ロゴ制作・ロゴデザインを依頼するならsynchlogo(シンクロゴ)
COLUMN
会社やお店をはじめた方、サービスや商品の提供・販売をはじめた方にとって、そのシンボルとなるロゴをどうやって作成するかは大きな課題のひとつです。自分で作ろうと試みるも、どうやってデザインして良いか分からない、デザインイメージが湧かない、デザインツールを操作できないなど、様々なハードルに直面し、その結果ロゴ作成自体を諦めてしまうことも少なくないのではないかと思います。
近年そのニーズに応えるように、インターネット上に「ロゴメーカー」や「ロゴジェネレーター」なるサービスが次々と現れ出しました。ロゴメーカー・ロゴジェネレーター(以下、「ロゴメーカー」とだけ記します)とは特別なソフトなどを必要とせず、利用者自身の手で簡単にロゴ作成ができるようになるロゴ作成支援サービスです。基本的にインターネットブラウザ上で操作するものですが、サービスによっては近年一般的になってきたAI(人工知能)技術を利用しているものもあり、非常に高度な技術や仕組みが取り入れられる分野となりつつあります。
そしてこのロゴメーカー、現在もなお様々な企業の開発・運営によって増え続けており、ロゴ作成に関するインターネット検索結果の上位では、このロゴメーカーに関するサイト記事が多くヒットするようになり、ロゴの業界にかなり浸透していることが窺えます。またロゴメーカーは基本無料でロゴ作成支援のサービスを提供していることから、これまでロゴデザインを仕事として請け負ってきたグラフィックデザイナーやロゴ制作サービスの脅威となる存在になるとまで言われ始めています。
しかしこのロゴメーカー、開発・運営が始まってからまだそれほど時間が経っていないため、実際の使用感やクオリティに関する分析はまだあまりなされていません。同サービスの紹介記事等はインターネット上にたくさんあるのですが、ロゴメーカーというサービスそのものを深く調べ、グラフィックデザイナーやロゴ制作サービスにロゴ作成を依頼した場合に比べてどうか、といった客観的な評価はさほど見当たらないのです。
そこでこのコラムでは、プロのロゴデザイナーが実際にロゴメーカーを使い、分析してみて、そこで分かった客観的な評価をまとめていきたいと思います。
ロゴを作りたいと考えている人がこれを読めば、ロゴメーカーが本当に役に立つサービスであるかどうかがきっと分かると思います。
【目次】
まずはじめにロゴメーカーというサービスとはそもそもどういうものなのか、どこの会社がどのようにサービス展開しているのかを解説していきたいと思います。
ロゴメーカーは外国語で使用する海外のものも多くありますが、ここでは日本語入力で使えるロゴメーカーを4つほど紹介したいと思います。またロゴメーカーの種類は「AI生成」の技術を使っているかどうかで2つに分けることができます。
◆Canva(https://www.canva.com/)
Canvaは2013年にリリースされたオンラインビジュアルツールキットで、日本版は2017年5月にリリースされました。開発したのはオーストラリアで創業したCanva Pty Ltdで、「すべての人が、どこからでも、デザインで輝けるようにすること」をミッションに、オンラインのグラフィックデザインおよび印刷サービスなどを展開しています。
Canvaの特徴は豊富なデザインストックで、61万点のテンプレートと、1億点の素材(写真、動画、イラスト、音楽)に加え、生成AIの技術も駆使し、Webブラウザ上で利用者自らが様々なものを簡単にデザインすることを可能としています。デザインできるものは幅広く、ロゴの他にもポスターやフライヤー、名刺、パンフレットといったビジネスツールから、手紙、履歴書、レポートといったプライベートなもの、またSNSに投稿する画像まで作ることが可能です。
ロゴの作り方も非常に簡単かつ直感的で、次章にてその実践例を詳しく紹介いたしますので是非そちらもご覧ください。
◆Wix(https://ja.wix.com/logo/maker)
Wixは、2006年に設立したイスラエルのWix社が2008年にβ版をリリースしたWebサイトを構築できるCMS(Contents Management System)サービスで、その一機能としてロゴメーカーのサービスが備えられています。
