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COLUMN
「ブランド」「ブランディング」という言葉が身近になりました。
一昔前までブランドと言えば、CHANELやGUCCIなど、銀座にあるような高級ファッションブランドのことを指していたはずなのに、今や商品やサービス、あるいは企業自身のPRや認知度を高めるために、どの業界・業種でも当たり前のように用いられる考え方となってしまいました。
本稿は、今や当たり前となったブランドづくり・ブランディングついて、ブランドのシンボルである「ブランドロゴ」の視点から、現実的かつ実践的なブランディングについて見つめ直すコラムです。身近にある著名なブランドや、synchlogoがデザインしたこれまでの経験を通じて、ブランディングの第一歩を誰もが歩み出せるヒントを見つけ出していきたいと思います。
ブランドづくり・ブランディングは、大企業が莫大なお金と時間をかけて行うものというイメージがある一方、巷では「ロゴづくり=ブランディング」と言われたりもします。一方は大がかりなもので、もう一方は比較的誰にでもできそうなこと。なぜそんなにも両極端にイメージが分かれてしまっているのでしょうか。
大がかりなブランディングとしてまず思い浮かぶのは2006年前後から本格化した、ユニクロが行ったリブランディングの例ではないでしょうか。クリエイティブディレクターとして佐藤可士和氏を起用し、ロゴ、店舗、商品訴求、コミュニケーションを一貫したブランド体験として再設計した様子は、誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。日本語と英語のロゴを統一感ある赤いスクエアに整理し、「日本発のグローバルブランド」という印象を強化。単なる低価格衣料店から、機能性と普遍性を備えた「LifeWearブランド」へと認知を引き上げ、世界市場での存在感を高めていきました。

一方、「ロゴづくり=ブランディング」だと言われる件については、もちろんそれが、ロゴがブランドの「顔」として最も可視化されやすいものであるがゆえに広まった間違った認識であることは、多くのネット記事・SNSの投稿でなどで知ることができます。しかし、実際の現場では今なお「ロゴづくり=ブランディング」という空気感は根強く、ロゴを作って名刺や封筒、Webに貼り付ければ、それでブランディング完成、と考える経営者・広報担当者は決して少なくありません。

その理由ですが、予算的にも時間的にも、「ロゴを作ることくらいしかできない」という現場の事情が関係しています。
中小企業や個人事業主は、ユニクロのような大がかりなブランディングに予算や労力を割ける余裕はありません。そうすると皆考えるのは、「日常的に使うビジネスツールすべてに使える、ロゴをきちんとデザインするのが最もコストパフォーマンスが良さそう」ということです。
ロゴを作れば色んなところに使えて、自社のアピールもできる。認知拡大やPRにも貢献する。CMや広告を出したり、会社や店舗の内外装をデザインしたりするのは無理だが、ロゴづくりくらいならできそう。
こういった考えが実は大勢を占めており、この本音こそが「ロゴづくり=ブランディング」と言われる正体なのです。
では、企業規模が大きくなければブランディングはできない、ということなのかと言うと、そんなことはありません。ユニクロのように「全部」をやろうとするとできないだけであって、要所を押さえた「部分」から効果的に進めることはもちろん可能です。
また、「ロゴづくり=ブランディング」はもちろんあり得ないですが、「ロゴづくり=ブランディングの起点」には大いになり得ます。むしろ要所を押さえるブランディングに、実はロゴは不可欠なもので、そういう意味では「ロゴづくり=ブランディング」は半分合っているとも言えるのかもしれません。
そこでここからは、ブランディングの起点となる「ブランドロゴ」について、見識を深めていきたいと思います。まず手始めに、多くの人が勘違いしている、ブランドロゴに対する3つの大きな誤解を解いていきましょう。
意外と多くの人が間違って認識しているブランドロゴの性質・役割を正しく知ることで、どう考えて、どのように作ればよいかが見えてくるのではないかと思います。
ロゴは視覚的要素なので、当然ながら見た目の完成度は大事です。
しかし、見た目が整っていることと、ブランドロゴとして機能することは同じではありません。
なぜなら、洗練されたロゴができたとしても、その商品やサービスがどんな相手に向けたものなのか、どんな価値を打ち出したいのか、どんな印象を持たれたいのかが曖昧なままだと、ロゴはただ「整って見える図形」という感想だけ終わってしまいます。それではブランドに対して何の貢献もしていないでしょう。

