
ロゴ制作・ロゴデザインを依頼するならsynchlogo(シンクロゴ)
COLUMN
会社やお店、サービスなどを立ち上げた時、その事業を速やかに軌道に乗せるには最初にある程度のまとまったお金を投資する必要があります。しかしできるだけリスクは背負わなくて良いよう、誰しもその額は必要最小限したいものですよね。そんな中頭を悩ませるのは、事業の「顔」となるロゴづくり。事業を進めるのに絶対必要なものではないが、かと言って作っていないとサマにならない・・・。ロゴとはそういう位置付けのものではないかと思います。
最近では、クラウドソーシングやスキルマーケットの中を探せば、数千円出せば駆け出しのデザイナーにロゴを作ってもらうことも可能です。しかし数千円程度とは言えども、希望通りのデザインが出来上がらなければそのお金は無駄になってしまいます。
思い通りのロゴが手に入らないのにお金を払わなければならない・・・。
そうなるのだけは避けたいものですよね。
そんな時に是非利用してもらいたいのが、ロゴを入手する前に無料でデザインが事前に確認できるサービスです。ロゴを手に入れるために必要な費用を払うかどうかは、そのロゴデザインの出来を確認してから決めて良いという、利用者にとってありがたい仕組みになっています。
現在そのサービスは、オンラインにて3つの形態で様々なところが運営・提供しています。1つ目は、サービスの所属デザイナーに無料でロゴデザインを提案してもらい、採用の時だけ料金が発生するという「無料提案型」のロゴデザインサービス。2つ目は、既に完成しストックしてあるロゴを、利用者は見てから購入するという「ストックロゴ型」のロゴデザインサービス。3つ目は、AI技術などでサポートしてもらいながら、ブラウザ上にて利用者自らの力でロゴを作り、必要に応じて費用を払い完成データを入手する「ロゴメーカー型」のロゴデザインサービスです。
不採用なら0円で済むロゴデザインサービス。
お金が無駄ならず、かつ確実に希望のデザインのロゴを手に入れることができるという、初めてロゴづくりを取り組む際には嬉しいサービス。
このコラムではそのサービスの内容について詳しく紹介してまいります。
【このコラムの執筆者紹介】
西村渉(にしむら・わたる)|当サービスsynchlogoの運営責任者兼チーフデザイナー。ロゴデザイン事務所「nishimuraLOGO.design」主宰。ストックロゴ型ロゴデザインサービス「ロゴマーケット」参画。
ロゴデザインのキャリアはクラウドソーシングと某無料提案型ロゴデザインサービスでの活動からスタート。その後様々な企業・個人からのロゴ作成業務を請け負う傍ら、自身でもロゴ制作サービス「synchlogo」を立ち上げ年間数十件のロゴを世に送り出している。ロゴデザインを専門とした事業を始めて10期目となり、同業界に幅広く精通している。
【目次】
無料提案型ロゴデザインサービスは、デザイナーに無料でロゴをデザインしてもらうことができ、それが採用となった時のみ費用が発生するという、運営側にとって非常にリスクの高いサービスです。利用者側にはとても有難いシステムですが、そんな高いリスクを背負ってまで無料提案をサービスの売りにしようとしたのにはそれなりの背景があります。
同サービスが誕生したのは2000年~2010年頃で、ビジネスの世界はもちろん一般家庭でもインターネットが普及し、成熟しつつある時代でした。それまでロゴを含むグラフィックデザインを依頼する時は、専門の業者(デザイン事務所や制作会社)を人づてに紹介してもらうか、以前営業訪問に来た代理店などを頼りにするしか方法はなく、現在のようにインターネットを使って自ら探すようなことはまず考えられませんでした。しかしインターネット環境によって業界の構造は一変。デザインを必要とする人達は、GoogleやYahooなどの検索エンジンを使い、自らデザイン業者を探すようになっていったのです。その流れの中、デザイン業者側もインターネットで検索され、見つけてもらえるような環境を急速に整え始めます。自社がホームページを持つなどは当たり前になり、検索結果に表示されるサイトはあっという間にWebマーケティングのリテラシーが高い業者のサイトで埋め尽くされていきました。
そしてロゴ作成の依頼先もインターネット検索で探すのが当たり前になり、オンライン上は各業者が展開するロゴデザインサービスで溢れていました。その状況がきっかけとなり、競合他社と差別化を図るたことを目的に「ロゴ無料提案」を売りにした形態のロゴデザインサービスが誕生していったのです。
ここでは現在展開している代表的な無料提案型ロゴデザインサービスを紹介いたします。前述の通り、代表的な同サービスはWebリテラシーが高く、各検索エンジンによるロゴ関係の記事・ページが上位にヒットすることが非常に多いです。ここでは現在その上位勢となっている5つのサービスの概要をご覧いただきたいと思います。
①ビズアップ|https://www.biz-up.biz/
ビズアップは「受注数日本No.1 ロゴ専門デザイン会社」を掲げ、社名と同名のロゴ作成サービスを展開しています。会社の創業は2006年で、ホームページには「ロゴマーク無料提案は2006年にビズアップが業界で初めて導入したシステムです」と書かれてあるのが確認できます。なおロゴの無料提案を導入した理由は、「1.お客さまの金銭的リスクをなくすため」、「2.真剣にロゴづくりに取り組むため」を挙げています。
制作実績は25,000以上を有しており、その中の主な制作実績に、一般財団法人 日本気象協会の「tenki.jp」ロゴ、大東建託リーシング株式会社の「いい部屋ネット」ロゴ、公益財団法人 日本フラッグフットボール協会の協会ロゴなどがあります。
また日本トレンドリサーチ調査による「ロゴデザイン制作会社サービス満足度No.1」「ロゴデザイン制作会社コストパフォーマンス満足度No.1」「信頼できるロゴデザイン制作会社No.1」を掲げております。
2010年に設立された株式会社プロモーションプラスによって開始されたロゴ市は、サービス開始から10年以上経過した後、同会社は現サービス運営会社である株式会社ビジョンに吸収合併されますが、サービスは継続され現在に至ります。
制作実績は4,500以上を有しており、その中の主な制作実績に、株式会社あずさわファームのコーポレートロゴ、株式会社デルフィネクトが展開する「TOMALCO」ブランドロゴ、株式会社トライアタックのコーポレートロゴなどがあります。
また日本マーケティングリサーチ機構調査による「初めてのロゴ作成でも安心できる会社No.1」「ロゴ作成時に相談したい会社No.1」を掲げております。
③コクリロゴ|https://www.cocre-logo.com/
コクリロゴは、2018年に設立された株式会社コクリによる運営です。運営者情報を見ると、同社はロゴデザインだけでなく、Webメディア作成・運営、キャラクターデザイン、名刺デザイン、ホームページデザインも事業として行っていると書かれています。
制作実績は1,000以上を有しており、その中の主な制作実績に、KBI社会保険労務士事務所の事務所ロゴ、スマイルウッズ株式会社のコーポレートロゴ、国語塾あけぼののスクールロゴなどがあります。
④LOGOCA|https://logoca.com/
LOGOCAは2009年に開始されたロゴ作成サービスで、様々なプロモーションの企画、グラフィックデザインによる制作を行っているデザイン制作会社である株式会社グラフィカが運営しています。
制作実績数は公開されていませんが、主な制作実績に、リラトリート経堂のショップロゴ、大通り歯科の医院ロゴ、株式会社MOKUSiaのコーポレートロゴなどがあります。
⑤synchlogo(シンクロゴ)|https://synchlogo.com/
当サービスsynchlogoは2016年に始まったロゴデザインサービスで、ビジネスシーンに必要なブランディング構築に関する様々なサービスを提供しているWESTFIELD Design Partnersが運営しています。synchlogoでは「気軽に、手軽にロゴを手に入れて頂けるように」をコンセプトにしており、それをより実感して頂く取り組みとして2024年に無料提案プランを新たに始めました。
制作実績は500以上を有しており、その中の主な制作実績に、一般社団法人ドナーリンク・ジャパンの法人ロゴ、エデュシップ株式会社のコーポレートロゴ、一般財団法人日本気象協会の「GoStopマネジメントシステム」サービスロゴなどがあります。
またsynchlogoは、比較ビズの「ロゴデザインの費用相場はいくら?おすすめ制作会社21社紹介」、PITTALABの「東京でおすすめのロゴデザイン会社15選!デザイン会社を選ぶ5つのコツ」に紹介されたほか、運営主体のWESTFIELD Design Partnersは公益社団法人日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)の正会員でもあります。
上記5サービスは、ロゴの初回提案が無料であることは共通していますが、プランの内容についてはかなり違いがあります。依頼する一番のポイントは無料提案かもしれませんが、その他については何でもいい、という訳ではないと思います。プラン詳細を知り比較しておくことで、より希望に近いサービス・プランでロゴ作成を依頼することができるようになるでしょう。
ここでは作成プランの違いを1つずつ挙げ、上記5サービスを比較していきたいと思います。
◆提案数と採用時支払い料金