ロゴ作成の仕組みはCanvaと同じように、業種や業態・スタイルなどを入力すると生成AIによって複数のデザインが自動的に提案されるというものですが、Wixでは2択による好みのデザイン選択をを何度か行い、より希望に近いデザイン提案がなされるという工夫が実装されているのが特徴です。
◆Hatchful(https://www.shopify.com/jp/tools/logo-maker)
2004年にカナダで設立されたShopify社が開発したHatchfulは、ECサイト構築や運営ができる社名と同じ名前の「Shopify」というサービスが提供しているロゴメーカーです。なおShopifyのほかのサービスを利用しなくても無料で利用することができます。
使用方法ですが、業界とデザインのスタイルを選択し、シンボルマークに添える名称を入力すれば、そのまますぐ使えるロゴが出来上がります。なおこのサービスはAI技術を使用していないため、選択した業界とスタイルに基づいて、ストックされている数多くのテンプレートからロゴが作成されます。生成AIを使用しておらず、また選択する情報が「業界」と「スタイル」だけのため、イメージとは異なるロゴが提案されることもありますが、定番デザインなどにとらわれない、自由な発想を得ることができると捉えることもできるでしょう。
◆DesignEvo(https://www.designevo.com/jp/)
DesignEvoは、2016年に設立したPearlMountain社は香港に本社があるグラフィックスおよびマルチメディアソフトウェアの専門開発会社によって開発されたロゴメーカーです。
DesignEvoもHatchful同様AI技術は使用されておらず、利用者自身が豊富なテンプレートから気に入ったデザインを選ぶという仕組みとなっています。しかしHatchfulとは異なり、DesignEvoでは利用者自らが検索窓にキーワードを入力、もしくはカテゴリーから希望に近いものを選ぶことで、候補となるテンプレートを表示させるという操作方法となっています。
次に、ロゴメーカーでロゴを作る基本的な手順を紹介していきたいと思います。ロゴメーカーによって多少異なりますが、大まかな手順はどれも共通しており以下の通りです。
①名称・業種・スタイル・ジャンル・モチーフ・形・色などの情報を入力もしくは選択。
②入力した情報に沿ってロゴメーカーが複数のロゴを提案。その中からイメージに近いものを選択する。
③選択したロゴの文字や色、形などデザインを修正・調整する。
④必要なデータ形式を選択しロゴデータをダウンロードする
入力できる情報が限られていたり、修正・調整できるデザインの部分が限られていたりするなど、使うロゴメーカーによって制約もあるようですが、基本的な手順はどのサービスもほぼ同じです。
それではロゴメーカーによるロゴ作成手順の例を、有名なロゴメーカーのひとつである「Canva」を実際使ってみた例で紹介していきたいと思います。ここでは架空のカフェを題材に、無料版でどこまできちんとデザインできるかを実践してみたいと思います。
STEP1.
まずはCanvaのサイトにアクセスします。Canvaはロゴだけでなく様々な制作物を作ることができますが、今回は制作メニューにある「ロゴ」をクリックします。
STEP2.
クリックするとページが変わりキャンバスのような白い四角形の描画フレームが画面に出てきます。また画面左上を見ると検索窓と、その下に「テンプレート」「スタイル」という制作方法を選ぶボタンがあります。ここではカフェのロゴを、最も簡単なテンプレートを使った方法で進めていきたいと思います。
「テンプレート」のボタンをクリックした後、検索窓に「カフェ」というワードと、ロゴのモチーフに用いたい「コーヒーカップ」というワードを入力して検索してます。
STEP3.
すると画面左側にいくつか候補となるロゴのテンプレートが出現します。期待していた通り、コーヒーカップがモチーフのカフェっぽいロゴのデザインテンプレートが出てきました。スクロールしていくとたくさんのテンプレートを見ることができますが、ここでは最上部左側にあるオーソドックスなテンプレートを使って「SYNCHLOGO CAFE」という店名のロゴを作っていきたいと思います。
STEP4.