実際、見た目の刷新だけではブランドロゴとして成功しないことを示した有名な例があります。2010年に行われたGAPのロゴ変更です。
新ロゴは、より現代的でモダンな印象を狙ったものと受け取られましたが、長年使われてきた旧ロゴが持っていた認知や感情的な結びつきとの整合が取れておらず、結果的に強い反発を招き、短期間で旧ロゴへ戻されました。
これは、ロゴが単なる見た目ではなく、すでに積み上がったブランド認知や信頼の受け皿でもあることを示しています。単なる造形の美しさではなく、そのブランドらしさや、他との違い、目指したい印象が、きちんとロゴのデザインに反映されている必要があると、読み取ることができるのです。
専門的な言い方ですと、ブランドロゴは装飾ではなく、「識別と意味付けのための視覚的な目印である」、ということになります。
2つ目の誤解は、ブランドロゴが、ブランドの価値そのものまで説明してくれると思ってしまうことです。
たしかにロゴは、ブランドの象徴であり「顔」です。ひと目でそれと分かる目印になり、印象の入口にもなります。しかし、ロゴ単体で伝えられることには限界があります。どれだけ印象的なロゴでも、それだけで「この商品・サービスは何が良いのか」「どんな価値を提供しているのか」まで十分に伝え切ることはできません。

たとえば、Nike のシンボルであるスウッシュも、最初からあのマークだけでブランドの価値を語れていたわけではありません。Nike公式は、初期のスウッシュについて、人によっては「奇妙」「アンバランス」に見えたこともあり、当初は使われ方にも一貫性がなかったと振り返っています。ですが、様々な広告や商品体験の場面で使われ続けていく中で、スウッシュは少しずつNikeのブランドと結びつき、のちに「スピード」「革新性」「可能性」を象徴する記号として認識されるようになっていったのです。
つまり、スウッシュに込められた価値は、最初からロゴ単体で読み取れたわけではありません。
ブランドの認知が広がり、商品や広告、競技シーンでの体験が積み重なった結果として、あとからロゴに意味が結びついていったのです。
この事例が示しているのは、ロゴは価値を“象徴する”ことはできても、価値を“単体で説明し切る”ことまではできないということです。ブランドの価値をきちんと理解してもらうにあたり、ロゴはその入口にはなれても、単独で全てを背負えるわけではありません。
だからこそ、ブランドロゴを考えるときは、「このロゴだけで全部を伝えよう」とするのではなく、このロゴを起点に、他の接点でどう価値を補い、どう世界観を広げていくかまで含めて考える必要があります。
ブランドロゴは強い道具ですが、単独でブランド価値を背負わせすぎると、かえってうまく機能しなくなるのです。
3つ目の誤解は、ブランドロゴは一度作ったら、できるだけ変えない方がいいと思ってしまうことです。
たしかに、ブランドロゴはコロコロ変えるべきものではありません。頻繁に変わると、せっかく積み上げた認知が崩れてしまうおそれもあるため、それならば「変えない方がいい」と考える感覚自体にはもっともな部分があります。
ただし、「ブランドロゴは、変えないことこそが正義」かどうかというと、それはちょっと違います。
なぜなら、ブランドは生き物だからです。
商品やサービスの見せ方は変わりますし、時代によって求められる表現も変わります。事業そのものが成長したり、届けたい相手が広がったり、発信する内容が変わったりすれば、以前はしっくりきていたロゴが、少しずつ今のブランドらしさとズレてくることもきっとあるでしょう。
つまり、ブランドロゴにとって大切なのは、ただ変えないことなのでははありません。
大事なのは、その時その時のブランドらしさが、そのロゴできちんと表せているかどうか、という視点です。

