ロゴ制作・ロゴデザインを依頼するならsynchlogo(シンクロゴ)
COLUMN
企業ロゴのリニューアルは、単に見た目を新しくする行為ではありません。
それは、その企業がこれまで何を積み重ねてきたのか、そしてこれからどこへ向かおうとしているのかを、視覚的に再定義する行為です。
2025年にブランドデザインを刷新した王子ホールディングスのロゴもまた、表層的なデザイン変更ではなく、企業の立ち位置と思想を整理し直した結果として生まれたものだと言えます。本記事では、王子ホールディングスのロゴリニューアルを題材に、ブランド観とデザインの特徴を設計視点から読み解いていきます。
王子ホールディングスは、1873年創業という長い歴史を持つ企業グループです。紙・パルプ事業を起点としながら、現在では森林資源を基軸に、環境素材、機能材、エネルギーなど多岐にわたる事業を展開しています。
2023年に創業150周年を迎えた同社は、次の150年を見据えた経営フェーズへの移行を明確に打ち出しました。その中核にあるのが、「森林資源を活かしたサステナブルな価値創出」という考え方です。これは単なる環境配慮の姿勢ではなく、事業ポートフォリオそのものを再定義する意思表明でもあります。
こうした変化の中で、従来のブランド体系が抱えていた課題も顕在化していました。
王子グループではこれまで、「グループを象徴するマーク」と「会社を象徴するマーク」が併存しており、用途や文脈によって使い分けられていました。しかし、グローバル展開が進む中で、ブランドの見え方が分散し、一体感が伝わりにくいという問題が生じていたのです。
今回のロゴリニューアルは、この分散したブランド認識を整理し、「王子グループとして何者なのか」を一つの視覚言語で伝えるための再設計でした。
つまり新しいロゴは、企業理念や長期ビジョンを外部に説明するための装飾ではなく、ブランドの中核を担う情報伝達装置として位置づけられています。
新しいブランドマークは、「OJI」というワードマークを中心に据えた構成になっています。一見すると非常にシンプルですが、その背後には明確な設計意図が読み取れます。
特徴的なのは、ロゴの背景に広がる森林と空を想起させるグラフィックです。ここで重要なのは、自然を直接的に描写しすぎていない点です。木や葉といった具体的なモチーフを前面に出すのではなく、色面と階調によって「森の広がり」や「空気感」を抽象的に表現しています。
この抑制された表現によって、ロゴは環境企業らしさを過剰に主張することなく、事業基盤としての森林資源を静かに示しています。
言い換えれば、自然を装飾として扱うのではなく、企業の前提条件として背景に置いているのです。
カラーリングも同様です。複数色を用いながらも、いずれも彩度を抑えたトーンでまとめられており、強い主張よりも奥行きや多様性を感じさせる設計になっています。これにより、紙・素材・エネルギーといった異なる事業領域が、一つの基盤の上に成り立っていることを視覚的に表現しています。
競合他社の多くが、エコロジーやテクノロジーを象徴する記号性の強いロゴを採用する中で、王子ホールディングスのロゴは、あえて記号化を避けています。
その代わりに、「企業名」と「事業の前提となる環境」を重ね合わせることで、独自のポジションを築いている点が、このロゴの大きな特徴です。
新ロゴと併せて掲げられたタグライン「Dedicated to Sustainability」は、王子ホールディングスの思想を端的に表しています。ただし、この言葉がロゴとセットで機能するためには、視覚的な裏付けが不可欠です。
今回のロゴは、サステナビリティを理念として掲げるだけでなく、「その価値観を前提に事業を組み立てていく企業である」という姿勢を示しています。
派手さや瞬間的なインパクトよりも、長期的に使い続けられる安定感が優先されているのは、その覚悟の表れとも言えるでしょう。
また、歴史ある社章やシンボルを完全に切り捨てず、用途に応じて継続使用する判断も、ブランド設計として非常に現実的です。過去を否定するのではなく、積み重ねてきた信頼や技術を尊重した上で、新しいブランドの軸を打ち出す。このバランス感覚は、大企業のロゴリニューアルにおいて重要なポイントです。
結果として、このロゴは「変わったこと」を強調するよりも、「変わらずに守り続けるもの」と「これから変えていくもの」の境界線を丁寧に示しています。
ロゴが語っているのは、派手な未来像ではなく、森林資源とともに歩み続ける企業としての一貫した姿勢です。
王子ホールディングスのロゴリニューアルは、デザインによって企業の思想を誇張するのではなく、整理し、伝達する好例だと言えるでしょう。
そこには、見た目以上に設計された意図と、長期視点でのブランド戦略が確かに存在しています。
※ロゴ画像引用元:https://www.ojiholdings.co.jp/
※本記事はデザインの研究・考察を目的として公開しており、権利を侵害する意図はございません。
ロゴ制作に関するご相談など
お気軽にお問い合わせください。
フォームからのお問い合わせ