テンプレートをクリックすると、キャンバスに拡大されたそのテンプレートが表示されます。テンプレートのロゴにポインタをマウスオーバーさせてみると、どうやらコーヒーカップのマーク、コーヒー豆の図形、文字全ての何らかの編集ができそうな反応が起きます。
STEP5・STEP6.
まずはコーヒーカップのまわりに弧を描くように書かれている文字部分を「SYNCHLOGO CAFE」という店名に編集してみたいと思います。ここでは「SYNCHLOGO CAFE」だけでは文字数が少なすぎて間延びした雰囲気になりそうでしたので、テンプレートの元々の文字数に近づくよう「SYNCHLOGO CAFE * COFFEE & FOOD」としてみました。
STEP7.
次はコーヒーカップのマークを編集してみたいと思います。ここではマークの下にある「CAFE & REST」という文字は不要なので消し、その分空いたスペースが埋まるようにコーヒーカップ大きくしました。
STEP8.
右下にあるコーヒー豆のおさまりが少々悪いような気がしたため調整していきます。元々あった豆のサイズを小さくし、複製・回転を行うことで不自然な感じがしないように豆の数を増やすことができました。
STEP9・STEP10.
次は色の調整を行ってみます。背景をグレーにし、文字や図形を全て白の単色にしましたが、背景・文字・図形それぞれの色を個別に調整することができました。色は好きな色を作ることもできますし、サムネイルで表示されているデフォルトカラーから選ぶこともできます。
STEP11・STEP12・STEP13.
最後に作成したロゴのデータを自分のパソコンへダウンロードします。画面右上にある「共有」ボタンをクリックすると、「ダウンロード」のメニューが表示されます。ファイル形式はJPG・PNG・PDFは無料サービスの範囲内でデータ化し、ダウンロードすることができますが、SVGは有料のプランを契約しなければ作れないようです。また画像データについても、無料サービスの範囲では作成できるサイズに限りがあり、例えばPNGでは最大で500×500pxまでしか作成することができませんでした。
STEP14.
こうして完成したロゴの画像データがこちらです。データは問題なくパソコンで開くことができました。
このように、無料版でも基本的な機能は使うことができ、ロゴを形にすることは可能でした。しかし前章でも紹介した通り、SVGのようなベクター形式のロゴデータ(画像ではない編集可能なデータ)を入手しようとするには有料版の契約をしなければならないなど、無料版ではできないこともいくつか見つかりました。また作成過程おいても、無料版では使えない機能がたくさんあることは垣間見えており、有料版を使えばもっとイメージに近いロゴが作れそうな気はしました。
そこでここでは、有料版にするとできるようになることを整理し、その代表的なものを紹介していきたいと思います。
1.有料版のデザインテンプレートが使えるようになる
サービスによっては、無料版ではストックされているデザインテンプレートの一部しか使えない場合があります。無料版では比較的使いやすいものやシンプルなロゴテンプレートが多い中、有料版では個性的なデザインや複雑な図形のテンプレートが使え、デザインの幅を広げることができます。また無料版のテンプレートは多くの利用者が使っているため、デザインが被ることも起きるでしょう。
2.独自のフォントをアップロードして使うことができるようになる
シンボルマークに添えるロゴタイプなど、ロゴに文字を使用する際、無料版ではロゴメーカー内に準備されているフォントから選ぶことしかできません。しかしサービスによっては、有料版にすれば独自のフォントをロゴメーカーへとアップロードし、使用することができるものもあります。個性的な文字、オリジナリティある字体が希望であればこの機能を使うしかありません。
3.高度な編集作業がができるようになる
ロゴテンプレート内にある図形の位置変更や回転、複製といった簡単な編集をすることは無料版でもある程度はできます。しかし高度な編集作業、あるいは新しい図形・アイコンの追加などは有料版でなければできないことも多く、オリジナティあるデザインや既視感のないデザインを実現するには、テンプレートをそのまま使うことはせず、多くの手が加えられる有料版にて制作を行うとよいでしょう。