この考え方をよく表しているのが、花王の月のシンボルです。
花王公式サイトによれば、この月のマークは1890年の花王石鹸のラベルから始まり、右向きから左向きへ、丸いシルエットへと、時代に合わせて形を変えながら受け継がれてきました。1985年の社名変更、2009年のグローバル統一での「Kao」ロゴ導入、2021年のロゴ統一を経ても、月のマーク自体は「美と清浄」を表す花王の原点として位置づけられています。つまり花王は、変わらないことそのものを正義としたのではなく、変わらない想いを、その時代にふさわしい形で表し続けるという考え方を取ってきたのです。花王の社史にも、「マークが時代の流れに棹さして生き抜くためには、つねにマークの現代化への努力が配慮されなければならない」と記されています。
確かに、長く使われ続けているロゴには価値があります。
しかしそれは、最初から完成形として固定されていたからではありません。結果として変える必要がなかった、あるいはその都度ふさわしい形に整えられてきたからこそ、長く生き残ってきたのです。
ここで欠かせないのが、ブランドロゴは変えないことを目的にするものではなく、ブランドらしさを表し続けるために、必要に応じて見直されるものとして考える視点です。
ロゴの強さは、「何があっても変えないこと」にあるのではありません。ブランドの核を保ちながら、その時代、その状況、そのブランドの成長に合わせて、無理なく使い続けられることにあります。
“固定された完成品”ではなく、“育ちながら更新されていく象徴”こそが、ブランドロゴのあるべき姿なのです。
次に知って頂きたいのは、成功しているブランドロゴにはある共通点があることです。実はこれが、機能するブランドロゴを作るために必要な、最も大切な視点になります。
その共通点とは、ブランドロゴはロゴとしてだけに留まらず、様々な使い方によって「使い倒されている」という点です。
ロゴは、使えるところに使っておけば機能するもの、という感覚があるのではないかと思います。しかしそれも誤解で、実はブランディングにとって効果的な使い方というのがあり、特に成功しているブランドロゴにおいてはそれを「デザインシステム」として確立もしています。
「デザインシステム」とは、様々なブランドツールに統一感や調和を生み出すための「視覚的な約束事(ガイドライン)」のことです。たとえば、決まった色を使う「テーマカラー」もデザインシステムの一種だと言えます。
その最も有名な例が、近年にあります。それは、2025年に開催された大阪・関西万博の Design Element ID、通称「こみゃく」です。
大阪・関西万博のデザインシステムは、ロゴマークを単独のシンボルとして扱うだけではなく、そのロゴに込められた「細胞」や「いのち」を表した図形的な要素を、会場全体のヴィジュアルとして広げていくために検討されたものです。会場のヴィジュアルデザインは「いのちの循環」というコンセプトのもと構築されており、その中で「こみゃく」は、“いのち”を象徴するIDエレメントとして位置づけられています。もともとはデザインシステムの一部として設計された存在ですが、会場では案内サインやフラッグ、モニュメント、パターングラフィックなど、さまざまな場面に姿を変えて現れ、空間全体に一貫した世界観を生み出しています。

ここで重要なのは、「こみゃく」がロゴとは無関係な別キャラクターではないという点です。
WIREDのインタビュー↗によれば、「ID」(のちの“こみゃく”)も、公式キャラクターのミャクミャクも、互いを直接参照して作られたものではなく、すでにあった万博ロゴと、万博のテーマや文脈を手がかりに個別に制作されたとされています。

つまり、中心にあるロゴの図形的・概念的な特徴が、別のヴィジュアル要素へと展開され、それぞれが独立しながらも調和する構造になっているのです。さらに、同システムのクリエイティブディレクター・アートディレクターを担当した引地耕太氏は、万博のデザインシステムについて、公式WebやSNS、街なかの装飾、サイン表示、パッケージなど多様な場面で使われ、テーマを効果的に発信し、ブランドイメージを定着・向上させることを目的としていたと語っています。

このように、大阪・関西万博の事例は、ロゴ内の図形要素を「ロゴの中だけ」に閉じ込めず、デザインシステムとして外へ展開することで、ブランド全体の統一感や世界観を強められることを示しているのです。使い倒せるブランドロゴがなぜ強いのかを考える上で、とても分かりやすい例だと言えるでしょう。(参照:Visual Design|EXPO WORLDs - 大阪・関西万博 OPEN DESIGN PROJECT↗)
ではブランドロゴは、身近なブランディングやビジネスで行うブランディングにおいて、具体的にどのような使い方がされているのでしょうか。この章では、デザイン系のコンテスト受賞歴や、デザイン専門メディアへの掲載など、第三者に評価されているブランドロゴを題材に、その使い方を分析し、ロゴを使い倒す具体的な4つの手法を紹介・解説していきたいと思います。
ロゴを、効果的に用いる方法としてまず挙げられるのが、模様や柄の要素として使う使い方です。これは意識しないと気付かないかもしれませんが、王道の使い方として広く定着している使い方です。
模様や柄は、ブランドイメージを効果的に波及させる、ブランディングにおける重要な戦略のひとつですが、有名なところだと「伊勢丹タータン」はご存じの方が多いのではないかと思います。