必ずしもその通りではありませんが、ロゴ無料提案サービスは初回に提案する数が多いほど採用時に支払う料金が高額となっていきます。提案数が多ければ、それだけロゴを作成するデザイナーの手間は増えることから当然ではあるでしょう。しかしサービスを比較すると、同じ提案数でも採用時支払い料金に差があるケースも見られます。料金設定は各サービスの考え方によって異なる部分もあることから、事前に確認し比較しておくことをお勧めします。
それでは各サービスの無料提案プランにおける初回提案数と採用時支払い料金の詳細を見ていきましょう。
①ビズアップ
ビズアップはデザインプラン3種とブランディングプラン3種が準備されており、デザインプランの方は提案数が3案のみ、ブランディングプランは6案・10案以上・20案以上というプラン構成になっています。デザインプランの方は作成するロゴの構成によって採用時の支払い料金が異なっており、シンボルマークかロゴタイプのどちらかだけの場合は98,000円、シンボルマークにロゴタイプ1種類の組み合わせの場合は138,000円、シンボルマークにロゴタイプ2種類の組み合わせの場合は158,000円に設定されています(いずれも税別)。
②ロゴ市
ロゴ市は提案数が2案の1プランしかなく、その採用時支払い料金は89,000円(税込)となっています。なおシンボルマークのみ、ロゴタイプのみ、シンボルマークとロゴタイプを組み合わせたパターン作成は、全て料金内で対応するとしています。また筆文字ロゴとキャラクターロゴについては別のプラン(無料提案はなし)が準備されているので注意が必要です。
③コクリロゴ
コクリロゴは提案数が3案の1プランのみとしており、採用時支払い料金は38,000円(税込)に設定されています。シンボルマーク・ロゴタイプの組み合わせパターンなどの条件についての記載はないですが、作成例はシンボルマークとロゴタイプのセットが示されております。また複雑なデザインなどの場合は増額等があるかもしれないので事前に確認が必要です。
④LOGOCA
LOGOCAでは3つのプランが準備されています。2案で49,800円(税別)のプラン、4案で69,800円(税別)のプラン、10案で99,800円(税別)のプランです。いずれもシンボルマークとロゴタイプをセットでデザインすることが書かれております。
⑤synchlogo
synchlogoのロゴ無料提案プランは、1案提案で59,800円(税別)の1プランのみとなっております。提案資料の例で示したように、提案するロゴの形式はシンボルマークとロゴタイプのセットが基本ですが、シンボルマーク、ロゴタイプのみでももちろん承っています。ちなみに通常3案プラン(無料提案なし)と同額としていますが、無料提案を見た後、追加で案を見たい場合は通常3案プランへ変更(追加提案は2案)することも可能としております。
サービス名 | 提案数と採用時支払い料金 | 初回提案後のキャンセル料 |
①ビズアップ | 3案:98,000円、138,000円、158,000円(税別) 6案:300,000円(税別) 10案以上:500,000円(税別) 20案以上:800,000円(税別) | 無料 |
②ロゴ市 | 2案:89,000円(税込) | 無料 |
③コクリロゴ | 3案:38,000円(税込) | 無料 |
④LOGOCA | 2案:49,800円(税別) 4案:69,800円(税別) 10案:99,800円(税別) | 無料 |
⑤synchlogo | 1案:59,800円(税別) | 無料 |
◆提案採用後の修正回数
無料提案のロゴデザインが完全に希望通りの仕上がりで、修正や調整が全く必要ないというケースは非常に稀だと思います。多くの場合、無料で提案されたロゴについて、概ねデザインに納得ができれば「採用」のGOサインを出しはしますが、色や形のディテール、ロゴタイプの字体などはその後何度か修正・調整を経て、イメージしたものへと仕上げていくものです。
しかしここで注意しなければならないのは、無料提案型ロゴ作成サービスの各プランには、この修正について回数制限が設けられていることが多くあるということです。運営側の考えとして、適切な利益が得られるよう、過度なデザイン作業の発生を抑制する意味があるのかもしれません。しかしロゴデザインは世界で1つ、一生で1つ作るような性質のものですから、しっかり納得するまでこだわって作りたいというのが依頼者側の本音だと思います。そこにきて修正回数制限というのは。その思いに対して水を差されるようなシステムであるように見えるかもしれません。
その辺りは運営者の考えによってシステムが異なるようで、各サービスを俯瞰してみると、以下の2つのいずれかとしていることが分かりました。
・一定修正回数を超えた場合、修正1回に対する追加料金がオプションで定められている。
・修正回数は決められておらず、無制限としている。
それでは各サービスの無料提案プランにおける修正回数の詳細を見ていきましょう。
①ビズアップ
ビズアップでは修正5回までは料金内で対応する、としており、6回目以降も微調整であれば対応可としています。修正回数超過による追加料金は定めていないようですが、追加料金が発生したケースは過去全体の3%程度あったそうです。なおサービスサイトには多くの依頼者が平均2~3回で修正を終えているとも記述されています。
②ロゴ市
ロゴ市も同じく修正5回までは料金内で対応するとしています。6回目以降についての記述はなく、修正回数超過による追加料金についても定めてはいないようですが、サービスサイトには「理想のロゴにもっと近づけるよう、プラン料金内で採用案の調整ができるようにしております。」と記述されています。
③コクリロゴ
コクリロゴでは、合計2回までは料金内で対応するとしており、3回目以降の1回につき3,000円必要になることが示してあります。
④LOGOCA
LOGOCAでは、全プラン修正回数は設けておらず、無制限で対応するとしています。
⑤synchlogo
synchlogoの無料提案プランでは、採用後大きな方針変更がなければ修正回数は無制限としています。
サービス名 | 提案数採用後の修正回数 |
①ビズアップ | 5回までは料金内で対応。 6回目以降については記述なし。 |
②ロゴ市 | 5回までは料金内で対応。 6回目以降については記述なし。 |
③コクリロゴ | 2回までは料金内で対応。 3回目以降は1回につき3,000円(税込)が必要。 |
④LOGOCA | 料金内で無制限対応。 |
⑤synchlogo | 料金内で無制限対応。 |
◆作成したロゴの著作権譲渡
ロゴは知的財産で、創出された段階で「著作権」という知的財産権が発生しています。多くの利用者は、作成されたロゴを自由に使いたい、場合によっては自由に形や色を変更したいという考えから、ロゴの著作権を譲渡してもらいたいと考えるものです。
【※注記】
著作権譲渡についてはなかなか複雑で、法的な位置付け、synchlogoのスタンスなどはこちらのコラムにまとめてありますので、ご興味ある方は先にご一読ください。
ちなみにこの著作権(正確には著作財産権)の譲渡についてですが、サービスごとにスタンスが異っています。同じ無料提案で作られたロゴでも、著作権も譲渡された成果品とそうでない成果品とでは大きく意味合いが変わってきます。
それでは各サービスの成果品ロゴの著作権譲渡に対するスタンスを見ていきましょう。
①ビズアップ
ビズアップでは、「優秀で責任感のあるデザイナーほど権利をなおざりにすることを好まない」というのを理由に、著作権を依頼者に譲渡しないことを基本としています。ただし、ロゴを商標登録をする、ロゴを使用したグッズ等を制作し販売することで二次的な利益が発生する、ロゴの色や形を依頼者自身で変更するといったことが想定される場合は、依頼者とデザイナーとの未来のトラブルを回避することを第一義として、著作権の譲渡(著作権譲渡証の発行)を100,000円にてオプション対応しています。
②ロゴ市
ロゴ市は納品と同時にロゴの著作権も依頼者に譲渡しています。ただし1点だけ、制作・販売実績の紹介のために運営会社である株式会社ビジョンもロゴを使用するという条件を付しています。これについて、オプションで準備している「著作権譲渡証明書」の発行を申し込めば、納品したロゴをの著作権を完全に依頼者へ譲渡し、ロゴ市の制作実績としてサイト内の実績ページなどで紹介しないようにすることも可能となっています。ただし同証明書の発行には18,000円を運営会社へと支払わなければなりません。
③コクリロゴ
コクリロゴでは、納品の時点でロゴの著作権は依頼者へ譲渡するとしています。譲渡費用はありませんが、コクリロゴの制作実績として公開する場合があるという注意書きが書かれてあります。
④LOGOCA
LOGOCAは完成したロゴの著作権は追加料金なしで譲渡するとしています。
⑤synchlogo
synchlogoでは、納品したロゴの著作権(著作財産権)は無料でお客様に譲渡しています。また納品時に「著作権譲渡証書」も併せてお渡しするようにしております。なお詳しくはこちらのコラムにもまとめていますが、著作者人格権が譲渡できない理由である「自分の著作物を他人に無断で改変させない権利」について、synchlogoではそれを一部容認(著作者人格権を不行使)する方針としています。
サービス名 | 作成したロゴの著作権譲渡 |
①ビズアップ | 著作権は譲渡しないことを基本としている。 オプションでの譲渡料金は100,000円(税別)。 |
②ロゴ市 | 著作権は無料で譲渡している。 ただしロゴ市のサイトで実績紹介できないようにするためには、18,000円(税込)で著作権譲渡証明書を発行してもらう必要がある。 |
③コクリロゴ | 著作権は無料で譲渡している。 |
④LOGOCA | 著作権は無料で譲渡している。 |
