるモチーフです。人の心や気持ちに関係した理念やミッションを掲げている会社ロゴのデザインに多く見られます。
火や炎の図案は上手くデザインしないと、怖い・危ないといったマイナスのイメージを与えるおそれがあるため、会社のロゴに用いる際はヴィジュアルを抽象化するなどの工夫が必要になります。しかし決まった形がある訳ではなく、自由な表現方法で描くことが可能なので、目指す企業イメージに合ったデザインをにすることも難しくないと思います。
◆イグニション・ポイント株式会社
イグニション・ポイントは、自らが「着火点(Ignition Point)」となって常に新しいものを生み出すことで、より良い社会を作ることを目指してきました。新シンボルでは、当社の核である“イノベーション”を柔らかく燃え続ける炎で表し、この炎を支える正方形は、企業ビジョンである“あらゆる革新のプラットフォーム”を表現しています。この「イノベーションフレイム」には、新たに誕生するイノベーションという炎で、社会の現在、未来を明るく照らしたいという当社の思いや、一人ひとりの“ゆたかな人生のきっかけ”が大きく花ひらくようにという願いを込めています。
引用:イグニション・ポイント株式会社のFacebookより
◆株式会社リブ・コンサルティング
火には遠くに光る目指すべき未来になるという意味が込められており、当社の経営理念「”100年後の世界を良くする会社”を増やす」との一貫性を持たせています。また、火は扱う人によって良くも悪くも使えてしまうため、勇気と意思がなければ持つことができません。クライアントが目指している未来への想いとそれをサポートしたいという当社の想いに最適なモチーフです。当社では新しいロゴを“フレイム”と名付けました。燃え盛る炎ではなく火種を表現しており、着々と大きくしていくという意味を込めて丸形にしました。刷新したロゴには以前のロゴも継承しており、LiBの“L”が5つ渦巻いているようなデザインにしました。5つは当社が大切にしている“5つの成果”と結びついております。5つの成果とは業績、よりよい仕組み、EIS(社員感動満足)、CIS(顧客感動満足)、人財育成の連鎖を作り出すことで”100年後の世界を良くする会社”を増やしていけるという当社独自のフレームワークです。この新しいロゴに込められた勇気と意志を持ち、当社とクライアントのさらなる成長のために努めてまいります。
引用:新コーポレートロゴのお知らせ(株式会社リブ・コンサルティング)
鳥は、空を飛ぶそのさまから「飛翔」「羽ばたき」「自由」といったコンセプト連想させるモチーフです。自社および顧客の成長や発展・向上、また様々な状況からの脱却・解放などのMVVと関係づけられることもしばしばあります。
鳥を用いたロゴは、翼を広げたダイナミックなデザインや優雅なデザインから、止まり木で休むおとなしい姿のデザインまで、あらゆる行動の描写をロゴに反映できるため、バリエーションに富んだ表現が可能です。また形についても、あまりデフォルメしないリアル寄りの姿の例もあれば、抽象化した姿の例もあり、ヴィジュアルの幅広さも特徴です。
◆freee株式会社
ツバメというモチーフは踏襲しながら、freeeが大切にするブランドコア「解放」「自然体」「ちょっとした楽しさ」を体現したデザインにアップデート。また視認性・汎用性を高めることで、より多くのシーンで、ユーザーの“自由”を支える象徴として登場していきます。
引用:Logo-Design Elements(freee株式会社)
◆一般社団法人 全国労働金庫協会
ロゴマークは、ROKINの頭文字の「R」を鳥の親子で表現。愛とやさしさ、親から子へと引き継がれるろうきん運動を意味し、ろうきんの親近性を伝えています。はばたく鳥は、より発展するろうきんの飛翔を表現。ブルーのシンボルカラーは、「知性」「未来」「希望」を意味し、ロゴマーク全体でろうきんの基本理念を表現しています。
引用:ろうきんとは(一般社団法人 全国労働金庫協会)
花は、「(物事が)盛んになる」「成果が出る」など、「開花」という言葉に由来するコンセプトのモチーフとして使われるほか、花自体が持つ「美しさ」や「華やかさ」のモチーフとして取り入れられています。
ロゴでは、花の種類まで分かるような具体的な描写でデザインされることは少なく、抽象化された図案で、花単体、もしくは他の図形やモチーフと組み合わせて使われます。また、茎や葉など花全体を描写することもあれば、花びら部分のみクローズアップして描写することもあり、多様なアウトプット方法があるのも特徴です。
◆三井住友トラスト・ホールディングス株式会社
シンボルマークは、"未来の開花(Future Bloom)"をテーマに、「高い専門性と総合力によって、新たな価値を創造し、お客様や社会の未来を花開かせる」という三井住友トラスト・グループのビジョンを象徴しています。透明感のある4つの花弁は、お客様・社会・株主・社員の各ステークホルダーに対する私たちのミッションを表すとともに、それぞれの色彩は、私たちのバリュー(行動規範)である「信義誠実」(ナチュラルグリーン)、「奉仕開拓」(ゴールデンオレンジ)、「信頼創造」(ブルーグリーン)、「自助自律」(スカイブルー)を表しています。
引用:経営理念(三井住友トラスト・ホールディングス株式会社)
◆株式会社西日本シティ銀行
シンボルマークには、西日本シティ銀行がお客さま・株主・社会とともに成長し、喜びをわかちあい、地域に根ざした花を咲かせていくという願いを込めました。上部の花びらはそれぞれがステークホルダー(個人や法人のお客さま、株主、地域社会、行員など)を表し、下部の人間像はそれらを力強く支えていく西日本シティ銀行の姿勢と喜びを表現しています。また、全体をユニークで独自性の高いフリーハンドで図案化し、躍動感や人間的優しさを表現しています。コーポレートカラーは、あたたかい人間性や輝く太陽を表すオレンジと、洗練性や先進性を感じさせるブルーの2色を使用しています。
引用:シンボルマーク(株式会社西日本シティ銀行)
渦はその形状から「内側から外側へ」というニュアンスを伴う時にモチーフとして使われます。たとえば「成長」や「創造」、さらには形からストレートに感じられる「広がり」や「拡散」といったコンセプトの会社ロゴで見られます。
実際のデザインでは、線状の図形で描かれることがほとんどですが、複数の線で流れをしっかり表現することもあれば、1本の線で抽象的に表現することもあります。また自由な曲線で描かれた渦もあれば、幾何学に則った図形として描かれた渦もあり、会社が社会に与えたいイメージに合わせて使い分けていることが分かります。
◆株式会社大塚商会
ロゴマークは、「Otsuka」の頭文字「O」をモチーフに創られたデザインで、内側から外側へと渦をまき、太くなっています。 それは無限大に成長していこうという気持ちが込められています。
引用:ロゴマークとサービスブランド(株式会社大塚商会)
◆静岡銀行
ふたつの波をモチーフにしたシンボル・マークは、静岡銀行とお客さまの出会いや地域社会との交流そして経済活動と文化活動の融合など、さまざまなコミュニケーションの誕生を象徴しています。そして、このコミュニケーションの渦の中から、「未来に向けて、新しい夢や地域の豊かさを創り出していきたい」という願いを表現しています。
引用:tougou_2020(静岡銀行)
空へと舞い上がるイメージのある翼は、「成長」や「飛躍」のほか、「未来」や「希望」といったコンセプトを連想させるモチーフとして用いられます。これらはMVVでもよく使われるキーワードであることから、数多くの会社ロゴで見ることができます。
ロゴで使われる翼は開いた状態、すなわち羽ばたく時、飛んでいる時の形状で描かれていることがほとんどです。また表現方法は、羽根まで描かれたリアルなものから、シルエットだけのもの、抽象化した図形的なものなど様々です。そもそもの形に躍動感があることから、のびやかな、動きのあるロゴが作りやすいモチーフだと言えるでしょう。
◆足利銀行
一つの時代を開いて、未来のページが姿を現した瞬間を表現しており、明るい未来を積極的にひらいてゆく足利銀行の意欲と行動を象徴しています。また中にえがかれている三角形は、夢や希望の風をはらんだ翼であり、足利銀行のイニシャル「A」でもあります。なお、このマークは、足利銀行の職員が日々新たな気持ちでお客さまや社会に接していく姿勢をも表しています。
引用:シンボルマーク・行章(足利銀行)
◆アチーブメント株式会社
アチーブメントのシンボルである上記のロゴデザインを、わたしたちは「情熱と達成のマーク」と呼んでいます。赤は人材教育に対する情熱を、3本の白いラインは選択理論の3Rを表現するとともに、未来に向けて発展・飛躍・達成を続ける羽ばたく翼をイメージしています。
引用:企業理念(アチーブメント株式会社)
「&」は「and」を表す文字で、「共に」「つながり」「〜と」といったコンセプトを連想させるモチーフとして会社ロゴのデザインに用いられます。「and」そのものの意味がMVVの中心に据えられている時、このモチーフがロゴデザインに有効にはたらきます。
文字の形自体がやや不安定なバランスで、「&」という文字だと認識できる範囲ではあまり形を崩すことができないため、抽象化などは行わないそのままの形でロゴに用いられることがほとんどです。また一筆で描ける文字であるため、その特徴を活かしたデザインも多く見られます。
◆株式会社ソルクシーズ
ロゴマークは、”&”をデザイン化したものです。 お客様と、株主様と、社員と、パートナーと、共に成果を・・・の気持ちを込めています。 “&”はもともと”e”と”t”の合字によって形成されたもので、”et”はラテン語で”und”(~と共に)を意味します。
引用:社名・ロゴマーク由来(株式会社ソルクシーズ)
◆株式会社CAMPFIRE