伊勢丹では、1958年からタータン柄のショッピングバッグが導入され、やがて「伊勢丹といえばタータン柄」と連想されるほど、ブランドの象徴として定着していきました。ここで重要なのは、「ISETAN」のロゴタイプを大きく見せ続けたから記憶されたのではなく、タータン柄そのものが、伊勢丹らしさを伝える視覚要素として機能したことです。つまり、ブランドを印象づけるのは、必ずしもロゴの文字やマークそのものだけではなく、その中に含まれる色、線、模様、構造といった要素でもあり得る、ということです。
また、模様や柄がブランディングにとって強いのは、ショッピングバッグ、包装紙、パッケージ、ショップカード、Webバナー、SNS画像、店内装飾など、様々なところで容易に使うことができるからです。ロゴをそのまま置くには不自然な場面や、あちこちがロゴだらけになるといった状況を避けたい場合でも、ロゴを柄や模様に変換すれば、自然に溶け込ませることが可能となります。そして、繰り返しそれを目にすることで、見る側の中で「この雰囲気はあのブランドのものだ」という認識が少しずつ育っていくのです。
そして、ロゴを模様や柄として用いる傾向が特に顕著なのがファッションブランド業界です。Louis VuittonやGUCCIなどを象徴する「モノグラム柄」は、誰しも一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。モノグラムとは、2つ以上の文字(主にブランド名のイニシャル)や記号を組み合わせ、1つのデザインに図案化したロゴのことですが、それを規則的に並べ、パターン化した柄のことを通称「モノグラム柄」と呼びます。

このモノグラム柄が長年にわたりブランドの柱として機能してきたのも、ロゴを「柄」として繰り返し使うことで、「この柄はあのブランドのものだ」と一目で認識される状態を作れているからだと考えられます。
それでは実際にロゴを模様や柄の要素として使用している、成功ブランド例を2つご紹介いたしましょう。
◆萩原精肉店(Red Dot Award 2013|Communication Design↗)

「肉」の文字をモチーフにしたロゴそのものをパターンの要素として用い、模様・柄として包装紙やパッケージに展開させています。サイズや向きをところどころ変えながら、より印象的なヴィジュアルとなるようにデザインしているのが特徴です。
なお、Red Dot Award公式サイトでも、下記のように説明されています。
It is also used as a graphic pattern on the packaging materials. This creates a contemporary brand appearance, which communicates the company’s tradition in an aesthetically pleasing way.
(このロゴはパッケージにもグラフィックパターンとして用いられ、現代的なブランドイメージを確立するとともに、店の伝統を美しく伝えることに成功しています。)
◆つよしファーム(書籍:「ロゴと展開」↗掲載)

頭文字の「つ」の形を思わせるロゴを羅列させ、パッケージや商品シールの模様・柄として展開させています。ロゴ同士が繋がりやすい形となっており、並べた際に浮かび上がる和柄のようなパターンを想定してデザインしたものと思われます。
なおこのデザインは、新潟アートディレクターズクラブ 準グランプリ(2016)、日本グラフィックデザイナー協会 GRAPHIC DESIGN IN JAPAN 2017 入選(2017)も果たしています。
①の「模様」や「柄」は、ロゴそのものを用いた使い方でしたが、次にご紹介したいのは、ロゴ内にある特徴的な図形や要素を用いた使い方です。ここではその図形を「デザインコード」として使っている例をご覧頂きたいと思います。
「デザインコード」とは、ブランディングに寄与する制作物(会社のブランディングだと、名刺や会社案内、Webなどの各種ビジネスツール)をデザインする際、ブランドとして統一感を出すために使われる共通の図形や要素のことですが、それが実践されている最も有名な例のひとつに、アディダスの「3本線(3-Stripes)」があります。
アディダスでは、ロゴマークそのものが変わっても、ブランドの核として一貫して使われ続けているのが、この3本線です。公式の説明によれば、創業期のシューズにはすでに3本線が使われており、その本数が選ばれた理由も、複数の案を試した中で写真上もっとも目立って見えたからだとされています。つまり3本線は、ただの飾りではなく、最初から「アディダスらしさ」を伝えるための視覚的な約束事として機能していたのです。

