ロゴ制作・ロゴデザインを依頼するならsynchlogo(シンクロゴ)
COLUMN
身の回りにある道具や商品、日常生活で使っているサービスやお店、仕事で関わっている会社など、ありとあらゆるところに「ロゴ」は使われています。何気なく目にし、時には記憶に残っているものですが、実はそのロゴは、制作者(デザイナー)の綿密な計算や専門的な知識、経験、作図テクニックによって作られています。
ロゴを作ったことがある人は世の中でさほど多くなく、そのためロゴを欲しいと考え、はじめて誰かにロゴ制作を依頼する際に役立つノウハウや情報はあまり共有されていません。ネットで検索しても、ヒットするのはデザイナーやデザイナーを目指している人向けの専門的な情報ばかりで、デザインに精通していない依頼者向けの情報はなかなか出てきません。
そこでこのコラムでは、そういったはじめてロゴ作成を依頼する人向けの、知っておくと役に立つ知識・用語・デザイン手法を解説したいと思います。これら専門的なことを知っておくと、デザイナーとスムーズな会話をすることができ、より希望に近い、良いデザインのロゴを作ってもらえるようになるでしょう。
【目次】
ロゴとは、広義では「マーク(mark)」の範疇に入るものですが、ただのマークではなく、対象が容易に認識できるようにデザインされたものという狭義の意味を持つマークだと言えます。現在、商標の意味で使われている「トレードマーク(trademark)」が最も近い意味になるかもしれません。
現在広く使われているロゴは、意味のある文字列をデザインしマーク化した「ロゴタイプ」、図案や図形を象徴的にデザインしマーク化した「シンボルマーク」の2種類があり、その2つを組み合わせた「ロゴマーク」を含めると全部で3種類になります。ただし、正確に分類できないデザインは無理にどの種類かに当てはめる必要はなく、単に「ロゴ」として表現しても差し支えありません。
現在のロゴに相当するものは文明が始まった頃には存在しており、土地や建物、家畜や材料の所有権を明らかにするためや、商品の見分けがつくようにするなどのために用いられていたと考えられています。また、ロゴを日本語で表すと「しるし」が最も近い言葉になると思いますが、日本の代表的なしるしとして挙げられる「家紋」は、遡ること戦国時代には敵と味方を見分ける役割を果たしており、まさに現在のロゴと同じ使われ方がされていたと言えるでしょう。
なおロゴの語源は、ギリシャ語で「言葉」を意味する「ロゴテュポス」であると言われています。元々は活版印刷で使われた複数の文字をひとかたまりに組み合わせた「ロゴタイプ(logotype)」から始まっており、そこから時間を経てロゴ(logo)になったとされています。
現代におけるロゴは、対象をただ認識・区別するためのツールとしてではなく、対象の価値を高めるためのグラフィックとして、主に商業目的で作成されています。また詳しくは後述しますが、対象のイメージ形成を行う「ブランディング」において、ロゴは形成するブランドイメージの象徴として扱われることも多く、マークの意味を越えた高度なデザインの結晶体というのが現代における「ロゴ」の一般的な扱われ方です。
また商業で用いられる中で、ロゴは用途や機能に応じてデザインや作り方が確立されていき、現在では以下のように分類できるようにまでなりました。
◆コーポレートロゴ
コーポレートロゴは企業ロゴ・会社ロゴとも呼ばれ、自社を社会へアピールできる最も端的で扱いやすいグラフィックツールです。アピールする内容は、企業理念や姿勢など観念的なものから、業種や業態が分かるといった機能的なものまで様々です。
なお企業ロゴのほとんどは創業時に作られますが、そのロゴをそのまま長く使い続けることもあれば、時代や流行を参照しながらその都度デザインを見直すこともあります。ただし見直しにおいて、大きくデザインを変更することは稀で、用いられているモチーフや色といった根幹部分はそのままに、マイナーチェンジ程度で済まされることがほとんどです。これは、創業時の記憶を継承し続けていきたいという姿勢の表れだと考えられます。
◆サービスロゴ・事業ロゴ
企業や会社が行うサービスや事業のシンボルとして作られるロゴで、コーポレートロゴとは別に作られるロゴです。誰もが1度は目にしたことのある「ユニクロ」や「GU」のロゴもその例ですが、これらはいずれもコーポレートロゴではなく、株式会社ファーストリテイリングが行う事業のロゴです。このように会社よりも事業を広めたい場合は、サービスロゴ・事業ロゴの方を前面に出すことも珍しくありません。
またサービスロゴや事業ロゴがコーポレートロゴと異なるのは、デザインを見直す時、色や形などを大胆に変更することがある点です。コーポレートロゴは創業時の記憶を大切にするためマイナーチェンジ程度のデザイン変更しか行わないのが慣例ですが、それに対しサービスロゴや事業ロゴは、ブランドイメージを時代や流行にマッチさせることを優先しがちなため、リブランディングのタイミングに合わせて大きくデザインを変えるケースもしばしばあるのです。
◆店舗ロゴ・施設ロゴ
事業ロゴ・サービスロゴは、店舗や施設から商品に至る対象全体のブランドイメージを高める役割を担うのに対し、店舗ロゴ・施設ロゴは店舗・施設そのもののイメージを高める役割を担ったロゴとして使われています。例えば看板といった、店舗・施設の顔となる箇所へ設置した際の効果が最大となるようにデザインするなど、機能を限定して作られたりすることもあります。
店舗ロゴ・施設ロゴは、展開する店舗数・施設の数によってデザインの方向性が異なってきます。数の少ない店舗・施設の場合は一目で記憶に残るようなインパクトやユニークさをロゴのデザインに求めがちです。一方フランチャイズなど多店舗展開の場合は、奇をてらったデザインは少なく、王道のデザインや風格ある雰囲気のデザインとすることが多いようです。
◆商品ロゴ
販売する商品やその商品のパッケージなどに使うことを主な目的とするのがこのロゴです。他のロゴに比べ、売り上げへの影響が最も大きいと考えられるため、商品の購入者目線でデザインを考えることが大切になってきます。