CAMPFIREでは、創業当時から炎をシンボルに起用してきました。これは『小さな火を灯しつづける』想いを反映したものです。新しいロゴは、これまでのシンボルのモチーフである炎を灯し続けながらも、“人と人がつながり、語り合える場を生み出す“をコンセプトに、「&(アンパサンド)」の形を取り入れています。
引用:社名・CAMPFIREのロゴは、新しくなります。(株式会社CAMPFIRE)
目や瞳のモチーフは、物事を「見つめる」「見通す」といったコンセプトを連想させ、先見性や洞察力のイメージを会社に与えたい時有効にはたらきます。また眼科のロゴのモチーフとして使われることもありますが、その場合は上記のようなコンセプトがロゴに含まれることはほとんどなく、記号的な使われ方だと考えてよいでしょう。
モチーフの形自体にインパクトがあり、そのまま使うとそれこそ眼科のロゴのように誤解されてしまうおそれもあるため、しっかり抽象化・デフォルメして使ったり、他の図形や形に紛れさせて使ったりするケースが多く見られます。
◆日本ペイントホールディングス株式会社
日本ペイントグループのシンボルマークは、輝く太陽と、現在から未来を見通す「眼」を象徴し、力強さと暖かさとさらに、先見性、発展性、躍動感を表現しています。
引用:会社概要(日本ペイントホールディングス株式会社)
◆株式会社ストライク
新しいロゴマークを構成する3つの円は、「譲渡企業」と「買収企業」、その間を橋渡しする「ストライク」を表現しています。左右の円は一部が塗りつぶされており、互いに見つめあう瞳のようにも見えます。これは、人の想いを大切にしたM&Aを実現するため、人と真摯に向き合う姿勢を象徴しています。
引用:コーポレートロゴマークの変更のお知らせ(株式会社ストライク)
会社ロゴは、企業名や経営理念からデザインが導き出されることを解説してきましたが、ここではより会社らしい奥行きのあるデザインとするために覚えておいた方がよいポイントを紹介したいと思います。それは、ロゴに業種ならではの意味やメッセージを加えるということです。
業種ならではの意味やメッセージをロゴに加えると、その業種への理解度や専門性がロゴのデザインでも現れるようになり、競合相手との差別化や、同業の中におけるポジショニングをはっきりさせることができるようになります。
ここでは業種ごとに、その業種の会社ロゴに加えるべき意味やメッセージを紹介していきます。
ITとは「Information Technology」の略で、 日本語に訳すと「情報技術」となります。ITは日本の産業を支える大切な業種で、インターネットの普及に合わせて急速に発展・拡大してきました。近年ではICT(Information and Communication Technology(情報伝達技術))、Internet of Things(モノのインターネット)など分野が枝分かれし、それぞれの特徴を見せつつありますが、ロゴにおいては全てIT業の一種として捉えられています。
近年IT業はDX(デジタルトランスフォーメーション)に注目が集まっていますが、それを実現するためにはAI(人工知能)やビッグデータ、クラウドコンピューティングといった各種テクノロジーの進化が課題とされています。そのため技術進歩の一翼をなす先見性や瞬発力を有している企業・会社であることをブランドイメージとして掲げたいところが増え、それによってIT業=技術進歩のスピードが目覚ましい業種という印象が世間一般で急速に広まっていったのではないかと思われます。
したがって、IT業のロゴには、日々新しいものへと更新する力があり、常に先進的である企業・会社であるという意味やメッセージを加えるとよいでしょう。そのためには未来を想像させるような表現が有効で、さらにそこに、それぞれの会社が得意とするテクノロジーの要素が入ると、よりIT業らしいロゴになると考えられます。
建設業には、国土や都市インフラをつくる「土木」という分野、もう一つは住宅やビルなどを作る「建築」という分野があります。また業態も建設に係る工程ごとに細分化されており、大きく計画・設計・施工・維持管理に分かれています。会社の規模も様々で、最も大きいものではゼネコン、小さいものでは個人の設計事務所などが知られているところではないでしょうか。
建設業といえばやはり「工事」のイメージが強く、安心・安全のイメージが伴うことは、企業・会社の必須要件として挙げられるでしょう。また、現代的で快適な生活環境構築のために、自分たちはゼロからモノを作り出しているのだという誇りもあり、それを企業・会社イメージとして強く打ち出しているところも少なくありません。一方近年の傾向を見てみると、開発・建設に伴う環境への影響、とりわけ地球へ負荷がかからないようにする取り組みにも注目が集まっており、そこに焦点を当てたイメージづくりを行う企業・会社も増えています。
したがって、建設業のロゴには、危険を感じさせる尖った印象とならないようにすることは大前提としつつも、それぞれの会社が専門とするクリエイティブ要素を感じさせる意味やメッセージを加えるとよいでしょう。またそこに地球や環境、あるいは都市といったスケールを感じさせるものを組み合わせることで、どの視点で建設という行為に取り組んでいるかをロゴで示すことができるようになると思います。
医療業の会社には、病院やクリニックを経営する医療法人だけでなく、医療活動に使う器具・薬剤などの商品を扱うメーカーや、医療関係の人材派遣や情報・データ提供といったサービス運営を行う会社などその幅は非常に広く、医療に対する関わり方も様々です。専門性としても、健康管理、医療診断、治療、看護、研究など多岐にわたります。
医療という業種は、人の命を扱うことが基本ですので、「生」につながる温かさや優しさといったイメージでブランディングを行う会社が多く、冷たい印象やクールな空気感は、医療行為や医療をサポートする企業・会社のイメージとしては相応しくないと考えることが通念となっております。また医療は、神の領域に近いとされる行為だと言われるように、その責任感や使命感は他の業種と一線を画しているという誇りもあります。そのため、医療に関わる事業に対して、会社がそれぞれの哲学を持って臨んでおり、それがコーポレートカラーにつながっているのだと考えられます。
したがって、医療業のロゴは、まず人の温度感を感じさせること、清潔感のあることが大前提になります。そして大切なのは、そこにそれぞれの会社における人の命や健康に対する向き合い方を示す意味やメッセージ加えることです。そうすることで、その会社がどのような姿勢やスタンスで医療行為について考え取り組もうとしているかが、ロゴを通して伝わるようなっていくでしょう。
教育業には、学習塾や習い事教室を事業展開する会社、教材を開発・販売する会社、また様々な「教える」や「学ぶ」のプログラムやサービスを提供する会社などがあります。これらは主に高校生までの幼児教育や学校教育を対象にしたものが多く、教育課程の各段階に対応し、さらに教科やジャンルに細分化されて業務や事業が行われています。
教育とは読んで字のごとく、物事を教えて人を育てるものですので、事業の題材は知識や学問、対象は人、ということになります。そして教育には必ず目標や目的という課題が設定されており、それに向けての具体的な道筋や階段づくり、すなわち解決方法もセットで示してあるのが教育関連事業の特徴として挙げられます。ですので自ずと事業内容も差別化が進みやすく、企業・会社のイメージづくりが似通ったものになりにくい業種だと言えるでしょう。
したがって、教育業のロゴは、まず知的な印象を感じさせることを基本とし、それに、どのように対象者を成長させていくかについて、そのスタンスをを示す意味やメッセージを加えるようにするとよいでしょう。そうすると教育という業種に相応しく、なおかつオリジナリティある会社ロゴに仕上げることができると思います。
美容業の会社とは、化粧品メーカーなど美に関する商品をつくる会社、ヘアサロン・エステ・美容外科クリニックを展開する会社、また美容に関する情報やサービスを提供する会社などが挙げられます。近年男性をターゲットにしたものも増えていますが、やはり市場では女性中心にターゲティングされ、今でもなお日々新たな事業が生まれ続けています。
美容は、人々の外見と自信向上に寄与することに対して、様々な角度からアプローチし事業化しているため、ターゲットそれぞれの美に対するこだわりにしっかり向き合い、それを実現するための姿勢や方法をきちんと示しておくことが大切になってきます。また流行やトレンドに影響されることも多く、常に最新の情報と技術を追求する必要があります。ですので美容関係の会社のイメージとしては、そのこだわりを実現してくれる先導者、あるいは目標・目的そのものの存在であるという側面を有する必要があると考えられます。
したがって、美容業のロゴは、「美」を感じさせる、すなわち美しさを感じさせるものであることが大前提となります。そこに、それぞれの会社が追求する美の視点・方向性を連想させる意味やメッセージを加えていくと、美に対する価値感が際立った、個性的な会社ロゴを完成させることができると思います。
士業とは、名称の末尾に「士」の字を関している業種で、その領域は幅広く、司法、会計、不動産、建築、土木など様々な業界にて活躍しています。専門的な知識とスキルを持つプロフェッショナルによって業務や事業が行われており、そのほとんどに資格に「~士」という名の付く資格を有している人が責任者となっています。
士業の仕事は一般的に高度な専門知識、倫理規範、プロのスキルが求められるため、彼らの活動は専門家として高い信頼性が求められます。特に、クライアントの権利や利益を保護することを目的に、法的・倫理的な立場からの助言や提案を求められることが多いため、物事を客観的かつ冷静に分析し判断するようなイメージが大切になるでしょう。
したがって、士業のロゴは、その道の専門家であるという雰囲気を醸し出していることを基本とし、それに社会的な規範を重んじつつ、クライアントを強く支援・バックアップすることを表す意味やメッセージを加えていくとよいでしょう。そうすると、優秀・有能なパートナーとして期待できる、信頼感溢れる会社ロゴに仕上げることができると思います。
