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COLUMN
企業ロゴは、単なる社名の目印ではありません。特にBtoB企業においては、ロゴそのものが「この会社は信頼できるか」「長く付き合えるか」を無意識のうちに判断させる装置として機能しています。今回取り上げるImerysのロゴは、その点で非常に示唆に富んだ事例です。一見すると抽象的で装飾性を抑えたデザインですが、その背後には、事業構造・提供価値・ブランド戦略と密接に結びついた明確な設計意図が存在します。本コラムでは、Imerysのロゴを分解しながら、「なぜこのロゴが機能しているのか」を設計の視点から読み解いていきます。
Imerysは、フランスを本拠地とする世界有数の特殊鉱物ソリューション企業です。鉱物の採掘・加工を起点に、建設、工業、エネルギー、化粧品、食品、自動車など、極めて幅広い産業分野に素材や機能性材料を提供しています。事業の性質上、一般消費者の目に触れる機会は多くありませんが、産業の基盤を支えるBtoB企業として、長期的な信頼関係がビジネスの前提となっています。
そのため、Imerysのロゴに求められている役割は「覚えやすさ」や「派手さ」ではありません。むしろ、「技術的に信頼できる企業であること」「グローバルで一貫した品質を提供する組織であること」を、言葉を使わずに伝えることが最大の使命です。ロゴは広告的な主張をするための道具ではなく、企業全体の信頼性を下支えするインフラとして位置づけられています。
Imerysのシンボルマークは、具体的なモチーフを明示しない、立体的で抽象度の高い造形で構成されています。そこには山や鉱石、地球といった分かりやすい象徴は一切描かれていません。代わりに用いられているのは、幾何学的な面とエッジを組み合わせた、結晶体や加工された鉱物ブロックを想起させる立体構造です。
この形状は、自然物の不規則さをそのまま写し取ったものではなく、人の手と技術によって制御・最適化された「工業的な素材」を強く感じさせます。偶然性ではなく、計算された構造であることが視覚的に伝わる点が重要です。Imerysが扱う素材が、単なる原料ではなく、厳密な設計と品質管理のもとで提供されていることを、形そのもので表現しています。
色彩にはブルーが採用されていますが、これも鉱業的な重厚感や荒々しさを想起させる色ではありません。ブルーは、科学、知性、信頼、国際性といった意味合いを持ち、技術企業としての側面を強調する色です。立体的な陰影表現と相まって、冷静で理知的な印象を与えています。
Imerysのロゴが伝えている最大のメッセージは、「私たちは素材そのものではなく、素材の価値を設計する企業である」という思想です。ロゴに自然モチーフが使われていないのは、偶然ではありません。鉱物を掘り出す会社であることよりも、それを産業に適した機能へと変換する技術力こそが、同社の本質であるという意思表示です。
また、抽象度の高いシンボルは、特定の業界や用途を連想させません。これは、Imerysが単一市場に依存しない、多分野横断型の企業であることを示すための設計です。どの業界の顧客が見ても「自分たちとは無関係だ」と感じさせない、中立性と汎用性が意図的に組み込まれています。
このように、ロゴは企業の理念や事業構造を、過不足なく圧縮した情報媒体として機能しています。
このロゴ設計が機能している理由は、企業の実態と視覚表現が乖離していない点にあります。Imerysは、派手な成長ストーリーや消費者向けの感情訴求を必要とする企業ではありません。むしろ、「長く安定して供給できるか」「技術的に裏付けがあるか」といった合理的な評価軸で選ばれます。
ロゴもまた、その評価軸に正確に合わせて設計されています。主張しすぎず、しかし曖昧でもない。抽象的でありながら、技術的な緊張感を保っている。このバランスが、グローバルBtoB企業としての信頼構築において、非常に高い効果を発揮しています。結果として、ロゴは企業活動のあらゆる場面で違和感なく使われ、長期的なブランド資産として蓄積されていくのです。
Imerysのロゴ事例から学べる最大の示唆は、「ロゴは見た目の好みで決めるものではない」という一点に尽きます。重要なのは、自社がどのような評価軸で選ばれているのか、どのような価値を提供しているのかを、視覚的に翻訳できているかどうかです。
分かりやすいモチーフや流行のデザインが、必ずしも正解とは限りません。むしろ、事業の本質とズレた表現は、短期的には目立っても、長期的には信頼を損なうリスクを孕みます。ロゴ作成においては、「何を足すか」よりも、「何をあえて描かないか」を判断する設計視点が不可欠です。
Imerysのロゴは、企業ロゴが情報伝達装置であり、経営戦略の一部であることを、静かに、しかし明確に示しています。ロゴを作る、あるいは見直す際には、このような設計の深さを意識することが、結果としてブランド価値を高める近道になるはずです。
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