ロゴ制作・ロゴデザインを依頼するならsynchlogo(シンクロゴ)
COLUMN
会社ロゴのリニューアルは、新しくロゴを作ることとはまったく別の難しさを伴います。
長年使われてきたロゴには、企業の歴史や社内外の認知が積み重なっています。
それらを引き継ぎながら、何を変え、何を変えないのかを決めるには、見た目以上に慎重な設計が求められます。
本記事では、創業20周年を迎えた「トライポッドワークス株式会社↗」のロゴリニューアル事例をもとに、ロゴリニューアルとはどのような設計プロセスを経て成立するのかを、ヒアリングから設計・デザイン、そしてレギュレーション作成に至るまでの実際の制作プロセスを通して解説します。
この記事は、ロゴを単なる意匠ではなく、企業ブランドを伝える装置として捉えたい方に向けた、実務視点のケーススタディです。
ロゴリニューアルに取り組む企業はもちろん、これから会社ロゴの制作を検討している方にとっても、きっと役立つ内容となっているでしょう。
企業ロゴの刷新は、単なるデザイン変更ではありません。それは、企業がこれまで社会の中で積み重ねてきた認知や信頼を、どのように引き継ぎ、どの方向へ更新していくのかを問う行為です。
見た目を変える以上に、経営やマーケティング、組織全体の判断が問われるため、決して軽い気持ちで進められるものではありません。
このことは、実際のロゴリニューアル事例を見てもよく分かります。
たとえば、クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE↗」のロゴリニューアルでは、事業の拡張によって複数のサービスが生まれる中で、既存ロゴの印象やブランドの統一感に課題が生じていました。
単に「古くなったから変える」のではなく、今の企業像をどのように社会に伝えるべきかという視点から、ロゴ刷新の必要性が検討されています。

また、そのプロジェクトでは、デザインの好みではなく、なぜロゴを変えるのかを社内で説明し、納得してもらうことも重視されました。未来の姿から逆算し、その理由を言語化した資料を用意し、対話を重ねながら合意形成を進めていく──
この事例からは、ロゴ刷新が「デザインを決める作業」ではなく、組織としての意思を揃えるプロジェクトであることが見えてきます。※1
一方で、ロゴ刷新が簡単でない理由は、こうした心理的・組織的な側面だけではありません。
実務の観点から見ても、検討すべき事項は非常に多岐にわたります。
実際のロゴリニューアルの現場では、デザイン制作に入る前段階で、経営層へのインタビューや社員アンケートを通じて、「自社はどのような価値観を大切にしてきたのか」「これからどの方向へ進もうとしているのか」といった認識を丁寧に整理するケースが少なくありません。
それは、ビーワークス↗のロゴリニューアル事例でも見られます。事前整理を行ったうえで、既存ロゴが名刺、Webサイト、営業資料、社内外の各種ツールなど、どの媒体でどのように使われているのかを洗い出し、刷新による影響範囲を把握したうえで設計が進められています。ロゴを変えるという判断が、企業活動全体に波及することを前提とした進め方です。※2

さらに重要なのは、ロゴ完成後の運用までを含めて初めて、ロゴリニューアルが成立するという点です。社内外への発信方法、使い方のルール整備、各媒体での表現統一など、「作って終わり」ではない工程があらかじめ設計されていました。※3
このように、企業ロゴの刷新には、
・既存の認知や信頼を損なわないための配慮
・すべての媒体に展開するための整理と統一
・社内外の関係者と合意を形成し、ブランドの整合性を保つ設計
といった複数の要素が同時に求められます。
だからこそ、企業ロゴの変更は「雰囲気を変えたい」「新しくしたほうが良さそう」といった感覚的な理由だけで決断ができない、難しい判断を要する一大プロジェクトとなるのです。
◆脚注
※1:CAMPFIRE ロゴリニューアル事例(Wantedly掲載インタビュー記事より)↗
※2:ビーワークス ロゴリニューアル事例(同社公式サイト内ケーススタディより)↗
※3:同上。ロゴ完成後の社内外展開・浸透プロセスに関する記述より。
企業ロゴは多くの場合、会社設立と同時に作られ、その後長年使い続けられます。創業当時のロゴは、その会社が歩んできた歴史や価値観を象徴するものであり、世間の認知が固まってしまうと、簡単に変更できない心理的・社会的ハードルが生まれます。これは“ロゴを変えることの難しさ”を物語る事実ですが、同時に、同じロゴをずっと使い続けることだけが正解ではないという視点も重要です。
では、どのようなタイミングでロゴをリニューアルすべきなのでしょうか。synchlogoが解説する「会社ロゴのリニューアル方法|タイミングと成功のポイント↗ 」では、ロゴ刷新が多くの企業で行われている背景として、次のポイントを挙げています。
こちらの説明は、単にロゴを変えるべき状況を挙げているだけでなく、会社としての変化や意思決定のタイミングとロゴ刷新を結びつけて整理している点が重要です。ロゴの変更は形式的なものではなく、企業の方向性や価値を再定義し、外部に伝えるための戦略的な判断なのです。
ここまでの解説で分かるように、企業がロゴを変更するという行為は、単なるデザイン刷新ではありません。それは、「自分たちは、ここから次のフェーズに進む」という意思を、社会に対して明確に示す行為なのです。