「お金を融通する」ことを言い表した“金融”業ですが、お金に様々な形で関わり、社会や経済を支えている業種です。金融業の代表的な会社として思い浮かぶのは銀行ですが、その他にも証券や保険を扱う業種、また投資なども金融業に含まれます。以下に代表的なものをいくつか紹介します。
お金を直接扱い、運用によって利益を得るタイプの業種は、何かのサービスや成果物を提供している訳でないため、実体のないところからお金を増やす錬金術的なイメージが少なからずあり、その生々しい雰囲気をいかに感じさせないイメージづくりをするかが大切になってきます。また、お金を直接扱わず、数字やデータとして捉え、それを調査・分析するような専門性を伴うタイプの業種もありますが、こちらは前者とは全く違い、学問的・研究的な色が濃いイメージを前面に打ち出しているのが特徴です。
したがって、金融業のロゴは、直接お金を扱うようなところについては、身近さや親しみやすさを感じさせることがまず必要で、もう一方の場合では、お金のエキスパートとしての冷静さや知的さが感じられるようにすることが基本となります。そして、それにそれぞれの会社として、経済に対するスタンスやお金に対する考え方といった、金融に対する哲学を表す意味やメッセージを加えていくと、コーポレートカラーが表現された、オリジナリティ溢れる会社ロゴに仕上げることができると思います。
運輸・物流業は、製品や貨物を生産地から消費地や市場へ効率的に移動させる役割を担った業種です。そのためさまざまな運輸手段が活用されており、陸上ではトラック、鉄道、バス、自動車が利用され、海上では船舶やコンテナ船が、空中では航空機が使用されています。これら異なる運輸手段は、貨物の種類、距離、時間に応じて選択され、さらにそのプロセスには、受取、保管、管理、配送、追跡、そして必要に応じて加工というたくさんの工程があり、そのための倉庫、配送センター、在庫管理、注文処理、輸送計画など多くの会社が関係しています。
運輸・物流業は、「モノを運ぶ」というシンプルな業種なだけに、事業の特色がそのまま会社のイメージとして定着し、競合との差別化につながりやすい側面があります。一方共通しているのは、事故やトラブルにより、輸送を滞らせてしまうことに関しては皆気を配っているという点です。輸送の遅延やストップは、供給される側に多大な損害を与える場合があるため、どの会社でも最も気を付けているのは間違いないでしょう。
したがって、運輸・物流業のロゴは、まず第一に輸送に関する安心・安全を感じさせることが重要で、それにどのような工夫やアイデアで迅速かつスムーズに輸送できるかを表す意味やメッセージを加えていくと、その会社ならではのロゴに仕上がっていくと思います。
農林水産業は、農業・林業・水産業の三つの業種から成り立っており、食料の生産・供給および木材供給・森林管理など、人の生活において不可欠な役割を果たしています。また日本では、地方における主たる産業になっている地域も少なくなく、会社としても幅広く事業が行われています。
農林水産業すべての会社の共通点として挙げられるのは、自然の恵みによって事業を成り立たせてもらっているということです。ですから、自然環境を大切にするとイメージはどの会社において少なくとも必要なことではないかと思います。また、食品を取り扱うところではそれに加えて安心・安全というイメージももちろん必要でしょう。限りある資源と向き合いながら、人の生活基盤を支える業種として活動しているということを忘れてはなりません。
したがって、農林水産業のロゴは、まず第一に自然に敬意を払う表現とすることが大切かと思います。そこに、それぞれの扱うものの特徴やアピールポイント、また環境に対する取り組み姿勢など表す意味やメッセージを盛り込むと、それぞれの会社らしい特徴あるロゴデザインに仕上がっていくと思います。
人材業は労働市場における仕事と求職者を結びつける業種です。この業種では様々なサービスを提供しており、人材採用、リクルートメント、雇用関連のコンサルティング、トレーニング、人事管理などがあります。また人は会社の経営資源であるという考えに基づき、「人財」という言葉や「ヒューマンリソース(Human resource)」という言葉が使われることもあり、そういった視点に注目して事業を展開している会社も増えています。
人材、すなわち労働者・労働希望者は、自身のステータスあるいは生活の向上やステップアップを望んで就職・転職を行おうとします。そのモチベーションに対して様々な角度からのサービス的アプローチを行っているのが人材業ですので、労働者・労働希望者の考えや意向を真摯に受け止めるというイメージが会社にとって大切になります。しかしその考えや意向は十人十色なため、様々なケースをシミュレーションし、ひとつひとつ希望に沿って適切なアプローチを行えるかどうかが事業成功のカギになると言えるでしょう。
したがって、人材業のロゴは、人生を良い方向へ導くような雰囲気にすることを前提に、人材や労働市場に対するアプローチの仕方やヴィジョンの描き方について、会社ごとのスタンスを表す意味やメッセージを加えていくと、独創的なロゴに仕上げることができると考えられます。
観光業とは、観光客や旅行者に向けて、様々なサービスや施設を提供する業種で、観光による体験を豊かにし、人々に素晴らしい思い出を提供することを目的として事業が展開されています。旅行プランを提供する旅行代理店や、ホテル・旅館といった宿泊施設がこの業種の代表的な会社として挙げられますが、その他にも観光地の文化、環境、娯楽に関する事業もたくさんあり、その種類は多岐にわたります。
観光とは、人々が新しい場所を訪れ、その地域や場所の文化、自然、歴史、観光名所、食事、娯楽などを楽しむために行う活動のことですが、そういった非日常的体験や未知の体験をどのように提供できるかが会社のイメージに直接繋がります。近年の情報化社会の発展によって、観光客や旅行者自らの力で観光に関する情報が事前に得やすくなってきていることから、それに応える動きが観光業の会社にはより求められるようになってくるでしょう。
したがって、観光業のロゴは、期待感を感じさせるものとすることがまず重要です。そしてそこに会社の独自性や特色が表せるよう、提供する観光サービスの特徴やスタイルを表す意味やメッセージを加えていくと、個性的な会社ロゴを作り出すことができるでしょう。
製造業は、原材料や部品を使用して、世の中のありとあらゆる製品を生産する業種です。製品を設計し、材料を調達、組み立てや加工を経て品質チェックを行った後、包装・出荷に至る一連のプロセスを、効率的かつ必要な量をまかなえるよう計画して生産しています。このプロセスを一貫して行っている会社もあれば、分業化して行っている会社もあり、業種の幅は多岐にわたります。
製造業において、会社として成り立たせている根幹の部分にあるのは、0から1を生み出すアイデアやモチベーションです。特に資源の乏しい日本では、そうした生み出す技術やノウハウが特に大切にされてきており、今の日本の発展、そして今後の日本も支えていく業種のひとつとして期待されています。そのため製造業においては、いかに新しいものを創り出そうとしているか、その姿勢がそのまま会社のイメージに繋がっていくのです。
したがって、製造業のロゴは、創造性を感じさせるようなものにすることがまず大切で、それに製品の生産を通して社会的課題やニーズにどう応えるか、どんな影響を与えたいと考えているか、その考えを表す意味やメッセージを盛り込んでいくと、その会社の姿勢や思想が埋め込まれた、オリジナルなロゴを作成することができるでしょう。
不動産とは、土地、建物、その他の自然または人工の資産など、読んで字のごとく「動かすことのできない財産」のことです。不動産業は、取引、管理、開発、投資、仲介など、不動産にまつわる様々な業務や事業を行う業種です。
不動産はその名の通り動かすことができないため、地理的に依存するという特徴があります。そのため、その地域特性に影響を受けるところが大きく、扱う不動産の周辺情報の理解・分析・評価・判断がどの事業や業務にも求められます。また、不動産そのものの価値が、時代や環境など、関係者がコントロールできない要因に左右されるところが大きいことから、それを冷静に視ることのできる力を備えているかどうかが会社としてのイメージにつながると思います。
したがって、不動産業のロゴは、先見性や客観性を重んじていることを表現することがまず大切で、それに会社それぞれが行っている、地域や顧客の信頼を得るための方策や姿勢が感じられる意味やメッセージを取り入れていくと、その会社らしいロゴを作り出すことができるでしょう。
資源・エネルギー業は、地球上の自然資源を採掘し、社会で利用するためのエネルギーへ変換・生産し、供給まで行う業種のことを指します。代表的なエネルギーとしては電気・ガス・ガソリンなどがあり、これらは現代社会における経済活動および生活に必要不可欠なものとなっています。またこの業種における会社は、エネルギーの種類ごとに作られていることが多く、それぞれの専門分野ごとに特色が見られます。
エネルギーの源となる資源は有限で、また資源をエネルギーへと変換する過程、あるいはエネルギーを使用した時にかかる地球環境負荷の懸念が、現代におけるこの業種の課題となっています。しかしどの会社も決して暗い未来を思い描いている訳ではなく、水素エネルギーなどの新エネルギーや、その他再生可能エネルギーの研究・開発も近年進化を見せるなど、いかに持続可能なエネルギーシステムを構築するかを模索している状況にあるといえます。
したがって、資源・エネルギー業のロゴは、自然環境への影響および配慮の姿勢を鑑みることが必須で、それに会社それぞれのエネルギーに対する未来への取り組み姿勢や思想、社会的位置付けなどを意識した意味やメッセージを取り入れていくとよいでしょう。そうすることで、会社独自の社会へのアピールやメッセージ発信が、ロゴを通して行えるようになると思います。
