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COLUMN
天丼・天ぷら専門店として長年親しまれてきた「てんや」は、創業から36年という節目にあたるタイミングで、ブランド全体の再定義とともにロゴリニューアルを実施しました。単なる見た目の刷新ではなく、これからの「てんや」がどのような価値を提供し、どのような存在であり続けたいのかを、視覚的に整理し直すための取り組みです。本記事では、てんやのロゴを軸に、そのブランド観とデザイン的特徴を、設計視点から読み解いていきます。
てんやは、天丼・天ぷらという専門性の高い商品を扱いながらも、「特別な日のごちそう」ではなく「日常的に立ち寄れる外食」としてのポジションを築いてきたブランドです。揚げたて・作りたてへのこだわりを軸にしつつ、価格帯や店舗展開によって、幅広い生活者の食卓に寄り添ってきました。
今回のロゴリニューアルは、そうした従来の価値を否定するものではありません。むしろ、長年培ってきたブランド資産を前提にしながら、「これからも選ばれ続ける理由」を再定義するためのブランディング施策といえます。企業として掲げる「天丼・天ぷらを食べる喜びで、より多くの人の心を豊かにする」という考え方を、視覚的に整理し直す必要があったのです。
ロゴは、企業理念や提供価値を最短距離で伝えるための装置です。てんやにとってのロゴは、「専門店としての信頼感」と「日常性・親しみやすさ」という、一見相反する要素を同時に担保する役割を負っています。その役割を再定義することが、今回のリニューアルの出発点だったといえるでしょう。
新しいロゴでまず目を引くのは、表記が「天丼てんや」から「てんや」へと簡略化された点です。これは情報量を削るための変更ではなく、ブランドとの心理的距離を縮めるための設計です。業態説明を前面に出すフェーズから、「名前そのものが認知されている状態」へとブランドが移行したことを前提にした判断といえます。
ロゴマークには、どんぶりとそばのせいろを想起させるシンボルが用いられています。これは天丼と天ぷらそばという主力商品の象徴であり、抽象化しすぎず、かといって説明的にもなりすぎない、絶妙なバランスで設計されています。視認性が高く、看板や店頭、デジタル媒体など、あらゆる使用環境を想定した形状です。
色彩は、従来から使われてきた藍色・きび色・朱色を踏襲しています。これは新規性よりも「認知の連続性」を優先した判断です。長年てんやを利用してきた顧客が、無意識のうちに同一ブランドとして認識できるよう、色という強力な記号を維持しています。
書体には勘亭流を採用し、和食文化や江戸の文脈を想起させる設計がなされています。競合の外食チェーンがモダン・無機質なロゴへ寄せる中で、あえて伝統的な書体を使い続ける点は、明確な差別化要素です。これは「流行るため」ではなく、「続くため」のデザイン判断といえるでしょう。
てんやの新しいロゴが伝えようとしているのは、「専門性を保ちながら、より日常に開かれた存在であること」です。高級路線でも、ファストフード路線でもない。その中間にある、信頼できる日常食としての立ち位置を、ロゴ全体で表現しています。
このロゴは、強い主張を前面に押し出すタイプではありません。しかし、使われるほどに「違和感がない」「当たり前にそこにある」と感じさせる設計になっています。これはブランドにとって非常に重要な要素です。ロゴが目立ちすぎるブランドは、一時的な話題にはなっても、長期的な信頼を築くのは難しくなります。
今回のリニューアルによって、てんやは「昔ながらの天丼チェーン」から、「今の生活に自然に溶け込む専門店」へと、ブランドイメージを更新しました。ロゴはその変化を静かに、しかし確実に支えています。店舗、商品、接客といった他のブランド要素と組み合わさることで、ロゴは単なるマークではなく、ブランド体験全体の基盤として機能していくでしょう。
てんやのロゴは、派手さや奇抜さで勝負するデザインではありません。だからこそ、設計の精度が問われます。長く使われること、使われ続けることを前提に設計されたロゴは、ブランディングにおいて最も強い資産になります。てんやの事例は、ロゴリニューアルにおいて「何を変え、何を変えないのか」を見極めることの重要性を、端的に示しているといえるでしょう。
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