多くの企業は、創業時に掲げた理念や価値観をもとにロゴを作成します。しかし、事業を継続する中で、市場環境や顧客ニーズ、提供する価値は少しずつ変化していきます。創業当初に定めたコンセプト自体が間違っているわけではなくても、その表現方法が現在の企業実態とズレてしまうことは珍しくありません。
このとき重要なのは、「昔の考えを捨てる」ことではなく、これまで大切にしてきた考えを、今の時代に合った形で再定義することです。
ロゴは、その再定義された企業像を最も端的に、かつ一貫して伝えることができる視覚的なシンボルです。Webサイト、名刺、広告、採用ページなど、あらゆる接点で同じロゴが使われるからこそ、ロゴの変更は企業の変化を一瞬で伝える強いメッセージになります。
このように、会社ロゴの変更とは、「企業として何を引き継ぎ、何を変えたのか」を社会に宣言する行為だと言えます。
そして一般的に、こうした一連の考え方や取り組みを「リブランディング」と呼びます。
ここまで見てきたように、ロゴ刷新は
・手間やリスクを伴い
・明確な節目や変化があり
・企業としての意思が伴って初めて行われるもの
です。
では実際に、こうした前提を理解したうえでロゴリニューアルを検討すると、企業はどのような壁に直面するのでしょうか。
次章では、会社ロゴのリニューアルを進める際に多くの企業が共通して抱える「3つの課題」について整理していきたいと思います。
会社ロゴのリニューアルは、「変えるべき理由」が明確であっても、すぐにスムーズに進むものではありません。いざ具体的な検討に入ると、多くの企業が共通して、ある種の“壁”に突き当たります。
それは、デザインの良し悪し以前の問題です。ロゴをどう見せるかではなく、何を引き継ぎ、何を変えるのかをどう判断するか。そして、その判断をどのような形でロゴとして表現すれば、企業の変化が正しく伝わるのか。ここで迷いが生じるケースは少なくありません。
実際、ロゴリニューアルが難航する理由の多くは、「センスが合わない」「案がしっくりこない」といった感覚的な問題ではなく、判断の前提が整理されていないことにあります。
この章では、会社ロゴのリニューアルを進める際に、多くの企業が必ず直面する3つの課題を整理していきます。これらは、後ほど紹介するトライポッドワークス株式会社のロゴリニューアル事例においても、実際に検討と判断の軸となったポイントです。
まずは、ロゴリニューアルの現場で起こりがちな「つまずき」を、構造的に見ていきましょう。
会社ロゴのリニューアルを検討し始めたとき、多くの企業が最初につまずくのが、「何を変えるべきで、何を変えないべきなのか」が整理できない、という問題です。
ロゴを刷新する以上、「どこかを変えなければならない」という意識は誰しも持っています。しかし同時に、これまで積み重ねてきた歴史や認知をすべて手放すわけにもいきません。この相反する前提のあいだで、判断が宙に浮いてしまうケースは非常に多く見られます。
結果として、
・変えるべき理由はあるが、どこまで踏み込んでよいのか分からない
・既存ロゴへの愛着や評価が強く、判断が感情に引っ張られる
・「一部だけ変える」「少しだけ今風にする」といった曖昧な結論に落ち着く
といった状態に陥りがちです。
この段階でよく起こるのが、「デザインを見ながら考えればいい」という判断です。しかし、変える・変えないの整理が曖昧なままデザイン検討に入ると、評価軸が定まらず、意見がぶれ続けます。その結果、ロゴ案そのものではなく、判断基準が迷走してしまうのです。
本来、ロゴリニューアルにおいて最初に行うべきなのは、形や色の検討ではありません。企業として、これまで大切にしてきたものは何か、今後どこを変えようとしているのか、その変化はロゴにどこまで反映させるべきなのかといった点を、論理的に切り分ける作業です。
この整理が不十分なまま進めてしまうと、「結局、何を目的にロゴを変えたのか分からない」「変えたはずなのに、変わった印象が伝わらない」という結果につながりやすくなります。
会社ロゴが長年使われてきた背景には、必ず何らかの理由があります。創業時の想いや事業の出発点、当時の環境や価値観などが、意識的あるいは無意識のうちに、ロゴの形や構成に反映されているケースは少なくありません。
しかし、ロゴリニューアルを検討する段階になると、こうした過去の意味や背景が十分に共有されていないことが、多くの企業で明らかになります。ロゴがなぜその形になったのか、どんな意図が込められていたのかを、社内の誰も正確に説明できない──そうした状況は決して珍しいものではありません。
このときに起こりやすいのが、「古いから変える」「今の時代に合っていないから刷新する」といった、表面的な理由付けです。確かに、時代性の変化や表現の古さは無視できない要素ですが、過去の意味を理解しないまま切り捨ててしまうと、ロゴが本来持っていた価値まで失われてしまう恐れがあります。
一方で、過去のロゴに込められた意味を言語化できないままだと、「長年使ってきたものだから」「変える理由が説明できないから」といった理由で、変化そのものを避けてしまうこともあります。この場合も、判断は停滞し、ロゴリニューアルの方向性は定まりません。
つまり問題は、「過去を残すか、捨てるか」という二択ではないということです。
重要なのは、過去のロゴに何が込められていたのかを読み解いたうえで、どの価値を引き継ぎ、どこを更新するのかを判断することにあります。
