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COLUMN
京都の老舗ブランド「よーじや」は、2025年3月、約60年親しまれてきたロゴマークを刷新し、大規模なリブランディングを打ち出しました。今回のロゴリニューアルは、単なる意匠変更ではありません。長年定着してきた「京都みやげ」「あぶらとり紙の店」という認知だけでなく、「おみやげの店から、おなじみの店へ」という新しい立ち位置を社会に示すためのブランド再設計です。創業120年という節目に、企業の存在意義、京都との関係、顧客との接点の持ち方までを再定義し、その中心にロゴを置いた点に、今回の刷新の本質があります。
よーじやは1904年に國枝商店として創業し、現在は化粧品・雑貨販売、商品企画開発、EC、イベント販売、飲食事業などを展開する京都発の企業グループです。屋号「よーじや」は、創業当初の主力商品の一つだった楊枝に由来し、地元の人々から「ようじやさん」と呼ばれていたことが名称の起点になっています。
ブランドの歩みは一直線ではありませんでした。1990年代のあぶらとり紙ブーム以降、よーじやは全国的に「京都みやげの定番」として広く知られるようになった一方、地元の日常に寄り添う存在からはやや離れていったと、自社でも整理しています。公式メッセージでは、京都に住む人々にとって「近くて遠い存在」になっていたこと、観光客の増加により京都全体のあり方も大きく変化したことが、リブランディングの背景として語られています。
そこで掲げられたのが、「みんなが喜ぶ京都にする」というコーポレートスローガンです。これは単なる販促コピーではなく、Vision・Value・Missionまで含めた経営思想の再構築と連動しています。実際に公式サイトでは、Valueとして「正直であること」「やさしいこと」「役立つこと」「挑戦すること」「京都に寄り添うこと」の5つを掲げ、Missionとして「京都の魅力を輝かせ、京都全体に貢献する」を定めています。つまり今回のロゴ刷新は、企業理念を可視化し直すためのアウトプットであり、ブランドの役割変更を社会に伝えるための中核装置でもあったわけです。
今回のリニューアルで重要なのは、これまでを否定したわけではなく、積み上げてきたブランド資産を整理し直したことです。従来の象徴だった「手鏡に映る女性」の意匠は、よーじやの認知形成に大きく寄与してきました。しかし、その印象が強すぎたために、「京都土産」の記号性から抜け出しにくいという課題も抱えていました。そこで今回の刷新では、この女性像をロゴから完全に消すのではなく、役割を分解し、ブランドロゴではシルエット化、さらにキャラクター「よじこ」として再編する判断が取られています。
公式サイトによれば、新しいブランドロゴは、長年愛されてきた手鏡に映る女性像をシルエット化したデザインです。また、今回新しく作られたコーポレートロゴにもなっているロゴタイプは、Optimaの字体をベースとした設計が採用されたことも明かされています。王道感と現代性を両立させ、歴史を大切にしつつ新たな挑戦へ向かう姿勢を表現したという説明は、今回のデザイン方針を端的に示しています。
競合との差異化という観点でもこの方向性は明確です。土産ブランドや老舗和雑貨のロゴは、伝統感を強く押し出すあまり、装飾性や和風記号に依存しがちです。しかし、よーじやは今回はそこに寄せ切らず、歴史的資産を抽象度高く再編集することで、「京都らしさ」を残しつつ、日用品・化粧品・雑貨・飲食まで横断できる拡張性を確保しました。この競合差異化は、公式に示された「日常に寄り添うブランドへの転換」と、コーポレートロゴ新設・事業多角化への対応と連携したものだと考えられます。
今回のロゴが伝えようとしている価値は、端的にいえば「観光消費される京都」ではなく、「暮らしのなかで関係を育てる京都」です。公式サイトでも、「観光のお客さまだけに必要とされるのではなく、日々の暮らしに欠かせない存在として、地元の人々に愛されていた創業当初の姿に返る」と明言されています。つまりロゴは、売場で目立つためのサインではなく、企業の社会的立場の転換を示す意思表示なのです。
その思想は、ロゴ単体ではなく、キャラクター開発、ブランドガイドライン整備、名刺やポスターなどのインナーツール、広告展開まで一貫して拡張されています。特筆すべきは、これまでロゴとして機能していた女性像をキャラクター「よじこ」として再活用し、親しみやすく身近な存在へ再配置した点です。ロゴは記号として研ぎ澄まし、親近感はキャラクターに担わせる。この役割分担ができたことで、ブランドの表現力はむしろ広がっています。
よーじやの新ロゴは、過去の知名度を捨てずに、未来の接点を作り直すための設計でした。老舗ブランドのロゴリニューアルは、往々にして「伝統を壊した」と反発されるか、「無難に整えただけ」で終わります。しかし今回の事例は、そのどちらでもありません。残すべき記憶を残し、変えるべき文脈を変えた。その結果、ロゴは懐かしさの象徴から、これからのよーじやを運ぶブランドインフラへと役割が更新されたのです。
※ロゴ画像引用元:https://www.yojiya.co.jp/
※本記事はデザインの研究・考察を目的として公開しており、権利を侵害する意図はございません。
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