福祉業は、社会的な支援やサービスを提供し、個人やコミュニティの福祉と生活の質を向上させることを目的とした業種です。高齢者、子供、家族、労働者、病気や障害を抱える人など対象は様々で、それぞれが必要としている問題や課題に色々な角度からアプローチし、解決や支援を図る事業を会社は行っています。
社会の中で生活する上で、不利な状況の立場にある人を支援するのが福祉業す。そのため民間の事業ながら公共的な側面も強く、会社としてもそういった立場であることを意識したイメージづくりが必要になります。また支援のシチュエーションも様々で、できるだけ多くの課題・ニーズに応えることが福祉業には求められています。
したがって、福祉業のロゴは、公共的なイメージ構築のために、平等や和といったことを感じさせることがまず必要です。それに、会社ならではの支え方、サポートの仕方を彷彿とさせる意味やメッセージを加えていくと、オリジナリティのある、それぞれの会社に相応しいロゴに仕上げることができるようになるでしょう。
ここまでは主に会社ロゴの「形」に関することを解説してまいりましたが、会社ロゴをデザインする上で忘れてはならないのが「色」についてです。赤のロゴの会社といえばコカコーラやユニクロ、緑のロゴの会社といえばスターバックスやLINEが思い浮かぶのではないでしょうか。時に色は形以上にイメージに残りやすく、視覚の8割は「色」が占めるとも言われています。
そこで、ここでは会社ロゴを作る上で大切な「色」について、その傾向および選定のポイントについて解説していきたいと思います。この章を読めばきっとロゴの色決定に迷うことも少なくなるでしょう。
まずは会社ロゴにおける色の傾向についてです。よく目にする著名な会社のロゴを俯瞰・分析することで、どういった色がどのように使われているかを見ていきたいと思います。
◆会社ロゴは「赤」と「青」がスタンダードカラー
1章の冒頭で紹介した上記「Best Japan Brands 2020 Rankings」に挙げられたコーポレート・ロゴの色を見てみると、以下のような傾向が見られました。
赤系統主体 33社
青系統主体 23社(水色含むと27社)
緑系統主体 9社
無彩色系統 10社
その他・複数色 21社
最も多かったのが赤系統主体の会社ロゴ、次いで青系統主体が多く見られました。緑や無彩色も一定数見られましたが、赤や青の1/2以下の数となっています。こうして見ると赤の会社ロゴと青の会社ロゴで全体の約6割を占めていることが分かります。
ここで会社ロゴの色に関する特徴的なエピソードをひとつ紹介したいと思います。赤い「スリーダイヤ」のロゴで有名な三菱グループですが、実は以前は現行の赤のロゴに加え、青のロゴも使われていたダブルスタンダードの時代があるのです。
現行の赤いスリーダイヤのロゴの歴史は明治の初期まで遡ります。創業者である岩崎弥太郎が、三菱創業時の九十九商会が船旗号として採用した三角菱がスリーダイヤの原型です。その後時代を経て1985年、企業イメージの向上を目的に三菱はCI(コーポレート・アイデンティティ)活動を実施しますが、その際当時既に知名度の高かったスリーダイヤのロゴは海外向けに使うことが定められ、日本国内用には青の「MITSUBISHI」のロゴ(ロゴタイプ)が作られました。その後海外用の赤いスリーダイヤのロゴ、国内用の青のMITSUBISHIのロゴのダブルスタンダードはしばらく続きますが、2014年に海外・国内での使い分けを止め、赤いスリーダイヤのロゴに統一されることになったのです。(参考文献:三菱自動車、三菱電機)
このように、日本のトップ企業が選択したロゴの色もやはり「赤」と「青」で、会社ロゴと言えばこの2色がスタンダードカラーとして考えられていることが窺えます。
◆同業だと同じ色を使おうとしない
同じ業種、同程度の規模・知名度の会社であるほど、会社ロゴを同じ色にはしたがらないものです。「〇〇の色の会社といえば」といったイメージの話ももちろんありますが、同業のロゴが同じ色だと紛らわしくという理由もあるからでしょう。
その顕著の例としてまず挙げられるのが航空業界の会社ロゴです。大手2社である日本航空(JAL)は赤、全日空(ANA)は青という色のイメージが定着していると思いますが、その他の航空会社のロゴも実は色が被らないようにデザインされています。国内線で一定の知名度がある航空会社8社のロゴの色を見てみましょう。
・日本航空(赤)
・全日空(青)
・スターフライヤー(黒 or 白)
・スカイマーク(紺色+黄)
・AIR DO(水色+黄)
・ソラシドエア(緑)
・ピーチ(赤紫)
・ジェットスター(オレンジ)
このように、前節で解説したスタンダードカラーである赤と青は大手2社が使っており、第3極と呼ばれるスカイマーク・AIR DOは2色使い、ソラシドエアとスターフライヤーは単色だがやはり大手2社とは異なる色を採用しています。またLCCと呼ばれる格安航空会であるピーチ、ジェットスターも同様に異なる色としていることが分かると思います。
航空会社の場合、空港という同じ場所でロゴが掲示されるシーンも多くあることから、同じ色をより採用したがらない傾向が強いものと思われます。同じ場所で同業種のロゴがある場合など、一目で認識できる「分かりやすさ」がデザイン上最優先となる場合、色は同じにしない傾向が強くなっていくのです。
またこれと同様な例として挙げられるのが銀行です。メガバンク3社のロゴの色を見てみると、スタンダードカラーある赤は三菱UFJ銀行、青はみずほ銀行、そしてそのどちらでもない緑は三井住友銀行が採用しています。銀行も航空会社同様、ATMなど同じ場所でロゴが掲示されるシーンが多く、やはりできるだけ同じ色を採用したがらない傾向があると思われます。
◆業種によっては色が似通ってくるケースもある
しかし、同じ色の会社ロゴばかり見られる業種も少ないながらあります。たとえばsynchlogoが制作を担当した薪ストーブメーカーの会社ロゴでは、同業界の競合会社ロゴを調査した結果、下の一覧のようにそのほとんどが黒・オレンジ・赤の単色もしくは複合色でロゴが作られていることが分かりました。火を扱うこと、そして火に関する商品提供がメインであることからそういった色の傾向になるのでしょう。
この例より、事業の内容や会社としてアピールしたいポイントが業界内で差別化することが難しく、提供する商品やサービスの内容や質で勝負せざるを得ない場合においては、会社ロゴの色が似通ってくる場合もあることが分かると思います。水を扱うことがメインの業界なら水色や青の会社ロゴが多いですし、植物を扱うことがメインの業界なら緑や黄緑の会社ロゴが多いことは容易に想像がつくと思います。
こういった場合、あえて通例となっている色を使わず、そこで差別化を図る会社ロゴの作り方ももちろんあります。しかしそのような会社ロゴの作り方をすると、業界らしくない、誤解を感じさせてしまうなどのリスクを背負ってしまうことも大いに考えられます。その時は色で違いを作ろうとせず、前章まで解説した「形」の部分で特徴的なデザインを目指すようにした方がよいでしょう。
次は、会社ロゴの色を選ぶポイントについてです。前節の分析結果を踏まえつつ、実際に色の選ぶ時に気を付けるべきことや、参考にした方がよい考え方などを紹介していきたいと思います。基本的に色は好きなものを選んでも良いと思いますが、これを読んでおくとより効果的な色選定を行うことができると思います。
◆使用してはならない色というのがある
色については、ロゴデザインの世界では知られていても、一般の方はなかなか知らない「使用してはいけない色」というものが実は存在します。
その有名な例をひとつご紹介いたしましょう。医療関係の会社ロゴや、安全・防護に関係する会社ロゴでは「十字」マークをモチーフに用いたデザインが多く見られまると思います。しかしこの十字マークを赤くして使用する「赤十字」については、世界最大の人道支援のNGOである赤十字に関係のある活動にしか使用を許されていないというのは、意外と知られていないのではないでしょうか。
残念ながら日本ではこの赤十字マークが色々なところで使用されているのを見かけますが、実はこの白地に赤い十字のマークは、世界最大の人道支援のNGOである赤十字に関係のある活動にしか使用を許されていないマークなのです。これはジュネーブ条約や日本国内では『赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律』、『商標法』などの国内法によって厳密に定められています。ですから、このマークが薬箱や赤十字以外の病院やクリニックの看板、あるいはレスキュー隊のユニフォームなどに描かれていれば、それらは全てジュネーブ条約違反なのです。
引用:日本赤十字社
また数は少ないながら、日本でも「色彩商標(色彩のみからなる商標)」と呼ばれる商標が存在します。以前の日本の商標法では文字、図形、文字と図形の組み合わせ、立体物しか商標と認められませんでしたが、2015年の法改正によって、音、色等も登録対象になったのです。著名な登録例を紹介すると、第5933289号のセブンイレブンと登録番号第5930334号のトンボ鉛筆の商標です。登録前から非常に知られているカラーパターンで、その認知度の高さも登録に寄与したのではないかと言われています。また、この配色を他社がロゴに使うことは当然できません。
しかしここで挙げた例のように、見慣れた色、どこかで見たことのある色などを会社ロゴに使ってしまうことは実は少なくありません。風格や権威性を帯びた色とはそういったものですから、無意識に選んでしまうこともあるのです。しかし法的に認められていない配色はトラブルを招く原因にもなることから、自社のカンパニーカラーとなる会社ロゴの色は慎重に検討するようにしましょう。
◆関係性があることを示したい時は同じ色を使う