この整理が不十分なまま進めてしまうと、リニューアル後のロゴは、
・なぜその形になったのか分からない
・企業らしさが薄れた印象を与える
・社内外から「なぜ変えたのか説明できない」
といった状態に陥りやすくなります。
ロゴリニューアルに取り組む企業の多くが、最終的に直面するのが「結局、中途半端な変更にしかならなかった」という状態です。
前段で整理したように、「何を変え、何を変えないのか」を明確にし、過去のロゴに込められた意味や価値を読み解いたとしても、それをどの程度の変化としてロゴに反映させるのかという判断は、決して簡単ではありません。
その結果、
・認知を崩すのが怖くて、大きく踏み込めない
・変えた理由は説明できるが、見た目の変化が弱い
・社内では「変えたつもり」でも、外部にはほとんど伝わらない
といった状況に陥りやすくなります。
このとき起きているのは、「変えるか、変えないか」の問題ではありません。変化の必要性は理解しているのに、その変化を“どの強さで見せるか”を決めきれないという状態です。結果として、旧ロゴに過度に引きずられ、差分だけを加えたような、判断の痕跡が曖昧なロゴになってしまいます。
一方で、「中途半端では意味がない」と考え、思い切った変更を選ぼうとすると、今度は企業らしさや継続性を失う不安が立ちはだかります。この二つの不安のあいだで揺れ続ける限り、判断は常にブレーキがかかり、結果として“ちょうどいい中途半端さ”に落ち着いてしまうのです。
つまり、ロゴリニューアルが中途半端になってしまう原因は、デザインの問題ではなく、変化をどこまで可視化するかという判断が設計されていないことにあります。感覚や勢いだけでは、この壁を越えることはできません。
この課題を乗り越えるためには、変化を意図的に設計し、段階的に検証しながら形にしていく必要があります。しかし実際には、そのための具体的な基準や検証プロセスが用意されないまま、デザイン作業に入ってしまうケースが少なくありません。
こうしてロゴリニューアルは、「変える理由はあるのに、変化としては弱い」という矛盾を抱えたまま進んでしまいがちなのです。
ここで、今回のロゴリニューアル事例として取り上げるトライポッドワークス株式会社の概要と、なぜ同社のロゴ刷新を本記事の題材として取り上げたのか、その理由を整理しておきます。

トライポッドワークス株式会社は、自らを「IoT Solution Company」と位置づけ、ITと“モノ”を掛け合わせたソリューションによって、企業や社会の「未来」に向けた様々な支援を行ってきた企業です。車両、建設現場、オフィスといったリアルな現場を対象に、広く横断できる技術力を強みとして事業を展開しています。またそれは単なるシステム提供にとどまらず、現場の課題を起点に技術を実装し、価値として定着させる点も同社の特徴です。
社名である「トライポッドワークス」には、三脚(トライポッド)が三点で支え合うように、複数の要素を掛け合わせることで安定した価値を生み出すという創業時の思想が込められています。ソフトウェア、ハードウェア、ネットワークという三つの技術領域を軸に事業を組み立ててきた同社にとって、この考え方は単なる名称ではなく、事業の前提となる価値観そのものです。
そして同社が掲げるミッションは、「イノベーションで『未来』を『現実』にすること」。
この言葉が示す通り、トライポッドワークスは変化や革新を理念として語るだけでなく、それを具体的なプロダクトやサービスとして社会に実装することを重視してきました。
こうした企業がロゴを刷新する場合、その変化は単なるデザイン更新としては受け取られません。外部からは、「そのロゴに、どのような革新性が表れているのか」「企業として何が変わり、何が変わっていないのか」が、自然と読み取られる対象になります。とりわけ、イノベーションを価値として掲げる企業ほど、ロゴという象徴における判断の一つひとつが厳しく見られるであろうと考えたのです。
トライポッドワークス株式会社がロゴリニューアルを決断したのは、創業20周年という明確な節目でした。新ロゴ完成の公式発表↗ では、これまで積み重ねてきた歴史を踏襲しつつ、次の10年・20年へ進む新たなフェーズへの決意を込めた刷新であることが語られています。また、従来ロゴに含まれていた象徴的な要素についても、単に残すのではなく、意味を再定義したうえで進化させたことが示されました。
こうした背景を踏まえると、トライポッドワークスのロゴリニューアルは、ロゴ刷新における判断の難しさと、その乗り越え方を同時に読み取ることができる、非常に示唆に富む事例だと言えるでしょう。長年積み重ねてきた認知や価値を背負いながら、なおかつ革新性を語る企業として、どのような形で変化を示すのか。その問いが、このロゴリニューアルには色濃く反映されており、本記事の題材に最も相応しいと考えたのです。
ロゴリニューアルは、企業にとって決して小さな出来事ではありません。
長年使い続けてきたロゴを刷新するという行為は、見た目の更新にとどまらず、企業が自らの過去と向き合い、これからの姿をどう描くのかを社会に示す「大きな変化」を伴います。
トライポッドワークス株式会社のロゴリニューアルにおいても、デザインの検討に入る前に、まず行われたのはヒアリングでした。その目的は、「どんなロゴにするか」を決めることではなく、ロゴリニューアルという変化そのものを、会社としてどう捉えているのかを丁寧に確認することにありました。
