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COLUMN
企業ロゴは、見た目の良さや印象操作のためだけに存在するものではありません。とくにインフラやエネルギーといった公共性の高い領域では、ロゴそのものが「企業の思想」や「社会との向き合い方」を静かに語る装置として機能します。
本稿では、シンガポール発のグローバル企業であるSembcorpのロゴを題材に、そのシンボルマークに込められた設計意図と、なぜそれがブランドとして機能しているのかを読み解いていきます。単なる意匠解説にとどまらず、ロゴ作成に携わる実務者にとっての示唆まで掘り下げていきます。
Sembcorpは、シンガポールに本社を置くエネルギー及び都市ソリューションのプロバイダーです。政府系投資会社Temasek Holdingsの支援を受け、アジアを中心に持続可能なエネルギーと都市開発を推進しています。事業ポートフォリオは再生可能エネルギー(太陽光・風力・蓄電)、天然ガス・関連サービス、統合都市ソリューション(都市開発、工業団地、水・廃棄物管理)など多岐にわたります。
同社の事業特性は、BtoCのように「好き」「かっこいい」といった感情評価で選ばれるものではありません。求められるのは、長期的に任せられるかどうか、社会基盤を預けても不安がないかという視点です。
この前提に立つと、Sembcorpのロゴが果たすべき役割は明確です。それは「主張すること」ではなく、「安心させること」、そして「理解され続けること」です。ロゴは広告的なフックではなく、企業の信頼性を支える視覚的インフラとして設計されています。
Sembcorpのシンボルマークは、一見すると抽象的な円環形状に見えます。しかし、その内部構造を注意深く観察すると、明確な設計意図が浮かび上がります。
形状のベースは「円」です。円は循環、継続、全体性を象徴する形であり、エネルギーや資源が循環する社会システムを想起させます。ただし、完全な幾何学的円ではなく、有機的で流動的なラインによって構成されている点が重要です。これは、静的な完成形ではなく、変化し続けるエネルギー転換のプロセスを示唆しています。
さらに、この流れそのものが、緩やかなイニシャルの「S」を描いている点も見逃せません。Sembcorpの「S」は、露骨に描かれることなく、形態のリズムとして内包されています。初見では気づかれなくても、理解が進むほどに企業名と結びつく。この多層的な認知構造が、ロゴの記号性を強化しています。
色彩はグリーンを基調としていますが、いわゆる環境系企業にありがちな感情的・装飾的なグリーンではありません。落ち着いたトーンに抑えることで、環境配慮と同時にインフラ企業としての安定感、公共性、規模感を損なわない設計になっています。
このロゴが一貫して伝えているのは、「私たちは社会システムの一部である」という姿勢です。
発電や水処理、都市開発といった事業は、企業が前面に出すぎると不安を与えます。Sembcorpのロゴは、企業の存在感を誇示するのではなく、社会の循環の中に自然に溶け込むことを優先しています。
また、イニシャルを隠すように組み込んでいる点からも、「分かる人には分かる」という成熟したブランド意識が読み取れます。これは短期的な認知獲得よりも、長期的な信頼形成を重視している証拠です。
ロゴは語らず、説明せず、ただ在り続ける。その姿勢自体が、企業の思想を体現しています。
Sembcorpのロゴ設計が機能している最大の理由は、「用途を限定しない抽象度」にあります。
再生可能エネルギーの文脈でも、都市開発の文脈でも、水インフラの文脈でも、このシンボルは意味を失いません。むしろ、どの領域でも「循環」「基盤」「継続」という共通価値を静かに補強します。
また、視覚的に過度な主張がないため、Web、IR資料、サステナビリティレポート、発電施設のサインなど、あらゆるタッチポイントで一貫性を保てます。
これはロゴ単体の出来ではなく、「どう使われ続けるか」まで含めて設計されているからこそ成立しています。
この事例から得られる最大の示唆は、ロゴを「見せるもの」ではなく「使われ続ける装置」として捉える視点です。
意味を詰め込みすぎたロゴは、説明がないと機能しません。一方、Sembcorpのロゴは、説明がなくても違和感がなく、時間をかけて理解が深まる構造を持っています。
ロゴ作成において重要なのは、「何を表現するか」以上に、「どのレベルで抽象化するか」です。
事業内容、企業規模、社会的役割に応じて、意匠は前に出るべきか、引くべきかを判断しなければなりません。Sembcorpのロゴは、企業の立ち位置を正確に測ったうえで設計された好例です。
ロゴは装飾ではありません。企業の思想と覚悟を、最小限の形で社会に置くための設計物です。その視点を持てるかどうかが、ロゴ作成の成否を分けると言えるでしょう。
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