その後アディダスには、葉の形をしたトレフォイルロゴや、斜めに立ち上がるパフォーマンスロゴなど、複数のロゴ体系が生まれました。ですが、それらはまったく別の意匠として作られたわけではありません。いずれも3本線という共通のコードをもとに組み立てられており、3本線の見え方を変えながら発展したものだと公式に説明されています。

ここで大事なのは、ブランドを記憶させているのが、必ずしも毎回「完成したロゴそのもの」ではないということです。
実際、私たちがアディダスをアディダスとして認識するのは、ロゴよりも、シューズやウェア、バッグ、といった商品や、CMやポスターなどの広告で繰り返し現れる3本線の方からではないかと思います。この、ブランドの統一感を支えている視覚的な約束事(=特徴的な図形や要素)こそが「デザインコード」の役割なのです。(なお、冒頭に紹介した大阪・関西万博「ID」(のちの“こみゃく”)も、公式ロゴマーク内にある図形から生まれたデザインコードと言えるでしょう。)
それでは実際に、ロゴ内にある特徴的な図形や要素が「デザインコード」として使われている、成功ブランド例を2つご紹介いたしましょう。
◆天然温泉 久松湯(書籍:「ロゴと展開」↗ほか掲載)


「ゆ」の文字が、湯煙によって見え隠れするようなロゴですが、その湯煙を表す図形要素によよって、暖簾にある男湯・女湯を表すアイコンやピクトグラムなどがデザインされています。男湯・女湯を表すアイコンについては、「1文字+湯煙」という構成がロゴと同じようにしてあることも特徴です。
◆すみだ水族館(書籍:「究極のロゴデザイン」↗ほか掲載)

三角形モジュール、等幅のラインで構成など、図形の法則性をデザインコードとしてデザインされた例です。約20種の生物ロゴやハロウィンのイベントロゴが、魚の形をしたメインの水族館ロゴから派生したデザインであることが一目で分かるようになっています。

またそのデザインコードはWebデザインにまで影響が及びます。上記公式ホームページの背景部分に目を向けると、同じく三角形モジュールで作られたグラフィックが描かれていることが分かるかと思います。これは明らかに、水族館ロゴのから派生したデザインと考えることができます。
次のご紹介する使い方は、ポスター・チラシなどのDTPデザインやWebデザインでよく見られる、ロゴを額縁(フレーム)として使う手法ですが、言葉による説明だけでは伝わりづらいので、さっそく有名な事例を見て頂きましょう。
下記のWebページは、2026年3月に社名を変更した、Umios株式会社(旧マルハニチロ)のものです。ページ右側に、ロゴの輪郭でグラフィックを切り取った印象的なヴィジュアルがあるのが分かると思います。

このように、ロゴの輪郭を、グラフィックを切り取る“額縁”や“フレーム”として使うことで、ロゴをシンボルマークとは異なる機能・存在へと拡張することができるようになります。このUmiosの例では、ロゴの形そのものがヴィジュアルの構成に参加することができるようになっています。写真や映像、テクスチャなどを、額縁(フレーム)化したロゴの輪郭を通して見せることで、そのブランドらしい世界観がより印象的に伝えることができるようになります。
この使い方が強いのは、ロゴが本来持っている「形の個性」を、そのまま視覚表現の器として活かせるからです。ロゴとして認識されるだけでなく、その形自体がデザインの骨格として働くため、Webサイトのキーヴィジュアル、ポスター、パンフレット、広告バナーなど、さまざまな場面でロゴ単体以上の強烈な印象が作りやすくなります。つまり、ロゴを“見せる”だけではない、さらに上位のシンボル表現を可能にしているのです。
それでは、この使い方の手法を用いている、成功ブランド例を2つご紹介いたしましょう。
◆株式会社omusubi(メディア:「iDID」↗ほか掲載)