創業以来、何を大切にしてきたのか。そして、これから先の時間を見据えたとき、どのような変化を受け入れ、どのような姿勢を保ち続けたいのか。
この章では、実際のヒアリング内容をもとに、トライポッドワークスがロゴリニューアルという「大きな変化」をどのように捉え、その前提としてどのような価値や思想を共有していたのかを整理していきます。そして、ここで確認された考え方こそが、後のロゴデザインにおけるすべての判断の土台となっていったのです。
ヒアリングでまずはじめに語られたのは、「3」という数字に対する強いこだわりでした。
社名である「Tripod(三脚)」に示され、また20年使い続けたロゴのモチーフである「3枚の羽根」にも表れているように、トライポッドワークスにとって「3」は象徴的な意味を持つ要素です。
代表的なのが、ソフトウェア・ハードウェア・ネットワークという三つの技術領域です。これらを個別の専門分野として切り分けるのではなく、状況に応じて行き来しながら最適な組み合わせを見つけていく。この姿勢は、同社の事業内容を見ても一貫しており、創業当初から前提として共有されてきた考え方だと整理されました。また、「3」という数字はこれら技術領域に限られたものではありません。グローバル・日本・地方という三つの視点、あるいは自社・パートナー・ユーザーという三者の関係性など、複数の軸を同時に捉えるための枠組みとしても用いられています。いずれも、一つの立場や視点に固定するのではなく、複数の軸を往復しながら判断していくための考え方として捉えることができました。
さらにこの構造的な思考と重なるのが、公式サイトにも掲げられている「イノベーションで『未来』を『現実』にする」というミッションです。
ヒアリングにおいては、この言葉は理念的なスローガンとして強調されるというよりも、日々の意思決定や事業の進め方において、自然に共有されている前提として語られていました。
まだ確定していない未来に対して、単一の正解を即座に定めるのではなく、「3」のこだわりの中に込められた、技術領域・視点・関係性といった複数の軸を行き来しながら、現実的に取り得る判断を積み重ねていく。そのプロセスを通じて未来を現実へと近づけていく考え方が、同社における「イノベーション」の実態だったのです。
改めて整理すると、「複数の軸を行き来しながら未来を見据えて判断する姿勢」こそが、トライポッドワークスにおける「変えてはいけない価値」であると、ヒアリングを通じて認識することができました。そしてそれは、ロゴがリニューアルしても変化することのない、「継承」する部分だということも確認できた瞬間だったのです。
ヒアリングを通じてさらに見えてきたのは、トライポッドワークスの事業が、目の前にある課題を一つずつ解決していく、いわゆる「課題解決型」とは異なる思想のもとで行われているという点でした。
同社が重視しているのは、すでに起きている問題への対処そのものではなく、これから起こりうる変化に対して、どのような姿勢で向き合うかという考え方です。
公式サイトの代表メッセージ↗にも、「“ちょっと先の未来”に求められることを見越し、人間力とテクノロジーで新しくて面白く、かつ世の中に役立つITサービスを生み出していきたい」という言葉が掲げられています。ヒアリングの中でも、このフレーズは理念として掲げられているというより、事業を行う上でのポリシーとして、自然に共有されているものとして受け取ることができました。
また何より重要なのは、「未来」を大きな理想として語ることではない、ということです。
事業のひとつであるPoC(概念実証/Proof of Concept)における協業では、完成形や正解を先に定めるのではなく、まだ確定していない未来を、仮説として扱いながら判断を積み重ねていくプロセスを大事にしながら行っています。こうした取り組みからも、まだ形になっていない変化に対して、どの価値を軸にし、どの方向に進むのかを考え続けるという姿勢自体に、トライポッドワークスらしさを感じ取ることができたのです。
この考え方に立つと、事業は「課題が発生したから解決する」という受動的なものではなくなります。
むしろ、変化を前提とした状況の中で、何を大切にし続け、どこを更新していくのかを能動的に選び取っているのだと捉えることができ、その意味で、「未来対応型」という表現は、同社の事業思想を端的に表しているということができます。
そしてロゴリニューアルにおいても、この思想は重要な背景になります。
過去のロゴを守るか、大きく変えるかといった表層的な選択ではなく、「これからの企業像をどう描くのか」という問いを起点に、ロゴの役割を捉え直していく。
ここでは、この「未来対応型」という事業思想の象徴化が、ロゴリニューアルにおけるひとつのミッションであると理解できたのでした。
ヒアリングの中で印象的だったのは、トライポッドワークスが20周年という節目を、「長く続いた証」ではなく、「次のフェーズに進むための区切り」として捉えていた点でした。
創業から20年という時間を経て、ようやく基盤が整い、これまで積み重ねてきた価値を“広げていく段階”に入った──そうした認識が、ヒアリングを通じて明確になっていきました。