4.編集可能なロゴデータを入手することができるようになる
前章でも紹介しましたが、無料版のロゴメーカーでは作成したロゴを編集可能なデータでダウンロードすることができないようになっていることが多くあります。ロゴはあらゆる媒体で、様々なサイズで使われることから、それぞれの仕様に適したデータに編集することが基本です。しかし無料版では決まったサイズ、決まった形式のデータでしかダウンロードできない仕様になっています。有料版にすることで、色々な画像形式に変換、また編集可能なベクター形式のデータでのダウンロードができるようになります。
さて、ここからはプロのロゴデザイナーであるsynchlogoのデザイン担当が実際にロゴメーカーを分析しながら使用して得た客観的な評価を紹介したいと思います。ノンデザイナーによる使用感を紹介した利用者目線の評価は過去いくつかなされているようですが、作り手(デザイナー)目線の評価はこれまでほとんど行われてきませんでした。ロゴメーカーがデザイナーの代わりになるかどうか、また安心して使って良いツールなのかどうかについて、ここでは「評価できる点」と「注意が必要な点」を詳しく解説してまいりたいと思います。
◆とにかく安くロゴを作ることができる
デザインのクオリティ、ダウンロードできるデータ形式のバリエーションにこだわらなければ、とにかく安くロゴを作ることができるというのは純粋に評価できると思います。AI生成技術や検索システムを駆使し、ロゴを作る工程にマンパワーを必要としないことでその仕組みが実現できているのだと思います。また対象としている業種や業態もある程度カバーされており、デザインのスタイルも色々あることから、多くの利用者を満足させることができているでしょう。
デザイナーやロゴ制作サービスにロゴ制作を依頼する時、「払った金額に見合った成果が得られるのか」という心配があると思います。プロに依頼するのは決して安くはないため、思い通りの結果が得られなかったらどうしようと不安になり、依頼を躊躇することはよくあると思います。
しかしロゴメーカーの場合そのほとんどが無料で使え、有料版でもプロに依頼する金額に比べればかなり少額の費用しかかからないため、気軽に試してみることができるというメリットがあります。ロゴメーカーはそういった方々に有難いサービスなのではないかと思います。
◆誰でも簡単にロゴを作ることができる
グラフィック作成ツールなど特別なソフトを必要とせず、インターネットブラウザだけで作成することができ、成果品データまで得られることから、パソコンを普段使っている程度の知識があれば誰でも簡単にロゴを作ることができるのは大きく評価できるでしょう。ロゴ作成を自分でやろうとすると、まずソフトを準備しなければいけない、そのソフトの使い方を覚えなければいけないという大きなハードルがあります。そして、ノンデザイナーにはそもそもロゴというグラフィックを描くセンス・技術は備わっていないため、仮にソフトが使えるようになったとしても、そう簡単に自らロゴを作ることはできない訳です。
その課題を解決させたのがどのロゴメーカーにも備えてあるAI技術や検索システムで、言葉(キーワード)からロゴというヴィジュアルを生成できるようにした点は素晴らしいと思います。また生成されるロゴが1つではなく、複数の候補を提示してくれる点も、利用者の気持ちを考えた良い機能ではないでしょうか。さらに、入力するキーワードを変えたり追加したりするなど、よりイメージに近いロゴが表示されるまで気軽に何度もトライ&エラーが行えるのもロゴメーカーならではの特徴ではないかと思います。
◆自分がデザインしたという満足感・達成感が得られる
誰かに任せるのではなく、自分でロゴをデザインするというロゴメーカー特有の仕組みによって利用者は大きな満足感・達成感を得られるのですが、実はこれがロゴメーカーで一番評価されるべき点ではないかと思います。
どのロゴメーカーも、ロゴ作成を完全に自動化したものにはなっておらず、どのデザインがいいかを選ばせたり、字体・色などを変更させたりするなど、編集できる余地を多く残すことで、利用者に「自分がデザインした」と感じてもらえるようにしています。ですので冒頭にも描きましたが、ロゴメーカーは「ロゴ自動作成サービス」ではなく「ロゴ作成支援サービス」と位置付けられるのです。