また商品ロゴは、商品そのものへ刻印、パッケージへの印刷など、ロゴを使う箇所がかなり限られていることから、使い方に最も適したデザインとなるようにすることも求められてきます。
◆タイトルロゴ
タイトルロゴとは、TV番組や動画コンテンツ、映画、書籍、ゲーム、イベントなど、主にエンターテインメントにおける「題字」をデザインしたもののことです。文字が主体となったロゴタイプのものが多いですが、中にはシンボルマークを有したロゴマークの例もあります。
タイトルですので、対象の内容にリンクしたデザインとすることが求められます。ロゴを見て、内容への期待感が膨らむような作り方をすることが重要となります。
◆周年ロゴ
会社、サービス、お店、イベントなどの周年記念の際に特別に作るのがこのロゴです。周年ですので、その年の西暦や、「20th」のような何年目かを表す数字などをロゴに取り入れるのが基本となります。
デザインの方向性は様々で、例えば会社の周年ロゴであれば、元々あるコーポレートロゴと同じトンマナでデザインとすることもありますし、イベントの周年ロゴでは、毎年異なるテーマ・テイストでデザインすることもあります。
ロゴの制作は会社・個人・サービスなど依頼できる先は数多くありますが、実際に作るのはクリエイターです。またロゴはほとんどの場合ひとりのクリエイターが制作を担当するため、出来上がるロゴのクオリティはその担当者の力量にかかっていると言っても過言ではありません。
そのクリエイターですが、世の中にはロゴを専門とする人も存在しますがその数はまだまだ少なく、実際に制作を担っているのは、ロゴも作ることができる知識や経験を有しているクリエイター達です。ここではある程度ジャンルが確立している代表的なクリエイター業を紹介いたします。
◆グラフィックデザイナー
グラフィックデザイナーは芸術系・美術系の大学や専門学校を卒業している人が多いほか、建築系の大学や専門学校卒という方もいます。また少数ですが、デザインとは無縁のところからキャリアをスタートさせた人もいますが、その方達は独学でかなり勉強してきた方達です。
グラフィックデザイナーが扱えるデザインの範囲は広く、名刺・パンフレット・チラシ・バナーなど情報のレイアウトが中心のものから、ポスター・屋外広告物・Webヴィジュアルといったヴィジュアル制作やコラージュといったセンスやテクニックが必要なものまで多種多様なデザインを担当することができます。ですのでデザインに関する知識や経験、スキルを広く持っており、それらを総合的に使ってロゴをデザインすることが期待されます。
◆イラストレーター
イラストレーターもグラフィックデザイナーと同様に芸術系・美術系の大学や専門学校を卒業している方が多くいます。また絵やイラストを描く趣味が高じて仕事にしたという方も少なくありません。
イラストレーターはその名の通り、イラスト制作を専門とした職業です。よって制作できるロゴもイラストを用いたもの、あるいはイラストを応用したデザインを得意としています。
イラストレーターは作風を売りにしているタイプの方と、お客様の希望のテイストで描くタイプの2種類がいます。ですのでロゴでも同様に、前者の方にはその人の作風で作ることが期待され、後者の方には希望のテイストで作ってもらえることが期待されます。
◆DTPデザイナー
DTPは「Desktop Publishing(デスクトップ パブリッシング)」の略で、パソコンで印刷物のデータを制作することです。つまりDTPデザイナーとはパソコンで印刷物をデザインするデザイナーのことです。グラフィックデザイナーも同様のデザインは行いますが、イラストや写真、原稿等の情報整理を行い、紙面にレイアウト・デザインするのに特化した専門デザイナーです。
DTPデザイナーも芸術系・美術系の大学や専門学校出身の方が多いですが、スキルやテクニックの学び方がある程度確立された分野ですので、デザインを学んでこなかった方が後から勉強して仕事にされた人も少なくありません。
ロゴは専門外ですが、デザインの基礎は学習できている方ばかりなので、ある程度のクオリティが期待できます。
◆Webデザイナー
Webデザイナーは主にWebサイトをデザインする人です。Webデザインは他のデザインと違い、ユーザーが快適にWebサイトを閲覧することができるかという機能性や操作性まで考えなければならない(UI:ユーザーインタフェース)ため、他のデザイナーとはデザインに対する視点が少し違うことがあります。
Webデザインは美しいグラフィックを仕上げることよりも、機能性や操作性の方に重きを置くことがあるため、Web制作のことを「設計」と表現する場合もあります。
ですのでロゴを作る際も、センスや感性でデザインするというより使いやすさや機能的であるかどうかという着眼点で取り組むことが多いでしょう。また職業柄Webサイトに合うデザインが提供できることが期待できます。
ロゴデザインにとってブランディングは切っても切り離せない関係にあります。ブランディングとは、対象をどのように売り出していくか、どのように世に出していくかなど、ブランドイメージを構築する戦略のことを言います。近年、ブランディングは対象の価値を高める方法として、会社、サービス、お店、商品、イベントなど、商業の世界にあるあらゆるものを対象に検討されています。
ロゴはそのブランディングにおいては「ブランドロゴ」と呼ばれ、ブランドイメージの「顔」となる役割を果たします。ですから既に定められたブランディング戦略があれば、当然それに足並みを揃えてデザインしていかなければなりません。ちなみに多くの場合、ロゴはブランディング戦略策定の後に作られる、もしくはブランディング戦略策定と並行して作られます。
ブランドロゴに関しては、グラフィックデザイン・ブランディングに関する知識や用語を理解していなければ、自身で作ることも誰かに依頼して作ってもらうことも難しい代物です。そこでここではそれらに関する基礎知識および専門用語のうち、ブランドロゴデザインに特に必要なものをピックアップして解説していきたいと思います。
◆アイデンティティ