⑤synchlogo | 著作権は無料で譲渡している。 納品時に無料で「著作権譲渡証書」も発行。 |
無料提案とは言えども、提案されるロゴのデザインクオリティが低ければ話になりません。ロゴは会社やお店・商品やサービスの顔となる存在ですので、デザインが一定水準のクオリティでなければ自信を持って掲げることはないでしょう。そのため利用者は、無料提案があるかと同じくらいに、そのサービスのデザインレベルがちゃんとしているかどうかも気になるところだと思います。
デザインレベルについては、そのサービスが公開している諸情報から推し量ることができます。ここではデザインレベルを見極めるためのポイント、見極め方について解説していきたいと思います。
◆過去制作実績を見る
ほとんどのロゴデザインサービスでは過去制作したロゴの実績が公開されていますので、まずはそこをしっかり見ていきましょう。以前納品されたロゴを見ることで、サービスのデザインレベルが求めている水準に達しているかどうか、また作風が希望するものに近いかどうかを確認することができます。
しかし利用者によっては、ロゴは人に見られるもの・見せるものなので、自分の好みのデザインとするのではなく、客観的に見てレベルが高く、多くの人に好まれるデザインにしたいという方も少なくないと思います。そういった方は、過去の制作実績に加え、この後に示すポイントで評価することをお勧めいたします。
◆利用者の評価を調べる
次に調べるべきは利用者の評価、いわゆる「お客様の声」で、そこにはよくデザインのレベルがどうだったか書かれています。もちろんサービス側が操作し、高評価でポジティブな内容だけを公開していることも考えられることから、低評価・ネガティブな内容なものは少なく、純粋な客観的評価とまではいきませんが一定の参考にはなる情報だと思います。
ネットで飲食店を探す際に使う「食べログ」のような評価サイトがあれば、純粋な客観的評価を知ることができるのでしょうけれども、ロゴデザインの世界にはあいにくそういった気の利いたものは見当たりません。ですので「お客様の声」からは、利用者自らが情報を上手く読み取り、デザインレベルについて自分なりに推し量っていくしかないと思います。
◆第三者の評価を確認する
第三者の評価とは、「ロゴデザインが頼めるサービス〇〇選!」といったいわゆるまとめサイトや、「ロゴデザインサービス△△を利用してみた感想」など過去の利用者が感想を記事にしたブログなど、ネット上に散らばる評価のことです。
これらはサービスそのものと利害関係のない状況で書かれたものですので、客観的評価としての信憑性は高いと考えて良いでしょう。またロゴデザインサービスを題材にした記事ですので、ロゴ作成のデザインレベルについて書かれていることも期待できます。
参考までにその例を以下いくつか紹介いたします。
→比較ビズ「ロゴデザインの費用相場はいくら?おすすめ制作会社21社紹介」
→PITTALAB「東京でおすすめのロゴデザイン会社15選!デザイン会社を選ぶ5つのコツ」
→PRONIアイミツ「ロゴ制作でおすすめのデザイン会社9選【2025年最新版】」
→QEEE「【比較12選】ロゴ作成を依頼しよう!3つの選択肢とロゴ作成のポイントを解説」
→株式会社かえでプロダクション「会社ロゴ受賞」
→株式会社レオマックス「ロゴデザインへの想い」
→ボイスデザインカレッジ コエトス「[声でわかる、声で伝わる]コエトスってどういう意味?」
→会社の薪ストーブの傍で考えるアレコレ「ロゴ作成から学んだシゴトの本質」
◆入会している団体を確認する
個々のロゴデザインの良し悪しを客観的に判断するのは難しいですが、デザインのレベルはそのサービスや運営している会社が入会している団体である程度判断することができます。その団体とは、ロゴやグラフィックデザインに関する団体で、いずれも入会するのに一定のデザインレベルを有しているか審査が行われます。
審査では、デザインの経歴が問われるほか、過去の制作実績数点で判断されます。同じプロの目から見てデザインの実力が伴っていなければ入会することができないため、入会できているサービスはデザイン業界において一定のデザインレベルを有していると考えて良いでしょう。
参考までにロゴデザインに関する団体を2つほど紹介いたします。
→公益社団法人 日本グラフィックデザイン協会
→NPO法人 日本タイポグラフィ協会
無料提案型ロゴデザインサービスについて解説してきましたが、まとめとしてその特徴を整理したいと思います。
・オンライン上で激化していたサービス間競争の中、競合との差別化を図るために「ロゴ無料提案」が生まれた。
・2025年現在、代表的な無料提案型ロゴデザインサービスは5つある。
・サービス内容は「提案数と採用時支払い料金」「提案採用後の修正回数」「作成したロゴの著作権譲渡」の3つで比較できる。
・サービスによってデザインクオリティには差がある。
ストックロゴ型ロゴデザインサービスの最大の特徴は、既成の(既に完成している)ロゴの膨大なストック量と、利用者がそのストックから自ら探して購入できるシステムです。なお販売しているロゴは、仕組み上シンボルマークとロゴタイプが組み合わされた「ロゴマーク」に限定されており、ロゴタイプのみのものは販売されていません。利用者は、サービスサイトでシンボルマークのデザインを無料で事前に閲覧・確認し、気に入ったものを確実に手に入れることができます。
このサービスが誕生したのは無料提案型ロゴデザインサービスが生まれたのと同時期で、誕生経緯も前述したインターネット環境の成熟と大きく関係しています。それまでロゴは、他のグラフィックデザイン同様「誰かに頼んで作ってもらう」性質のものだとされていました。しかしロゴのシンボルマークに限れば、仕上げたものを商品として扱う、つまり「ロゴを商品化する」可能性があることには気付いていたのでしょう。そこにインターネット環境の成熟という出来事によって、課題であった販路開拓の手掛かりがWebという新たなマーケットで見出せそうなことが分かり、可能性止まりだったものが一気に実現にまで押し上げられたのです。つまりストックロゴ型ロゴデザインサービスは、「ロゴの商品化」が「Webマーケット」によって可能になり生まれたものだと言えるでしょう。
またストックロゴ型ロゴデザインサービスの最大手「ロゴマーケット」サイト内にある「ロゴマーケットのはじまり」という誕生経緯の記事を参照すると、以下のような記述があります。
デザインという商品は他のものとは異なる不安が多く存在します。だから他の商品にくらべて流通しにくかったのでは無いでしょうか。
流通におけるデザイン・制作物の弱点は、「完成形が事前確認できない」ことです。仕上がりがどのようなもので、どんなクオリティのものが出てくるか分からない状態で費用を決定し、発注・契約をしなければならない。その弱点に目を付け、事前にデザインを無料で確認できる仕組みを取り入れ、デザイン業界にパラダイムシフトを起こしたのが無料提案型ロゴデザインサービスであり、ストックロゴ型ロゴデザインサービスなのですが、ストックロゴ型の方は、それに加えデザイン業界の流通部分にまで革命を及ぼしたサービスなのです。
それでは実際に現在使われているストックロゴ型ロゴデザインサービスを見てまいりましょう。Webマーケットを販路としているため、Webリテラシーが高く、Googleなどのロゴデザイン関連の検索にて上位にヒットするのが代表的なサービスと言えるでしょう。またサービスの規模を測る指標として、販売実績数に加え、ストックしているロゴの数も確認いたしました。いずれのサービスもかなりのストック数を有していますので、その点にも注目して頂ければと思います。
①ロゴマーケット|https://logomarket.jp/
ロゴマーケットは、「WEBで事業を加速する」をコーポレートスローガンに掲げた株式会社シンプルワークスが運営するサービスです。同サービスは2011年にスタートしましたが、ロゴマークの販売をを専門で始めた最初のサービスだとされています。「なんでも簡単に手に入る時代にあって、デザインはどこに頼んだら分からない」という疑問から始まり、「高い品質を確認し」「明快な金額で」「手軽に簡単に」提供できる方法を模索した結果ロゴマーケットは誕生したとサイトには書かれてあります。
ロゴの販売実績は8,700件超、ストックロゴの数は27,000点以上ある大規模なサービスであると共に、レビュー評価は5.0点中4.91点(2016年5月~2024年8月の平均)という非常に高い顧客満足度があることも特徴です。また販売価格はロゴによって異なり、29,800円、39,800円、49,800円、59,800円、69,800円、79,800円(いずれも税別)の6段階で設定されています。
②LOGO TANK|https://logo-tank.net/
LOGO TANKは、「クリエイティブ × エンジニアリングで企業価値をブーストします。」をコーポレートスローガンに掲げた株式会社クスクスが運営するサービスです。同サービスが開始した年は正確には分かりませんが、運営会社の設立が2015年、サービスの利用規約改定が2017年になっていることから、その間に始まったと推察されます。サイトトップには、「上場企業様から、スタートアップのオーナー様まで幅広くご利用いただいております。」との記載されているのが見受けられます。
ロゴの販売実績数は書かれていませんが、32,000点以上あるストックロゴを見ると、「SOLD OUT」と表示されたロゴはかなりの数があり、相当な数の販売実績があることはうかがえます。またロゴの販売価格は一律15,400円(税込)で設定されています。
③ロゴ市ストア|https://store.logoichi.com/