完全に自動化した方が良いのでは?と思う方もいるかもしれません。しかしこれは様々なクリエイティブの中におけるロゴ特有の感覚ではないかと思うのですが、起業・開業する人は皆、心のどこかで「できればロゴは自分で作りたい」と考えているものなのです。
ロゴとは自身が立ち上げた会社・お店・サービスなどを象徴するシンボルであり、起業・開業の記録でもあることから、起業・開業する人のロゴに対する感情には特別なものがあります。ですからロゴメーカーは、ロゴ作成を完全に自動化するのではなく、あえてロゴ作成を「支援」するところまでに留めているのではないかと思います。
◆抽象的なキーワードに対する対応力はあまり高くない
ロゴメーカーは、入力するキーワードなどをヒントにロゴデザインを複数案生成・提示してくれますが、その中に想像していたイメージとは異なる案が多く出てくることがあります。入力するキーワードがロゴのモチーフにしやすい具体的なモノであれば、イメージに近いものが生成・提示される確率は高まりますが、抽象的なキーワードほどイメージとはかけ離れたデザインが生成・提示されやすくなるようです。
実践例のカフェのロゴでは、カフェのロゴだと一目で分かるようにするために「カフェ コーヒーカップ」というキーワードを入力し、ほぼイメージ通りのデザインが生成されました。
しかしこのキーワードを「カフェ わかりやすい」という抽象的な入力に変えた途端、下の結果のように、いわゆるコーヒーを提供するカフェとは異なるデザインのロゴばかりが生成されるようになってしまいました。
このように、しっかりしたデザインのイメージがあれば、ロゴメーカーに入力するキーワードも具体的になり、イメージ通りのロゴは手に入りやすそうですが、デザインのイメージがあやふやだと、ロゴメーカーに入力するキーワードは抽象的になりがちで、その結果イメージ通りのロゴは出てきにくい傾向になると考えられます。つまり結局のところ、ロゴメーカーを使う時点でデザインのイメージがしっかり出来ていないと、満足できるロゴは得られにくいということになるでしょう。
◆複数のモチーフを組み合わせるロゴデザインは苦手
実践例のカフェのロゴのように、1つのモチーフ(コーヒーカップ)を主体としたデザインを生成・提示することはできるロゴメーカーですが、2つ以上のモチーフを組み合わせたデザインではどうでしょうか。
たとえば、下に示したsynchlogoで以前作ったコーヒーカップと植物の葉とハートマークを組み合わせたロゴなどは、3つのモチーフを上手く組み合わせてデザインした例です。ではこのようなロゴをロゴメーカーが作れるかというと、どのようにキーワードを入力しても作り出すことはできません。それぞれのモチーフを並べただけのデザインは生成・提示されることはありますが、モチーフの形を組み合わせ、ひとつの図形に仕上げるようなデザインはなかなかできないのが現状です。
ロゴメーカーのAI生成技術が発展する、ストックされているデザインテンプレートの量が増えるなどすれば、このようなロゴを作り出すこともできるようになるかもしれませんが、現時点で複数のモチーフを組み合わせるロゴデザインは、ロゴメーカーにとって苦手なジャンルであると言わざるを得ないでしょう。
◆修正指示を繰り返し与えても必ずしも思い通りの結果となる訳ではない
AI生成技術を用いたロゴメーカーもそうでないロゴメーカーも、いずれもストックされているテンプレートをデザインのベースにしている仕組みであるため、デザインのバリエーションは有限、すなわち数に限りがあるようです。
「AI」と聞くと、学習能力やクリエイティブな能力があるような気がしますが、ゼロからグラフィックを生み出す力は、今のロゴメーカーには備わっていないようです。基本的にはテンプレートをベースに、何らかの微細な編集・調整を内部で行ったものが生成・提示されています。
ですので利用者がある希望の方向性のロゴを思い描いていて、その通りのデザインが生成・提示されるまで繰り返しロゴメーカーに修正指示与えても、満足いく結果が出てこないことは珍しくありません。つまり、ある入力に対する答えとなるデザインは決まっていて、その中から最も好みに近いロゴを選ぶしかないと考えた方が良いでしょう。
◆ロゴタイプのデザインはほぼできない