アイデンティティ(identity)は、直訳すると「同一性」や「個性」といった意味になりますが、グラフィックデザイン・ブランディングの世界においては、ブランドがブランドである存在確立のための考えや性質のことで、それを実現する手段がオリジナリティ(originality)ということになります。
◆オリジナリティ
オリジナリティ(originality)は、アイデンティティを実現する手段で、「斬新さ」「独創性」といった意味になります。他者との差別化が目的とされることの多いロゴデザインにおいて非常に大切とされる概念です。
◆クリエイティビティ
「創造力」「独創力」と訳されますが、グラフィックデザイン・ブランディングの世界においては、無から有を生み出す力、抽象的な思考やアイデアを具体的な形にする力、他にはないものを作り出す力のことを指し、デザインそのものを表す言葉でもあります。ロゴの多くは抽象的なものをソースにデザインすることが多く、そのクオリティは制作者のクリエイティビティに依ると言っても過言ではないでしょう。
◆リブランディング
会社、サービス、お店、イベントのブランドイメージを一新させる戦略・行為のことを指します。ブランディング同様、リブランディングにおいてもロゴは「顔」となる存在ですので、そのデザインは真っ先に改変が検討されるでしょう。
◆セルフブランディング
読んで字のごとく、誰かの手を借りず自らの力でブランディングを行うことです。WebやSNSなど、自ら情報が発信できる環境・ツールが整ってきたことでこのやり方が多く見られるようになりました。
◆ブランドエクイティ
エクイティ(Equity)は、金融では「株式資産」「自己資産」の意味ですが、グラフィックデザイン・ブランディングの世界では「ブランドが持つ資産価値」のことを指します。ブランドエクイティは、ブランド名の認知、ブランドの連想、ブランドロイヤリティ、知覚品質に、特許や商標権、クライアントとの関係性などその他資産を加えた5つの資産から構成されています。ロゴはこれらの価値を理解して作ることで、理想の価値を持ったデザインとすることができるようになります。
◆ブランド名の認知
ブランドエクイティを構成する資産のひとつであるブランド名の認知とは、読んで字のごとく、そのブランドの名前がどれだけ認知され浸透しているか、その程度のことを指します。ロゴは、ブランド名を時にはシンボルマークとともにヴィジュアル化したものであるため、この認知へ非常に貢献することができるツールであると言えます。
◆ブランドの連想
ブランドエクイティを構成する資産のひとつであるブランドの連想とは、そのブランドに対して社会やコミュニティで広く共有されたイメージのことです。例えばファッションブランドのCHANELやGUCCIに対しては「裕福」「リッチ」というイメージが連想できますし、食品や日用品を扱う生活協同組合に対しては「安心」「安全」というイメージを連想することができます。こういった、ブランド名からの連想が何もないと、人々の記憶に定着しづらく、認知度の獲得にもつながりにくくなるでしょう。
なおロゴは、このブランドイメージ構築をヴィジュアルで助けることができる非常に有効なツールであるため、目指すイメージをしっかり理解してデザインすることが大切になります。
◆ブランドロイヤリティ
ブランドエクイティを構成する資産のひとつであるブランドロイヤリティとは、一言でいうとブランドに対する愛着や信奉の度合い、忠誠心の深さなどのことです。ロイヤリティが高ければ顧客や消費者のリピート率も高まる傾向にあり、市場におけるブランドの地位も確立していくことでしょう。またロゴは、そのロイヤリティのシンボルとして扱われることになります。
◆知覚品質
ブランドエクイティを構成する資産のひとつである知覚品質とは、顧客や消費者がそのブランドの商品やサービスについて感じている品質イメージです。このイメージは、あくまでも実際に知覚できる品質についてであるため、ブランドの連想で述べた想像上のイメージとは異なることもあります。例えば食品であれば、味や見た目、新鮮さや安全性などに関するイメージです。ロゴでは、この知覚品質を商品やサービスの特異点として差別化の材料としたい場合において、そのイメージを表すデザインを取り入れるなどすることが多くあります。
◆ブランドコミュニケーション
ブランドコミュニケーションとは、ブランド存在および魅力を伝えるために行うコミュニケーションに関する活動のことを指します。どんなに高いブランドエクイティを持ったブランドでも、それが顧客や消費者に伝わっていなければ意味がありません。ブランディング戦略におけるあらゆる広報活動は、このブランドコミュニケーションのためと言っても過言ではなく、ロゴはそのコミュニケーションのきっかけになることが期待されています。
◆タッチポイント
ブランドコミュニケーションにおいて、ブランドが顧客や消費者と実際に触れる接点のことをタッチポイントと言います。広告やCM、Webサイト、パンフレット、名刺、看板、SNSに至るあらゆる広報ツールやビジネスツールがブランドとのタッチポイントとなり得ます。ロゴはそれらすべてのツールにおいて、シンボリックに使用されることが多いことから、このタッチポイントを意識してデザインを行うことも考えなければなりません。
◆ブランドプロミス
ブランドプロミスとは、顧客や消費者にブランドが提供する全てについて保証・約束することを意味するものです。この保証や約束が適切に結ばれることで、ブランドと顧客・消費者との間に信頼関係が生まれます。ブランドプロミスは顧客・消費者にとって非常に大切なものであるため、その保証・約束そのものがロゴへと表現される場合もあります。
◆ターゲティング
そのブランドが顧客・消費者として狙う、サービス・商品の客層を決めることです。またブランドが狙う客層としては、理想的な客層であるブランド・ターゲットと、実際に主に購入・利用してくれるセールス・ターゲットの2つに分類されます。この2つは重なることもあれば、重ならないこともあります。リリースしてみると、設定したブランド・ターゲットよりも、予想外の客層から人気となることもしばしばあります。そうして新たにセールス・ターゲットが生まれることもあるのです。