ロゴ市ストアは、無料提案型ロゴデザインサービスの方で紹介した「ロゴ市」の派生サービスで、前述の通り運営会社は株式会社ビジョンです。サービスが開始した時期は公開されておりませんが、現在のサービスサイトは前運営会社によって2016年にフルリニューアルされたもので、検索機能の向上や直感的なUIなど利用者のニーズに直結したサービスを拡充した、とされています。
ロゴの販売実績は書かれておりませんが、掲載されているストックロゴの数は10,000点を超えており、こちらもサービスの規模としてはかなり大きいものであることがうかがえます。またロゴの販売価格は一律49,000円(税込)で設定されています。
ストックロゴ型ロゴデザインサービスにおける、ロゴの使い方はどのサービスもほとんど同じで、注文から納品までは以下の手順で進められます。
①ロゴを探す(シンボルマークを探す)
販売されているストックロゴは、仮のロゴタイプが入っているロゴマークで、利用者はまずシンボルマークのデザインを見て希望に合うものを探します。気になったものはカートや検討中リストに保存することで、後から見返すことも可能です。
②購入申し込み・料金支払い
購入するロゴが決まったらフォームから申し込みを行ったのち、料金の支払いを行います。ロゴごとに購入代金が決まっており、その金額を銀行振込もしくはクレジットカード決済で支払います。
③ヒアリング
これは、②の購入申し込み時に同時に行われることもありますが、シンボルマークの色の変更やディテールの調整、またロゴタイプに用いる名称とその配置・字体デザインなどについて、サービスの担当者からヒアリングがあります。
④ロゴの提案・調整
③のヒアリングで得た回答をもとに、サービスの担当デザイナーによって、購入したシンボルマークと指定した名称で作ったロゴタイプを組み合わせたロゴマークが提案されます。その後提案デザインをさらに調整後、完成となります。
⑤ロゴデータの納品
完成したロゴは、編集可能な元データ(aiデータ)、画像データ(jpgデータ、pngデータなど)によって納品されます。データはメールに添付されて送られるか、専用ページからダウンロードする形となります。なお無料提案型ではサービスによって対応が異なったロゴの著作権に関して、このストックロゴ型ロゴデザインサービスでは納品と同時に著作権も譲渡されることが一般的となっています。
ストックロゴ型ロゴデザインサービスの特徴として共通しているのは、膨大なストックロゴを保持しているという点です。先に挙げた3つのサービスにおけるストックロゴの数は実に10,000~32,000点あり、利用者が1点1点デザインを確認して希望のロゴを探し当てるのは現実的に不可能です。
そこで重要になってくるのが、サービスサイト内に実装されているロゴの検索システムです。どのサービスでも、ストックロゴはいくつかのキーワードと共にサイトへアップロードされており、利用者は希望のデザインに関するキーワードで検索すれば、そのキーワードが付されたロゴがいくつかヒットし、利用者のブラウザ上に表示されるという仕組みになっています。検索は検索窓に任意のキーワードを入れ検索するスタイルが基本ですが、ロゴに用いられているモチーフや色など、デザインの条件を絞り込んでいくカテゴリ検索もできるようになっています。これによって膨大なストックロゴの中から条件に合うものを短時間で絞り込むことができるため、初めて利用する人でも探しやすいかと思います。
ここでは先に挙げた3つのサービスについて、どのようなカテゴリ検索ができるかについて紹介していきたいと思います。
①ロゴマーケット
ロゴマーケットでは以下4つのカテゴリ検索ができるようになっています。
◆価格(いずれも税別)
29,800円、39,800円、49,800円、59,800円、69,800円、79,800円
◆業種
士業、IT、介護福祉、医療、製造、設備、教育、公共施設、飲食、美容、不動産、住宅、金融、保険、物販、小売、歯科、環境、健康
◆アルファベット
AからZの各文字
◆色
白、赤、オレンジ、黄色、黄緑、緑、水色、青、紺色、紫、ピンク、茶色、黒、カラフル、ゴールド、シルバー
また同サービスのサイトトップページには、「運営のおすすめロゴ」「検討している人が多いロゴ」のほか、利用者が過去に閲覧した「最近ご覧になったロゴ」が表示されており、そこから検索できるのも特徴です。
②LOGO TANK
LOGO TANKでは以下4つのカテゴリ検索ができるようになっています。
◆業種
美容・サロン、クリニック・整骨院、建設業・不動産、IT関連、教育・スクール、フード・飲食店、セラピー、エコ・団体、スポーツ・サークル、士業、金融・証券、ショップ・店舗、その他
◆アルファベット
AからZの各文字と、!、?、&、@
◆ジャンル
単色、複数色、グラデーション、動物系、イラスト系
◆テイスト
ポップ、ナチュラル、シンプル、モダン、クール、ゴージャス、キュート、和風、その他
また、希望のロゴがなかった、一般的ではないモチーフでロゴを作成したいという利用者のために、「無料リクエスト機能」というサービスも準備されているのも特徴です。これは、利用者が希望するデザイン内容をサイトで登録すれば、無料で同サービスのデザイナーがその内容に沿ったロゴを作成しストックロゴとしてアップロードしてくれるというものになっています。
③ロゴ市ストア
ロゴ市ストアでは以下3つのカテゴリ検索ができるようになっています。
◆業種
インターネット、飲食、美容、商業、建設、不動産、製造、運輸、医療、福祉、ヘルスケア、教育、金融・保険、コンサルタント、ライフライン、観光、イベント
◆アルファベット
AからZの各文字
◆色
カラフル、青、緑、ピンク、シルバー、水色、黄緑、赤、ゴールド、紺色、黄色、オレンジ、黒、紫、茶色、グレー
また同サービスでは、上記カテゴリに「イメージ・質感・直感」「形」を加えた、より詳細な検索もできるようになっているのが特徴です。
完成したロゴのデザインを無料で事前確認してから購入できるというサービス最大の特徴ですが、利用者によっては「色や形をもう少し調整すれば完璧なデザインなのに」と感じることも少なくないはずです。例えば、会社やお店、商品・サービスなどのコンセプトカラーが既に決まっている場合などは、ロゴもその色に合わせたくなるものでしょう。
そういったケースはサービス運営側も想定しており、ストックロゴのデザインアレンジやカスタマイズについては何らかの対応が可能であることをサイトに明記しています。しかしサービスによって、対応の幅や対応に料金を必要とするかどうかは異なり、利用者はその点も気になるところではないでしょうか。
そこでここでは先に挙げた3つのサービスにおいて、どのようなデザインアレンジやカスタマイズをいくらで対応しているか確認していきたいと思います。なおこれらのアレンジやカスタマイズは、いずれのサービスでもロゴ購入決定後に可能で、アレンジ・カスタマイズされたロゴを見て購入を決定するか判断するようなことはできないので注意が必要です。
①ロゴマーケット
ロゴマーケットでは、シンボルマークの色の変更およびディテール調整は追加料金なしで対応するとしています。ただし「原型を留めないアレンジはご相談ください」とあり、元のデザインが大きく変わるようなケースは追加料金が必要になるでしょう。ちなみにその場合の金額は明記されておらず、その都度見積もりがなされるものと思われます。
またシンボルマークに組み合わされるロゴタイプについては、市販フォントをベースに追加料金なしで複数の字体提案が可能とされています。なおその文字列は複数表記もある程度可能で、例えば日本語での会社名の下に小さく英語表記を添えるなどはできるようです。
またこれらのアレンジやカスタマイズについては、修正回数にも制限を設けないとしています。
②LOGO TANK
LOGO TANKでは、ロゴ購入時に「販売ロゴそのままプラン(追加料金なし)」「手直しプラン(追加4,400円)」「リメイクプラン(追加15,400円)」から選ぶようになっており、追加料金がかからないのはシンボルマークのデザインをそのままとする場合に限られます。また「手直しプラン」「リメイクプラン」の内容は以下のようになっています。
【手直しプラン】
カラー変更(グラデーションもOK)、カラーパターン2案以上(4案まで)、円形に沿った文字の配置
【リメイクプラン】
販売ロゴをベースに形状変更・追加、手直しプランの修正内容適用、提案数は2案なお2回
なお上記有料プランの修正回数は2回までとされており、それを超えた場合の修正は、修正内容に応じた修正費用(別途見積)が必要となっています。加えて、修正には利用者の具体的な指示が必要で、運営側からの提案が必要な場合はさらに別途費用が必要となるため注意が必要です。
次にロゴタイプ部分についてですが、こちらは名称や業種に応じた字体を追加料金なしで複数提案することになっています。またその文字列は、サブネームとメインネームの2段構成も可能となっており、任意の文字列を指定することが可能です。
③ロゴ市ストア
ロゴ市では、「色変更」「フォント変更」「配置変更」の3種類のデザインアレンジ対応が可能と示されており、いずれも1種類のアレンジにつき追加料金が5,000円かかる設定となっています。それぞれのアレンジ対応は以下の通りとなっています。
【色変更】
シンボルマークの色を利用者の希望に変えられるアレンジです。
【フォント変更】
ロゴタイプの字体をデフォルトのものから希望の書体に変えられるアレンジです。
【配置変更】
ロゴマークとしての完成形として、シンボルマークとロゴタイプ位置関係が指定できるアレンジです。
なお各アレンジの追加調整は3回までとなっています。
ストックロゴ型ロゴデザインサービスについて解説してきましたが、まとめとしてその特徴を整理したいと思います。