ロゴにはシンボルマークを有する「ロゴマーク」と、シンボルマークを持たない文字をデザインしロゴ化した「ロゴタイプ」の2種類がありますが、ロゴメーカーはロゴタイプのデザインはほとんどできないようです。ロゴメーカーに「ロゴタイプ」や「タイポグラフィ」というロゴの種類を表す入力を与えると、いくつかロゴタイプのデザイン案が生成・提示されることがありますが、いずれもユニークな既存をフォントを配置しただけで、オリジナルの字体でロゴタイプがデザインされる訳ではありません。
これも、ロゴメーカーが基本的にはテンプレートをデザインソースとしたロゴ作成をする仕組みとなっていることに起因しています。文字に対しては「フォント」というテンプレートがいくつか設定されており、その中から好みのものを選ぶという仕組みにしかできないのが現状のようです。
◆利用者がデザイン編集できる範囲には限りがある
評価できる点のほうに、「自分がデザインしたという満足感・達成感が得られる」という内容を挙げ、ロゴメーカーはロゴ作成過程でデザイン編集できる余地をあえて残していることを紹介いたしました。しかし実際にその編集機能を使ってみると、無料版でも有料版でもデザイン編集できる範囲には限りがあることが分かりました。字体や色、各パーツのサイズ変更や回転などは可能ですが、図形そのものの形を変えたり、ディテールを修正したりなどはできず、決まった範囲の中でしか編集できないようになっています。ですので、ある程度好みの方向性にロゴデザインを作り上げることはできるかもしれませんが、完全に満足できる仕上がりまで期待するのは難しいのではないかと思います。
◆知的財産権が不透明
ロゴをはじめとしたデザイン・制作物には、制作者および制作物の権利を守る知的財産権が生じています。ロゴにおいてはその中でも特に著作権と商標権について議論されることが多いですが、ロゴメーカーで作成したロゴについてはこれらの権利について不透明な部分がまだまだ多くあります。
デザイナーなど「制作者」がはっきりしているロゴの場合、例えばその著作権は制作者が有したままか、依頼者に譲渡されるかのいずれかが選択できます。しかしロゴメーカーで作成するロゴは、デザインソースがストックされたテンプレートであるため、そのテンプレートの著作権は、テンプレートを制作した人もしくはテンプレートを保持しているロゴメーカー運営者が有していることになります。多くの場合、テンプレートはフリー素材として扱われ、著作権は放棄された扱いとなっているはずですが、ロゴメーカーによっては下記のように、ロゴメーカーで作成したロゴの商標登録が禁止されている場合があります。
そもそも、商標登録をするロゴマークは、固有のデザインでなければなりません。Canvaのテンプレートや素材は、誰でも使うことができるため、Canvaの素材だけでロゴを作成すると、他の人と同じようなロゴデザインになってしまう可能性があります。そのため、無料であっても有料であっても、Canvaの素材で作ったロゴは商標登録することはおすすめしません。
引用:https://www.canva.com/ja_jp/learn/commercial-use/
しかし、Canvaの素材でも、四角形や丸などの一般的な図形や線を使ってロゴを作成した場合は、商標登録をすることは可能です。また、オリジナルで作成したロゴデザインをCanvaにアップロードして、Canva上でフォントを追加してロゴを作成することも問題はありません。Canvaのロゴテンプレートは、あくまでもデザインの参考程度として使い、オリジナルのロゴを作成して商標登録するようにしましょう。
また近年、生成AIで作られた制作物の知的財産権について議論がなされていますが、まだ明確な社会通念上の結論は出ていません。ですのでロゴメーカーでロゴを作った場合、知的財産権に触れるような使い方には十分注意が必要と考えられます。
以上のようにプロのロゴデザイナーによってロゴメーカーの分析・評価を行ってまいりましたが、結論として、現時点ではまだロゴメーカーはデザイナーやロゴ制作サービス、すなわち人の代わりにはならないということ分かりました。
その理由として、ロゴメーカーはツール・サービスとして評価できる点より注意すべき点の方が多いこと、そして「デザインする」というプロセスがきちんと踏めるほどまだ仕組みやシステムが成熟していないことが挙げられます。