ロゴにおいては、設定したブランドイメージが刺さるとされたブランド・ターゲット向けにデザインを組み立てることが重要ですが、購入・利用の状況を見て、セールス・ターゲットに合うようにリ・デザインすることもしばしば行われます。
◆CI
コーポレート・アイデンティティ(Corporate Identity)の略で、企業が自社の理念や特性を整理し、発信しやすく分かりやすい世界観に統一したものです。ロゴを作る目的や、ロゴを作る際の背景などになり得るもので、VI(Visual Identity:視覚の統一)、MI(Mind Identity:理念の統一)、BI(Behavior identity:行動の統一)の3つで構成されています。
◆VI
ヴィジュアル・アイデンティティ(Visual Identity)の略で、企業を象徴するような視覚的表現を統一しようという考えです。コーポレートロゴは基本的にこのVIの戦略に基づいて制作されることになります。
◆MI
マインド・アイデンティティ(Mind Identity)の略で、社会における企業の役割を明確にすることで、企業理念を統一しようという考えです。
◆BI
ビヘイビア・アイデンティティ(Behavior identity)の略で、企業理念や経営哲学を実現するための行動を統一しようという考えです。
◆パーパス
英語で「目的」「目標」「意図」などを意味する言葉(purpose)ですが、ビジネスシーンでは「社会にとっての存在価値・存在意義」についてを一言でまとめた企業の経営哲学です。このあとに示すミッション・ヴィジョン・バリュー(MVV)の土台、あるいは総じたものとして位置付けられることもあります。
パーパスをはじめ、以下に続くミッション・ヴィジョン・バリューは、ロゴデザインにおけるコンセプトそのもの、あるいはコンセプトづくりの際に参照されることが多くあります。
◆ミッション
英語で「使命」「役割」「任務」などを意味する言葉(mission)ですが、ビジネスシーンでは「企業・ブランドが行うべきこと」についてを一言でまとめた企業理念の一つです。
◆ヴィジョン
英語で「展望」「理想像」などを意味する言葉(vision)ですが、ビジネスシーンでは「企業・ブランドが目指すべき未来」についてを一言でまとめた企業理念の一つです。
◆バリュー
英語で「価値」などを意味する言葉(value)ですが、ビジネスシーンでは「企業・ブランドが大切にする行動指針」についてを一言でまとめた企業理念の一つです。
ロゴの制作プロセスは他のグラフィックデザインに比べて独特です。なぜならグラフィックデザインとはそのほとんどがパンフレットやパッケージなど印刷物のデザインで、ロゴのようにヴィジュアルそのものを作る訳ではないからです。
印刷物のデザインは、まず名称や説明、写真やイラストなど、情報となる要素を顧客に向けて分かりやすくキャッチーに組み立てる「情報設計」がとても大切になります。ちなみにWebデザインではまずはじめにワイヤーフレームというものを作成しますが、それも同様な作業です。
また情報設計では、クライアントからどんな情報を記載して欲しいか、要望が具体的に与えられます。一方ロゴ制作では「こんな雰囲気したい」「◯◯なイメージで」など、要望が抽象的になりがちです。そのためデザインの方向性や形、テイストなどをどうするかは制作者(デザイナー)に委ねられます。
そのような環境下でクライアントの考えや思いをロゴデザインに反映させるためには、制作プロセスにおいて、自分の要望を制作者にいかに分かりやすく具体的な言葉で伝えられるかが大切になる訳です。
そこでここでは、ロゴの制作プロセスにおいて、知っておくと要望が制作者によく伝わる専門用語を解説していきたいと思います。これを覚えておけば、はじめてロゴ制作を依頼する場合でも、きっとスムーズに会話できるようになるでしょう。
◆ヒアリング
ヒアリングとは、制作者がロゴ制作に必要な情報を依頼者から聞く作業です。ロゴ制作においてまず初めに行われるもので、尋ね方や質問の内容は制作者によって異なりますが、ロゴを作る目的や用途、デザインの源やヒントになる情報はほぼ必ず聞かれると思います。ロゴを作る上でこのヒアリングはとても重要で、質問の切り口や角度によってデザインの方向性に大きく影響を与えるでしょう。また依頼者のほとんどはデザインに精通していないため、ロゴに対する想いや考え、イメージなどを持ってはいても、それを適切な言葉にするのはなかなか難しいもので、それを上手く引き出せるかどうかは制作者の力量次第です。
◆ペルソナ
ペルソナ(persona)とは、直訳すると「登場人物」や「人格」という意味ですが、ロゴデザインおよびグラフィックデザインで使われるのは、対象となる商品やサービスの「典型的なユーザー像」を意味するマーケティング用語です。ターゲットとも近い意味ですが、ターゲットは年齢や性別などざっくりした「層」を指すのに対し、それに職業や趣味、ライフスタイルなどより具体的な像を指し示したのがペルソナとなります。商品やサービスにペルソナが設定されている場合は、当然ロゴをデザインにあたってもそのことを意識して検討することが求められます。
◆コンセプト
コンセプト(concept)を直訳すると「概念」という意味になりますが、ロゴデザインおよびグラフィックデザインで使われるのは、デザインを行う際の基本的な考え方や方向性という意味です。ヴィジュアルとしてのデザインのバリエーションはいくつか考えられても、コンセプトは不変のものとして位置づけられるため、デザインの「背骨」「骨格」という言い方がなされることもあります。またコンセプトはロゴを作る目的から設定することも多く、ロゴによって何をしたいか、ロゴを作ることでどうなって欲しいかといった意志が強く反映される傾向があります。
◆インスパイア
他のロゴやデザイナーの作風・アイデアなどから刺激を受け、それをきっかけにデザインの着想を得ることを「インスパイアされた」と言います。「鼓舞する」「触発する」という意味があることからインスパイア(inspire)という英語が使われるようになったものと思わます。またインスパイアはいわゆる模倣(パクり)と比較されがちですが、あくまで他のものから感銘を受けただけで、創作したロゴ・デザインは観世に独自のものであるという点で全く異なります。