・最大の特徴は、ロゴの膨大なストック量と、利用者がそのストックから自ら探して購入できるシステムにある。
・ストックロゴは、シンボルマークとロゴタイプが組み合わされた「ロゴマーク」に限定。
・同サービスは、「ロゴの商品化」が「Webマーケット」によって可能になり生まれた。
・2025年現在、代表的なストックロゴ型ロゴデザインサービスは3つある。
・膨大なストックロゴの中から希望のロゴを探し当てる「検索システム」の機能性がとても重要。
・デザインのアレンジやカスタマイズができる範囲はサービスによって若干異なり、またそれに追加料金がかかるケースもある。
・無料でデザインの事前確認ができるのはアレンジ前のシンボルマークのみで、アレンジ後のシンボルマークおよびロゴタイプを組み合わせたロゴマーク全体のデザインが確認できるのは料金支払い後となる。
ロゴメーカーは、ロゴジェネレーターとも呼ばれ、特別なスキルや高価なソフトウェアを必要とせず、誰でもオンラインで自分だけのロゴを作成できるビジュアルコンテンツ作成ツールのひとつです。これらのツールは、サービスサイト内に準備された豊富なテンプレートやデザインエレメントを使用して、ユーザーが直感的にロゴや名刺、チラシ、パンフレットなどのデザインを行い、完成したデータを簡単にダウンロードできる仕組みとなっています。デザインに関する専門的な知識がなくても、ユーザーは簡単に魅力的なビジュアルコンテンツを作り出せるため、多くの人々に利用され始めています。
そんな中、ロゴメーカーが近年急速に進化し、拡大を続けている背景にはいくつかの要因があります。まず第一に、生成AI技術の導入が挙げられます。生成AIとは、大量のデータを基に新たなコンテンツを自動的に生成する技術であり、ロゴデザインにも革命をもたらしています。この技術により、デザインのプロセスはより迅速かつ多様化し、利用者は自分の好みに合ったロゴをより簡単に作成できるようになっています。
次に、ロゴデザインに対する意識の変化があります。ロゴはデザイナーなどの専門家に依頼して作成してもらうか、前出したストックロゴ型ロゴデザインサービスによる既成のロゴを購入するものという認識が一般的でした。しかし現在では、「ロゴは自分の手で作れるもの」というDIY的な発想が浸透しつつあり、個人や小規模なビジネスオーナーを中心に、自分自身で手軽にロゴを作るニーズが高まったのです。お金をかけずに自分で作ることができるという手軽さが、ロゴメーカーの人気を後押ししています。
ここでは数あるロゴメーカー型ロゴデザインサービスのうち、代表的なサービスをいくつか紹介してまいりたいと思います。ロゴメーカーはオンラインサービスですので、検索エンジンなどから多くアクセスされている検索結果上位のサービスが代表的なものだといえるでしょう。
なおロゴメーカーは外国語で使用する海外のものも多くありますが、ここでは日本語入力で使えるロゴメーカーを4つほど紹介したいと思います。またロゴメーカーは生成AIの技術を使っているものとそうでないものがあるため、ここではそれぞれ2つずつを紹介していきたいと思います。
◆生成AI技術を使っているロゴメーカー
①Canva|https://www.canva.com/
Canvaは2013年にリリースされたオンラインビジュアルツールキットで、日本版は2017年5月にリリースされました。開発したのはオーストラリアで創業したCanva Pty Ltdで、「すべての人が、どこからでも、デザインで輝けるようにすること」をミッションに、オンラインのグラフィックデザインおよび印刷サービスなどを展開しています。
Canvaの特徴は豊富なデザインストックで、61万点のテンプレートと、1億点の素材(写真、動画、イラスト、音楽)に加え、生成AIの技術も駆使し、Webブラウザ上で利用者自らが様々なものを簡単にデザインすることを可能としています。デザインできるものは幅広く、ロゴの他にもポスターやフライヤー、名刺、パンフレットといったビジネスツールから、手紙、履歴書、レポートといったプライベートなもの、またSNSに投稿する画像まで作ることが可能です。ロゴの作り方も非常に簡単かつ直感的で、次章にてその実践例を詳しく紹介いたしますので是非そちらもご覧ください。
②Wix|https://ja.wix.com/logo/maker
Wixは、2006年に設立したイスラエルのWix社が2008年にβ版をリリースしたWebサイトを構築できるCMS(Contents Management System)サービスで、その一機能としてロゴメーカーのサービスが備えられています。
ロゴ作成の仕組みはCanvaと同じように、業種や業態・スタイルなどを入力すると生成AIによって複数のデザインが自動的に提案されるというものですが、Wixでは2択による好みのデザイン選択をを何度か行い、より希望に近いデザイン提案がなされるという工夫が実装されているのが特徴です。
◆生成AI技術を使っていないロゴメーカー
③Hatchful|https://www.shopify.com/jp/tools/logo-maker
2004年にカナダで設立されたShopify社が開発したHatchfulは、ECサイト構築や運営ができる社名と同じ名前の「Shopify」というサービスが提供しているロゴメーカーです。なおShopifyのほかのサービスを利用しなくても無料で利用することができます。
使用方法ですが、業界とデザインのスタイルを選択し、シンボルマークに添える名称を入力すれば、そのまますぐ使えるロゴが出来上がります。なおこのサービスはAI技術を使用していないため、選択した業界とスタイルに基づいて、ストックされている数多くのテンプレートからロゴが作成されます。生成AIを使用しておらず、また選択する情報が「業界」と「スタイル」だけのため、イメージとは異なるロゴが提案されることもありますが、定番デザインなどにとらわれない、自由な発想を得ることができると捉えることもできるでしょう。
④DesignEvo|https://www.designevo.com/jp/
DesignEvoは、2016年に設立したPearlMountain社は香港に本社があるグラフィックスおよびマルチメディアソフトウェアの専門開発会社によって開発されたロゴメーカーです。
DesignEvoもHatchful同様AI技術は使用されておらず、利用者自身が豊富なテンプレートから気に入ったデザインを選ぶという仕組みとなっています。しかしHatchfulとは異なり、DesignEvoでは利用者自らが検索窓にキーワードを入力、もしくはカテゴリーから希望に近いものを選ぶことで、候補となるテンプレートを表示させるという操作方法となっています。
次に、ロゴメーカーでロゴを作る基本的な手順を紹介していきたいと思います。ロゴメーカーによって多少異なりますが、大まかな手順はどれも共通しており以下の通りです。
①名称・業種・スタイル・ジャンル・モチーフ・形・色などの情報を入力もしくは選択。
②入力した情報に沿ってロゴメーカーが複数のロゴを提案。その中からイメージに近いものを選択する。
③選択したロゴの文字や色、形などデザインを修正・調整する。
④必要なデータ形式を選択しロゴデータをダウンロードする
入力できる情報が限られていたり、修正・調整できるデザインの部分が限られていたりするなど、使うロゴメーカーによって制約もあるようですが、基本的な手順はどのサービスもほぼ同じです。
それではロゴメーカーによるロゴ作成手順について、先ほど紹介した「Canva」を実際使ってみた例で紹介していきたいと思います。ここでは架空のカフェを題材に、無料版でどこまできちんとデザインできるかを実践してみたいと思います。
STEP1.
まずはCanvaのサイトにアクセスします。Canvaはロゴだけでなく様々な制作物を作ることができますが、今回は制作メニューにある「ロゴ」をクリックします。
STEP2.
クリックするとページが変わりキャンバスのような白い四角形の描画フレームが画面に出てきます。また画面左上を見ると検索窓と、その下に「テンプレート」「スタイル」という制作方法を選ぶボタンがあります。ここではカフェのロゴを、最も簡単なテンプレートを使った方法で進めていきたいと思います。
「テンプレート」のボタンをクリックした後、検索窓に「カフェ」というワードと、ロゴのモチーフに用いたい「コーヒーカップ」というワードを入力して検索してます。
STEP3.
すると画面左側にいくつか候補となるロゴのテンプレートが出現します。期待していた通り、コーヒーカップがモチーフのカフェっぽいロゴのデザインテンプレートが出てきました。スクロールしていくとたくさんのテンプレートを見ることができますが、ここでは最上部左側にあるオーソドックスなテンプレートを使って「SYNCHLOGO CAFE」という店名のロゴを作っていきたいと思います。
STEP4.
テンプレートをクリックすると、キャンバスに拡大されたそのテンプレートが表示されます。テンプレートのロゴにポインタをマウスオーバーさせてみると、どうやらコーヒーカップのマーク、コーヒー豆の図形、文字全ての何らかの編集ができそうな反応が起きます。
STEP5・STEP6.
まずはコーヒーカップのまわりに弧を描くように書かれている文字部分を「SYNCHLOGO CAFE」という店名に編集してみたいと思います。ここでは「SYNCHLOGO CAFE」だけでは文字数が少なすぎて間延びした雰囲気になりそうでしたので、テンプレートの元々の文字数に近づくよう「SYNCHLOGO CAFE * COFFEE & FOOD」としてみました。
STEP7.