そしてロゴメーカーには、ロゴデザインにおいて最も重要な、人でなければできない下記の2点がまだ備わっていないことも分かりました。もしそれが解決されれば、本当にグラフィックデザイナーやロゴ制作サービスを脅かす存在になることもあり得るかもしれません。
ロゴを作ろうと考えているノンデザイナーの方のほとんどは、ぼんやりしたイメージしか思い浮かばないままグラフィックデザイナーやロゴ制作サービスにロゴの作成を依頼します。ですので当然最初に出てくるデザイン案が完全にイメージと一致することはほとんどなく、何度か修正や調整を繰り返してようやく希望通りのロゴが出来上がるものです。
このトライ&エラーの繰り返しこそがロゴデザインではとても重要なプロセスで、依頼者のイメージをカメラに例えると、フォーカスによってぼんやりしたピントをしっかり合わせる作業のようなものでしょう。この時、依頼者の「全体的にもっと〇〇なイメージで」「もう少し〇〇な感じで」といった、具体的ではないけれどイメージに近づけるための言葉がとても大切になります。デザイナーはその言葉をもとにデザイン案をどんどんブラッシュアップしていくからです。
ロゴデザインは、依頼者とデザイナーとの間で「イメージ共有」が図られることで、初めてぼんやりしたイメージがしっかりとした形になっていくのです。そしてそのためには繰り返し対話を行うことが大切になります。ロゴメーカーにも依頼者から一方的にキーワードを入力する仕組みはありますが、ロゴメーカー側がその意図をしっかりと汲み取るまでには至っておらず、偶然イメージ通りの案が提示されることを期待するしかないのです。またその偶然の確率はかなり低いものと思われます。
ロゴは長い歴史の中で数えきれないほど生み出され、デザインのバリエーションはもはや出尽くしたとも言われています。ですのでロゴメーカーは、過去のデザインを参照し、汎用的に使えるデザインや定番のデザインをかき集め、仕組みの根幹となる膨大な数のテンプレートストックを作り上げたのです。しかし皮肉にもそれが原因で、ロゴメーカーの作ったロゴには「どこかで見たことがあるようなデザイン」といった既視感があり、オリジナリティという点では常に物足さを感じさせてしまうという弊害が伴ってしまっています。
ロゴのデザインにおいて特に多いリクエストは「個性」です。デザイナーはそのリクエストに応えられるように、自分の感性を磨き、作風を確立させようとします。そして個性的でオリジナリティのあるデザインは必ずしも万人受けするものではありません。デザインの評価は突き詰めると主観的なものなので、ロゴを求める人の好みに依存してしまう傾向にあります。ですので何かしらのこだわりを持ってロゴを作りたいと考えている人にとって、現在のロゴメーカーでは対応はし切れず、結局自分の好みのデザインが作れそうなグラフィックデザイナーやロゴ制作サービスへ依頼することになっているのだと思います。
感性や作風の生成やストックまでカバーしたロゴメーカーを作り出すのはかなり難しいことのように思いますが、もしそれができた時は、グラフィックデザイナーやロゴ制作サービスにとって脅威となる存在になっていくでしょう。
以上のように、ロゴメーカーが作ったロゴのクオリテはが、グラフィックデザイナーやロゴ制作サービスが作ったロゴに及ぶほど現段階ではまだ技術や仕組みが成熟していないことが分かったかと思います。
クオリティより費用やスピード、自身で作ったという達成感を優先したい場合はロゴメーカーを使う、クオリティやオリジナリティを求める場合はグラフィックデザイナーやロゴ制作サービスに制作を依頼するというふうに、今ははっきりとした棲み分けがされているのではないかと思います。
ロゴメーカーは近年発表されたばかりのサービスで、まだまだ未開拓・発展途上な部分も多いと思います。今後、様々な技術の進歩やサービス内容の拡充が図られれば、いつかデザイナーにとって脅威となる可能性はあり得ますし、利用者にとってさらに有益なサービスにことも大いに考えられます。
このロゴメーカーの展開を見守っていきつつ、synchlogoではそれに負けないロゴ制作サービスの充実を図っていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
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