◆オマージュ
インスパイアと似た言葉として使われるオマージュですが、語源はフランス語の「hommage」で、「敬意」「賛辞」といった意味です。インスパイアは「刺激を受けた」という考え方ですが、オマージュはロゴ・デザインのヴィジュアルに元の作品そのものを感じさせる何かがある、という考え方になります。例えばロゴをリニューアルする時など、前ロゴのデザイン要素を加えて作るなどはまさに「オマージュしたデザイン」と言えるでしょう。またオマージュもいわゆる模倣(パクり)と比較されがちですが、語源からも分かるように、参照元の作品に対する敬意・リスペクト(場合によっては制作者の了承も必要)が伴っているという点で全く異なります。
◆既視感
ロゴのデザインは、もはや出尽くしたのではないかと言われるほど世の中において無数に存在しています。ですのでデザイナーはデザインが被らないようにすることを常に心掛けているものです。しかし出来上がったロゴを見てみると、どこかで見たことがあるように感じることも多くあります。本当に見たことがあるかないかはさておき、これを「既視感のあるデザイン」と呼びます。
しかしこの既視感をポジティブに捉えることも多くあります。見たことがありそうな気がするデザインとは、それがすなわち王道のデザインであることも多いからです。もちろん模倣は論外ですが、意匠性や雰囲気、全体の佇まいなど、どこかで見たことありそうな、しかし実際同じものはないというデザインをあえて目指す場合も少なくないのです。
◆アイキャッチ
アイキャッチとは、ロゴにおいて目を惹く要素、または部分のことを指します。ロゴそのものをアイキャッチ効果の高いものとして作る、という時にこの言葉を使うこともありますし、ロゴの中のワンポイントを目を惹くように作る、という意味でも使うことがあります。いずれにせよロゴにとってアイキャッチの機能・効果は非常に重要なものですので、どのような場合においても意識して置く必要はあるでしょう。
◆モチーフ
モチーフ(motif)とは、芸術や文学の分野では「主題」や「テーマ」といった意味がありますが、ロゴデザイにおいてはそのロゴの形の元となった事物のことを指します。例えばiPhoneの裏にあるAppleのブランドロゴのモチーフはリンゴ、カフェのスターバックスのロゴのモチーフは人魚であることはよく知られているところかと思います。またこれらのように一目で何をモチーフにしたのかが分かることもあれば、説明がないと分からない場合もあります。例えば、スウッシュラインと呼ばれるNIKEのロゴは、ブランド名の由来となったギリシャ神話の勝利の女神ニケの翼がモチーフだと言われていますが、この説明がないとただのシュッとした線にしか見えないのではないでしょうか。
◆トンマナ
トンマナは「トーン&マナー」の略称です。「トーン(tone)」は色や色調、「マナー(manner)」は様式や作風という意味で、様々な制作物に一貫性を持たせるためのデザイン上のルールのことを指します。トンマナは前述したブランディングのために定められていることが多く、ロゴを作る際もトンマナがあれば必ずそれに従ってデザインする必要があります。一方トンマナがない場合はもちろん自由にデザインすることができますが、作ったロゴの色や様式がその後に制作予定のビジネスツールや広告物などのトンマナとなることもあります。ブランディングデザインではロゴを最初に作ることがしばしばあり、その場合ブランドとしてどのような色・様式にしていくかを同時並行で検討しながらロゴをデザインしていくのです。
◆ラフスケッチ
ラフスケッチはロゴをデザインする際に描く、文字通りラフなスケッチのことです。アイデアを殴り描きしただけのものもあれば、プロポーションやディテールまで正確に描こうと取り組んだものまであり、どのくらいスケッチを精緻に描くかは目的によります。ただラフスケッチを描かずにロゴを作ることは少なく、デザインの方向性を探る過程として、どのデザイナーもほぼ必ず取り組む工程ではあるようです。またラフスケッチは紙に鉛筆やペンで描くことが一般的ですが、最近ではパソコンの描画ソフトを用いてタッチペンで描くこともしばしば行われています。
◆プロポーション
プロポーション(proportion)は直訳すると「割合」「比率」「均整」といった意味になります。体のスタイルに関して使われることの多い言葉ですが、ロゴデザインでも縦横のバランスの良し悪しを論じるときによく使われます。それぞれの詳細は後に解説しますが、黄金比や白銀比、青銅比と呼ばれる、古くから人間が美しいと感じる図形の比率を使ってロゴをデザインすることもあり、プロポーションとロゴの関係は非常に深いものとして扱われています。
◆ディテール
ディテール(detail)には「詳細」「細部」という意味があり、例えばファッションでディテールといえば、襟元や袖などの形や装飾装飾といった細かな部分のことを指しますが、ロゴデザインにおいては主に図形の各部分や細部のことを指します。ディテールは、ぼんやり見た時のロゴの印象や雰囲気にも影響を与えることが多く、いかに細かいところまで妥協せずに仕上げるか、そのこだわり方でデザイナーの姿勢や力量を測ることもしばしばあります。
◆あしらい
ロゴデザインにおけるあしらいとは「装飾」を意味し、ある意匠を強調させたり際立たせたりする行為またはその部分のことを指します。デザインの骨格ではない部分のデザインで、ディテールもあしらいのひとつだと捉えることもできます。あしらいの引き出しが多いければ多いほど様々なジャンルのデザインクオリティを上げることができますが、その数はデザインの経験に伴うものであるため一朝一夕には身につかないものだとされています。
◆カーニング
カーニングとは、文字と文字の間隔を調整する作業、またはその技法のことを指します。ロゴにおいては、主に文字を基調としたロゴタイプのデザインをする際に行うものです。カーニングは、ロゴ全体の印象を変化させるという目的だけでなく、文字自体がきちんと読めるかどうか(可読性)を担保するという点でもきちんと検討する必要があります。