施工事例の写真を、社名にもなっている「おにぎり」を表したロゴをフレームとして用い、キーヴィジュアル化しています。ロゴが、ロゴそのもの以上に印象的に感じられるようになっており、ページデザインの柱として機能していることが分かる例です。
◆株式会社GIG(メディア:Webデザインアワード「MUUUUU.ORG」↗ほか掲載)

こちらは、ロゴの形から、写真がかなり部分的に切り取られた例です。写真を切り取ったロゴの形の特徴である「/(スラッシュ)」のような角度あるラインを基調としたページデザインが特徴で、ロゴをキーヴィジュアルとして扱うことで、このデザインの起点になっていることが分かる例かと思います。
最後にご紹介する使い方は、立体・空間表現の起点としての使い方です。通常、ロゴは紙面や画面の上で扱う二次元のものですが、デザインによっては、その特徴を壊すことなく立体へと変換することができます。
この使い方の事例としてご紹介したい有名なブランドが、ユニクロです。ユニクロのロゴは、赤い正方形の中に日本語と英語の文字を収めた、非常に構造のはっきりしたデザインです。この「正方形であること」「箱のように見立てやすいこと」「面としての強さがあること」が、立体化との相性を非常に良くしています。

上記のように、ユニクロはこのロゴの特徴を活かし、店舗外観や大型サイン、店内装飾、提灯のような吊り下げ什器など、さまざまな立体・空間表現にロゴを展開しています。そこではロゴが単なる表示として使われているのではなく、建築の一部や空間演出の主役として機能しています。つまり、ロゴを「見せる」だけでなく、ロゴの形そのものを空間に持ち込むことで、ブランドらしさをより強く印象づけているのです。
ただし、この使い方が可能なるのは、ロゴがスケールアップにも耐えうるデザインである場合のみです。複雑すぎる形や、平面で見たときにだけ成立するデザインでは、空間に置いた途端に印象が崩れてしまうことがあります。逆に、形が明快で、面としての強さがあり、構造に無理がないロゴは、立体にしてもブランドらしさを失いません。すると、ヒューマンサイズを超える大きさでもそのデザインは破綻せず、ユニクロの例のようにロゴが平面のグラフィックを超え、環境そのものをブランド化する力を持ち始めるのです。
それでは、この使い方の手法を用いている、他の成功ブランド例を2つご紹介いたしましょう。
◆天神HOOD(書籍:「実例付きロゴのデザイン」↗ほか掲載)

端部がV字にカットされたリボンのようなシェアオフィスのロゴを、その形の特徴を活かして暖簾や置き型の看板にした例です。それぞれの用途としての機能に加え、サインとしての役割も果たしているのが特徴です。
◆京都ものづくり(書籍:「実例付きロゴのデザイン」↗ほか掲載)