ここまで20年のトライポッドワークスは、様々なプロダクトやサービスを生み出し、提供し続け、信頼と実績を積み上げていく「創業期」のフェーズでした。しかし、事業領域や関わるパートナーが広がる中で、「個別の仕事を成立させる会社」としてだけでなく、「価値の循環を生み出し高めていく存在」としての役割を担う必要性も次第に求められるようになってきました。
その背景として結びついたのが、仙台発ベンチャーとしての立ち位置です。
仙台というローカルな環境には、自治体や大学との距離の近さ、意思決定のスピード、現場との接続のしやすさといった強みがあり、こちらの記事↗でもそうしたローカルの強みを生かした事業を創出していくことが今後ますます重要になると語られています。
また、ヒアリングでは、人材の話題も繰り返し挙がりました。
Iターン・Uターン・Jターンといった形で地方に戻ってくる、あるいは地方で挑戦したい人材にとって、「最先端の仕事ができる受け皿」をつくること。その役割を担うこと自体が、これからのトライポッドワークスに求められている価値だという認識です。
こうした話を総合すると、20周年というタイミングについて、創業期に築いてきた価値を土台に、より大きな役割を担っていく「発展期」に向けての転換点として位置付けていることがよく分かりました。そして、次の10年、20年に向けたその「転換」を、社内外へと意思表示するためのシンボルを作ることこそ、ロゴリニューアルの最大の目的だったのだと感じ取ることができました。
ロゴリニューアルは、新しくロゴを作ることとは、設計の前提や条件が大きく異なります。白紙から発想できる新規ロゴ制作に対し、ロゴリニューアルでは、既存ロゴが持つ意味や認知、そして積み重ねられてきた歴史を引き受けたうえで、次の形を考えなければなりません。
そのため、ロゴリニューアルの設計プロセスは、単に工程が増えるという話ではなく、判断の考え方そのものが異なります。「どこを変えるか」以上に、「何を前提・条件として扱うのか」「何を引き継ぎ、どう更新するのか」といった視点が、より強く求められるのです。
この章では、引き続きトライポッドワークスのロゴリニューアル事例をもとに、ロゴリニューアルならではの設計プロセスにおける特徴的なポイントを整理していきます。
時間の流れに沿って工程を追うのではなく、設計上の“特異点”に焦点を当てることで、新規ロゴ制作との違いがより明確に見えてくるはずです。
ロゴリニューアルにおける設計は、新規ロゴ制作とは出発点が大きく異なります。
新しくロゴを作る場合は、企業の理念や方向性を手がかりに、比較的自由に形を検討していくことができます。しかしロゴリニューアルでは、すでに存在しているロゴや、そこに長年込められてきた意味を無視して描き始めることはできません。
トライポッドワークスのロゴリニューアルにおいても、設計は「白紙」からではありませんでした。
前章で整理した通り、ヒアリングの段階で明確になっていたのが、「3」という数字に対する強いこだわりです。この価値は単なるコンセプトではなく、シンボルマークとして明確に可視化したいという、はっきりとした前提条件として共有されていました。
そのため、デザイン検討は最初から一定の制約を背負うことになります。たとえば、マークを3つの図形で構成できないか、3本の線を持たせることはできないか、三角形という構造を使えないか──など。こうした発想は、制作の途中で思いついたアイデアではなく、設計の出発点として避けて通れない検討項目でした。
実際の制作初期では、この「3」という前提条件を起点に、複数の完成形レベルの素案が検討されています。下記の資料は、その段階で作成された最初の3案です。アプローチはそれぞれ異なりますが、いずれも「3」を後付けのモチーフとして扱うのではなく、造形の骨格そのものに組み込んでいる点が共通しています。



そしてこれらの案は、「どれが正解か」を選ぶためのものではありません。限られた前提条件の中で、どのような構造や考え方が成立し得るのかを探るための検証材料として作られたものでした。なぜならロゴリニューアルでは、自由に発想を広げてから「アレは無し」「コレは良い」と条件を絞るのではなく、条件を起点にしながら表現の可能性を出し切るという逆向きの設計が求められるからです。
さらに、このような状況では、「なんとなく良さそう」「雰囲気が合っている」といった感覚的な判断も通用しません。なぜ「3つの要素」なのか、なぜこの構造なのか、なぜこの形が企業の価値を表しているのか。既存ロゴとの関係性も含め、一つひとつの選択に理由を持たせることが前提になります。
ロゴリニューアルが難しいと言われる理由は、単にデザインの自由度が低いからではありません。
すでに存在している価値や象徴を背負いながら、「変えるべき部分」と「引き継ぐべき部分」を同時に成立させなければならない。その条件下で設計を進めること自体が、ロゴリニューアル特有の難しさなのです。
ロゴリニューアルの検討において、新規ロゴ制作と大きく異なるのが、「既存ロゴとの比較」を前提に議論が進む点です。
新しくロゴを作る場合であれば、ラフスケッチや簡易的な案を並べながら、「方向性としてどれがよさそうか」を探っていくことができます。しかし、ロゴリニューアルではこの進め方が成立しません。
なぜなら、比較の対象が「新しく作ったもの同士」だけでなく、すでに「長年使われてきたロゴ」も含まれるからです。旧ロゴと並べて見たときに、何が変わり、何が引き継がれているのか。どこに違和感があり、どこに納得感があるのか。こうした点を正確に判断するためには、比較対象となるロゴ案が、旧ロゴと同じ土俵に立っている必要があります。