◆モックアップ
モックアップ(mock-up)は「模型」という意味で、工業製品においては外観が実物そのままに近いサンプルのことを指します。一方ロゴデザインにおけるモックアップとは、デザインしたロゴの使用例を合成写真などによって表現することで、実際の使用感を確認するために行われます。
◆視認性
識別性はロゴデザインにおける視覚的評価のひとつで、「ロゴに描かれた文字や図形の認識のしやすさ」を測る観点です。例えば背景が白の箇所に黄色の文字を描いた時、文字の存在自体は認識できても何の文字が書かれてあるかは認識しづらいと思います。またロゴにおいてはイニシャル(頭文字)を図形としてロゴのシンボルマークにしばしば用いられますが、その文字が何の文字を表しているかをどの程度読み取れるようにするべきか議論になることがよくあります。読み取りやすくすればするほど「ロゴ」というより「文字」に近くなり、崩せば崩すほど「ロゴ」らしくなる傾向にあります。
◆明視性
識別性はロゴデザインにおける視覚的評価のひとつで、「ロゴが伝えようとしている意味の理解のしやすさ」を測る観点です。例えば歯医者のロゴは歯の図形モチーフが用いられていることが多くありますが、この歯の図形がデフォルメされ、歯に見えないような形であった場合どうでしょう。「〇〇歯科医院」という名称がなければ歯医者だと理解しづらくなるため、それは明視性が低いという評価となります。業種や商品・サービス内容を伝える説明的なロゴ、ピクトグラム的なロゴを作る時に特に注意する必要がある観点です。
◆識別性
識別性はロゴデザインにおける視覚的評価のひとつで、「ロゴの区別のされやすさ」を測る観点です。例えば様々なロゴが看板に掲げられた商店街において、自分のお店のロゴが他のロゴに紛れず、いかに見つけやすくできるかはとても大切なポイントでしょう。ただし派手で奇抜なデザインが評価されるということではなく、シンプルでも特異な存在感があり、周囲と差別化できていれば識別性は担保できているということになります。
◆誘目性
識別性はロゴデザインにおける視覚的評価のひとつで、「ロゴの注目のされやすさ」を測る観点です。歴史的な街並みが保存されている地域で、通常の色とは異なる茶色いコンビニエンスストアのロゴを見たことがあると思います。あれは地域の主役である街並みの景観を損ねぬよう、あえてロゴが注目されないよう色を変えることが景観条例で定められているのです。通常ロゴは、注目させることを良しとしていることが大半ですが、このように調和させる、周囲に溶け込ませるような場合もあるため注意が必要です。
◆ネガティブスペース
ネガティブスペースとは「余白」のことですが、ロゴデザインにおける余白とは印刷物の四方に設けた空きスペースとは異なり、ある図形のまとまりの中で背景として扱う部分のことを指します。例えば上から見たドーナツ状のロゴであれば中央の円内部の部分ですし、コの字型の図形であれば「コ」の形以外の部分はすべてネガティブスペースということになります。
ロゴデザインにおけるネガティブスペースの使い方は後述する「図と地」にて詳しく記しますが、いわゆる「地」の部分をネガティブスペースとしてデザインします。
◆モジュール
ロゴの図形を描く時、グリッドなどを用いてある寸法の倍数で作図することがありますが、その基準となる寸法のことをモジュールといいます。建築では畳の短辺の長さである1尺(910mm)を基準寸法として設計が行われますが、ロゴデザインでもある基準の寸法を決めて作図することがしばしばあります。
ロゴの多く、特にシンボルマークは図形を創作する工程がデザイン作業の中心となります。オリジナリティ溢れるロゴとするためにはクリエイターの独創的なアイデアによる個性的なデザインが必要ですが、あくまでロゴとして整った図形とするためには、学術的に裏付けられた技法や法則などを使うことも大切です。
美しいと感じるロゴの中には、これらの技法や法則に基づいた構成や絶妙なバランス、プロポーションで成り立っているものも多く、洗練されたロゴを作る近道として有効にはたらく場合もあります。これらを知っておくと、制作者の意図や考えをより深く汲み取ることができるようになると思います。
それではその代表的な技法や法則の用語解説を見ていきましょう。
◆ゲシュタルト心理学
「ゲシュタルト」はドイツ語で「形態」という意味を持つことから、形態心理学とも呼ばれ、主に視覚によって人間がモノの形態をどのように認知するかについて研究されてきました。その中でもドイツの心理学者マックス・ヴェルトハイマーによって体系化されたものは、のちにロゴを含むデザインの分野で活用される「ゲシュタルトの法則」として広く知られることとなりました。この法則でロゴデザインで多く用いられるものは6つあり、その詳細は後述いたしますが、どの法則も図形に含まれている要素を1つ1つ注視するのではなく、要素の総和を全体として認識するという視覚の傾向について定義されています。
なお、一瞬見て何であるか知覚できた図形を注視し続けると、それが何だか分からなくなってしまうという現象を「ゲシュタルト崩壊」と呼びますが、これは全体を認識する能力が低下する失認症を表す心理学用語が由来です。
◆近接(Proximity)
ゲシュタルトの法則のひとつで、複数のある要素の集合体がある時、その要素同士は離れている場合よりも近接している場合の方がひとまとまりとして知覚しやすいというものです。どの程度距離がまとまりとして感じられやすいかは、要素の形や大きさなどに左右されますが、培った経験などによってデザイナーはそれを感覚的に理解しており、適切な距離でデザインすることができます。
◆類同(Similarity)
ゲシュタルトの法則のひとつで、複数のある要素の集合体がある時、その要素同士に類似の共通点がある場合ひとまとまりとして知覚しやすいというものです。どの程度似ていればまとまりとして感じられるかは要素の形や大きさ、色などの条件によって変わりますが、培った経験などによってデザイナーはそれを感覚的に理解しており、適切な類似感を持たせたデザインをすることができます。
◆閉合(Closure)