一方例外的に他社と同じ色を積極的に用いることがあります。それは両社がグループ会社や関連会社である時です。異なる会社でも両社に何らかの関係性があることを示すには、むしろ積極的に同じ色を会社ロゴに使っていくべきでしょう。たとえその会社のロゴが独自の個性的な形をしていたとしても、色を同じにしていれば、何らかの関係がありそうなことに気付いてくれると思います。
その例として、東京ガスグループの会社を見てみましょう。下に示した5社のロゴのデザインは全く異なるものですが、赤と青の2色を統一しただけで、一目でグループ会社であることが感じられるようになっています。
このようにロゴの形は異なっていても、配色を同じにすることで同じグループの会社であることが示せるようになります。同じグループの会社でも、事業領域が異なる場合などはこのやり方が有効にはたらくでしょう。
◆ロゴの形は変えず色を変えて関係性を示すこともある
上記とは逆に、色はそれぞれの会社で異なるけれど、ロゴの形を同じにしてグループ会社や関連会社などの関係性を示す場合もあります。例として挙げられるのはJRグループやNEXCO各社です。これらの会社ロゴは管轄するエリアによって色が変えられており、それぞれのエリアの特徴などに由来した色でデザインされています。それではNEXCO3社のロゴの色の由来を見てみましょう。
・NEXCO東日本(ネクスコ・グリーン):東日本・北日本の安息を感じさせる自然をイメージした、深みと明るさのある緑色。
・NEXCO中日本(ネクスコ・オレンジ):中部日本エリアの活発なにぎわいをイメージした、力強くいきいきとしたオレンジ色。
・NEXCO西日本(ネクスコ・ブルー):西日本・南日本の海と空の明るさをイメージした、鮮やかで清潔感のある青色。
このようにロゴの形は同じでも、全く似ていない色とすることで同じグループでも会社は異なることが示せるようになります。会社ロゴにファミリー感を出したい時に有効にはたらく手法です。
会社のイメージ戦略・ブランディング戦略を行う時に欠かせないのがコーポレートカラーです。コーポレートカラーとはその名の通り、会社を象徴する色のことで、シンボルカラーと呼ばれることもあります。先ほど紹介した航空業界では、赤といえば日本航空、青といえば全日空をイメージするでしょう。冒頭でも記した通り、色は形以上にイメージに残りやすいと言われていることから、会社のイメージづくりに重要な存在なのです。
そして、会社ロゴに使用した色は、このコーポレートカラーにもなることが多くあります。そのため使用する色には意味や想いなどが込められ、会社のロゴともにブランドイメージとして設定され、積極的に外へ発信していることも多く見られます。
そこでここではコーポレートカラーで構成されている会社ロゴの実例を見ていき、どのような考え方で色を設定しているかを掴んでいきたいと思います。なおその色の設定方法にはいくつかの傾向が見られたので、ここではその傾向ごとに紹介してまいります。
①オーソドックスな色設定の例
◆西部鉄道株式会社
若葉を思わせる上部のグリーンは「自然との調和」を、落ち着いたブルーは「信頼」「安全・安心」、明るいブルーは「新しいことへの挑戦」をイメージしています。
引用:経営理念(西武鉄道株式会社)
◆野村不動産グループ
オレンジ色には「ホスピタリティ」と「挑戦心」、紫色には「独創性」と「品格」という意味を込めています。鮮明なオレンジ色と紫色の2色構成で、野村不動産グループの未来への明確なビジョンと意志の強さを表現しています。
引用:グループ企業理念・行動指針(野村不動産グループ)
◆第一三共株式会社
ブランドカラーのブルーはこれまで培われてきた製薬会社の「信頼性・使命感・責任感」を、黄色から緑の階調は生命のいきいきさを表すと同時に独自の研究による「創薬」をも意味しています。
引用:ブランドマーク(第一三共株式会社)
◆株式会社大京
ブランドカラーのマリンブルー(濃い青色)、スカイブルー(水色)とオレンジ色にはそれぞれの意味を込めています。
引用:経営理念(株式会社大京)
・マリンブルー(濃い青色)のイメージ / 信頼
・スカイブルー(水色)のイメージ / 未来・英知・理想
・オレンジ色のイメージ / 活き活きした・若々しさ(フレッシュ)
◆日鉄興和不動産株式会社
コーポレートカラーの3色のグリーンは100年先まで環境や人々の暮らしを見据えていく、クリーンな企業姿勢を表しています。
引用:企業理念(日鉄興和不動産株式会社)
②色にネーミングを施してコーポレートカラーに設定した例
◆ヒューリック株式会社
快適で豊かな暮らしと未来を創造する姿勢をフューチャーブルーで、また、安心と信頼が人々にもたらす穏やかな心をジェントルブルーで表現し、それらを組み合わせることで、ヒューリックの企業イメージを象徴しています。
引用:企業理念(ヒューリック株式会社)
◆日本国土開発株式会社
コーポレートカラーは、「アクティブ・レッド」と「クリエイティブ・グリーン」の2色で、アクティブ・レッドは『若々しい感性、挑戦、豊かな人間性、柔軟性、伝統、知性、想像力、太陽、生命、躍進』などを意味しており、クリエイティブ・グリーンは『技術力、誠実、快適さ、安らぎ、優しさ、ゆとり、爽やかさ、清潔、実り、新鮮、自然』などを意味しています。
引用:経営理念・方針(日本国土開発株式会社)
◆株式会社ツムラ
コーポレートカラーのツムラセピアは、草根木皮が息吹く自然の恵みの源泉である「大地」の色を意味しています。
引用:パーパス・経営理念・企業使命・ビジョン(株式会社ツムラ)
◆ホーユー株式会社
カラーには、イキイキとしたハートを表現したhoyu REDを用いており、hoyuブランドが提供していく、心からの豊かな美が表現されています。
引用:hoyuの想い(ホーユー株式会社)
◆東鉄工業株式会社
当社で使用する「緑」は、特に「シンシアグリーン(Sincere Green)」と名付け、すべてのステークホルダーに向けたメッセージとして、『「究極の安全と安心」の追求』はもとより、『「誠実なCSR 経営」の推進』『「人を大切にする」企業風土』『「環境」への取組み』などの意味がこめられています。「シンシア(Sincere)」とは、「誠実な」「真実の」(ラテン語:「純粋な」)という意味であり、東鉄工業の「緑」は「誠実の緑」です。
引用:経営理念・行動憲章(東鉄工業株式会社)
◆相鉄グループ
グループカラーに定めた「SOTETSUブルー」は知性や信頼を、「SOTETSUオレンジ」は活力やきらめきを表しています。
引用:相鉄グループとは(相鉄グループ)
③意味を与えた2色の混色をコーポレートカラーとして設定した例
◆株式会社マーキュリーリアルテックイノベーター
コーポレートカラーの紫は赤と青が重なり合って生まれるカラーです。赤は30年間に渡る情熱。青はこれからの成長を司る先進性の象徴を意味します。
引用:企業理念(株式会社マーキュリーリアルテックイノベーター)
◆アイビーシー株式会社
企業理念である「お客様に喜んでいただくこと」、そして事業内容である「ITシステムの安定稼働への追求」を、あざやかな青緑色で表現しています。
引用:企業情報(アイビーシー株式会社)
信頼や誠実を表す青色と、安心や安定を表す緑色をあわせた、IBCのシンボルカラーです。
ここまでは一般的な会社ロゴの作り方について解説してまいりましたが、本当にかっこいい会社ロゴを作るためにはブランディングを意識して制作していく必要があります。「かっこいい会社ロゴ」の「かっこいい」とは見た目の良さのことだけではなく、会社として戦略的にどうイメージを社会に伝えていくか、どのように会社を見てもらえるようにするかなど、見た目の奥にあるブランド感も大切になってくると思います。しかしそのブランド感は簡単に作り出せるものではなく、ロゴの制作プロセスでどのようなことを行っていくかに懸かっているのです。
そこでここでは、本津にかっこいい会社ロゴを作るための、ブランディングを意識したロゴ制作過程とはどのようなものなのかについて紹介したいと思います。以下、その実際の制作過程について順を追って解説してまいります。
STEP1|ブランド調査
会社ロゴではまず前提として、そのロゴを発表することでどのように世の中に影響を与えるか、どのようなはたらきをするかなどを事前に予測、コントロールしながら作ることがあります。その主な方法として、ロゴの検討を行う前にブランディング戦略(CI:Corporate Identity)の立案を行うことが挙げられます。
CIとは、会社の理念や姿勢を体系的に整理し、統一した会社イメージの構築を目指す概念のことで、ヴィジュアルのイメージの統一(VI:Visual Identity)、理念の統一(MI:Mind Identitity)、指針の統一(BI:Behavior identity)の3つの柱で成り立っています。このうち会社ロゴはVIの中に位置付けられ、デザインの方向性やどんなモチーフを用いてロゴデザインするかなども、VIの考え方に基づいて設定されていくことになります。
ブランディング戦略ではまず市場におけるブランドの位置を把握するための調査を行います。対象となる市場と顧客を調査するのですが、必要に応じて消費者行動モデルのフレームワークを活用したアンケートなどを実施します。市場でのポジショニングや顧客のニーズを確認することで、競争相手や顧客のニーズなど、ブランディングに必要な課題を知ることができるようになります。
STEP2|MIの設計
会社ロゴを作る上で欠かせないのがこのMIです。理念の統一を図ると、会社の価値観とはどういうものかを方向付けることができるようになります。MIではミッション(果たすべき使命)、ヴィジョン(実現したい未来)、バリュー(提供できる価値)、スピリット(大切にする精神)、スローガン(合い言葉)を定めることが多く、近年会社紹介としてコーポレートサイト等に掲げていることもよくあります。なおこれらは経営者だけで考え、決定すべきではではなく、社員やスタッフ、関係者などと一緒に設計していかなければ意思統一されたものを定めることはできないでしょう。