そのため、ラフ段階の曖昧な形では、検証そのものが成り立ちません。線の太さや形の精度、余白の取り方、全体のバランスといった要素は、完成度が一定以上でなければ評価できず、「まだ途中だから」という理由で判断を先送りにしてしまいます。結果として、どこが問題で、どこが可能性なのかが見えにくくなってしまうのです。

この考え方を象徴しているのが、初期に検討された「卵」をモチーフにした案の扱いでした。
「3」の要素を表現するという前提条件のもとで、卵の形状や構成にはいくつもの可能性が考えられましたが、それらはスケッチレベルで議論されることはほとんどありませんでした。下記に示す通り、いずれの案もあくまで完成形として成立するレベルまで作り込み、それを議論の材料にするという進め方が取られたのです。

これは、「きれいに見せるため」ではありません。旧ロゴと並べて初めて見えてくる違和感や、逆に「これは引き継げそうだ」と感じられる要素を、感覚ではなく判断として捉えるためです。完成度を揃えることで、初めてロゴ同士を同じ目線で比較し、議論することが可能になります。
ロゴリニューアルにおいて、最初から完成度が求められるのは、効率の問題ではありません。
既存ロゴとの関係性を正しく読み取り、「変えるべき点」と「活かすべき点」を見極めるために不可欠な、設計プロセス上の理由なのです。
一般的なロゴ制作では、複数案を提示したうえで「どの方向性が最もふさわしいか」を選び取る、という進め方が取られることが多くあります。
それぞれの案は異なる方向性を示しており、最終的には一つの正解に絞り込んでいく。このプロセスは、新規ロゴ制作においてはごく自然なものです。
一方で、ロゴリニューアルでは前提が大きく異なります。既存ロゴに込められた意味や、長年積み重ねられてきた認知がある以上、新しいロゴ案はいずれも、それらを前提としたうえで設計されています。つまり、どの案も既存の価値と無関係に作られたものではなく、それぞれが異なる角度から「引き継ぎ方」を試みた結果であり、どの案にも正解が潜んでいる訳です。
だからこそ、ロゴリニューアルにおける検討は、「正解を一つ選ぶ」という発想では成立しません。実際の議論においても、焦点は「どの案が良いか」ではなく、「それぞれの案が何を語っているのか」へと移っていきました。
形そのものの良し悪しを判断するのではなく、その案から読み取れる考え方や視点、構造上の特徴に注目する。たとえば、先ほど紹介した「卵」のアイデアには、これから生まれていく可能性や発展性といった未来志向の要素が含まれていました。一方で、旧ロゴにあった「羽根」のモチーフには、これまで積み重ねてきた歴史や、トライポッドワークスらしさを表す象徴が存在していました。
重要だったのは、どちらかを選び取ることではありません。それぞれの案に含まれている意味や役割を整理し、「どの要素を引き継ぎ、どの要素を更新すべきか」を見極めたうえで、それらを組み合わせ、再構成していくことでした。多くの案を行き来しながら議論を重ねる中で生まれた気づきやアイデアをつなぎ合わせることで、初めて解が見えてきたのです。

こうして導かれた、完成ロゴの源となる上記検討案は、単に新しいロゴでも、単なる踏襲でもない形でした。新規のアイデアと、旧ロゴにあった象徴的要素を再構成することで、「トライポッドワークスらしさ」を改めて設計し直すことに成功したデザインだと言えるでしょう。
ロゴリニューアルにおいて重要なのは、正解を選び取ることではありません。複数の案に含まれているヒントを丁寧に読み解き、企業の価値として再編成すること。このプロセスこそが、ロゴリニューアルならではの設計の要点なのです。
このロゴリニューアルでは、新旧のアイデアを再構成することに留まりませんでした。最終段階で意識されたのは、むしろ要素を増やすのではなく、徹底的に削ぎ落としながら「シンプルさを洗練する」ことでした。


形を単純化することで意味が減るのではなく、解釈の余地を広げる。その発想のもと、「卵」という新規のアイデアと、「羽根」という既存ロゴの象徴的要素を再構成することで、見る人の立場や時間軸によって、複数のイメージや意味が自然に立ち上がるデザインへと昇華していきました。
そして完成したロゴのシンボルマークは、次のような読み取りが行われることを期待したデザインに仕上がりました。

①「3枚の羽根」のイメージ
従来のトライポッドワークスのロゴにあった「3枚の羽根」を、バラバラにデザインするのではなく、一枚の「翼」の形に見えるようデザインし、「凝縮」「結集」といった意味が感じられるようにしています。「翼」は、トライポッドワークスそのものにも、一体となった自社・パートナー・ユーザーにも、グローバル・日本・地方様々なところへと羽ばたくという意味としても読み取れるようになっています。
②「卵」のイメージ
「卵」のイメージには、「源」や「種」といった「はじまり」に関する意味、そして「生まれる」「進化する」という次世代へと続く意味が備わっており、トライポッドワークスがこれからも「常に新しく進化して行く」「新しいモノ・ヒトを生み出して行く」ことを表しています。またその卵を、殻が割れるさまを表したデザインとすることで、トライポッドワークスが、まさに「創業期」から「発展期」へと「一皮むける」瞬間を迎えたというメッセージもシンボル化したのです。