次はコーヒーカップのマークを編集してみたいと思います。ここではマークの下にある「CAFE & REST」という文字は不要なので消し、その分空いたスペースが埋まるようにコーヒーカップ大きくしました。
STEP8.
右下にあるコーヒー豆のおさまりが少々悪いような気がしたため調整していきます。元々あった豆のサイズを小さくし、複製・回転を行うことで不自然な感じがしないように豆の数を増やすことができました。
STEP9・STEP10.
次は色の調整を行ってみます。背景をグレーにし、文字や図形を全て白の単色にしましたが、背景・文字・図形それぞれの色を個別に調整することができました。色は好きな色を作ることもできますし、サムネイルで表示されているデフォルトカラーから選ぶこともできます。
STEP11・STEP12・STEP13.
最後に作成したロゴのデータを自分のパソコンへダウンロードします。画面右上にある「共有」ボタンをクリックすると、「ダウンロード」のメニューが表示されます。ファイル形式はJPG・PNG・PDFは無料サービスの範囲内でデータ化し、ダウンロードすることができますが、SVGは有料のプランを契約しなければ作れないようです。また画像データについても、無料サービスの範囲では作成できるサイズに限りがあり、例えばPNGでは最大で500×500pxまでしか作成することができませんでした。
STEP14.
こうして完成したロゴの画像データがこちらです。データは問題なくパソコンで開くことができました。
このように、無料版でも基本的な機能は使うことができ、ロゴを形にすることは可能でした。しかし前章でも紹介した通り、SVGのようなベクター形式のロゴデータ(画像ではない編集可能なデータ)を入手しようとするには有料版の契約をしなければならないなど、無料版ではできないこともいくつか見つかりました。また作成過程おいても、無料版では使えない機能がたくさんあることは垣間見えており、有料版を使えばもっとイメージに近いロゴが作れそうな気はしました。
そこでここでは、有料版にするとできるようになることを整理し、その代表的なものを紹介していきたいと思います。
1.有料版限定のデザインテンプレートが使えるようになる
サービスによっては、無料版ではストックされているデザインテンプレートの一部しか使えない場合があります。無料版では比較的使いやすいものやシンプルなロゴテンプレートが多い中、有料版では個性的なデザインや複雑な図形のテンプレートが使え、デザインの幅を広げることができます。また無料版のテンプレートは多くの利用者が使っているため、デザインが被ることも起きるでしょう。
2.独自のフォントをアップロードして使うことができるようになる
シンボルマークに添えるロゴタイプなど、ロゴに文字を使用する際、無料版ではロゴメーカー内に準備されているフォントから選ぶことしかできません。しかしサービスによっては、有料版にすれば独自のフォントをロゴメーカーへとアップロードし、使用することができるものもあります。個性的な文字、オリジナリティある字体が希望であればこの機能を使うしかありません。
3.高度な編集作業がができるようになる
ロゴテンプレート内にある図形の位置変更や回転、複製といった簡単な編集をすることは無料版でもある程度はできます。しかし高度な編集作業、あるいは新しい図形・アイコンの追加などは有料版でなければできないことも多く、オリジナティあるデザインや既視感のないデザインを実現するには、テンプレートをそのまま使うことはせず、多くの手が加えられる有料版にて制作を行うとよいでしょう。
4.編集可能なロゴデータを入手することができるようになる
前章でも紹介しましたが、無料版のロゴメーカーでは作成したロゴを編集可能なデータでダウンロードすることができないようになっていることが多くあります。ロゴはあらゆる媒体で、様々なサイズで使われることから、それぞれの仕様に適したデータに編集することが基本です。しかし無料版では決まったサイズ、決まった形式のデータでしかダウンロードできない仕様になっています。有料版にすることで、色々な画像形式に変換、また編集可能なベクター形式のデータでのダウンロードができるようになります。
さて、ここからはプロのロゴデザイナーであるsynchlogoのデザイン担当が実際にロゴメーカーを分析しながら使用して得た客観的な評価を紹介したいと思います。ノンデザイナーによる使用感を紹介した利用者目線の評価は過去いくつかなされているようですが、作り手(デザイナー)目線の評価はこれまでほとんど行われてきませんでした。ロゴメーカーがデザイナーの代わりになるかどうか、また安心して使って良いツールなのかどうかについて、ここでは「評価できる点」と「注意が必要な点」を詳しく解説してまいりたいと思います。
評価できる点
◆とにかく安くロゴを作ることができる
デザインのクオリティ、ダウンロードできるデータ形式のバリエーションにこだわらなければ、とにかく安くロゴを作ることができるというのは純粋に評価できると思います。AI生成技術や検索システムを駆使し、ロゴを作る工程にマンパワーを必要としないことでその仕組みが実現できているのだと思います。また対象としている業種や業態もある程度カバーされており、デザインのスタイルも色々あることから、多くの利用者を満足させることができているでしょう。
デザイナーやロゴ制作サービスにロゴ制作を依頼する時、「払った金額に見合った成果が得られるのか」という心配があると思います。プロに依頼するのは決して安くはないため、思い通りの結果が得られなかったらどうしようと不安になり、依頼を躊躇することはよくあると思います。
しかしロゴメーカーの場合そのほとんどが無料で使え、有料版でもプロに依頼する金額に比べればかなり少額の費用しかかからないため、気軽に試してみることができるというメリットがあります。ロゴメーカーはそういった方々に有難いサービスなのではないかと思います。
◆誰でも簡単にロゴを作ることができる
グラフィック作成ツールなど特別なソフトを必要とせず、インターネットブラウザだけで作成することができ、成果品データまで得られることから、パソコンを普段使っている程度の知識があれば誰でも簡単にロゴを作ることができるのは大きく評価できるでしょう。ロゴ作成を自分でやろうとすると、まずソフトを準備しなければいけない、そのソフトの使い方を覚えなければいけないという大きなハードルがあります。そして、ノンデザイナーにはそもそもロゴというグラフィックを描くセンス・技術は備わっていないため、仮にソフトが使えるようになったとしても、そう簡単に自らロゴを作ることはできない訳です。
その課題を解決させたのがどのロゴメーカーにも備えてあるAI技術や検索システムで、言葉(キーワード)からロゴというヴィジュアルを生成できるようにした点は素晴らしいと思います。また生成されるロゴが1つではなく、複数の候補を提示してくれる点も、利用者の気持ちを考えた良い機能ではないでしょうか。さらに、入力するキーワードを変えたり追加したりするなど、よりイメージに近いロゴが表示されるまで気軽に何度もトライ&エラーが行えるのもロゴメーカーならではの特徴ではないかと思います。
◆自分がデザインしたという満足感・達成感が得られる
誰かに任せるのではなく、自分でロゴをデザインするというロゴメーカー特有の仕組みによって利用者は大きな満足感・達成感を得られるのですが、実はこれがロゴメーカーで一番評価されるべき点ではないかと思います。
どのロゴメーカーも、ロゴ作成を完全に自動化したものにはなっておらず、どのデザインがいいかを選ばせたり、字体・色などを変更させたりするなど、編集できる余地を多く残すことで、利用者に「自分がデザインした」と感じてもらえるようにしています。ですので冒頭にも描きましたが、ロゴメーカーは「ロゴ自動作成サービス」ではなく「ロゴ作成支援サービス」と位置付けられるのです。
完全に自動化した方が良いのでは?と思う方もいるかもしれません。しかしこれは様々なクリエイティブの中におけるロゴ特有の感覚ではないかと思うのですが、起業・開業する人は皆、心のどこかで「できればロゴは自分で作りたい」と考えているものなのです。
ロゴとは自身が立ち上げた会社・お店・サービスなどを象徴するシンボルであり、起業・開業の記録でもあることから、起業・開業する人のロゴに対する感情には特別なものがあります。ですからロゴメーカーは、ロゴ作成を完全に自動化するのではなく、あえてロゴ作成を「支援」するところまでに留めているのではないかと思います。
注意が必要な点
◆抽象的なキーワードに対する対応力はあまり高くない
ロゴメーカーは、入力するキーワードなどをヒントにロゴデザインを複数案生成・提示してくれますが、その中に想像していたイメージとは異なる案が多く出てくることがあります。入力するキーワードがロゴのモチーフにしやすい具体的なモノであれば、イメージに近いものが生成・提示される確率は高まりますが、抽象的なキーワードほどイメージとはかけ離れたデザインが生成・提示されやすくなるようです。
実践例のカフェのロゴでは、カフェのロゴだと一目で分かるようにするために「カフェ コーヒーカップ」というキーワードを入力し、ほぼイメージ通りのデザインが生成されました。
しかしこのキーワードを「カフェ わかりやすい」という抽象的な入力に変えた途端、下の結果のように、いわゆるコーヒーを提供するカフェとは異なるデザインのロゴばかりが生成されるようになってしまいました。