ゲシュタルトの法則のひとつで、複数のある要素の集合体がある時、その要素同士に閉じるような形の特徴がある場合ひとまとまりとして知覚しやすいというものです。一部分が欠けた図形などがある時、それを補完してその図形のあるべき方として知覚しようと自動的にはたらく人間の脳の性質に起因した傾向です。どの程度欠け具合であればまとまりとして感じられるかは要素の形や大きさ、意匠の特徴などによりますが、培った経験などによってデザイナーはそれを感覚的に理解しており、適切にデザインをすることができます。
◆連続(Continuity)
ゲシュタルトの法則のひとつで、要素の数に限らず、その要素もしくは要素同士の間に連続する何らかの特徴を有する場合、その要素もしくは要素同士はひとまとまりとして知覚しやすいというものです。どういった連続的特徴であればまとまりとして感じられるかは要素の形や大きさ、配置や色などによりますが、培った経験などによってデザイナーはそれを感覚的に理解しており、適切な連続性を作りデザインに反映することができます。
◆対称性(Symmetry)
ゲシュタルトの法則のひとつで、複数のある要素の集合体がある時、その要素同士に対称となる図形的特徴や配置の特徴がある場合、その要素群はひとまとまりとして知覚しやすいというものです。どういった対称的特徴を帯させればまとまりとして感じられるかは要素の形や大きさなどによって変わりますが、培った経験などによってデザイナーはそれを感覚的に理解しており、適切に対称性を持たせたデザインをすることができます。
◆図と地(Figure & Ground)
ゲシュタルトの法則のひとつで、ある領域が複数ある図形や絵において、その領域を認識の対象となる部分(=図)と背景として処理する部分(=地)に分けて知覚しようとするものです。「多義図形」「反転図形」がそれを説明する良い例で、その例として有名な「ルビンの壺」は、一つの図形なのにもかかわらず、注視の仕方を変えることで図と地が入れ替わり、「壺」にも「向き合った2人の人間の顔」のどちらにも見えるのが特徴とされています。この法則をロゴデザインに用いるにはデザイナーの経験やセンスが必要で、有効にはたらくかどうかを目指すロゴのデザインと照らし合わせながら検討することが重要になります。
◆プレグナンツの法則(群化の法則)
「プレグナンツ」はドイツ語で「簡潔さ」という意味ですが、ある図形や絵を見たとき、人は意識せずともその図形や絵の中からある要素のまとまりを見つけようとする傾向があることをプレグナンツの法則といいます。この法則はゲシュタルトの法則の中の「近接」「類同」「閉合」「連続」「対称性」など要素の「群」に関する傾向が含まれるとされており、そのためプレグナンツの法則は「群化の法則」とも呼ばれています。
◆錯視
「目の錯覚」のことで、形や大きさ、長さ、色などが、事実とは異なっているように見える視覚現象のことです。有名なところでは同じ長さの線の両側に矢の先端のような図形を付けたとき、矢の向きによって長さが異なって見える「ミュラー・リヤー錯視」があります。
幾何学的に正しく描いた図形でも、それを見た人は意図と異なった見え方をすることがあるため、ロゴデザインにおいて錯視は十分に注意しなければなりません。そのためには「正しく描く」のではなく「正しく見えるように描く」ことを意識することが重要となります。
◆黄金比
黄金比とは、縦と横が1:1.618の比率で、人間が美しいと感じ、またデザインを美しくする貴金属比と呼ばれる比率のひとつです。
そのルーツははっきりとはしないがかなり古く、古代ギリシャ時代の古典書に黄金比に関する記述があったり、ローマ建築にも用いられたりしているようです。黄金比はロゴをはじめとする様々かデザインで用いられているほか、建築や美容の分野などでも多く使われています。
しかし黄金比はその比率を用いれば必ず美しくなるという絶対的な理論ではなく、美しく見えるものが黄金比で成り立っていたという結果論に過ぎないという見方もあります。そのためデザイナーにおいては、黄金比を使うべき場面の見極めが重要とされています。
◆白銀比
黄金比とは、縦と横が1:1.414の比率で、人間が美しいと感じ、またデザインを美しくする貴金属比と呼ばれる比率のひとつです。
この比率は、現在もなお使われている用紙の国際規格であるA版にそのルーツとされています。1900年代に活躍したドイツの物理学者オズワルドが提案した面積1㎡となるA0用紙がそのはじまりで、そのA0の縦横比が1:√2、すなわち1:1.1414なのです。
白銀比はロゴをはじめとする様々なデザインで用いられているほか、建築や美術の分野などでも多く使われています。しかし白銀比はその比率を用いれば必ず美しくなるという絶対的な理論ではなく、A版用紙のように日常的に見慣れた形であるに過ぎないという見方もあります。そのためデザイナーにおいては、白銀比を使うべき場面の見極めが重要とされています。
◆青銅比
青銅比とは、縦と横が1:3.303の比率で、人間が美しいと感じ、またデザインを美しくする貴金属比と呼ばれる比率のひとつです。
この比率のルーツははっきりとしておらず、かつ黄金比・白銀比ほど知られていないですが、デザインの分野ではしばしば見られる比率です。また比較的横長の比率であることから使い方が限定されるという特徴があります。そして黄金比・白銀比同様、この比率を用いれば必ず美しくなるという絶対的な理論ではなく、デザイナーにおいては使うべき場面の見極めが重要とされています。
ロゴは会社、サービス、お店、商品、イベントの「顔」となることから、その使い方にも気を配ることが求められます。そのためクライアントは使い方に関するアドバイスを制作者に相談することもしばしばあります。また現在ロゴはデータで納品されることがほとんどで、そのデータを扱い慣れていないと、正しい使い方、効果的な使い方とならない恐れもあります。
そこでここでは、ロゴの使い方に関する用語を解説していきたいと思います。
◆ロゴレギュレーション