ロゴの特徴である、碁盤目状の街並み、繊維業を想起させる縦糸と横糸を表したヴィジュアルを、空間を構成する様々な要素に落とし込んだ例です。ロゴの世界観を、そのまま空間全体へと広げることに成功しています。
ここまで見てきたように、成功しているブランドロゴは、単に「見た目が整っている」だけではありません。
模様や柄として展開されたり、図形要素がデザインコードとして機能したり、ロゴの形そのものがフレームや空間表現の起点になったりと、ひとつのロゴがさまざまなブランドツールへ広がっています。
では、そうした「使い倒せるブランドロゴ」は、どのように設計されているのでしょうか。
その構造を見ていくと、いくつか共通するポイントがあります。
まず大前提として大事なのは、ロゴ単体で完結させないことです。
ロゴデザインというと、白い背景の上で美しく整ったマークやロゴタイプを作ることに意識が向きがちです。もちろん、それ自体は大事です。ですが、「そのロゴを名刺やWebに載せて終わり」と考えてしまうと、使い道はどうしても限られてきます。
本当に使い倒せるロゴを作るには、最初から
「柄にできるか」
「図形要素を抜き出せるか」
「フレームとして使えるか」
「空間や立体にも展開できるか」
といったことまで視野に入れておく必要があります。
つまり、ロゴは完成形のマークとしてだけ見るのではなく、ブランドの世界観を広げていく“起点”として設計することが重要なのです。
この視点があると、ロゴづくりの時点で「何が使える要素になるのか」が見えてきます。
逆にこの視点がないと、ロゴ自体はきれいでも、その後のブランドツール展開が毎回ゼロからの作業になってしまい、統一感も効率も生まれにくくなります。
次に大切なのは、色や形の使い方に柔軟性を持たせることです。
ブランドロゴは、常に同じ条件で使われるわけではありません。
カラーで使える場面もあれば、モノクロでしか使えない場面もあります。
背景が白とは限りませんし、小さく使うこともあれば、巨大に見せることもあります。
紙に印刷されることもあれば、Web上で表示されることもあり、立体物に落とし込まれることもあります。
このとき、特定の色や特定の表現方法に依存しすぎたロゴは、どうしても使いにくくなります。
フルカラーでしか成立しない。
線にすると印象が崩れる。
縮小すると形がつぶれる。
背景色が変わると見えなくなる。
こうしたロゴは、いざ展開しようとしたときに急に不自由になるのです。
反対に、色が変わっても、面から線に変わっても、多少の省略や変形をしても、そのロゴらしさが残るデザインは強いです。
使う場面に応じて無理なく姿を変えられるからです。
使い倒せるブランドロゴとは、ひとつの正解の見え方に固定されたものではなく、いくつかの条件変化に耐えながら、そのブランドらしさを保てるロゴだと言えるでしょう。
もうひとつ重要なのが、ひとつの図形に複数の意味や見え方を持たせることです。
たとえば、ロゴの中にモチーフが隠れている、別の形としても読める、視点を変えると別の印象が立ち上がる、といった構造です。こうした図形表現は、単に「面白い」「気が利いている」というだけでなく、ブランドツールへの展開においても非常に役立ちます。
なぜなら、多面的な見え方を持つロゴは、そこから取り出せる要素が増えるからです。
一部だけを使っても成立しやすくなりますし、見る角度や使う文脈によってニュアンスを変えることもできます。
つまり、ロゴの中にある解釈の幅が、そのまま展開の幅につながるのです。
また、多面的な図形は、ブランドに対して「意味の層」を生み出します。
一見シンプルなのに、知るほどに奥行きがある。
単なる記号に見えて、実はブランドの考え方や背景と結びついている。
そうしたロゴは、長く使うほど理解が深まり、ブランドとの結びつきも強くなっていきます。
もちろん、複雑にしすぎれば良いという話ではありません。
大切なのは、シンプルな形の中に、展開しやすさと意味の奥行きを両立させることです。
これができているロゴは、模様にも、図形コードにも、フレームにも、立体表現にもつながりやすくなります。
つまり、使い倒せるブランドロゴとは、単に見た目が良いロゴではなく、広げて使うことを前提に、柔軟性と奥行きを持って設計されたロゴなのです。
ここまで見てきたように、ロゴづくりは、ただマークをひとつ作る作業ではありません。
本来、ブランディングはもっと大がかりで、時間も予算もかかるものです。ですが現実には、そこまで手を広げられない事業者も多く、まずはロゴづくりから始めるしかない、という状況がよくあります。
だからこそ、「ロゴづくり=ブランディング」と言われる空気が生まれます。
この感覚自体は、決して的外れではありません。
ただし、そこでよくあるのが、見た目さえ整っていればいい、ロゴ単体で価値まで伝わる、一度作れば終わり、といった誤解です。
ブランドロゴが本当に機能するためには、そうした思い込みを外したうえで、どう使われ、どう広がっていくかまで含めて設計する視点が欠かせません。
成功しているブランドロゴは、ただ置かれているのではなく、使い倒されています。
模様や柄として展開され、図形要素がデザインコードとなり、フレームとして機能し、空間表現の起点にもなる。
そして、そうした展開を可能にしているのは、最初からロゴを「ブランドを広げる道具」として捉えているからです。
もちろん、ロゴひとつでブランディングのすべてが完成するわけではありません。
ですが、使い倒せるロゴを作れば、ブランドづくりの第一歩が確実に踏み出せます。
大がかりな施策はできなくても、ロゴをきっかけに、名刺、Web、パッケージ、空間、というふうに、世界観を少しずつ広げていくことはできるのです。
つまり、ロゴづくりとは、小さく始めるブランディングの第一歩なのです。
そして、使い倒されるほど、そのロゴは単なるマークではなく、そのブランドの核としての価値を深め、強くしていきます。
そして使い倒されるほど、ロゴ自体も、ブランドの核としての価値も深まり、強くなっていくのです。
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