このように、しっかりしたデザインのイメージがあれば、ロゴメーカーに入力するキーワードも具体的になり、イメージ通りのロゴは手に入りやすそうですが、デザインのイメージがあやふやだと、ロゴメーカーに入力するキーワードは抽象的になりがちで、その結果イメージ通りのロゴは出てきにくい傾向になると考えられます。つまり結局のところ、ロゴメーカーを使う時点でデザインのイメージがしっかり出来ていないと、満足できるロゴは得られにくいということになるでしょう。
◆複数のモチーフを組み合わせるロゴデザインは苦手
実践例のカフェのロゴのように、1つのモチーフ(コーヒーカップ)を主体としたデザインを生成・提示することはできるロゴメーカーですが、2つ以上のモチーフを組み合わせたデザインではどうでしょうか。
たとえば、下に示したsynchlogoで以前作ったコーヒーカップと植物の葉とハートマークを組み合わせたロゴなどは、3つのモチーフを上手く組み合わせてデザインした例です。ではこのようなロゴをロゴメーカーが作れるかというと、どのようにキーワードを入力しても作り出すことはできません。それぞれのモチーフを並べただけのデザインは生成・提示されることはありますが、モチーフの形を組み合わせ、ひとつの図形に仕上げるようなデザインはなかなかできないのが現状です。
ロゴメーカーのAI生成技術が発展する、ストックされているデザインテンプレートの量が増えるなどすれば、このようなロゴを作り出すこともできるようになるかもしれませんが、現時点で複数のモチーフを組み合わせるロゴデザインは、ロゴメーカーにとって苦手なジャンルであると言わざるを得ないでしょう。
◆修正指示を繰り返し与えても必ずしも思い通りの結果となる訳ではない
AI生成技術を用いたロゴメーカーもそうでないロゴメーカーも、いずれもストックされているテンプレートをデザインのベースにしている仕組みであるため、デザインのバリエーションは有限、すなわち数に限りがあるようです。
「AI」と聞くと、学習能力やクリエイティブな能力があるような気がしますが、ゼロからグラフィックを生み出す力は、今のロゴメーカーには備わっていないようです。基本的にはテンプレートをベースに、何らかの微細な編集・調整を内部で行ったものが生成・提示されています。
ですので利用者がある希望の方向性のロゴを思い描いていて、その通りのデザインが生成・提示されるまで繰り返しロゴメーカーに修正指示与えても、満足いく結果が出てこないことは珍しくありません。つまり、ある入力に対する答えとなるデザインは決まっていて、その中から最も好みに近いロゴを選ぶしかないと考えた方が良いでしょう。
◆ロゴタイプのデザインはほぼできない
ロゴにはシンボルマークを有する「ロゴマーク」と、シンボルマークを持たない文字をデザインしロゴ化した「ロゴタイプ」の2種類がありますが、ロゴメーカーはロゴタイプのデザインはほとんどできないようです。ロゴメーカーに「ロゴタイプ」や「タイポグラフィ」というロゴの種類を表す入力を与えると、いくつかロゴタイプのデザイン案が生成・提示されることがありますが、いずれもユニークな既存をフォントを配置しただけで、オリジナルの字体でロゴタイプがデザインされる訳ではありません。
これも、ロゴメーカーが基本的にはテンプレートをデザインソースとしたロゴ作成をする仕組みとなっていることに起因しています。文字に対しては「フォント」というテンプレートがいくつか設定されており、その中から好みのものを選ぶという仕組みにしかできないのが現状のようです。
◆利用者がデザイン編集できる範囲には限りがある
評価できる点のほうに、「自分がデザインしたという満足感・達成感が得られる」という内容を挙げ、ロゴメーカーはロゴ作成過程でデザイン編集できる余地をあえて残していることを紹介いたしました。しかし実際にその編集機能を使ってみると、無料版でも有料版でもデザイン編集できる範囲には限りがあることが分かりました。字体や色、各パーツのサイズ変更や回転などは可能ですが、図形そのものの形を変えたり、ディテールを修正したりなどはできず、決まった範囲の中でしか編集できないようになっています。ですので、ある程度好みの方向性にロゴデザインを作り上げることはできるかもしれませんが、完全に満足できる仕上がりまで期待するのは難しいのではないかと思います。
◆知的財産権が不透明
ロゴをはじめとしたデザイン・制作物には、制作者および制作物の権利を守る知的財産権が生じています。ロゴにおいてはその中でも特に著作権と商標権について議論されることが多いですが、ロゴメーカーで作成したロゴについてはこれらの権利について不透明な部分がまだまだ多くあります。
デザイナーなど「制作者」がはっきりしているロゴの場合、例えばその著作権は制作者が有したままか、依頼者に譲渡されるかのいずれかが選択できます。しかしロゴメーカーで作成するロゴは、デザインソースがストックされたテンプレートであるため、そのテンプレートの著作権は、テンプレートを制作した人もしくはテンプレートを保持しているロゴメーカー運営者が有していることになります。多くの場合、テンプレートはフリー素材として扱われ、著作権は放棄された扱いとなっているはずですが、ロゴメーカーによっては下記のように、ロゴメーカーで作成したロゴの商標登録が禁止されている場合があります。
そもそも、商標登録をするロゴマークは、固有のデザインでなければなりません。Canvaのテンプレートや素材は、誰でも使うことができるため、Canvaの素材だけでロゴを作成すると、他の人と同じようなロゴデザインになってしまう可能性があります。そのため、無料であっても有料であっても、Canvaの素材で作ったロゴは商標登録することはおすすめしません。
引用:https://www.canva.com/ja_jp/learn/commercial-use/
しかし、Canvaの素材でも、四角形や丸などの一般的な図形や線を使ってロゴを作成した場合は、商標登録をすることは可能です。また、オリジナルで作成したロゴデザインをCanvaにアップロードして、Canva上でフォントを追加してロゴを作成することも問題はありません。Canvaのロゴテンプレートは、あくまでもデザインの参考程度として使い、オリジナルのロゴを作成して商標登録するようにしましょう。
また近年、生成AIで作られた制作物の知的財産権について議論がなされていますが、まだ明確な社会通念上の結論は出ていません。ですのでロゴメーカーでロゴを作った場合、知的財産権に触れるような使い方には十分注意が必要と考えられます。
以上のようにプロのロゴデザイナーによってロゴメーカーの分析・評価を行ってまいりましたが、結論として、現時点ではまだロゴメーカーはデザイナーやロゴ制作サービス、すなわち人の代わりにはならないということ分かりました。
その理由として、ロゴメーカーはツール・サービスとして評価できる点より注意すべき点の方が多いこと、そしてロゴデザインで最も大切な以下2点のプロセスがきちんと踏めるほどまだ仕組みやシステムが成熟していないことが挙げられます。
イメージ共有を図ることができない
ロゴを作ろうと考えているノンデザイナーの方のほとんどは、ぼんやりしたイメージしか思い浮かばないままグラフィックデザイナーやロゴ制作サービスにロゴの作成を依頼します。ですので当然最初に出てくるデザイン案が完全にイメージと一致することはほとんどなく、何度か修正や調整を繰り返してようやく希望通りのロゴが出来上がるものです。
このトライ&エラーの繰り返しこそがロゴデザインではとても重要なプロセスで、依頼者のイメージをカメラに例えると、フォーカスによってぼんやりしたピントをしっかり合わせる作業のようなものでしょう。この時、依頼者の「全体的にもっと〇〇なイメージで」「もう少し〇〇な感じで」といった、具体的ではないけれどイメージに近づけるための言葉がとても大切になります。デザイナーはその言葉をもとにデザイン案をどんどんブラッシュアップしていくからです。
ロゴデザインは、依頼者とデザイナーとの間で「イメージ共有」が図られることで、初めてぼんやりしたイメージがしっかりとした形になっていくのです。そしてそのためには繰り返し対話を行うことが大切になります。ロゴメーカーにも依頼者から一方的にキーワードを入力する仕組みはありますが、ロゴメーカー側がその意図をしっかりと汲み取るまでには至っておらず、偶然イメージ通りの案が提示されることを期待するしかないのです。またその偶然の確率はかなり低いものと思われます。
個性的かつオリジナリティあるデザインは生み出せない
ロゴは長い歴史の中で数えきれないほど生み出され、デザインのバリエーションはもはや出尽くしたとも言われています。ですのでロゴメーカーは、過去のデザインを参照し、汎用的に使えるデザインや定番のデザインをかき集め、仕組みの根幹となる膨大な数のテンプレートストックを作り上げたのです。しかし皮肉にもそれが原因で、ロゴメーカーの作ったロゴには「どこかで見たことがあるようなデザイン」といった既視感があり、オリジナリティという点では常に物足さを感じさせてしまうという弊害が伴ってしまっています。
ロゴのデザインにおいて特に多いリクエストは「個性」です。デザイナーはそのリクエストに応えられるように、自分の感性を磨き、作風を確立させようとします。そして個性的でオリジナリティのあるデザインは必ずしも万人受けするものではありません。デザインの評価は突き詰めると主観的なものなので、ロゴを求める人の好みに依存してしまう傾向にあります。ですので何かしらのこだわりを持ってロゴを作りたいと考えている人にとって、現在のロゴメーカーでは対応はし切れず、結局自分の好みのデザインが作れそうなグラフィックデザイナーやロゴ制作サービスへ依頼することになっているのだと思います。