STEP3|市場・競合相手のVI調査
会社が属する市場や同じ業界、直接の競合となる相手のVI調査を行います。掲げているデザインコンセプトやコーポレートカラー、またヴィジュアルのベースにしているモチーフやキャラクターなど、ヴィジュアルに関するものをあらゆる視点から調査することが重要です。
この調査の目的は、明快な差別化をどう行うかを知るためであり、その結果によってはデザインの方向性がこの時点である程度絞られることもあります。
STEP4|MIのヴィジュアル化方針検討
上記のVI調査を踏まえた上で、自社のMIをどうヴィジュアル化していくかを検討します。MIで言語化された内容が多い時は、その全てをヴィジュアル化することは難しいため、その取捨選択もこの工程で行わなければなりません。社会や顧客に対して伝えたいメッセージや、会社のシンボルとすべきものは何か、どのような雰囲気でイメージを構築していくかなど、吟味を重ねて絞り込む必要があります。
また、ここで定めたヴィジュアル化方針は「トンマナ(トーン&マナー)」となり、ブランドイメージやブランドカラーとして、ロゴだけでなくVIに基づき作られる様々な制作物にも展開されていきます。よってVIのトータリティを損なわないためにも、ロゴも例外なくこのトンマナは必ず守るべきルールだと認識しておく必要があります。
STEP5|ラフ案の作成
MIのヴィジュアル化方針をもとに、いよいよロゴのラフ案を作っていきます。ラフ案作成で大切なことは、様々な角度から、あり得るデザインの可能性をできるだけ多く探ることです。イラスト作成ソフトでも、ペンタブを使ったスケッチでも、紙に手描きでも、方法は制作者によって異なりますが、限られた時間でできるだけたくさんの案を作り、どの方向性のデザインが求めている会社ロゴに相応しいか考えていきます。
またここまでの工程と同様に、ラフ案をつくる上でも企業とデザイナーがコミュニケーションを取りながら進めることが重要です。完成形に近いデザイン提案をジャッジするのではなく、ラフ案の段階でどんなデザインの可能性があり得るかを共有しておくことで、より密度の濃い検討ができるとともに、デザイナーが思いつかないような有益なアイデアが生まれることも少なくありません。クリエイティブな工程に進むほどデザイナーに任せる部分はおのずと増えてきますが、会社が積極的に検討に関わることで、より上質なロゴの完成に近づいていくでしょう。
STEP6|デザイン提案の作成
ラフ案の中から可能性を感じる数案を選定し、提案できるよう仕上げていく工程です。まずラフ案から提案候補をどのように選ぶかについてですが、できるだけデザインの方向性が際立っている、異なる方向性のものを選びます。会社ロゴは初回のデザイン提案で決定するようなことはまずなく、何度か提案を重ねることが当たり前です。ですので初回の提案では、どのデザインの方向性で進めるかを決めるくらいの意識で提案されることが通例とされています。
また、デザイナー一推しのデザインが良いデザインであるとも限りません。そのデザインのポイントが、デザイナーの主観的なものであったなどということも少なくありません。会社に相応しいロゴデザインを客観的に判断するというのはプロのデザイナーでも難しく、そのためあらゆる方向性のデザインを、あらゆる価値観を持った人達によって比較した上で決めていきます。
STEP7|提案・プレゼンテーション
作成したデザイン提案をプレゼンテーションし、デザイン案について意見や感想を交換する工程です。会社ロゴの場合、デザインの最終決定者は経営のトップ、もしくは役員会など複数の人からなる経営陣であるため、どのような提案内容にするかはクライアント会社の担当者と協議しながら決定します。
プレゼンテーションは、デザイナーがデザインの最終決定者に直接行うこともあれば、提案資料を送付し、クライアント会社の担当者が行うこともあります。またプレゼンテーションの方法は、紙の資料を用いるやり方、PCを使ったスライド形式で行うやり方など様々です。クライアント会社に合ったやり方を考え、最適な方法で行うことが求められます。
STEP8|ブラッシュアップ
この工程では、プレゼンテーションで得られた意見や感想をもとに、選定されたデザイン案のブラッシュアップを行っていきます。プレゼンテーションでは1つの案のみ選定されることが望ましいですが、引き続き比較検討する目的で複数案選定されることもあります。その際は各案ごとに意見や感想をもらっておき、それぞれに合った方向で修正・調整を行うようにするのが一般的です。
具体的なブラッシュアップの例としては、形の調整や配色バランスの見直し、またデザイン提案作成時に詰めなかったディテールもここで検討します。ブラッシュアップ後のロゴは即決定案となりますので、基本的にはそのまま世に出ても問題ないよう完成形を目指して制作が行われます。
またVIで作る他の制作物との調整もここで行います。ロゴは、ほとんどの制作物で使われるため、サイズやプロポーション、視認性・使い勝手など、様々なシチュエーションの想定・検証を行うことで、よりトータリティのあるVIへと仕上げることができます。制作物ごとにデザイナー・制作者が異なる場合は、よりしっかりとそれを行う必要があり、密なコミュニケーションを要することになります。
STEP9|完成・納品
プレゼンテーションとブラッシュアップの工程を何度か繰り返し、クライアント会社の承認が得られると完成となります。このトライ&エラーの回数は案件の内容や性格にもよりますが、一方だけでなく、クライアント会社とデザイナー双方が納得できる結果になって、はじめてその企業に相応しいロゴの完成となります。双方が納得できるデザインが出来上がるまでにはかなりの時間と労力を要しますが、ロゴはVIで作成する制作物の中で最も長く使うものですので、根気強く検討し続けることが求められます。
そして制作したロゴの納品となりますが、現在ほとんどの場合、ロゴはデータで納品されます。そのデータは用途を想定し、どのような用途でも対応できるよう、様々なファイル形式に変換し準備することが求められます。特に近年はWebやSNSが手軽に扱えるようになったことから、印刷物用のデータだけでなく、それらに適した画像系のデータを複数納品することも珍しくありません。
STEP10|商標出願・登録
ロゴは、会社がその権利を有する知的財産の代表的なものですので、完成したロゴを商標出願・登録するケースも少なくありません。ロゴを法的に守ることで、安心して使用することでき、無断で他人に使用されることが阻止できるようになります。社会的影響の大きい会社ほど商標の出願・登録をしておく必要性は高く、ロゴ制作の着手前から出願・登録することが決まっている場合は、それを見越した制作を行う場合もあります。
なお商標の出願・登録に関する検討・手続きには専門的な知識・ノウハウが必要で、弁理士と呼ばれる有資格者が行うことが一般的です。ロゴ制作者は適宜ロゴ制作での諸情報を弁理士に提供することが行われます。
前章ではかっこいいロゴ作成のプロ説を解説しましたが、ここでは実際デザインする時のテクニックを紹介したいと思います。どのような形や色にすれば会社ロゴがよりかっこよく見えるようになるか、有名な会社ロゴの事例を俯瞰しながらそのテクニックを具体的に紹介していきたいと思います。
形や色については、もちろん流行やトレンドもチェックしなければなりませんが、ここでは昔から変わることのない、定番のデザインテクニックを挙げていきたいと思います。
エッジを利かせたシャープな形にすると、スピード感や未来感のあるかっこよさが生まれてきます。対称的な形にも、動きのある形にも合うため、色んなバリエーションがデザインができます。
直線や放物線、円や多角形などの図形を使い、規則性のある形にすると整ったかっこよさになります。その形にした意味や理由が伴うと、より洗練させたロゴへ仕上がっていきます。
陰影をつけたり、遠近感作ったりすることで、立体感や空間を感じさせる印象的なかっこよさができます。リアルな図形に近づけたり、あえて現実にはない形にしたりすると、特徴的な雰囲気が醸し出てくるでしょう。
対比を効果的に使った形・色でデザインすると、メリハリの利いた、緊張感のあるかっこいいデザインが出来上がります。様々なデザインに取り入れることができる、使いやすいテクニックではないかと思います。
徐々に変化する色を効果的に使うことで、エモーショナルなかっこよさを演出することができます。複数の色が使えるため、配色の組み合わせは無限に考えられるでしょう。また色は人の記憶に残りやすいため、オリジナルなかっこよさが作りやすいテクニックです。
会社ロゴのほとんどは会社設立と同時に作られますが、その時作ったロゴをずっと使い続けるかどうかは会社の考え方次第です。一般的に会社ロゴは創業時の記憶・起業のシンボルという特別な存在であるため、リニューアルすることに躊躇いを感じてしまうものです。そうしてなかなか変えられずにいると、起業時のロゴのイメージが世の中に定着してしまい、さらにリニューアルしづらくなってしまいます。
もちろん長く使うことができる「永続性」を備えたロゴは、ロゴデザインとして評価されるものです。しかし同じロゴを使い続けるのが会社にとって良いことだと一概に言い切れるものでもありません。
そこでここでは、ロゴのリニューアルについて、世の中の会社はどのように考え、どのように対応しているかを俯瞰していきたいと思います。それによって自社の会社ロゴを、時間の経過とともにどのように扱うべきかきっとヒントが得られるでしょう。
まずは創業から長い年月が経った老舗企業の会社ロゴを見てまいりましょう。「老舗」の定義は特にありませんが、ここでは創業から100年以上続いている日本の企業を取り上げたいと思います。
ひとつめの例として挙げるのは大手百貨店グループの髙島屋のロゴ、通称「マルタカマーク」です。