③「渦」のイメージ
全体のフォルムは、「渦」の動きがあるイメージとしても感じ取れるようにしています。これは、単独で成長するのではなく、関係者や地域、社会を巻き込み、連動しながら共に上昇していくというトライポッドワークスの「姿勢」を表したものになっています。またその渦の形も、上方へ向かうにつれ、広がる形となっており、発展しながら未来へと進む、といった意味も備えたのです。
このように、多面的なイメージ構造、多層的な意味構造を持たせると、時代や事業環境が変化しても、ロゴが一義的な解釈に縛られることなく、その時々の文脈に応じて受け取られ続ける「余地」が生まれてきます。時代や文脈が変わっても、その都度「今のトライポッドワークスらしさ」として解釈されることが期待でき、長く使い続けることができるデザインへと昇華するのです。
この考え方は、シンボルマークだけでなく、ロゴタイプにも反映されています。
一過性の流行に寄せるのではなく、「今の時代に無理がなく、次の時代にも違和感が残りにくい」字体をデザインし、企業としての落ち着きと先進性のバランスを取ることが重視されました。


ブランドカラーについても同様です。
旧ロゴから使い続けていたブランドカラーの赤を、現在の視認性や使いやすさだけでなく、デジタルベース(インターネット・SNS用)、アナログベース(印刷用)で再度見直し、次の10年、20年を見据えたときにも企業の顔として機能し続けるかどうか検討を行いました。


結果として完成したロゴは、「新しくなった」ことを強く主張するものではありません。
むしろ、これまで積み重ねてきた価値を内包したまま、次の時代でも柔軟に対応できる形へと、静かに更新されたデザインだといえるでしょう。

ロゴリニューアルにおいて目指されたのは、説明し続けなければならないデザインではなく、時間の経過とともに意味が育っていくデザインでした。
その「柔軟性あるデザイン」こそが、この設計プロセスの最終的な到達点だったのです。
ロゴリニューアルの設計プロセスを振り返ると、そこにあったのは、派手な発想や大胆な変化ではありませんでした。
むしろ一貫して求められていたのは、既存の価値を正しく読み取り、そのうえで一つひとつ判断を積み重ねていく慎重さでした。
白紙から描けないという制約。既存ロゴとの比較を前提とした検証。正解を選ぶのではなく、複数の案に含まれた要素を読み解き、再構成する思考。そして、時代の変化に合わせて解釈され続ける柔軟性を持たせるという設計判断。
これらはいずれも、ロゴリニューアル特有の難しさであると同時に、ロゴを「企業の象徴」として長く機能させるために欠かせない要素でもあります。
ロゴリニューアルとは、見た目を変える作業ではありません。企業がこれまで築いてきた価値を引き受けながら、これから先の時間に耐えうる形へと再設計していくプロセスです。そしてその成否を分けるのは、奇抜なアイデアではなく、何を前提とし、どの判断を積み重ねていくかという設計の質にほかなりません。
ロゴリニューアルは、ロゴが完成した瞬間に終わるプロジェクトではありません。
むしろ、そのロゴが完成した“その後”に、どのように理解され、使われ、語られていくかによって、リニューアルの成否が左右されることもあります。
特に、長年使われてきたロゴを刷新する場合、「なぜ変えたのか」「何を引き継ぎ、何を更新したのか」といった背景が共有されなければ、ロゴは単なる見た目の変更として受け取られてしまいます。そして結果として、企業が本来伝えたかった意図や判断は、時間とともに薄れていくでしょう。
この章では、そうした事態を防ぐために、トライポッドワークスのロゴリニューアルにおいてレギュレーションがどのような役割を担っていたのかを整理します。それは単なる使用マニュアルではなく、ロゴリニューアルという「大きな変化」を、企業の中に定着させていくための重要な手段だったのです。
ロゴリニューアルにおいて、最も起こりやすい問題のひとつが、「なぜロゴが変わったのか」が十分に共有されないまま、見た目だけが先行してしまうことです。
新しいロゴが完成すると、社内外ではまず「変わった」「新しくなった」という事実だけが認識されます。しかしその背後にある、
・どのような課題意識があったのか
・何を引き継ぎ、何を更新する判断をしたのか
・どんな企業像を見据えて形が選ばれたのか
といったプロセスや思考は、意識的に残さなければ、時間とともに失われていきます。
特にロゴリニューアルの場合、これは新規ロゴ制作以上に起こりやすい現象です。
なぜなら、すでに長年使われてきたロゴが存在し、社内外に一定の認知や文脈が形成されているからです。リニューアル後のロゴは、その文脈の上に置かれる存在であるにもかかわらず、「新しいロゴ」という一点だけで理解されてしまうと、過去との連続性や判断の必然性が見えなくなってしまいます。
その結果、「なぜこの形なのか分からない」「前のロゴの方が良かったのではないか」といった声が生まれたり、使い手ごとにロゴの解釈がばらついたりすることも少なくありません。これはデザインの良し悪しの問題ではなく、変化の背景が共有されていないことによる情報不足が原因です。
ロゴリニューアルは、単に見た目を更新する行為ではありません。