感性や作風の生成やストックまでカバーしたロゴメーカーを作り出すのはかなり難しいことのように思いますが、もしそれができた時は、グラフィックデザイナーやロゴ制作サービスにとって脅威となる存在になっていくでしょう。
以上のように、ロゴメーカーが作ったロゴのクオリティが、グラフィックデザイナーやロゴ制作サービスが作ったロゴに及ぶほど現段階ではまだ技術や仕組みが成熟していないことが分かったかと思います。よって、現段階のロゴメーカーはあくまでDIY的にロゴを作成するためのツールという位置付けだという総評になるかと思います。
まとめとして、ここまで紹介してきた3形態のサービスの特徴を、利用者にとって大切な「①利用者に必要な労力」「②希望のデザインが手に入る可能性」「③納品データの提供金額」という観点で比較してみたいと思います。
◆無料提案型
無料提案型によるロゴデザインサービスでは、希望するデザインの内容を言葉で伝えれば、あとはお任せでロゴデザインを無料で提案してもらうことができます。そのプロセスは他のロゴ作成サービスに頼むのと同じで、最初のデザイン提案だけがサービスで無料になっていると考えて差し支えありません。ですので利用者自身にクリエイティブな労力は全く必要なく、どんなデザインにしたいか「想い」だけ整理しておけば自動的にロゴ作成を行ってもらうことができます。
◆ストックロゴ型
ストックロゴ型では、既にデザインされた数あるストックロゴの中から希望のデザインを購入者自身が「探し」、「選ぶ」という労力が必要になってきます。サービスによってはストックしてあるロゴの数が数万にも及ぶことから、こだわればこだわるほど選定作業は大変なものになってきます。またデザイン自体はほぼ出来上がっているものの、色やディテールの調整や、ロゴタイプ部分のデザインについては利用者自身が考えて担当に指示しなければならないため、クリエイティブな労力も少々発生するでしょう。
◆ロゴメーカー型
ロゴメーカー型は、デザインして欲しい内容を言葉で入力するだけでそれに基づいたデザインをAIが自動で生成する、いうのが基本の仕組みとなっています。ですのでどんなキーワードを入力するかが非常に重要で、希望のデザインを手に入れるためにはキーワード選びのトライ&エラーを繰り返し行う必要があります。キーワード選びのコツは、サービスの扱い方に慣れてくれば掴めるようになると思いますが、初めてロゴを作る方にいきなりそれはなかなか難しいかもしれません。
またロゴメーカー型のサービスで希望のデザインがすぐに出てくるかどうかは、サービスに導入されているサポートAI技術のレベルにも大きく左右されます。高いAI技術が導入されていればスムーズにロゴは生成されますが、AIの技術レベルが低い、もしくは導入されてない場合は、既存のデザインテンプレートの中から希望の形に近いものを選び、ブラウザ上でそれを希望のデザインに自ら修正・調整しなければなりません。まだAI技術が成熟していない現在においては、後者のようなロゴメーカー型サービスが多く、ストックロゴ型より大きな労力が必要になるケースが少なくない印象です。
以上のように、サービス利用者に必要となる労力で比較すると、成果報酬型は「〇:ほぼ必要ない」、ストックロゴ型は「△:部分的に必要となる」、ロゴメーカー型は「△~×:全面的に必要となる場合がある」という結果といえるでしょう。
無料提案型 | ストックロゴ型 | ロゴメーカー型 | |
①利用者に必要な労力 | 〇 ほぼ必要ない | △ 部分的に必要 | △~× 部分的~全面的に必要 |
◆無料提案型
無料提案型によるロゴ作成は、前述した通りそのデザインプロセスは他のロゴ作成サービスに頼むのと同じですので、担当デザイナーがデザインを怠らない限り、基本は利用者の希望に沿ったオリジナルデザインのロゴが提案されます。デザイナー側としては、利用者の心に刺さるデザインが提案できなければ一銭もお金は入らず、行った作業はすべて水の泡と化してしまうことから、よっぽどの理由がない限り、希望のデザインに近いものが提案される確率は高いと考えて良いでしょう。
◆ストックロゴ型
予めロゴをデザイン、ストックし、それを購入してもらう仕組みであることから、デザイナーは常に「売れそうなデザイン」を考えながらロゴを作る傾向があります。その時々で注目されている業界や業種を把握し、流行やトレンドを意識しながら作ることも多く、そのため購入者の希望に沿ったデザインのロゴがストックされているとは限らないのです。そのため希望のデザインが手に入るかどうかはある程度運任せなところがあり、ストック数が多ければ多いほど希望のデザインがある可能性は高まるということになります。
◆ロゴメーカー型
ロゴメーカー型ロゴデザインサービスで希望のロゴデザインができるかどうかについて、AIの技術レベルに依存してしまうのは前述の通りですが、利用者自らがブラウザ上で好きな形に修正・調整するのは可能であるため、理論上は希望のデザインにすることが可能です。しかし実際は、AIが生成したデザインがベースになることから、そのベース自体が希望のデザインから大きくかけ離れていると、結局はゼロから自作するのと何も変わらない状況になってしまいます。つまり完全にサービスの力だけで希望のデザインが手に入れられる訳ではなく、結局は利用者のデザインセンス頼りになってしまうことも多いのです。
以上のように、希望のデザインが手に入る可能性で比較すると、成果報酬型は「〇:高い」、ストックロゴ型は「△:ストック数による」、ロゴメーカー型は「△~×:結局は操作者のデザインセンス頼りになることも多い」という結果といえるでしょう。
無料提案型 | ストックロゴ型 | ロゴメーカー型 | |
②希望のデザインが手に入る可能性 | 〇 高い | △ ストック数による | △~× 結局は利用者のデザインセンス頼りになることも多い |
◆無料提案型
結論からいうと、無料提案型ロゴデザインサービスで提案されたロゴデザインを採用し、完成したロゴのデータを提供してもらう場合その費用は決して安くありません。場合によっては無料提案サービスを行っていない通常のロゴ作成サービスより高いこともあります。サービス側からすれば、かかった労力が無駄になるリスクを背負って行っていることから、採用時の料金が高くなるのは当然という考えなのかもしれません。また成果品として渡されるものについても、支払う料金によって異なる場合があります。たとえばデザインが編集可能なaiファイルという元データや、ロゴの知的財産権(著作権)の譲渡は、サービスによって基本料金に含まれている場合とそうでない場合があります。これらはサービス利用前にしっかり確認しておく必要があるでしょう。
◆ストックロゴ型
ストックロゴ型ロゴデザインサービスのサイトでは、誰でも無料で閲覧できるように、既にデザインされた何千、何万とあるロゴが並べられてあります。そしてそのロゴには全て値札がつけられており、その金額を支払うとデータが提供される仕組みになっているのです。金額はロゴによって異なり、またサービスによって相場も変わりますが、無料提案型ロゴ作成サービスよりはうんと安い料金設定となっています。またほとんどのサービスでaiファイルの納品、著作権の譲渡は料金に含まれており、初めての人でも利用しやすいのではないかと思います。
◆ロゴメーカー型
ロゴメーカー型ロゴデザインサービスの場合、完成したロゴのデータについては基本的には無料で提供されます。しかし提供されるのは解像度の小さい画像のみであることがほとんで、aiファイルのような編集可能なデータを提供してもらうためには、有料版へのサービス登録が求められます。登録するには月額・年額での契約が必要となり、無料提案型・ストックロゴ型のような成果への対価とは違う費用となるため単純比較することはできません。ただ、ロゴは通常様々な場所・箇所へ適切な大きさで使用することから、無料とはいえ、サイズが編集できない画像データのみを提供されても困ることになってしまうでしょう。
以上のように、ロゴデータがいくらで提供されるのかを比較すると、成果報酬型は「×:相応の費用がかかる」、ストックロゴ型は「△:比較的安い」、ロゴメーカー型は「〇~△:編集可能なデータが必要な場合無料ではない」という結果といえるでしょう。
無料提案型 | ストックロゴ型 | ロゴメーカー型 | |
③納品データの提供金額 | × 相応の費用がかかる | △ 比較的安い | 〇~△ 編集可能なデータが必要な場合無料ではない |
以上、各無料ロゴデザインサービスについて3つの観点から比較しましたが、それぞれ提供されるサービスの質は異なり、一概にどのサービスが良いとは言い切れません。しかしどのサービスにも特色があり、ご紹介したサービスのいずれかは、きっとロゴづくりを考えている方の希望を叶えてくれることと思います。
そして、冒頭にも述べました通り、
「思い通りのロゴが手に入らないのにお金を払わなければならない・・・。」
この問題はきっと解決したのではないかと思います。
このコラムを参考にして頂き、高い満足度が得られるロゴづくりがができることを願っております。
無料提案型 | ストックロゴ型 | ロゴメーカー型 | |
①利用者に必要な労力 | 〇 ほぼ必要ない | △ 部分的に必要 | △~× 部分的~全面的に必要 |
②希望のデザインが手に入る可能性 | 〇 高い | △ ストック数による | △~× 結局は利用者のデザインセンス頼りになることも多い |
③納品データの提供金額 | × 相応の費用がかかる | △ 比較的安い | 〇~△ 編集可能なデータが必要な場合無料ではない |
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