マルタカマークは、江戸時代後期の天保2(1831)年に京都で古着木綿商を創業した際に作られたもので、現在でも同企業のシンボルとしてそのまま使われています。デザインは左右対称なのが特徴で、旗などに描いた時、表から見ても裏から見ても同じものとして見えるように意図されたデザインだと言われています。
ちなみにこのマルタカマークは明治37(1904)年に商標登録もされています。なお大手百貨店は比較的創業当時のロゴをそのまま使う傾向があり、そごうや松阪屋なども同じ例として挙げられます。
ふたつめに化学メーカーの花王のロゴを取り上げましょう。こちらは髙島屋のように創業当時のロゴをそのまま使っているのではなく、何度かデザインをリニューアルしている例になります。
花王の創業は1887年、創業者・長瀬富郎が洋小間物商・長瀬商店を設立したのがはじまりです。最初にロゴが作られたのは1890年で、長瀬商店で扱っていた輸入品の鉛筆に月と星のマークがあり、これをヒントに富郎自身がロゴを考案し、「美と清浄を象徴したマーク」としたそうです。
しかしこの創業時のロゴは50年後に大きくデザインが一新されます。右向きだった月の顔が左向きに変わり、ヴィジュアルもシンプルになりました。顔の向きが変わったのは、これから満ちていく左向きの月の方が縁起がよいという考えからだそうです。そしてその後も5年から20年ほどのスパンでロゴのデザインは変更されていきます。現在使われているおなじみの月のマークは1985年に登場し、以降マークは変えられずに使われています(ロゴタイプはその後も変更がありました)。
このように、創業当時の会社ロゴをそのまま使う老舗企業もあれば、頻繁にデザインをリニューアルし続けてきた老舗企業もあり、一概にどちらが良いという訳ではないようです。しかし一つ言えるのは、歴史や伝統を重んじることをアピールしたい企業は創業当時のロゴをそのまま長く使い、時代や流行に敏感であることや、企業の中で何かしらの変革が起こったことをアピールしたい企業は、その時代のトレンドを見ながらデザインを変えているのであろうと推察されます。百貨店という業種は歴史の重みが企業として大きな付加価値になりますし、化学メーカーは現代の技術や流行を追わなければならない業種です。このように業種によって会社ロゴのあり方に対するスタンスは異なってくるものと考えられます。
冒頭でも述べましたが、会社ロゴは創業時の記憶・起業のシンボルであるため簡単にリニューアルできるものではありません。また会社ロゴは広告・宣伝やビジネスツールをはじめ様々なところで使われており、いざリニューアルするとなると、ロゴを使っているそれら全てのものを見直さなければならず、大変な作業が発生することを覚悟しなければなりません。したがって何らかの目的やきっかけがなければ、会社ロゴのリニューアルなど普通は行わないものです。
そこでここでは会社ロゴをリニューアルした企業を対象に、どのような目的やきっかけでリニューアルを行ったか、その事例を調べていきたいと思います。
①社名変更に伴うリニューアル
まずご紹介する事例は、2024年10月に社名変更が予定されているカナデビア株式会社(旧社名:日立造船株式会社)です。同社は既に日立グループからは離れ、造船事業からも撤退していたことから、社名と事業が乖離した状態が続いていました。ちなみに新社名のKanadevia(カナデビア)は、“奏でる”(日本語)と “Via” (Way/道・方法という意味のラテン語)による造語とされています。
【カナデビア株式会社のロゴコンセプト】
引用:新社名「カナデビア株式会社」のシンボルマーク(ロゴ)が決定
シンボルマークのデザインは、新社名と同様にブランドコンセプト「技術の力で人類と自然の調和に挑む」から導いており、「カナデビア株式会社 / Kanadevia Corporation」と同じく使用開始は2024年10月1日からです。
デザインのコンセプトは以下3点です。
1.「a」「 d」「 e」を構成している正円はゆがみがなく完全な形を意味しており、ブランドが培ってきた高い技術力を表しています。その正円によってデザインされた「a」「 d」「 e」の3文字は、シンボルマークにリズムを⽣み出し、力強さ・優しさの双⽅を印象づけるデザインです。
2.シンボルマーク全体にグリーンとブルー2⾊のグラデーションを使用することによって、人類と自然の調和を美しく表現しています。グリーンは「人類を含む自然」、ブルーは「地球」と「テクノロジー」を表しています。
3.ブランドコミュニケーションの展開では、テーマや使用される画像と調和したグラデーションで、多様性ある表現を作り出すことができます。
また同じく社名変更に伴い会社ロゴをリニューアルした例として、SCデジタル株式会社の例をご紹介します。2023年に「SCデジタルメディア株式会社」から社名が変更された時にリニューアルされていますが、こちらはartience株式会社のロゴとは異なり、名称の綴りそのものが一新された訳ではないため、社名変更がロゴリニューアルのきっかけになったというケースです。
【SCデジタル株式会社のロゴコンセプト】
引用:コーポレートサイト及びロゴリニューアルのお知らせ
新ロゴのコンセプトは「C × D」をモチーフにしたロゴデザインです。「C」は「カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience/CX)、「D」は「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation/DX)」。 間にある「×」は 2つが掛け合わさることで、無限(∞)の可能性が生まれることを表現しています。 さらに「×」の図形が枠から飛び出すことで、SCデジタルの独創性やチャレンジ精神を込めています。
②周年に伴うリニューアル
次にご紹介する事例は、2019年にロゴをリニューアルした戸田建設株式会社です。このロゴリニューアルは140周年事業の一環として進められ、デザイナーだけでなく戸田建設グループ社員およびその家族からもロゴ案を募集し作られました。
【戸田建設株式会社のロゴコンセプト】
引用:戸田建設グループ ロゴマークを制定!
ロゴマークのデザインコンセプトは「Orchestrating Innovation」で、多様な図形(=個性・アイデア)の集合体によって「戸田建設」の「戸」を形成し、新しい価値が生まれてくる期待感を表現しています。また、漢字の「戸」をモチーフとしたことによってオリジナリティを高めるとともに、日本発のグローバル企業に向けてクオリティやホスピタリティなどの感性価値を大切にする意志を込めています。
同じく周年を機に会社ロゴがリニューアルされた事例として、2015年に変更された株式会社安川電機のロゴをご紹介いたしましょう。同社は100周年という節目にあたり、真のグローバル企業への進化と更なる成長を目指すべくグループ共通のロゴの刷新を行いました。
【株式会社安川電機のロゴコンセプト】
引用:創立100周年を機にコーポレートロゴを刷新
YASKAWAの信頼感、安定感を表現するシンプルな中でも視認性と可読性の高さを実現する大文字を使ったワードマークです。しなやかな曲線は、人間らしさをイメージさせ、お客様に寄り添い、様々な課題に応えていくYASKAWAの従業員の柔軟性や創造性を表現しています。また、全体的にたおやかに上方へ伸びゆく曲線で、世界へとビジネスを拡大させていくYASKAWAの意志や将来性を想起させています。
③経営統合に伴うリニューアル
複数の会社が経営統合を行い、新しく誕生した会社のロゴへとリニューアルする事例もあります。マルハニチロ株式会社は、水産物のグローバルな調達に強みを持つ株式会社マルハと、食品の開発に強みを持つ株式会社ニチロが一体となり、機能の相互補完を行いながら規模の拡大と生産や販売体制のさらなる効率化を実現し、新たな事業領域の創出を目指し2007年に経営統合がなされました。
【マルハニチロ株式会社のロゴコンセプト】
引用:経営統合のお知らせ
新しい商標は、マルハの「M」とニチロの「N」、2つの波をパターン化してデザインされております。2つの波が共鳴しあい、伝統をベースにしなやかに変化しながら、食の世界に新しい波を起こしたい、世界中においしさをお届けしたいという願いをイメージし、新生「マルハニチロ」の躍動感と生命感を表しております。
また航空業界では、「北海道の翼」の株式会社AIRDOと「九州・沖縄の翼」の株式会社ソラシドエアによる株式会社リージョナルプラスウイングスが2023年に設立されました。社名には、「地域(リージョナル)に寄り添い続け、"北海道の翼""九州・沖縄の翼"の2つの翼(ウイングス)で、新たな需要と価値を創出(プラス)する」という想いが込められています。
【株式会社リージョナルプラスウイングスのロゴコンセプト】
引用:グループロゴのコンセプト
2つの航空会社の協業によるシナジー効果の大いなる可能性を「無限大∞」で表現したデザイン。北と南の空の軌跡がつながり、Rを囲みひろがっていく姿は、地域と共に持続的に成長・発展していくリージョナルプラスウイングスを象徴。その先に輝くプラスは、新しい価値の創出(プラス)と共に、未来へ飛躍する航空機も表現しています。カラーは、2社のブランドイメージカラーを融合し、共創のハーモニーを訴求します。
④買収・売却に伴うリニューアル
企業が他社から買収されたり、他社へ売却されたりし、経営の資本・体制が変わったほとんど場合でロゴがリニューアルされます。現在、ホームセンター・雑貨店を展開する株式会社ハンズは、元々東急不動産ホールディングスの傘下にあった株式会社東急ハンズが経営していましたが、2022年に株式会社カインズに買収され、経営体制が変わりました。買収後、ブランドカラーは踏襲されましたが、ロゴをはじめとする様々なデザインは一新されました。
【株式会社ハンズのロゴコンセプト】
引用:ハンズのロゴが新しくなりました!