企業がこれまで積み重ねてきた価値をどう捉え直し、次のフェーズにどう進もうとしているのか──その意思を形にする行為です。にもかかわらず、その「理由」や「考え方」が共有されないままでは、ロゴは単なる意匠変更として消費されてしまいます。
だからこそ、ロゴリニューアルにおいては、「どう変わったか」以上に、「なぜ変えたのか」をどう残し、どう伝えていくかが重要になります。
この課題に正面から向き合うための手段としてあるのがレギュレーション資料なのです。
ここでいう「レギュレーション」とは、ロゴの色や余白、配置ルールなどを定めた、いわゆるロゴの使用ルール集のことを指します。一般的には、印刷物やWeb、看板などでロゴを正しく使うためのマニュアルとして位置づけられることが多く、一見すると、デザインに詳しくない人向けの実務資料という印象を持たれがちです。


しかし、ロゴリニューアルにおいて作成されるレギュレーションは、単なる「使用上の注意書き」にとどまりません。特に今回のトライポッドワークスのように、ロゴの刷新にあたって「何を引き継ぎ、何を更新したのか」が丁寧に整理されたケースでは、レギュレーションは、その判断結果を社内外に共有するための重要な資料として機能します。
下記に示す実際のレギュレーション資料を見てみると、そこにはロゴの使用条件や禁止事項だけでなく、シンボルマークに込められた考え方や、形の読み取り方についても簡潔に言語化されています。
羽根・卵・渦といった多面的なイメージがどのように重なり合って構成されているのか、なぜこの形に整理されたのかなど。
そうした背景が、必要最小限の言葉で整理されている点が特徴です。

これは、単なる説明書配布というよりも、ロゴを扱うすべての人が、同じ理解を共有するための取り組みだと捉えることができます。誰かが独自の解釈でロゴのことを説明したり、意味を誤って伝えてしまったりしないように、正しくロゴリニューアルの意図を理解する。その役割を担っているのが、レギュレーション資料なのです。
つまり、ロゴリニューアル時に作成されるレギュレーションとは、ロゴの使い方にルールを設けるための資料であると同時に、ロゴリニューアルによって確認された価値や判断を、日常の運用に落とし込むためのツールでもあると言えるでしょう。
ロゴが完成した瞬間だけでなく、その後何年にもわたって使われ続けることを前提としたとき、レギュレーションは、ロゴの意味と印象を安定させるために欠かせない存在となるのです。
ロゴを長く使い続けるために必要なのは、流行に乗ったデザインでも、誰もが一目で分かる分かりやすさでもありません。ましてや、「完璧な正解」を最初から当てにいくことでもないのです。
本記事で見てきたトライポッドワークスのロゴリニューアルプロセスは、そのことを非常に分かりやすく示しています。白紙から描けないという前提、完成度を揃えた比較検証、正解を選ばず要素を横断して読み解く姿勢、そして意味を固定しない柔軟な造形。これらはいずれも、デザインを難しくするための工程ではありませんでした。
目的は一貫しています。
時間が経っても、解釈が古くならないロゴを成立させること。
そして、そのロゴを企業自身が理解し、納得したうえで使い続けられる状態をつくることです。
そうして作られたロゴは、完成した瞬間がゴールではありません。むしろ、その日から始まる日常の中で、名刺やWeb、資料、プロダクト、説明の言葉など、あらゆる場面で繰り返し使われていきます。その過程で、意味が誤解されたり、使い方が崩れたり、解釈がバラバラになった瞬間から、ロゴは少しずつ消耗していきます。
だからこそ、ロゴリニューアルにおいて本当に重要なのは、「どう変えたか」だけではありません。なぜその形になったのかを、企業自身が理解し続けられること。そして、その理解を社内外に共有できる状態をつくることです。レギュレーション資料が果たしている役割も、まさにそこにあります。単なる使用ルール集ではなく、ロゴリニューアルという「大きな変化」の中で確認された価値や判断を、日常の運用に落とし込むための装置。誰が見ても、同じ前提に立ってロゴを扱えるようにするための共通言語です。
今回のロゴリニューアルは、「新しく見せる」ことだけを目的にしたプロジェクトではありませんでした。
創業期から積み重ねてきた価値を見つめ直し、それを次のフェーズへとつなげるための再設計です。
その結果として生まれたロゴは、強く主張するデザインではなく、時間の経過とともに意味が育ち、文脈に応じて解釈され続ける余地を持った存在となりました。
ロゴを長く使い続けるために本当に必要なのは、「変えない勇気」と「変える覚悟」を同時に引き受けることです。そして、その判断を感覚のままにせず、言葉と構造として残し、共有できる状態をつくることにあります。
レギュレーションは、そのための単なる補助資料ではありません。ロゴリニューアルという「大きな変化」を、企業の理解として定着させ、日常の運用へとつなげていくための基盤です。
そしてロゴリニューアルとは、単なる見た目の刷新ではなく、企業がこれまで歩んできた時間と、これから向かう未来を、どのように接続し続けるかを設計する行為そのものなのです。
この事例が、ロゴリニューアルを検討している企業にとって、「変えること」以上に「どう考え、どう使い続けるか」を見直すきっかけになれば幸いです。
ロゴ制作に関するご相談など
お気軽にお問い合わせください。
フォームからのお問い合わせ