ロゴレギュレーションは、ロゴの正しい使用方法やルールを定めたもので、「ガイドブック」や「マニュアル」といった呼び方がされることもあります。ロゴは様々な制作物に使用されることから、誰に、どんな使われ方をするか分かりません。そこで、制作されたロゴのデザイン効果が一定以上発揮されるよう使い方のルールを定めまとめたものがロゴレギュレーションなのです。
◆フォント(字体・書体)
ある統一されたデザインで整えられた文字の種類のこと。世界各国の字体があるが、日本のロゴで使われるものは和文と英文がその多くを占める。フォントに装飾を施したり、フォント自体を改変したりしてロゴタイプを作ることもある。
◆タイポグラフィ
ある名称やメッセージが読みやすくなるよう、適切なフォントやレイアウトで組んでいく技法のこと。現在ではデザインの要素も加わり、仕上がりに美しさや特徴を求める傾向もある。よくロゴタイプと混同されがちだが、タイポグラフィはあくまで「技法」であり、正しくはタイポグラフィを用いたロゴ=ロゴタイプということになる。
◆筆文字
毛筆で書いたような文字を作る手法のこと。書家・書道家と協働して制作することもあり、歴史や伝統、和を感じさせるロゴ・ロゴタイプをデザインする際によく用いられる。
◆カリグラフィ
「Calligraphy」と書き、「美しい書き物」を意味するギリシア語が語源。西洋や中東などにおける文字を美しく見せるための手法のことで、筆文字とは異なり、毛筆を使うことはなく専用のペンを使用することが多い。ロゴ・ロゴタイプでも用いられる手法。
◆アイコン
アイコンは、コンピューターやスマートフォンの画面上に表示される小さな絵やシンボルのことで、ロゴにおいては主にシンボルマークがそのままアイコンとして使われることがあります。アプリケーションや機能の内容を視覚的に表現し、ユーザーが直感的にそれを理解できることが大切とされている。
◆ファビコン
ファビコンは、インターネットブラウザのタブ部分に表示される小さなアイコンで、一般的にはそのサイズは16px × 16pxとされていることから、ロゴやシンボルマークをそのまま使う時は視認性に注意が必要です。なおファビコンという名前の由来は、ブラウザでお気に入り(favorite)に登録したときに表示されるアイコン(icon)を意味するフェイバリットアイコン(favorite icon)からきているとされています。
ロゴは「知的財産」に属する財産で、その権利は所有する人にも制作した人にも発生します。記憶に新しいところでは、2020年東京オリンピックのロゴで知的財産権について多くの議論が交わされていましたが、それらは法律の領域であることから、特に聞き慣れない用語ばかりが出てきます。
ここではロゴに関係する知的財産権に関する用語を解説していきますが、ロゴを特許庁へ商標出願し、商標登録を受けたいと考えている方には特に必要となる用語を集めたので、一度目を通しておくことをお勧めいたします。
◆著作権
著作権とは様々な創作物(=著作物)に与えられる権利で、知的財産権と呼ばれる権利のうちのひとつで、「著作権法」という法律によって守られています。当然ロゴもデザインされた時点で著作権は発生し、その権利は制作した人に帰属されます。また著作権はどこかに届け出る必要はなく、著作物を創作した時点に自動的に発生するものです。
◆著作財産権
著作権に含まれる権利のひとつで、著作物を著作者自身が複製できる権利のことです。ロゴにおいては制作したロゴを他人が勝手に複製しないよう制作者がこの権利を主張しています。
◆著作者人格権
こちらも著作権に含まれる権利のひとつで、その中には公表権(著作者が著作物を公表するか否か、公表する場合どのように公表するかを決める権利。)、氏名表示権(著作者が自分の著作物に名前を表示するかどうか、表示する場合どのように名前を表示するか決める権利。)、同一性保持権(著作者が自分の著作物のタイトルや内容を他人に変えられない権利。)などがあります。いずれの権利もロゴには非常に関わり深いものです。
◆著作者人格権の不行使条項
著作者人格権は著作権法第五十九条で「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない。」と定められおり、たとえ制作者であってもクライアントに譲渡できないものとされています。
しかしロゴにおいては、納品後色や形の微細な変更をクライアント自らで行えるようにしておきたいという理由から、この譲渡できない著作権人格権を制作者は行使しないという契約を結ぶことがしばしばあります。
◆商標権
こちらも知的財産権のうちのひとつで、特許庁に出願して認められるものとされており、商品やサービスなどを対象としている「産業財産権」と呼ばれる権利に分類されます。なお認められた商標には独占排他権が与えられ、その効力は同一の商標・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます。商標として保護されるのは、文字、図形、記号、立体的形状、音等とされており、当然ロゴも保護される範囲に含まれています。
◆弁理士
日本弁理士会によると、弁理士は「知的財産に関する専門家」とされており、弁理士法第1条には「弁理士は、知的財産に関する専門家として、知的財産権の適正な保護及び利用の促進その他の知的財産に係る制度の適正な運用に寄与し、もって経済及び産業の発展に資することを使命とする。」記載されています。なお弁理士は国家試験に合格し、弁理士登録を行なってはじめて業務を行うことができるようになります。
弁理士の主な業務は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権など様々な知的財産権に関するもので、特にロゴにおいては、制作と同時に商標権取得を行うことも多いことから、デザイナーと協働してロゴ制作にあたることもしばしばあります。
◆登録商標
登録商標とは登録された商標のことです。特許庁に商標登録出願を行い、審査を通過し登録査定が降り、登録料を納付して商標の登録が完了します。なお商標を登録する意味で使われる「商標登録」と混同しがちなので注意が必要です。
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