ハンズのブランドリニューアルに合わせて刷新したロゴマークは、 原点である「手」がモチーフ。日本発のグローバルなメッセージとして、 あえて漢字を使用したのが特徴です。一方で、過去を継承しつつ未来に向けてアップデートをしていく という想いから、ブランドカラーは 従来の「ハンズグリーン」を 踏襲しています。さらに端部をつなぎ合わせ、途切れることの ない「一筆書き」でしたためました。
また会社ロゴが売却先のロゴに変更されるケースもあります。現在は株式会社ミライト・ワンの子会社である西武建設株式会社は、社名にもある通り元々西武グループの企業でしたが、2022年に株式の95%が譲渡されミライト・ホールディングスの連結子会社となりました。その際ロゴも変更され、西武建設の社名は残りつつも、売却後はミライト・ワンのシンボルマークが冠されるようになりました。
【ミライト・ワングループのロゴコンセプト】
引用:西武建設株式会社 新コーポレートロゴについて
ミライト・ワングループのロゴマークは「未来への扉」です。一人一人の社員が様々なパートナーとともに新たな挑戦を行うことを通じて、「ワクワクするみらい」を切り開く姿を象徴したものです。開かれた扉は、同時にMIRAIT ONEの「M」を形作り、その真ん中にはローマ字の「1」(ONE)が隠れています。また、上下に事業の広がりを感じさせるアークを表現しています。コーポレートカラーも信頼性と先進性を感じさせるMIRAIT ONEブルーを採用しています。
⑤グローバルブランド構築に伴うリニューアル
海外進出、事業のグローバル化に伴い、日本国内だけでなく世界でも共通で使えるロゴとするためにリニューアルする例もあります。味の素グループは1909年の創業以来積極的に海外展開を進め、世界30の国・地域で事業を展開していましたが、海外でのブランド認知率向上、“言語を超えた”シンボル創造を目的に、2017年にグローバルロゴを発表しました。
【味の素グループのグローバルロゴコンセプト】
引用:せかいでつかう“グローバルロゴ”が、できたんダ。
“味の素(Ajinomoto)”は、“味のもと(Essence of Taste)”→“おいしさのもと(Essence of Umami)”を意味するものです。“A”には、無限大∞を組み合わせることで、“味(Aji)”を追究し、極め、広めていく意志と、“アミノ酸(Amino acid)”の価値を先端バイオ・ファイン技術で進化、発展させる意志、さらに地球の持続性を促進する意志を込めています。“A”から“j”にかけての流れるラインは人の姿を表し、味とアミノ酸の“A”に人々が集まり(Join)、料理や食事、快適な生活を楽しむ(Joy)ようにという思いを込めています。そして、“j”の下から右上に伸びているラインは、味の素グループが未来に向けて成長、発展していくことを表しています。
他の事例として、古河電気工業株式会社でも2013年にグローバルロゴが発表されています。同社は、グローバル市場にFURUKAWAブランドの存在感をアピールしていくとともに、グループの一体感を醸成するため、このロゴを作成し共有していきました。
【古河電気工業株式会社のグローバルロゴコンセプト】
引用:グループ・グローバルロゴマークを新設
グループ・グローバル経営の新体制発足にあたり、1877(明治10)年に古河グループ創業者の古河市兵衛が定めたヤマイチマーク(注1)で「伝統、日本」のイメージを世界に向けて発信し、一方で社名のフォントをよりスマートなデザインに変え、「技術革新の伝統を継ぎながら、時代の求めに柔軟に応えて世界で貢献する」という社会との約束を表現しました。
(注1)元々は、古河市兵衛が明治10年に長年営んできた生糸業を廃し、鉱山業に専念することを決意した時に作られたマークです。その信条は「鉱業専一」と言われ、その後、足尾銅山を日本一の銅山にまで発展させました。当初からさまざまな技術革新で成長し続けてきたことから、転じて現在では、技術革新のトップリーダーとして社会に貢献していくことを志向しています。
尚、古河電工としてはヤマイチマークを1929(昭和4)年に商標登録しています。
このように会社ロゴのリニューアルは、部屋の模様替えや髪の毛を切るような気分転換で行われることはあまりなく、前章で示したように、事業に関して節目が訪れた時や、何らかの変化が起きた時に行われるものだということが分かったかと思います。
また事業の節目や変化といったタイミングは、会社としてさらに前進する意思や決意を社会に広くPRするタイミングでもあることから、ロゴだけでなくCIやVIといったブランディングも積極的に取り入れたり刷新したりする例が非常に多く見られました。会社ロゴはそういったイメージチェンジの「顔」となる存在ですので、やはりブランディングにおいて重要な位置付けにあると言っても過言ではないでしょう。
ここまでは会社ロゴの作り方について見てまいりましたが、ここから紹介したいのは会社ロゴの「守り方」についてです。ロゴは知的財産で、会社ロゴの財産権を所有するのは言うまでもなくその会社です。
会社が大きくなってくると、ロゴの管理・運用も難しくなり、様々な人が使い、多くのところで使われるようになってきます。そうすると、本意でない使われ方がされたり、場合によっては会社のブランド価値を利用し悪用されるケースもあります。
そこでここでは、せっかく作った会社ロゴの正しい使い方、使われ方が守られるよう、会社ロゴのレギュレーションと商標出願・登録について解説してまいりたいと思います。
会社ロゴのレギュレーションは、ロゴの正しい使用方法やルールを定めたもので、「ガイドブック」や「マニュアル」などと呼ばれることもあります。誰にロゴを扱われてもロゴによって作り出されるブランド・世界観が同じものとなるようにすることを目的に作られます。
次に商標ですが、ロゴを知的財産としてその権利を法的に守っていくために、特許庁に商標登録の出願を行うことです。当然ですが、既に商標登録されているロゴと類似したデザインは認められません。
会社のほとんどは、会社ロゴを作ると同時にレギュレーションを作り、作った会社ロゴの商標出願手続きを行っています。それではそのレギュレーションと商標とはどのようなものなのか、その詳細を以下見てまいりましょう。
まずはじめに、レギュレーションに記載されるルールにはどんなものがあるかをご紹介したいと思います。ルールの数や内容は依頼者と協議して決めるものですが、ここでは標準的に採用されているルールを取り上げたいと思います。
①デザインバリエーション
シンボルマークとロゴタイプのレイアウトやサイズバランス、社名や社名の英文・和文表記、シンボルマーク・ロゴタイプそれぞれ単体で使う時の使い方などについてのルールを定め、そのデザインパターンを規定したものです。ロゴを扱う際はここに記されているデザインパターンのいずれかをそのまま使用しなければならず、たとえば勝手に縦横比を変えたり、表記を省略するといった変更は禁止されています。パターンの数は依頼者との協議で決められ、柔軟な使用を考えているところほど多く設定される傾向があります。
②表示色・背景色の指定
ロゴの表示色については基本的には1パターンですが、単色での利用、グレースケールでの利用を想定した配色、背景色に応じた配色などのルールを定めていることもあります。またCIやVIの観点から、背景色についても使用可能な色を定めている場合が多く、テーマカラーとグレースケールの背景色に限定しているパターンが多く見られます。なお背景色に応じたロゴの表示色を細かく指定している事例もよく見られ、色はロゴレギュレーションにおいて最も詳細にルールを定める傾向にあります。また色の指定方法としては、ディスプレイで表示される媒体向けにはRGBの数値およびカラーコードで指定され、印刷媒体向けにはCMYKの数値および色見本帳による色番号で指定されます。
③書体の指定
ロゴタイプの文字に既存の書体を使用している場合、あるいは依頼者側で開発したオリジナルの書体をロゴタイプに使用している場合は、書体の指定をロゴレギュレーション上で定めていることがあります。これは様々な制作物で使用する書体をCI・VIにおいて指定している時に多く、ロゴもその一環で書体指定されていることを記しているのです。文字数が多い和文表記で行われることはほとんどありませんが、英文表記、アルファベット表記、ひらがな・カタカナ表記ではしばしば見られるルールです。
④アイソレーションエリア(不可侵エリア)の指定
アイソレーションエリア(不可侵エリア)とは、ロゴに他の文字や図形などの要素が重なったり近づき過ぎたりして、ロゴ本来の意匠性や視認性を損ねてしまわないように設けた一定の余白スペースです。ロゴに他の要素が近づいたり重なったりすると、ロゴの一部であるかのように誤解されることは容易に考えられます。そのためこのアイソレーションエリアの設定はほとんどのロゴレギュレーションで定められています。余白スペースの大きさや設定根拠などは会社によって様々ですが、ロゴの一部で基準サイズを定め、それに何らかの定数を掛けたサイズによって四方の余白スペースを定めるやり方が多く見られます。
⑤最小サイズの指定
ロゴのデザインやロゴタイプの文字がきちんと視認・可読できる最小サイズを定めたのがこのルールになります。サイズ指定には印刷媒体・Web媒体の2種類があり、印刷媒体の場合はmm(ミリメートル)単位での指定、モニターで表示されるデジタル媒体ではpixel(ピクセル)単位での指定が行われます。特に複雑なデザインやロゴタイプの文字数が多いロゴではは、視認性・可読性に対して慎重になると思います。その場合はロゴの使用用途などを事前に検討し、検証を重ねて最小サイズを定めることが重要になってくるでしょう。
⑥使用禁止例
ロゴを使用する際、表示する角度を変えてはいけない、ロゴ自体のプロポーションを変えてはいけない、ロゴを枠で囲ってはいけない等、想定できるあらゆる使用禁止例を定めたのがこのルールになります。ここまでご紹介したルールで体系的に制約を定めてはいるものの、その範疇には該当しないケースもたくさんあり、それをカバーするのが使用禁止例設定です。ヴィジュアルで具体的に例を示すため、読む人にとっても分かりやすいルールとなっています。
冒頭で「ロゴを知的財産として法的に守っていく」ことが商標出願の目的だと述べましたが、具体的にどのような効果があるかというと、
・ブランドを法的に守ることができる
・ロゴや名称を安心して使用できる
・ロゴや名称が他人に無断で使用されることを阻止できる
・登録商標を示すRマーク(®)を付すことができ、社会的信用が得られる
などが挙げられます。
作ったロゴの権利を守りたい方は、積極的に商標出願・登録をしたがるのですが、その手続きはあくまでも法律の範疇で行うものであるため、法律は専門外であるロゴデザイン会社だけでは何も進められません。依頼者がロゴを商標出願・登録したいと希望した場合、ほとんどのロゴデザイン会社は弁理士法人や特許事務所に協力してもらいながら進めるようにしています。
また商標出願・登録を前提としたロゴ制作を行う場合、通常の制作工程とは少し違う進め方をすることがあります。当サービスsynchlogoの例を紹介すると、多くの場合ロゴが完成した後に商標の手続きを始めるのですが、synchlogoでは特許庁の審査が確実に通るように、デザイン案ができた後に類似したロゴが既に登録されていないかの調査を行うことをお勧めしています。調査の結果もし問題が見つかったら、その時点ですぐにデザイン案に修正・調整を加えるのです。これによって審査が通らなかった場合、再びゼロからロゴを作り直さなければいけなくなるリスクが回避でき、制作の手戻りを最小限で済むようにしているのです。
このように弁理士法人や特許事務所と協力して商標登録できるロゴを作っていくのであれば、ロゴデザイン会社にもある程度商標に関する知識を持つようにしなければなりません。そうでなければ弁理士法人や特許事務所と協議・対話して効率的に進めることができないからです。
会社ロゴの作り方について解説してきましたが、どのようにすれば起業時の「顔」となる会社のロゴマークが作れるか、このコラムから少しはヒントが掴めたのではないかと思います。
そしてsynchlogoは今後も全国の企業に向け、さらに充実したロゴ制作専門サービスとなるよう努めてまいりたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
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